ASSERT 441号 (2014年8月23日発行)

【投稿】 破綻する安倍外交
【投稿】 STAP細胞騒動と「災害資本主義」
【書評】 『東京プリズン』
【投稿】 都知事選をめぐって−−統一戦線論(7)
【報告】 ヘイトスピーチを許さない 仲良くしようぜパレード
【日々雑感】 歌わぬ誇り 

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【投稿】 破綻する安倍外交

<空回りする外遊>
 安倍総理は第2次政権発足以来の2年弱で、47か国を訪問し、9月のバングラディシュ、スリランカ両国訪問で、歴代総理では第1位になるという。
 安倍政権は「地球儀を俯瞰する」「価値観を共有する」外交と自画自賛しており、「中国包囲網の形成」と「国連安保理常任理事国入り」を目指していると思われるが、パフォーマンスに終始しているのが現実だ。
 直近のメキシコ、トリニダード・トバゴ、コロンビア,チリ、ブラジルの中南米5カ国歴訪では、具体的な成果と言えるものはほとんどなく、そもそも何を目的に訪問したか不明である。
 メキシコではアステカ文明の遺跡「太陽の神殿」を訪れ、デフレ脱却と経済再生を願ったと報道されたが、普通の観光客とどこが違うのか。
 ブラジルでは、日系人との面談以外目立った動きはなく、サンパウロ市内での訪問団車列の交通事故が最も大きなトピックスとなってしまった。
 安倍訪伯に先立ち、ブラジルにはプーチン大統領、習近平主席などが集まりBRICs首脳会議が開催され、新興国開発銀行の設立が決定されるなど大きなインパクトを与えた。
 後塵を拝した形となった安倍総理は、トヨタ、新日鉄、MGFCなどから70名の財界人を引き連れトップセールスで巻き返しを図った。しかし、ブラジルの最大の貿易相手国は中国であり、自動車や電子機器など日本が得意とする分野でも、欧米や韓国企業が優位に立っており、今回もビッグプロジェクトの成約は無かった。
 また今回の中南米歴訪でのTPP交渉参加国は、メキシコ、チリのみであり、なぜかペルーは訪れなかった。もっともメキシコ、チリでもTPP交渉に係わる重要な論議はなされておらず、総じて空回りに終わっている。

<取り残される安倍政権>
 安倍総理が能天気かつ空虚な旅を続けている間にも、国際情勢は大きく動いている。
 ガザ地区では7月8日のイスラエル侵攻で1400人以上の市民を中心とする犠牲者が出ている。安倍政権は、岸外務副大臣を7月下旬に当事者であるパレスチナ自治政府、イスラエル、調停国のエジプトなどに派遣したが、イスラエル全面支持のアメリカの意向を忖度し、憂慮の表明レベルに止まってる。
 現在、救援物資などは国連機関やNGOなどを通じて送られているが、日本としても、これまでのパレスチナ、中東諸国との関係を踏まえるならば、政府レベルの本格的な支援が求められているが、動きは鈍いものがある。
 イラクでは、8月8日アメリカがスンニ派武装勢力「イスラム国家」への攻撃を開始した。現在のところ介入は空爆による限定的なものであり、軍事的効果以上に、オバマ政権の断固たる姿勢を、共和党やプーチン大統領示す政治的効果に重点が置かれている。
 クルド人武装勢力に対しては、アメリカ、イギリスなどが武器供給などを進めているが、山間部に孤立したヤジド教派などへの人道的支援が急務となっている。
 英米に続きオーストラリアも輸送機による物資投下を始めたが、イラク派兵の実績=イラク安定の責任を持つ関係国にも、今後何らかの行動が求められる可能性が高い。
 しかし、現在のところ安倍政権からの明確なメッセージやアクションの兆しはない。集団的自衛権解禁強行で打撃を受けた安倍政権としては、今後しばらく災害救援以外で、新たに自衛隊を海外に派遣することは困難になるだろう。
 国際社会から求められる人道支援まで難しくなるというのは、自分で自分の手を縛ったものと言えよう。
 ウクライナでの緊張激化に対し、欧米による対露制裁が強化されつつある。
 安倍政権は、及び腰で形式的に制裁強化に付き合った結果、ロシアの報復である農産物の禁輸措置の対象からは外された。
 しかし、ロシア軍は8月12日、国後、択捉島を含むクリル諸島で軍事演習を開始した。安倍総理は13日「到底受け入れることはできない」と批判したものの、静観を決め込む以外の選択肢は持ち得ていないのが実情であろう。
 
