ASSERT 417号 (2012年8月25日発行)

【投稿】 大政翼賛報道と原発・増税問題
【投稿】 日本共産党の原発政策
【投稿】 生活保護が危ない
【投稿】 「ぶれない」生き方
【日々雑感】 熊森 VS 小出対談 A

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【投稿】 大政翼賛報道と原発・増税問題

<<米GE、原発“見切り”発言>>
 東京電力や関西電力、経産省、原子力村にとっては、そしてもちろん野田内閣にとっても、耳を疑いたくなる衝撃的なニュースが、最も頼りとする米国からもたらされた。
 一つは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)最高経営責任者(CEO)、ジェフ・イメルト氏の原子力発電に対する発言である。GEは1950年代に世界でも最初期の商用原子炉を建設し、2007年に日本の日立製作所と原子力発電の合弁会社を設立して以来、業界トップの一角を占めてきた、そのCEOが、東京電力福島第1原子力発電所の事故をきっかけに原発のコスト上昇が見込まれる一方、多くの国が地中深くの岩盤から採取する新型天然ガス「シェールガス」や風力に発電用エネルギー源をシフトすると予見。原発は「(経済的に)正当化するのが非常に難しい」と英紙フィナンシャル・タイムズのインタビュー(7月30日付)で語ったのである。イメルト氏はもともと資金面や周辺住民対策など政府への依存度の高い原発ビジネスに疑問を呈し、今年3月、米ヒューストンで開かれたエネルギー業界最大の会議での講演でも「『原子力ルネサンス』というものは(福島の)事故の前からそもそも存在していなかった」と批判的な発言をしている。地球温暖化対策にかこつけて「原子力ルネサンス」に期待をつないできた原子力ムラに所属する電力業界、経産省、財界、産業界、学界、原発推進労組等々にとっては、原子力ムラの住人そのものの発言であるだけに不都合極まりなく、苦々しい限りであろう。
 今回の発言は、福島原発事故の3か月後の昨年6月にドイツのメルケル政権が22年までに全原発を停止する「脱原発」の方針を決定すると、その3か月後の2011年9月に独シーメンス社長、ペーター・レッシャー氏が独誌シュピーゲルのインタビューで表明した「原発事業撤退」に続く米欧電機大手トップの衝撃発言であり、その衝撃度は、シーメンスの場合の表面上は単なる経営選択以上に、GEの場合は原発事業そのものへの“見切り”発言であるだけに、日本の原子力村にとってはさらに大きいといえよう。

<<「ヘリコプターが水を投下するのを見たでしょう」>>
 さらにより根本的な問題が続いて提起された。それは原発が「トイレのないマンション」と例えられる致命的欠陥があらためて突きつけられたニュースである。
 米原子力規制委員会(NRC)は今月7日、最近の連邦控訴裁判所の判決で提起された使用済み核燃料政策の問題への対応ができるまで、原子力発電所建設の認可手続きを停止し、使用済み核燃料の貯蔵規則の見直しを同委が終えるまで、原発の新設や運転期間の延長を認可しないことを決めた。
 この決定に至る前段、コロンビア特別区巡回控訴裁判所は6月、NRCの使用済み核燃料への対応は連邦環境基準に合致していないとの判断を示した。控訴裁判所は、必要になれば最終処理場が建設されると見るべき「合理的な保証」があるとしたNRCの見解を退けたばかりか、使用済み核燃料は原発の認可期間を超える60年間にわたり、プールあるいはキャスク(使用済み燃料用容器)の中で安全に貯蔵できるだろうとするNRCの主張も認めなかったのである。NRCはこれまで、承認された稼働年数を超えた原発の敷地内でも使用済み燃料は安全に保管できるとの前提に立って、原発の新設・運転延長の申請を審査してきたが、同裁判所は、プールからの漏れはこれまで害がなかったとNRCが考えたとしても、NRCはこれまで以上の漏れやその他の事故の可能性とその結果を評価しなければならないとしたのである。
 この判決が出るまではNRCは、新規原発を認可したり、既存原発の認可を延長する際にはいわゆる「廃棄物信頼性決議(Waste Confidence Decision)」に依拠し、同決議に従ってNRCは、政府は最終的に恒久的な処理場を設けると信頼していることを理由に認可してきた。
 ところが、ネバダ州のユッカマウンテンが高レベル放射性廃棄物の埋設処分(地表から201m〜488m、平均305m)施設の唯一の候補地と決定されて以来、約90億ドル(約1兆円)の費用をかけて処分場建設が進められてきたが、2009年、オバマ政権が計画中止を決定、処理場を作る計画を打ち切ったことから、同国の使用済み核燃料の最終的な行き場所のあてがなくなり、さまざまな代替案が検討されてきたが宙に浮いたままである。
 こうしてNRC自身が、福島第一原発事故を受けて、使用済み核燃料の危険性を指摘する声が高まるなか、「稼働年数を超えた原発の敷地内でも、使用済み燃料は安全に保管できるとの前提」の見直しに踏み込まざるを得なくなったのである。今回のNRCの決定に際して、新しい委員長に就任したアリソン・マクファーレン女史が「皆さんも福島の使用済み燃料プールにヘリコプターが水を投下するのを見たでしょう」と会見で語ったことがそれを象徴している。
 8/8付ウォールストリート・ジャーナル紙は「米NRC、原発認可手続きを停止」と題して「環境保護活動家らは、使用済み核燃料の専門家であるマクファーレン新NRC委員長の最初の重要なステップであるこのNRCの決定を歓迎している。環境保護グループ、パブリック・ジャスティスのリチャード・ウェブスター氏は、使用済み核燃料に関する既存のシステムが十分だという「錯覚」の下でNRCが運営されることを認めようとしていない、と述べた。」と伝えている。
 原発を稼働させる限り、次から次へと高レベルから低レベルまで放射性廃棄物が山積みされ、再処理はもちろん何万年も管理することなど到底不可能な地下埋設処分など、全てがいよいよデッドロックに乗り上げてきたこと、その危険性が誰の目にも明らかになってきており、もはや隠し通すことが不可能な現実に直面しているわけである。

