ASSERT 442号 (2014年9月27日発行)

【投稿】 暴走加速する安倍政権
【投稿】 「戦後」の価値観をめぐる潮流と「脱成長」の社会像
【投稿】 都知事選をめぐって−−統一戦線論(8)
【コラム】 ひとりごと 人口減少で地方消滅とは?

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【投稿】 暴走加速する安倍政権

<「安倍専制」>
 9月3日、自民党役員人事と内閣改造が行われた。焦点だった自民党幹事長には谷垣禎一前法相、安保担当相は江渡聡徳防衛大臣の兼務となった。
 今回の改造の主目的は石破茂前幹事長を党三役から追い払うことだった。そのため安保担当大臣という「指定席」までしつらえたのであるが、官邸の思うようにはいかなかった。
 石破が固辞するなら安保担当相などいらない、という声が自民党内から出ていたことと、結局防衛相との兼務となったことが、安保担当相の本質を如実に表している。
 改造前は「集団的自衛権は最重要課題なので、安保担当相は安全保障に精通した人材が専任でつくべき」と言いながら、集団的自衛権問題を政争の具としていたことが露呈したのである。
 こうしたお粗末な改造劇を糊塗するため、上辺だけの「女性活用」を前面に押し出し5名の女性大臣を任命した。しかしこれら大臣は「女性」というより、ほとんど「思想」によって選ばれたというべき面々である。
 早速、高市早苗総務大臣、稲田朋美政調会長がハーケンクロイツを掲げるファシスト団体幹部との「記念写真」を暴露され弁明に追われた。さらに山谷拉致担当相も在特会との関係が指摘されている。
 こうした本当の「危険思想」の持ち主が優遇される一方で、集団的自衛権の解禁に疑問を呈した野田聖子前総務会長は追放された。小渕優子経産相は思想は関係なく野田へのあてつけであろう。
 さらに危なさでは、高市、稲田に引けをとらない片山さつきは、石破支持であるため冷遇の憂き目にあっている。
 また第1次安倍政権をして「お友達内閣」たらしめた塩崎泰久元官房長官を、厚生労働大臣に任命するなど、安倍総理の卑しい人間観がストレートに反映した人事であり、安倍専制がより露骨にあらわれた内閣と言えよう。
 しかし見た目の新鮮さから内閣支持率は上昇し、さらに朝日新聞の相次ぐ誤報という「敵失」もあり、原発再稼働、歴史改竄など安倍政権は内外政策における暴走をさらに加速させようとしている。

<IWCでの歴史的敗北>
 国内的には専制を強める安倍政権であるが、国際的にはこれに冷や水を浴びせかける事態が続出している。9月15日から18日までスロベニアで開催された国際捕鯨委員会(IWC)総会では、日本の強い反対にもかかわらず「IWC総会が検討するまで捕獲調査の許可を発給しないよう勧告する決議案」が、賛成35、反対20、棄権5で採択された。
 安倍総理が外遊で訪問した49か国のうち、IWC加盟の反捕鯨国はインド、オーストラリアなど19か国に及ぶが、総会において歴訪の成果は発揮されなかった。(オーストラリアには「鉄の鯨(潜水艦)」建造を持ちかけてるが、本物の鯨ではよい返事は得られなかった)
 それどころか安倍総理が2か月前に訪問したニュージーランドが、今回の決議を提案、さらにその後鳴り物入りで訪問したブラジルは、南大西洋での商業捕鯨を一切禁止する「聖域設置提案」を南米各国と共同して行っているのである。
 この提案も賛成多数となったものの、賛成40、反対18、棄権2で既定の4分の3以上には達せず不採択となったが、安倍総理は何をしに行っていたのかと問われるだろう。
 歴訪で国連常任理事国入り支持を得られたとしても、国際機関の議決を「法的拘束力はない」と言って開き直り、「調査捕鯨」を強行するようでは国連での支持はとうてい得られないだろう。
 安倍総理を支持する勢力からは「IWCなど脱退してしまえ」という威勢のいい声があがっている。安倍総理はこの声にどのように応えるのだろう。
 
