ASSERT 411号 (2012年2月25日発行)

【投稿】 野田内閣の閉塞状況と
       大阪維新の会「血みどろの大戦争」の正体
【投稿】 放射能瓦礫を全国にばらまくな
【報告】 ー経産省前反原発ーテントひろば探訪記
【書評】 三浦耕喜『兵士を守る──自衛隊にオンブズマンを』
【資料】 ウォール街占拠運動--99%対1%の闘いは続く--

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 【投稿】 野田内閣の閉塞状況と
          大阪維新の会「血みどろの大戦争」の正体



※2/12に行われた「教育基本条例反対」など「橋下さんにひとこと言いたい」プロジェクトの集会

<<わずか8.6%の期待>>
 野田内閣のどうしようない行き詰まりを目の前にして、政界再編をもくろむ魑魅魍魎が蠢いている。
 政権交代から2年半が経過したが、民主党は自らの公約であるマニフェストをことごとく踏みにじり、マニフェストに書かれてもいない消費税増税を強行し、対米追随をいっそう鮮明にしてTPP参加に乗り出し、米軍の辺野古新基地建設にいまだに固執する、つまりは政権交代で期待されていたものを手のひらを返したように実行もせず、その真摯な努力も放棄して、やらなくてもいいマニフェスト破りに明け暮れているのであるから、政界再編が必然化するのも当然と言えよう。“ユーチューブ”で話題になった千葉の街頭演説の動画で野田首相はマニフェストに「書いていないことはやらない」と大見得を切り、「シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす、そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです」と力をこめた演説を国会で取り上げられて、野田首相は「引き上げ時期は総選挙のあとなのだから公約違反ではない」と詭弁を弄する政治姿勢はもはや恥ずかしさを通り越して、尋常ではない。一片の反省や誠実さも、良識や良心も失ったその姿は自らが作り出した閉塞状況そのものと言えよう。
 民主党は、3・11の東日本大震災と原発災害を乗り切る、大規模な震災復興対策を柱にしたグリーンニューディール政策、原発からの全面撤退政策への根本的転換を提起すらできず、財務官僚の言うがままの緊縮経済路線に固執して、小出しで事態を糊塗する、その場しのぎの右往左往で、被災地住民はもちろん、放射能の列島汚染の不安と対策に苦しむ人々の期待にまったく応えられない、それどころか大規模な余震と全国各地で絶え間なく活発化する地震活動を前にしても、腐敗堕落した原子力村の意向を代弁して原発再稼動に必死である。これでは人々から見放されるのも当然と言えよう。
 2/5発表のフジテレビの世論調査では、今後の期待される政権について「民主党政権、または民主党を中心にした連立政権」への支持は、わずか8.6%、次いで「民主・自民の大連立政権」への支持は11.8%、「自民党政権、または自民党を中心にした連立政権」への支持でも15.0%、そして「既成政党が分裂・政界再編した新たな枠組みの政権」には22.8%の支持が集まり、さらに「石原都知事や橋下大阪市長などによる新党中心の政権」への支持が実に33.6%に達しているのである。2/13発表の産経新聞とFNNの合同調査でも、大阪維新の会の国政進出を期待するとの回答が64.5%、2/14発表の朝日新聞調査でも、大阪維新の会について「国会で影響力を持つような議席を取ってほしいか」との問いに「取ってほしい」との回答が54%を占めている。

