ASSERT 424号 (2013年3月23日発行)

【投稿】 安倍・維新連合−改憲・TPP推進路線の孤立化を
【投稿】 被曝線量基準の切り下げを許すな
【投稿】 孤立化の道歩む安倍政権
【投稿】 「南京大虐殺展示撤去」に寄せて
【日々雑感】 悪意に満ちた情報操作と言えば

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【投稿】 安倍・維新連合−改憲・TPP推進路線の孤立化を

<<「今がラストチャンスだ」>>
 安倍政権は、先の民主党・野田政権と同じ土壺にはまろうとしているのであろうか。安倍首相自身が、アベノミクスの表層に浮かれた大手マスメディアの無批判なお追従に変に自信をつけ、昂揚感で有頂天になり、上から目線の空威張りと上滑り、そして焦りが同居する、躁的精神状態に浮かれているようである。憲法改悪、TPP参加、等々、参院選を待たずに、すべてを前のめりで進行させようとしている。
 3/15、安倍首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に参加することを正式に表明した。首相は「一日も早く交渉に参加しなければならない。今がラストチャンスだ。」、「日本は世界第3位の経済大国。参加すれば必ずルールづくりをリードできる」と語ったが、その同じ記者会見の場で、「すでに合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本がひっくり返すのは難しい」と認めざるを得なかった。2011年に参加したカナダとメキシコには先行国の交渉内容を見直すことが許されなかったことがすでに明らかにされており、当然のことであろう。カナダとメキシコは、「交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある」「現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」などと極めて不利な条件をのまされ、その念書を両国は極秘扱いにして隠していたのである。TPP交渉は秘密交渉であり、この両国同様、日本は、これまでの交渉内容、合意事項、その法的文書そのものさえ見ることも確認することも許されないまま、全てを受け入れざるを得ないのである。3/7付東京新聞が報じたように、「日本が交渉入りしても加盟国が合意した項目は、再協議することはない、と参加9ヵ国で決められている」のである。そして安倍首相は、こうしたことを承知しながら、先の日米共同声明ですべての物品をTPP交渉の対象にすることを認め、交渉参加をオバマ大統領に申し出たのである。
 このようにTPPは完全秘密主義で、物品・サービス・知的財産など21分野にわたる項目全てが妥結するまで交渉内容が一切公表されず、途中経過も知らされず、一括してすべてが妥結した後、初めて公表される。公表されてから個別の項目を変更することや、ましてや国民的議論の俎上に乗せることなどできないのである。およそ主権在民、自治権に反する、各国の経済主権や食料主権をないがしろにし、国家主権をも奪う徹底した反民主主義のしろものなのである。

<<「できる限りの対応」>>
 それでも首相は「参加は国家百年の計だ。国益になるだけでなく世界の繁栄につながる」と述べたが、中国・ロシア・インドネシア・タイなど環太平洋の主要国、そしてインドも含めて今や日本の最も重要な輸出入最大の相手国であるこれらの諸国が軒並み見送った交渉への参加が、なぜ「国益になるだけでなく世界の繁栄につながるのか」、一切明らかにできなかった。そこであわてて試算したTPPの影響額はこれまたずさん極まりなく、農水産業の生産額は3兆円落ち込む一方、輸出拡大でGDPは3・2兆円増えるという。だが、2011年には農水省は農水産業が7・9兆円の打撃を受けると試算していたのである。多大な犠牲に比して、たったこれだけの効果しかないとも言えるが、政権の要望に合わせて適当につじつま合わせをする官僚の試算を誰が信用するというのであろうか。
 3/13の自民党のTPP交渉参加を容認する決議は、
1.コメ、牛肉、乳製品、砂糖、小麦の5品目を関税撤廃の例外とする。 2.国民皆保険を守る。 3.日本の主張が受け入れられない場合にはTPP撤退を辞さない、の三つであった。これに対して安倍首相は 「必ず守る」と言いつつも、「国民皆保険を守ることは確約する。しかし、例外5品目については、できる限りの対応を取る。できる限りの対応とは、関税撤廃の緩和措置および国内対策のこと」だと、交渉入りする前段階から後退した内容を述べており、ここに既に関税撤廃の例外設定は実現できないこと、緩和措置と国内対策でごまかすことを見逃してくれ、という、露骨なTPP参加への前のめり姿勢のみが浮き彫りにされている。あとの2条件も、適当なガス抜き程度にしか位置づけられておらず、反故にされることを承知で、首相一任を取り付け、リップサービスのみで政権与党幹部は手を打ったつもりなのであろう。