<ロシア、北朝鮮への淡い望み>
 こうしたなかで、安倍政権はロシア、北朝鮮に淡い望みを抱いている。拉致被害者、特定失踪者の消息に関する再調査については9月中旬にも最初の結果報告がなされる見込みとなっている。
 今後は、日本と北朝鮮の間で生存者何名かの帰国と、それに応じた制裁緩和が繰り返されることになると考えられるが、このまま順調に推移するとはないだろう。
 現在中韓接近が進んでいるが、両国関係が現在の中朝関係よりも親密化することはない。経済的にはより協力が進むだろうが、政治的には米韓関係が存在する限り「同盟国」的関係に進展するのは困難である。
 つまり、朝鮮半島に於いて韓国は北朝鮮の代替にはならないのであって、今後中朝関係の修復は大いに考えられるのである。
 そうした場合、金正恩政権は安倍政権との約束を反故にすることは厭わないだろう。
 7月15日、安倍総理は参議院予算委員会で「朝鮮半島有事の際、在日米軍は日本政府の承認がなければ出動できない」と答弁した。これは「第2次朝鮮戦争の際、日本は北朝鮮を側面支援することもある」と言っているに等しい。本人の意図は韓国を牽制するためであろうが、これには韓国のみならず、アメリカも驚いたことだろう。
 安倍政権はプーチン大統領の今秋の訪日実現に、一縷の望みを託しているようであるが、その実現はほぼ絶望視されている。
 9月初旬発足予定の安倍改造内閣のオープニングセレモニーたる外交イベントは「プーチン訪日」と自身の訪朝=拉致被害者帰国であったが、両方とも実現は難しくなっている。
 その最大の要因は原則無き外交姿勢であるが、アメリカの意向に逆らえ切れない政権の性格もある。ロシア、北朝鮮にのめり込む安倍政権の姿勢に対してオバマ政権は不快感を抱いている。
 独自外交を推進しようとしてもアメリカの壁に突き当たり挫折するという安倍外交の限界性を如実に表している。

<渋々の方針転換>
 これまでの外交が行き詰るなか、安倍政権に対する国際的圧力はさらに高まっている。
 国連人権規約委員会は7月24日、日本政府に対し、ヘイトスピーチの規制、従軍慰安婦への国家責任に基づく謝罪の実施など、極めて厳しい内容の勧告を行った。
 こうした状況のなか、安倍政権は、ヘイトスピーチに対する法的規制を検討することを明らかにし、中国、韓国との関係改善に動き出ざるを得なくなっている。
 8月9日、ミャンマーで開かれたASEAN外相会議に出席した岸田外務大臣は、韓国の尹外相、中国の王外相と相次いで会談した。
 ただ、これらの会談は安倍政権としては渋々行ったことは明らかで、南シナ海問題にかかわる外相会議緊急声明で中国が名指しされることに最後まで期待をしていたし、今秋開催される北京APECでの日中首脳会談については、安倍政権が「条件は付けずに」という条件にこだわる以上、困難なものがあるだろう。
 韓国に対しても、6月の「河野談話検証」に続き、朝日新聞の「従軍慰安婦報道訂正」と対話の前提条件を次々に覆す事態が進展している。
 さらに8月15日には安倍総理が戦没者慰霊式典で加害責任に触れぬまま、靖国神社に玉串を奉納、新藤総務大臣など数閣僚が参拝するなど、侵略への反省の意を示さない対応が相次いだ。
 しかし、これ以上安倍政権が国際世論に対する抵抗を続ければ、さらなる孤立化は避けられない。
 日本の民主勢力には、国際的な動きと連帯し、平和に向けた国内世論の拡大を進めることが求められている。(大阪O)