<<おざなり「船中八策」>>
 ここには、民主党はもちろん、自民党に対しても厳しい目が注がれ、この「二大政党」はもはや期待もされていない、彼らが連立の中心となる政権も期待されていない現実の姿が浮き彫りにされている。それは、原発震災を前にしても、いまだに原発に固執する民主、自民両党への失望であり、これに追随する既成政治勢力全体が見放され、代わっていまだ得体の知れない“第三極”(既成政党が分裂・政界再編した新たな枠組み)や“新党”(石原都知事や橋下大阪市長などによる新党)への淡い期待が反映されているともいえよう。
 しかし問題なのは、このような事態をもたらした、そして2年半まえに政権交代をもたらした小泉政権時代に頂点に達した規制緩和と弱肉強食の市場原理主義路線、新自由主義路線、社会資本破壊路線、不正規雇用蔓延への反省が、民主、自民はもちろん、“第三極”や“新党”にもまったく見られないどころか、むしろその悪しき路線をさらに悪質化して推し進めようという傾向が顕著なことである。
 その典型が「石原都知事や橋下大阪市長などによる新党」である。女性差別と外国人差別を天職と心得る石原都知事、公務員・教員叩きとカジノ誘致にひた走り、独裁者たることを天職と心得る橋下大阪市長、こんな度し難い二人こそがまさに弱肉強食の新自由主義路線の権化であり、こんな二人にしか期待を寄せられない日本の政治状況の極度の貧困化現象こそが問題と言えよう。
 この機に乗じて橋下氏が代表を務める「大阪維新の会」は「300人擁立、200議席確保を目指す」と、一気に国政の中枢を狙う意図をあからさまにしている。橋下氏は「たった(消費税を)5%税金を上げて、日本が再生するわけがない」と、一見、野田首相が政治生命をかける大増税路線を批判してみせ、「社会保障から税のシステム、国と地方の関係、何から何まで1からつくり直そうというのが道州制だ」と述べ、「船中八策」なる政策大綱を明らかにした。原発推進の堺屋太一氏ら小賢しいブレーンが入れ知恵したと言われるが、日米同盟を基軸とした外交・防衛、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加が基軸では自民・民主と瓜二つでまったく代わり映えもしないし、自らの独裁制への道程として位置づけられる道州制や首相公選制もこれまでの政権与党が主張してきたものの二番煎じであり、憲法改正の要件緩和は旧来の改憲勢力の期待に応えるものでしかなく、大阪の教育・職員両基本条例案の国レベルでの法制化と首長に教育行政の権限は自らの独裁者願望を引き写しただけで、唯一独自性がありそうな「掛け捨て型年金」も所得再分配政策に位置づけられたものではなく、参議院の廃止と同様、奇をてらった思いつきの域を出るものではなく、総じてずさん極まりなく、新自由主義路線を掲げる「みんなの党」とほぼ同一の政策路線であるが、その中身の薄っぺらさは覆いようもない代物である。


     ※2/12大阪市役所を取り囲む人の輪行動

<<「いやだったらやめりゃいいだけ」>>
 橋下氏は2/16、「国会議員は完全にひいているが、国民は『これぐらいやらなきゃしようがない』という雰囲気だ。国会議員が本気になるかどうか。ならなければ、大阪ダブル選挙以上の血みどろの国を挙げての大戦争になる」と、この「船中八策」への政界の反応について脅しとも取れる大見得を切った。ところが、自民、公明はもちろん、民主党までもが「われわれの考え方と共通する面もある」(民主党の前原政調会長)と擦り寄る始末である。
 危険極まりない政治情勢の進展である。橋下氏のファシスト的政治手法はすでに大阪においてむき出しの形で露呈されている。「大阪市職員に対する労使関係に関するアンケート調査」は、「このアンケート調査は任意の調査ではありません。市長の業務命令として全職員に真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます」と脅迫文を冒頭に掲げ、「業務命令」で処分をちらつかせ、全員に記名による提出を強制し、職員のプライバシーや個人の思想信条、組合所属、「組合活動に参加したかどうか」、「特定の政治家を応援する活動」に参加したかどうか、「特定の政治家に投票するよう要請」されたかどうか、「街頭演説を聞いたりする活動」に参加したかどうか、「職場で選挙のことが話題」になったかどうかなどまでも必須項目として回答を求め、他の職員の政治活動や組合活動の告発・密告を強要するものであり、明らかな憲法違反の思想調査であり、戦前の特高警察さながらの思想調査、密告調査である。さらに「組合費がどう使われたか」「組合加入のメリット」「組合加入しないことによる不利益」などまで回答を求める調査は、労働組合に対する支配介入、不当労働行為そのものでもある。
 今月2/10の開始以降、「憲法違反の思想調査」「組合への不当な支配介入」などの批判が市役所内外から相次ぎ、大阪市労働組合連合会が2/13、不当労働行為に当たるとして、大阪府労働委員会に救済を申し立て、労働団体や弁護士会が次々に中止・撤回を求める声明を発表し、ついに2/17、市長からアンケートの扱いを一任されている市特別顧問の野村修也中央大法科大学院教授は、「救済申し立ての審査の推移を見守る」として回答データの開封や集計作業をいったん凍結することを明らかにした。しかし、橋下市長はマスコミに対し「職員には今までの価値観を変えてもらう」「いやだったらやめりゃいいだけの話」などと公言している。「血みどろの大戦争」の正体は、まさにこのようなファシスト的手法による戦争なのである。このようなファシスト的政治を許さない、広範な反撃こそが組織されなければならないと言えよう。
(生駒 敬)


写真は、2/12に行われた「教育基本条例反対」など「橋下さんにひとこと言いたい」プロジェクトの集会と大阪市役所を取り囲む人の輪行動