ASSERT 423号 (2013年2月23日発行)

【投稿】 安倍政権・悪意に満ちた改憲地ならし路線
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【投稿】 安倍政権・悪意に満ちた改憲地ならし路線

<「きわめて特異的な事例」という嘘>
 安倍政権は、いよいよ中国との意図的な軍事的対決路線、あるいはその前段階の緊張激化路線を前面に押し出そうとしているかのようである。
 1/19と1/30の中国艦からの海上自衛隊艦艇に対するレーダー照射が明らかにされた2/5の午後7時の記者会見の際、小野寺防衛大臣は、こうしたレーダー照射について「これが最初か」と質問された際に、「全体を通しても、きわめて特異的な事例」「大変異常な事態で一歩間違うと大変危険な状況に陥る」と、過去にはなかったいかにも衝撃の緊急事態であるかのように発表を行い、しかもこの公表は安倍首相自身の指示によるものであることを明らかにし、NHKをはじめ各メディアはこの政府の「大本営」発表をそのまま真に受けてトップニュースで垂れ流した。


(写真は、大阪城公園で開かれた「関西大弾圧をはねかえそう!2・3全国集会」)

 ところが、その後の事態が明らかにしたことで、なおかつ安倍政権が隠してきて、やむを得ず認め始めたことは、中国艦からのレーダー照射は実は過去に何度もあり、民主党政権時代はもちろん、小泉政権時代から起きていた事実が暴露されてきている。現時点で明らかになっているだけでも、小泉政権時代の2005年1月と9月、民主党政権時代にも複数回、今回と同じレーダー照射の事件が発生していたのである。つまりは、中国がとんでもないことを仕掛けてきたというフレームアップ、悪意ある意図的な情報操作による謀略的な世論誘導が行われていると言えよう。

<「東京空爆」「宣戦布告なき開戦」>
 さらに、こうしたレーダー照射問題については、海上事故防止協定というものが存在し、1972年、米、ソ、英、仏、独、伊、加、1993年日・ロが協定に調印しているが、「砲、ミサイル発射装置、魚雷発射管、その他の武器を指向することによる模擬的攻撃」や艦橋などへの探射燈の照射、乗員、装備を害するレーザーの使用、意図的通信妨害などが禁じられているが、今回のような火器管制レーダーの照射は禁じてはいない。「日中間でも協定締結が望ましいが、ロシアとの協定と同一では、今回の事案は防止できない。禁じていないことを日中間で危険とするのは整合性を欠く」(田岡俊次氏、「週刊金曜日」2/15号)と指摘されている。緊張を激化させるような行為はお互いに慎むべきなのは当然であるが、一方的な非難と世論操作の前に本来はなすべき対話と接触、外交が一切放棄されてしまっては、そこには悪意しか残らないといえよう。
 こうして安倍政権は明らかに、中国との平和的外交関係の維持・前進、対話・協調路線ではなく、そうした努力を意図的に放棄してきた結果として、「打開策が見出せない中、安倍政権は国際社会に中国の挑発行為を明らかにする手法を選択した」(2/6、朝日)のである。このように指摘する朝日をはじめ大手メディアは、こうした政府の手法に乗っかり、事実上安倍内閣の広報機関と化し、結果として政府の「大本営発表」を垂れ流し、週刊誌に至っては、中国からの「宣戦布告」(週刊文春2/21号)、中国人9割は「日本と戦争」「東京空爆」(週刊新潮2/21号)、この無法国家を許すな! 撃墜寸前!中国軍の「宣戦布告なき開戦」(週刊ポスト3/1号)などと、まるで開戦前夜の煽りようである。悪意ある意図的な軍事挑発路線が安倍政権のもとで焚きつけられているのである。

