ASSERT 426号 (2013年5月18日発行)

【投稿】 孤立化・破綻を推進する極右・安倍政権
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【投稿】 孤立化・破綻を推進する極右・安倍政権

<<「どんな脅かしにも屈しない」>>
 この間に安倍政権が撒き散らした恥ずべき数々の暴言と行動は、あらためてこの政権が歴史に逆行する特異な政権であることを国内外に明らかにしたといえよう。
 4/21、安倍首相は東京・九段の靖国神社で行われている春季例大祭に、あえて「内閣総理大臣」の名で祭具の真榊(まさかき)を奉納し、麻生元首相は、首相として在任中は参拝しなかったにもかかわらず、今回は副総理・財務相として同日夜、自ら出向き参拝し、総務相や国家公安委員長も参拝、「国のために命をささげた英霊に哀悼の誠をささげるのは、国会議員という立場からして当然だ」と言い放つ。続く4/23には、記録がある1989年以降で最多の168人の国会議員(自民132、維新25、民主5、みんな3、生活1、無所属2)が参拝したのである。
 朝鮮・中国、アジア太平洋諸国に対する侵略戦争に重大な責任を有するA級戦犯を祀る靖国神社は、この侵略戦争を合理化し、「解放戦争」と偽る反動と軍国主義勢力が依拠する象徴であり、偏狭な民族主義感情を煽り、アジア諸国との関係を冷え込ませてきた象徴である。反発必至であることが明々白々であるにもかかわらず、安倍首相自身が2月の国会答弁では「(前回の)首相在任中に靖国参拝できなかったのは痛恨の極みだ」と語り、今度こそ首相在任中の靖国参拝を強行するのだという意思を表明し、あえて挑発的な行動をとる、ことを荒立てる。単なる軽薄さ、無神経さにとどまらない、わざわざ火種を撒くこの政権の意図的で悪意に満ち満ちた行為は、逆にこの政権を没落に導く決定的なアキレス腱ともなろう。
 4/22、直ちにというか当然とも言えよう、韓国外務省は、安倍内閣閣僚らの参拝などに対し「歴史を忘却した時代錯誤的な行為」と批判し、「深い憂慮と遺憾」を表明、「このような雰囲気の中で会談しても生産的な議論は難しい」と述べて4/26、27日に予定されていた政権発足後初の韓国外相の訪日、日韓外相会談の中止を決定した。中国外務省も閣僚の靖国参拝に抗議し「日本の指導者による靖国神社参拝の本質は、日本軍国主義による侵略の歴史を否認する企てである」と指摘、5月に予定されていた日中友好議員連盟の中国訪問も中止に追い込まれた。
 ところが、当然予想されたこうした事態に、安倍首相は冷静に判断するどころか、逆に更なる挑発的な暴言を発してしまった。4/24の参院予算委員会で、安倍内閣の閣僚らの靖国神社参拝に中国や韓国が反発していることに関して「国のために尊い命を落とした英霊に尊崇の念を表するのは当たり前だ。わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない。その自由は確保している。当然だろう」と言い放ったのである。なんという言い草であろうか。よりにもよって「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない」とは。最低限の節度、外交儀礼さえわきまえず、韓国や中国の抗議を「脅かし」と捉える、加害者が自らを被害者かのようによそおう、この低劣さは異様でさえある。しかも「その自由は確保している」という、これまた相手の主張を聞き分け、理解することのできないヤクザの論理である。要職にある、しかもトップにある人物が、これほど知性に欠け、平衡感覚に欠けていては、危なっかしい限りである。


写真は、 シュピーゲル紙に掲載された、陸上幕僚監部の広報室長から促されて、陸自の最新型戦車「10式戦車」に乗って、迷彩服の上着とヘルメットを着けて戦車の砲手席に立ち、笑顔で手を挙げて応える安倍首相(4/27午後、幕張メッセ「ニコニコ超会議2」)
 
