ASSERT 436号 (2014年3月22日発行)

【投稿】 ウクライナ情勢と安倍外交
【投稿】 プルトニウム返還要求と『潜在的核保有国』
【投稿】 維新退場の序曲--大阪市長選挙--
【投稿】 都知事選をめぐって---統一戦線論・再論---
【投稿】 原発震災から学ぶもの

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【投稿】 ウクライナ情勢と安倍外交

<クリミアの「無血占領」>
 2月24日、ウクライナで反ロシア勢力による実力行動で、ヤヌコビッチ大統領が追放され、欧州連合寄りの新政権が誕生した。
 新政権はトゥルチノフ大統領代行のもと、大統領選挙の繰り上げ実施、ロシア語の非公用語化など脱ロシア政策を進めようとした。
 これに対して、ロシア、プーチン政権は即座に対応、オリンピック閉会とパラリンピック開会の間隙をぬって、ロシア系住民が多数を占め、黒海艦隊の基地、セバストポリがあるクリミア自治共和国を事実上占領した。
 旧ソ連による1979年のアフガン侵攻は、西側諸国による翌年のモスクワオリンピックボイコットにつながった。08年の北京大会開催中にはロシアとの関係が深い南オセチアに侵攻したグルジアに対し、軍事力を行使、短期間で屈服させた。
 今回またしても、オリンピック期間、およびロシアに係わり緊張が高まる結果となった。しかし過去の事態と異なるのは、本格的な交戦は発生しておらず、クリミア半島でウクライナ軍の動きを封じ込めたロシア軍は数日のうちに姿を消し、あとはロシア系住民の「自警団」=民兵が主要地域を掌握するという展開である。
 もっとも完全にロシア軍が撤退したわけではなく、セバストポリの黒海艦隊基地や「自警団」内には相当数の特殊部隊が潜在、潜入していると考えられる。
 さらに、ウクライナ東部とロシアの国境地帯には、大規模なロシア軍地上部隊が集結し、加えて、地中海東部には、重航空巡洋艦(空母)「アドミラル・クズネツフォフ」と重原子力ミサイル巡洋艦(巡洋戦艦)「ピヨトール・ヴェリキー」など強力な地中海作戦連合部隊が展開している。
 これらの艦船は、もともとシリア情勢と国際協力による化学兵器廃棄活動を警護するため派遣されたものであるが、タイミングよくウクライナや欧米に対する牽制の役割も果たすこととなった。

<弱腰の欧米>
 こうしたロシアの軍事的圧力に対し、アメリカやEUは及び腰になっており、NATO内部でも足並みはそろっていない。
 この構図は、先に述べた南オセチア紛争やシリア内戦と同じである。欧米は矢継ぎ早に強い口調でロシアを非難し、経済制裁を準備しているが実効性については疑問符がついている。経済支援についてもデフォルトも現実味を帯びているウクライナ経済の危機的状況に比べて微々たるものに止まっている。
 ドイツは本音のところで経済制裁に慎重であるし、フランスはロシアとの間で「ミストラル」級強襲揚陸艦4隻の売買契約を結んでいる。建造中の1,2番艦はウラジオストックに配備予定であるが、今後、黒海に配備される可能性のある3,4番艦の契約についてキャンセルする動きはない。
 軍事力行使についてはなおさらで、アメリカは空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」を地中海東部に派遣し、黒海にはイージス駆逐艦が入っているが、フランスの原子力空母「シャルル・ド・ゴール」やイタリアの軽空母「カヴール」など主要な艦船は同海域には展開していない。
 黒海と地中海を結ぶダーダルネス海峡については、モントルー条約で空母は通過できないことになっているが、ロシアの空母は「重航空巡洋艦」と呼称しているため黒海への進入が可能であり、欧米にとって不利となっている。
 プーチン政権はこうした欧米の足元を見透かして強硬姿勢に出ているのであるが、決定的な対立を避けるため、クリミア以外のウクライナ領内に侵攻することはないだろう。欧米もそれを前提としながら、今後政治的解決の方向へ進むだろう。
 3月16日には、クリミアで住民投票が行われ、ロシア編入賛成が多数となった。ウクライナ政府や欧米は、これを無効としているが撤回させる有効な手立ては持ち合わせていない。
 今後6月に予定されているソチG8については、G7各国が準備会合をボイコットしたため、流動的な要素が多いが、それまでにロシアの政策の既成事実化が進むものと考えられる。
 
<無為無策の安倍政権>
 このような動きに何も対応できていないのが、安倍政権である。欧米各国の首脳が欠席する中、意気揚々とソチオリンピックの開会式に出席し、日露首脳会談を行ったのもつかの間、足元を掬われる形となった。
 ウクライナ危機勃発の直前にプーチン大統領と会談を行った先進国首脳として、何もしていないというのは、面目丸つぶれであろう。
 安倍総理は盛んにプーチン大統領との人間関係を吹聴しているが、それがこの間の事態打開には何の役にも立っていないどころか、何も言えないことになってしまっており、人間観の底の浅さが満天下にさらけ出された。
 安倍総理はオバマ大統領との初会談時にも「私とはケミストリーが合う」などと独りよがりの感想を述べていたが、その後の「靖国参拝」や従軍慰安婦問題などで日米間は最悪の化学反応を起こしている。
 加えて中国、韓国との関係改善が進展しない中、ロシアカードをつかんだと思ったらジョーカーだったということである。
 こうした外交的行き詰まりを打開しようというのか、安倍政権は3月中旬、モンゴルのウランバートルで横田めぐみさんの両親と孫娘を面会させるという奇策に出た。
 これに関し、安倍総理の直弟子である城内自民党外交部会長は、3月16日フジテレビ系列の報道番組で「拉致問題が進展する可能性は十分ある」と語り、北朝鮮との関係改善を進める意向を示した。
 価値観も何も投げ捨てて彷徨する安倍外交の浅はかさというべきだろう。(大阪O)