アサート No.443(2014年10月18日)

【投稿】 都知事選をめぐって−−統一戦線論(9)

▼ 9/26付沖縄タイムス社説は「[混とん県知事選] なんでそうなったのか」と題して、「県知事選をめぐって前例のない政治状況が生まれている。こんな選挙、過去にあっただろうか。民主党県連代表の喜納昌吉氏が知事選への出馬を正式に表明した。仲井真弘多知事、翁長雄志那覇市長、下地幹郎元郵政民営化担当相はすでに立候補を明らかにしており、県内政治に大きな影響力を持つ4氏が知事選に名乗りを上げたことになる。民主党本部は自主投票の方針を決めている。喜納氏を公認しない考えだ。喜納氏が予定通り出馬すれば、党本部と県連の亀裂がいっそう深まるのは避けられない。仲井真、翁長両陣営から熱烈なラブコールを受ける公明党は、この段階になってもまだ最終的な態度を決めていない。なぜ、こういう複雑な状況になってしまったのか。」と、県知事選の混とん状況をあぶりだしている、
 同社説はしかし同時に、安倍政権の姿勢を「菅義偉官房長官は記者会見で、埋め立ての是非は『争点にならない』と語った。沖縄の人々の切実な思いを無視した不遜な発言と言うしかない。」と、安倍政権がそれを否定すれども、真の争点は辺野古移設問題にあることに鋭く切り込む。そしてさらに「有力4氏は、辺野古移設問題について、『推進』『反対』『県民投票』『承認撤回』など、4者4様の公約を掲げている。違いは鮮明だ。」と明らかにした上で、「有権者の中には『誰が知事になっても変わらない』というあきらめにも似た声がある。本当にそうだろうか。」と問題を投げ返し、「変わっていないように見えるが、そうではない。大田昌秀、稲嶺恵一、仲井真弘多ら3知事の対応をつぶさに検証すると、その時々の選挙公約や知事の政策、方針転換などが、日米の取り組みに影響を与え、状況を変えていったことが分かる。知事のアプローチの仕方が変われば状況も変わる。選挙で選ばれた知事の力は決して小さくない。」と来るべき知事選の及ぼす力を見くびってはならないこと、あきらめてはならないことを強調している。
▼ その後、10/10、民主党の枝野幹事長は「喜納氏は党本部の選挙方針(米軍普天間飛行場の辺野古移設を容認する)、基地問題への方針を無視し、党本部への批判を繰り返している」と指摘し「県民を混乱させ、党の信用を失墜させた」と説明し、喜納氏を除名する方針を決め、県知事選には自主投票で臨むことを明らかにしている。喜納氏は除名されても「知事選には当然出る」と出馬する意向である。安倍政権やそれに追随する仲井真陣営は、民主党が分断され、翁長陣営から脱落してかき回してくれることを大いに歓迎し、ほくそ笑んでいることであろう。民主党政権の成立、そして福島原発事故以来、「県民を混乱させ、党の信用を失墜させ」てきたその当の枝野氏が言えたセリフではないが、沖縄県民の民意と全く無縁なこの民主党の混迷ぶりは目を覆うばかりである。
 そしてこの混迷のもう一方の当事者でもある公明党は、自民党から最大限の期待をかけられながらも、公明党沖縄県本部があくまでも米軍普天間基地の辺野古移設に反対の姿勢を崩さず、仲井真陣営に与することができないことが明瞭となり、これまた自主投票に逃げ込もうとしている。公明は普天間移設が争点となった今年1月の名護市長選でも移設推進を掲げた自民推薦の候補を支援せず、自主投票を選択している。
 知事選では2002年以降続いてきた自公協力態勢が今回崩れることは、安倍政権や自民党、仲井真陣営にとって最大の痛手であろう。
 自公協力で臨んだ2013年の参院選比例代表で公明は沖縄県内で約9万票を得票している。「最新の世論調査やマスコミの取材を総合すると、それぞれの得票数は」、翁長氏が30万票余り、仲井真氏は17万票、下地氏は6万票、喜納氏は1万票以下となっている(『週刊金曜日』2013/10/3号)。この予測であれば、たとえ公明が仲井真陣営に寝返っても、辺野古新基地建設反対を掲げる翁長陣営の圧勝である。新基地建設を阻止する闘いと統一戦線の強化は、この圧勝を決定的なものとするかなめといえよう。
▼ 10/9公示、10/26投開票の福島県知事選もいわば一種の混とん状況であるが、沖縄とは違って、ここではもはや自民党は独自候補を擁立できなかったのである。安倍政権の原発再稼働路線は、福島原発災害の惨憺たる状況を前に、受け入れられることなどありえず、全てを争点隠しへと逃げ込む戦略である。
 自民党福島県連側は「県内原発全基廃炉」を主張し、独自の候補者として、鉢村健氏(元日銀福島支店長)の推薦を決定したが、自民党本部側が「鉢村氏では幅広い支持は厳しい」として鉢村氏をおろさせ、民主、社民、公明、維新の各党や県町村会が推す内堀雅雄氏(元副知事)への相乗りを決定。しかし、自民党、政権側の幹部が前面に出れば原発再稼働路線と、自民党福島県連や内堀氏の「県内原発全基廃炉」路線との矛盾は覆いがたく、原発争点回避と福島切り捨て政策を覆い隠すまやかしの復興政策で内堀氏を取り込む選挙戦を展開している。
 一方、この内堀氏に対して、「県内原発全基廃炉」はもちろん、原発再稼働反対をも含め、明確に反原発を前面に掲げる候補は、元岩手県宮古市長の熊坂義裕氏=新党改革・支持=と、元双葉町長の井戸川克隆氏である。告示もまじかに迫った9/24になって、共産党を含む「みんなで新しい県政をつくる会」が、熊坂氏を自主的に支援することを発表し、選挙戦に突入している。「自共対決」論を掲げる共産党が独自候補擁立を断念し、政策協定も行わずに「自主的支援」とする政治姿勢を選択したことは評価できたとしても、それは同時に、沖縄知事選では、共産党をも含めて県内5党・会派が知事選に臨む基本姿勢および組織協定に調印していることからすれば、広範な統一戦線を形成し得なかったことの反映でもあろう。
▼ ネット上で公開されていた「福島県知事選に脱原発候補の統一を願うレター」に寄せられた意見を紹介しよう。

