アサート No.443(2014年10月18日)

【本の紹介】 「21世紀の資本」トケ・ピケティ著(みすず書房) 

 この本は、まだ日本語版は出版されていない。フランス人経済学者であるトケ・ピケティ氏の著作であり、今年4月に英語版が出版されると、40万部を売り上げると言うベストセラーとなった。フランス・ヨーロッパではなく、アメリカ国内の売り上げが75%という。本書が展開している「資本主義が格差を拡大している」という内容に、機敏に反応したのであろう。
 7月26日号の「週刊東洋経済」が、「『21世紀の資本論』が問う中間層への警告」という特集を組んでいる。週刊エコノミスト誌も大きく取り上げていた。
 ピケティ氏は、43歳のフランス人。フランス社会党のブレーンとしても活躍し、一貫してフランス社会の不平等について研究してきたという。
 本書のポイントは、資本収益率が常に経済成長率を上回っている、という事実を、フランス・イギリス・アメリカ・日本など20か国以上の統計を基に、富と所得の変遷を検証して、この事実を証明した事にある。資本収益率は4-5%に収まり、経済成長率は、平均して1-2%の範囲になった。つまり、資本・資本を持つ富裕層は、資産を雪だるま式に増やし、対して勤労者への配分は、それを大きく下回る。よって、富めるものは更に富み、持たざるものとの格差は縮まることはない。
 さらに、この関係が21世紀を通じてさらに強まることを予測している。「富と不平等は、21世紀を通じてさらに拡大していく」そして、中間層は消滅していくという結論を導き出している。そして、こうした止めどない格差の拡大を止めるために、所得と資産への累進課税の強化をすべきと提言しているのだ。
 グローバル資本主義の進行は、富める国を益々富ませると共に、アメリカや日本国内では、経済格差を拡大させてきた。資本主義経済の根底にあるこうした構造を、実証的に解明し、その解決策を提言しているからこそ「21世紀の資本(論)」と命名されたのだろう。
 安倍政権が、歴代自民党内閣が行わなかった財界への「賃上げ要請」は、マヌーバーとは言え、低賃金や賃金格差の固定化に何らかの対応をしなければ、「夢も希望」もない社会になりつつあることへの「恐怖」があったのではないか。
 格差社会が益々固定化・拡大していことは、特に若者にしわ寄せされていく。そこからの脱出策として、ドロップアウトや反社会的立場への選択が増加する可能性は高い。中東の戦場への参加を選ぶ大学生も出てきている要因の一つは、まさにこうした夢も希望もない格差社会そのものなのだろう。
 資本が主人公の社会ではなく、人が主人公の社会へと変えていくためにも、本書が問題提起している富めるものと富まざるものへの両極化社会を根本的に変えていくことが必要であろう。本書の内容に対しては、賛否両論がある。むしろ大いに議論すべきである。日本では、12月初旬にみすず書房から出版が予定されている。私もしっかりと読み込んでみたいと思っている。(2014-10-14佐野) 

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