<「憲法改正可能な状況を迎えた」>
 こうした悪煽動の結果であろうか、安倍内閣の支持率は上昇している。2/11付読売新聞世論調査では、安倍内閣の支持率は先月の前回調査から3ポイント増の71%(不支持率18%)。TBSが11日報じた調査でも前回から9・2ポイント増の76・1%(不支持22・9%)と、いずれも7割を超えている。支持率が70%を超えたのは、鳩山内閣発足翌月の2009年10月(71%)以来。経済再生策「アベノミクス」に加えて、中国艦艇による海上自衛隊護衛艦などへの射撃管制用レーダー照射に、毅然とした対応をしていることが好感されたという。読売でもTBSでも内閣発足から2回連続して上昇しているが、発足からの連続上昇は、読売では1993年の細川内閣以来だという。政党支持率では、自民党が40%を超える「独り勝ち」で、民主党と日本維新の会はともに5%程度に過ぎなかった(読売調査)。
 こうした事態の進展に気を良くしているのであろう、安倍首相は在任中の改憲に強い意欲を露骨に示しだしている。2/15、自民党本部で開かれた党憲法改正推進本部(保利耕輔本部長)の会合に出席し、憲法改正こそは自民党結党の目的だと指摘し、「大きな宿題が残されている。皆さんこそ憲法を改正する原動力になっていただきたい」と気合を入れ、自民党の改憲草案に関して「(憲法改正が)ほとんど不可能な雰囲気が漂う中、改憲草案を用意して、可能性(がある状況)を迎えた」と胸を張り、在任中の改憲実現に強い意欲を示したのである。

<「参院選勝たねば死にきれぬ」>
 そして在任中の改憲実現には、なんとしても7月の参院選に勝利しなければならない。安倍首相は2/16、自民党本部で開かれた党東京都連の会合で「私は6年前の参院選で大敗した時の責任者だ。何としてもこの参院挙で勝利を収めなければ、死んでも死にきれない」と述べ、「安倍政権はロケットスタートを切ることができたが、参院選で勝利しなければ、自民党の理念と私どもが目指すべき日本を構築するための基本的な政策に進んでいくことはできない」とその強い決意を表明、「まずは憲法第96条の改正に取り組んでいく」と述べ、衆参各院の発議要件を3分の2以上の賛成から過半数に引き下げる発議要件の緩和を突破口にして改憲に突き進む考えを明らかにしている。
 これに応えるかのように、日本維新の会の中田宏議員は2/8の衆院予算委員会で、「公明党さんがいなくても日本維新の会がいれば衆院で3分の2あります。自民党とともに大いに進めていきたい」と、安倍内閣との連携を明確に示し、安倍首相も「3分の1を超える国会議員が反対すれば指一本触れることができないのはおかしい」「まずここから変えていくべきではないか、というのが私の考え方だ。この考え方は維新の会の方針としても賛同いただけるのではないか」と相呼応し、自民・公明の連立から自民・維新の「改憲連合」がいよいよ現実のものとなる道筋が示されている。
 中国に対する危険極まりない挑発的な対決路線や「国際的非難合戦」、「集団的自衛権行使」、「防衛力増強」等々、すべては、安倍首相の念願である憲法9条改悪への地ならしとして位置づけられ、実行され、極右政治家による危なっかしい歴史の反動化が押し進められようとしている。参院選に勝利すれば、アベノミクスもそのための地ならしの道具としてのその場しのぎの本質が露呈されてくるであろう。その本質は新自由主義の弱肉強食路線であり、生活保護費削減を皮切りとする社会保障切り捨て路線であり、TPP参加に対応した農業や医療などあらゆる分野でのさらなる規制緩和路線である。
 7月の参院選までは、その本性をなるべくオブラートに包み、河野談話見直しなど、アメリカはもちろん国際的にも孤立化しかねない従軍慰安婦問題、靖国神社参拝問題、さらには原発再稼働問題などは当面はうやむやなかたちで封印をして、正面から提起することを避けてきたのであるが、参院選に勝利しさえすれば、その後3年間は、国政選挙で審判が問われることがないと、憲法9条改悪を頂点とする懸案の反動路線と新自由主義・弱肉強食路線、原発再稼働路線を一気呵成に押し進めんとする魂胆が露骨に見え隠れしだしている。「何としてもこの参院挙で勝利を収めなければ、死んでも死にきれない」という安倍首相の本音を、なんとしても許さない、こんな危険極まりない路線を孤立化させるそうした闘いこそが要請されている。
(生駒 敬)