■ 福島県知事選において原発事故を争点としない勢力が野合しているときに、まさか脱原発・被害者救済・脱被曝などを掲げる立候補予定の方々が共同・統一への努力を何もされていないとは思いたくありません。しかし、それについての情報が残念ながら未だに聞こえてこないまま、10月9日の告示日が迫っています。どういう事情があるのかはわかりませんが、どうか最後まで共同・統一への努力をしていただけるよう切望します。原発事故で6歳まで生まれ育った双葉郡富岡町夜の森の故郷を奪われ、脱原発に余生をかけている一老人の心からのお願いです。なにとぞどうぞよろしくお願いします。
■ 佐藤知事と、その後継とされるナンバー2の内堀副知事。この2人はまさに2人3脚で、311以前は住民意向を盾にプルサーマルを認め、その結果として原発事故を一層過酷なものにしました。さらに、311以降はSPEEDI隠しや、被曝との因果関係なしというシナリオありき、そのための意見すり合せの秘密会開催など県民不在の健康管理調査を主導して来たのが、佐藤知事と、実質的な政策決定者としての内堀副知事であったことは、衆目一致する所です。仮に、内堀氏当選ということになれば、彼自身の勝利というよりも、福島をなかったことにしようと画策してきた安倍自民党の高笑い?になってしまうのです。多事争論はあってもいい。だが、負けてはいけない闘いを目前にして、ほぼ同じ理想のベクトルを持つ勢力がしのぎを削り、互いの勢力を殺ぎ、愚だけは何としても避けなくてはならない。我々福島人もまた、有力者のあの人が言ったから?などという、貴方任せの思考停止から、今度こそ自由にならなくてはならない。
■ 東京都知事選は反原発派にとって手痛い経験でした。反原発派の並立で一番得をしたのは誰か?火を見るより明らかです。勝たなければ意味がないというのは一面の真理です。都知事選の結果、残ったものは選挙の敗北と両派の間のしこりでした。ますます勝者を利することになります。せめて福島ではそのようにならないことを強く願います。

 付け焼刃的な対処ではなく、このような痛切な声が生かされるような統一戦線の形成こそが、切実な課題である。
(生駒 敬) 

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