<インドへの期待と現実>
 「地球儀外交」「価値観外交」の破綻はそれだけにとどまらない。
 8月30日、訪日したインドのモディ首相に対し、安倍総理は京都で迎えるなど破格の待遇で接し、9月1日、東京での首脳会談では経済協力のほか、飛行艇輸出など軍事協力まで幅広い分野で論議を行った。
 両首相は「日印間での戦略的グローバルシップを一層強固にする」ことで合意し、対中包囲網形成が進展するかに思えた。
 しかし、土壇場で日本が目論んだ「日印2+2」(外務、防衛閣僚会議)設置はインド側の難色で頓挫した。
 それどころか帰国したモディ首相は、中国包囲網とは真逆のスキームである「上海協力機構」への正式加盟を表明し、安倍政権を驚愕させた。
 さらに追い打ちをかけるような事態となったのが、中国の習近平国家主席のインド訪問である。
 9月17日訪印した習主席を、モディ首相は自らの誕生日ということもあって故郷で歓迎、さらにはガンジー旧宅に案内するなど、安倍訪印時以上の厚遇ぶりを示した。
 中印協力はセレモニーレベルに止まらず、日本を脅かす勢いとなっている。日本はインドに対し今後5年で350億ドルの投資を決定し、中国の同200億ドルを上回っているが、中国は今後貿易拡大や高速鉄道導入などでさらなる追加投資が考えられる。
 軍事面でもインドは以前からの旧ソ連、ロシアに加え欧米製の装備を導入しており、価格の安い中国製の兵器を買っても何ら不思議ではない。なにがなんでも日本の飛行艇が必要というわけではないのである。
 安倍政権は、新幹線セールスのため急遽9月22日太田国交相を、インドに派遣するという慌てぶりである。そうした話は本来モディ首相の訪日時に詰めておくべきことであろう。
 さらに、訪印前日にスリランカを訪問した習主席はここでも、約半月前に訪れた安倍総理を凌ぐ歓迎を受けた。
 まさにオセロゲームで、盤上の石を次々とひっくり返されていく如き様相を呈しているのが安倍外交である。
 
<拉致被害者帰らず>
 成果を求め世界を彷徨う安倍総理であるが、期待の対北朝鮮政策でも行き詰りつつある。
 日本政府が認定している拉致被害者17人について、北朝鮮は「5人帰国、8人死亡、4人は入国の記録なし」としており、これを覆すのは当初から困難と見られていた。
 日朝政府間協議では、拉致被害者等の消息についての第1回目の報告を「夏の終わりから秋の初め」に受け取ることが確認されていたが、延期となった。
 政府は9月19日に拉致被害者の家族に対し説明を行ったが、具体的な見通しに関しては何ら説明できなかった。
 翌日、菅官房長官は読売テレビの報道番組で「何が効果的なのか安倍首相も自分もよく知っているので、考えながら交渉していく」と述べ、無為無策ぶりを露呈した。
 北朝鮮としては、日本人遺骨の調査、いわゆる日本人妻の帰国を先行させ、制裁解除を取り付ける思惑と考えられるが、拉致被害者、特定失踪者の相当数の帰国を要求する日本政府の要求とは大きな隔たりがある。
 調査機関の立ち上げなど、細部の調整が済んだのち、形式を整えるための儀式と考えるのが普通であろう。
 その総仕上げとして考えられていた安倍訪朝が、アメリカの意向を忖度した日本の都合で実現が難しくなった以上、北朝鮮も出したくても出せないとなっているのかもしれない。
 大見得を切った安倍政権としては、引っ込みがつかなくなっているのである。

<「対イスラム国有志連合」へ>
 安倍政権が右往左往している間に、国際情勢は大きく転換した。ウクライナでは政権側と親露派との間で停戦が発効し、散発的な戦闘はあるものの東部地域は平穏を取り戻しつつある。
 パレスチナガザ地区に於いてもイスラエルとハマスとの停戦は概ね履行されており、破壊された市街地やインフラの復興が課題となっている。
 こうしたなか急浮上してきたのが「イスラム国」問題である。イラクにおいて伸長した「イスラム国」は支配地域をシリアにも拡大している。
 イスラム国にはスンニ派原理主義者だけでなく、もともと世俗派であったフセイン政権の幹部クラスも多数参加し、支配地域の行政運営を担っているという。
 「イスラム国」はイラク戦争とその後のイラク傀儡政権が生み出した怪物であり、責任はアメリカにある。 
 これに対し、オバマ政権は空爆を開始、イギリス、オーストラリア、フランスも同調することを表明している。
 9月15日にはパリでイスラム国対策国際会議が開かれ、NATO諸国、ロシア、中東など26カ国から外相が参加し、イスラム国は国際社会の脅威との認識で一致した。さらに19日には国連安保理でも外相級会議が開かれ、同様の議長声明を採択した。
 現在のところ日本は、この対イスラム有志連合から外されている。パリの会議に岸田外相は招請されなかったし、戦力の提供は期待されていない。
 しかしイラク戦争時とは違いジプチに前線基地を置き、アラビア海に艦艇を常駐させている状況下、今後安倍政権に対する圧力は強まるだろう。
 北朝鮮とロシア外交で睨まれているアメリカに媚を売り、一連の外交破綻を取り繕うため、イラク再派兵を進める危険性は十分あり、暴走のアクセルを踏まさぬよう警戒を強めていかねばならない。(大阪O)