<<「ウソつかない、ブレない」>>

 「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」−これは先の総選挙での自民党の選挙公約のポスターである。わずか3か月前である。ここまでくればお笑いである。「TPP断固反対」はどこかへ飛んで行ってしまって、言い訳しようのないブレまくりの大ウソつきと言えよう。
 このポスター、公約破りの民主党への面当て、対決の旗印として掲げられたものであろうが、今や自らに降りかかってきている。民主党は、消費税増税をはじめとする数々の明確な公約違反と居直り、ブレまくりの結果、圧倒的な有権者の怒りを買い、政権の座から引きずり下ろされ、断罪されたのであるが、自民党の公約破りはそれ以上に早すぎるし、厚顔無恥である。こんな公約違反が堂々とまかり通るようであれば、一体選挙や投票とは何であったのかが根本的に問われかねない。これほど明確な公約違反、本来ならこの問題一点に絞ってでも直ちに出直し選挙を行うべきであろう。またそうしなければ、まったくお寒い限りの薄っぺらな民主主義に堕落してしまうし、現実はそのように断罪されても抗弁できない状況と言えよう。
 このようにウソをついてでもTPP参加に前のめりになるもう一つの、そして決定的な理由は、「普遍的価値を共有する国々と経済的な相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にもアジア太平洋地域の安定にも寄与する}(3/15記者会見)、というまさに経済外の、「安全保障面の利点」なのである。そしてここにこそ本音があり、安倍氏特有の自民党最右翼の面目躍如たる存在理由が透けて見えよう。民主主義を屁とも思っていない安倍氏が、民主主義という「普遍的価値を共有する国々」などいうこと自体お笑い種だが、そうした国々とは付き合うが、それ以外とは断固対決するという意思表明としてのTPP参加なのである。まさに安倍氏がなんとしても成し遂げたい、憲法9条の改悪と自衛を超えた対外攻撃軍隊として活用できる、「集団的自衛権」を担いうる国防軍の創設、そして天皇「元首」化、さらには「公益・公序」によって基本的人権をも労働基本権をも生存権をも制限できる、そうした憲法改悪への道であり、「美しき大日本帝国復活」への道である。
 すでに安倍氏は、2/26の参院予算委員会で、自民党の改憲草案について問われ、「今の状況でただ自衛隊を国防軍に名前を変えるのではなくて憲法改正が必要だ。相当な議論をして(改憲を)成し遂げるべきだ。まず96条(改憲発議要件)を変えるというのがわれわれの考えだ」と表明している。既にこの時点で安倍氏は、憲法99条の、大臣や国会議員など公務員の憲法順守義務を明確に犯しており、現行憲法における首相の適格性は存在していないのである。

<<「いざという時は維新と組む」>>
 こうした危険極まりない危うい路線に、早速、石原・橋下連合の日本維新の会が、その本性も露わに飛びついている。維新の会の橋下徹共同代表は3/16、安倍首相がTPP交渉参加を表明したことについて「首相は維新の存在があったからTPPに踏み切れた。自民党内の反対派に『いざという時は維新と組む』との考えを表に出して党内が収まった」と語り、さらに橋下氏は踏み込んで、「憲法96条改正でも、自民党と公明党が連立を組んでいるが、首相はいざとなったら維新と組めばよいとの思いで前に進めることができる」とも指摘している。安倍氏の真意を代弁したのであろう。
 3/14、衆院憲法審査会は、昨年12月の衆院選後、初めての会合を開いたが、第1章「天皇」、第2章「戦争の放棄」に関する各党見解表明で、自民党、日本維新の会、みんなの党は、1条で天皇を「元首」と位置付けることや、集団的自衛権の行使を認める9条改正でほぼ足並みをそろえた。いよいよその時が到来しつつある、と安倍首相は意気込んでいるのであろう。
 安倍・維新連合の憲法改悪・TPP推進路線を徹底的に孤立化させる闘いこそが要請されている。
(生駒 敬)