<<「侵略という定義は定まっていない」>>
 さらに安倍首相の決定的とも言える暴言は、4/23日参院予算委での村山談話に対する答弁で 「侵略という定義は学会的にも、国際的にも定まっていない。国と国の関係でどちらから見るかで違う」と言ってのけたことである。
 「学会的にも」とはどこの学会が、「国際的にも」とは、どの国が、1945年以前の日本軍国主義の朝鮮・中国をはじめとするアジア太平洋諸国に対して行った政治的軍事的行動を侵略ではないと定義しているのか、明らかにすべきであろうが、それはできない。「自虐史観反対」を叫ぶ一部極右論者の口車に便乗しているにすぎないのである。安倍氏は、確かに一貫してこうした浅薄な歴史観に基づいて発言し、行動してきたが、そうした侵略否定論は学会的にも国際的にも、政治的にも、受け入れられるものではないし、個人の放言では済ませられない責任ある政治家としては受け入れてはならないものである。
 安倍首相が否定したい村山談話は、1995年8月15日に、当時の村山富市首相が閣議決定をもとに、「植民地支配と侵略によって、アジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた」と公式に植民地支配と侵略を認め、「痛切な反省の意」と「心からのおわびの気持ち」を表明したものである。これを覆すことは、これまで紆余曲折はあれ、まがりなりにも長年にわたって築いてきた周辺諸国との善隣友好関係や平和共存関係を崩壊させる、安倍氏お好みの「国益」にも反する、無責任極まる行動なのである。
 そしてこうした安倍氏の発言と行動は、1974年12月14日に国連総会で正式に採択された侵略の定義の第1条は「侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全若しくは政治的独立に対する、又は国際連合の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使であって、この定義に述べられているものをいう」と定めている、その国際社会と敵対することをも意味している。こんなことは本来、常識以前のことであり、それを認識できない安倍氏はそもそもこの時点で首相に不適任であり、今回、国際的信用を著しく失墜させ、事実上周辺諸国との関係をぶち壊してしまった安倍氏はすでに首相失格なのである。これを担ぎ回っている自民党や維新の会も同罪といえよう。
 安倍氏の盟友であり、副総理でもある麻生氏は、2/25、韓国の朴槿恵大統領就任式に出席し、そのあとの朴大統領との面談で、米国の南北戦争を引き合いに「北部では市民戦争というが、南部では『北部の侵略と教える』。同じ国でも歴史認識は違う。まして異なる国ではなおさらのこと…となど奴隷解放の市民戦争と植民地支配の侵略を同一視する詭弁を弄した」(韓国紙、中央日報)と報じられている。「朴大統領の顔色が変わった」というこの放言、麻生氏はこの朴大統領との面談の内容については詳細を語らず、記者団には「歴史にはそれなりに(立場によって)見方が異なるというようなお話をした」とごまかしていたが、その軽薄さと知性のなさ、無責任さにおいては安倍氏に優るとも劣らない、国際的な恥さらしとも言えよう。

<<村山談話「全て踏襲」と路線修正>>
 日本の政権の骨の髄からの極右体質を思い知らされた朴大統領は、5/7、オバマ米大統領との初の首脳会談で、日本の安倍内閣閣僚らの靖国参拝などを念頭に、日本は正しい歴史認識をもたなければならないと、オバマ大統領に直接訴えかけ、ワシントンポスト紙とのインタビューでも「日本は過去の傷口を開き、大きくした」と、日本の姿勢を厳しく批判、さらに翌5/8、朴大統領は安部首相ができなかった米議会上下両院合同会議で演説を実現し、その中で北東アジア地域で「歴史から始まった対立はさらに深刻になっている」と表明、「過去に目を閉じる者には未来が見えないといわれてきた」「過去に起こったことを真摯に認識できないところに、未来はありえない」と安倍政権の姿勢を手厳しく指摘したのである。明らかにオバマ政権は、安倍政権への国際的批判を正当なものとして評価し、受け入れたたものともいえよう。
 さらに、安倍首相を追い込む重要な一撃が、5/9付東京新聞によってスクープされた。それは、5/1にまとめられた米国の議会調査局の日米関係に関する報告書である。報告書は環太平洋連携協定(TPP)について「事実上の日米FTA(自由貿易協定)」だとして日本の参加に歓迎を表明する一方で、安倍首相については「民族主義的言明」や「国防・安保問題での強力な立場」、「強硬な国粋主義者(ナショナリスト)」として知られ「帝国主義日本の侵略やアジア諸国民の犠牲を否定する歴史修正主義にくみしている」と指摘、閣僚には「超民族主義的」見解を持つ者もおり、安倍氏は「激しく民族主義的な維新の会の圧力を受けている」とも指摘、「地域の国際関係を混乱させ、米国の国益を害する恐れがあるとの懸念を生じさせた」と明記したのである。菅官房長官は5/9の記者会見で「誤解に基づくものだろう」「レッテル貼りではないか」などと取り繕ったが、すでに公表されてしまった報告書である。
 米紙ワシントン・ポストは4/26、安倍晋三首相が「侵略の定義は国際的にも定まっていない」と述べたことについて、歴史を直視していないと強く批判する社説を掲載、これまでの経済政策などの成果も台無しにしかねないと懸念を示し、他の米主要紙もそのほとんどが社説で安倍首相を批判、英紙フィナンシャル・タイムズも社説で批判、ドイツの シュピーゲル紙は、「隔世遺伝の安倍:危険な過去にすり寄る日本の首相」 と批判、軍服を着て戦車に乗り込む安倍首相の写真を大きく掲載する事態である。
 こうした事態の進展、深刻な外交的行き詰まりに慌てたのであろう、5/10、菅官房長官は、過去の侵略と植民地支配を謝罪した1995年の村山富市首相談話について「(談話)全体を歴代内閣と同じように引き継ぐと申し上げる」と明言せざるをえなくなった。完全な失態を何とかして覆い隠したい焦りでもあろう、「侵略の定義は定まっていない」との首相答弁に韓国から反発が起きたことに関しても、「安倍内閣として侵略の事実を否定したことは一度もない。こうした点も歴代内閣を引き継いでいる」との釈明に追い込まれてしまったのである。
 中国・韓国側から言われれば居丈高に開き直り、アメリカ側から言われればなんとかごまかし、切り抜けようとするその浅ましい魂胆は世界の笑いものであろう。しかも官房長官に言わせても、自分の言葉で語れない安倍首相である。ここまで追い込まれたのであるから即刻退陣すべきなのである。
 安倍政権は、まだ化けの皮が剥がれてはいないアベノミクスによってなんとか持ちこたえているが、日本維新の会と同様、「賞味期限切れ」が近づいているし、そうさせなければならない。
(生駒 敬)