<<「反増税の勢力が台頭しようとも」>>
 しかしこの二つのニュース、「原発は正当化できない」、「核のゴミ(放射性廃棄物)は避けて通れない」ことを明らかにし、日本の原子力ムラや政財界にとって最も都合の悪い、核心をついたこのニュースを、日本の大手マスコミはほとんど報道していないか、極めて小さな扱いしかしていない。明らかに日本のマスコミは、原子力ムラや経産省、政財界と馴れ合い、飼いならされ、いまだにその膨大な広告・宣伝費に依存し、このニュースがもたらす衝撃度を和らげることに必死で、オリンピック報道の影に隠し、今や尖閣・竹島問題でナショナリズム扇動に加担するオンパレードである。この報道姿勢は、財務省の増税路線と一体化し、その手先と化したかのような姿勢にも露骨である。
 とりわけ、消費税増税をめぐる大政翼賛報道と見紛うばかりの、自公民・三党合意礼賛報道は度を越しており、一片の批判精神さえ示すことができず、低下している自らの社会的存在意義をさらに低下させ、その報道姿勢は侮蔑の対象とさえ言える段階に来ていると言えよう。
 民自公3党の「近いうち解散」の談合によって消費税増税法案が成立した翌日、8/11の各紙の社説は、政府広報そのものである。「一体改革」どころか、このデフレ下に生活を破壊し、経済を崩壊させる大増税を平然と支持・礼賛しているのである。

 「一体改革法成立 財政健全化へ歴史的な一歩だ 首相の「国益優先」を支持する」(読売)、「一体改革成立 「新しい政治」の一歩に」(朝日)、「増税法成立 「決める政治」を続けよう」(毎日)、「この増税を次の改革につなげたい」(日経)

 そもそもこの消費税増税については、3年前の2009年8月の総選挙において、4年間は増税しないことを公約して、それまでの自公政権の自由競争礼賛・弱肉強食の新自由主義路線からの決別を公約して歴史的な政権交代が実現したのである。そしてこの増税法案成立後も、世論調査で明らかなように半数を超える有権者が依然、反対を表明しているのである。
 本来ならば、社会の木鐸としての存在意義からすれば、この公約を踏みにじったその政治姿勢がまず徹底的に批判されなければならない。ところが、朝日社説はこの増税を「国会が消費増税を決めたのはじつに18年ぶりだ。民主、自民の2大政党が、与野党の枠を超え、難題処理にこぎつけたことをまずは評価したい」と持ち上げ、読売に至っては「審議に200時間以上をかけ、圧倒的多数の賛成で成立させた。高く評価したい。 選挙の結果、政権が代わり、反増税の勢力が台頭しようとも、民自公3党は「消費税10%」の実現まで責任を共有するべきである。」と彼らが気がかりな反増税勢力の台頭と闘えと忠告する始末である。
 民主党は、自らの手によって政権交代の意義を完全に否定してしまい、そして大手マスコミはこぞってそれに手を貸すことによって、彼らの社会的存在意義を否定してしまったと言えよう。
 「近いうち解散」をめぐって第三極づくりが入り乱れてかまびすしいが、問われているのは、この原発と増税をめぐってあいまいな政策は許されないし、そのことをあいまいにした維新の会のような強権・ファシスト政治の台頭をも許さない政治勢力の結集こそが要請されていると言えよう。
(生駒 敬)