ASSERT 445号 (2014年12月27日発行)

【投稿】 安倍政権の「勝利」揺るがす潮流を
【投稿】 国際金融資本の手の内で踊った「アベノミクス総選挙」
【翻訳】  日本はもっとドイツ的であるべきだ。
【投稿】 14衆院解散・総選挙をめぐって−−統一戦線論(11)
【コラム】 ひとりごと ---総選挙後の雑感---

トップページに戻る

【投稿】 安倍政権の「勝利」揺るがす潮流を

<異常な執念>
 第47回衆議院総選挙は、自公与党が定数の3分の2を超える326議席を獲得し「勝利」した。これはアベノミクスなどに対する批判票の受け皿=政策、候補者を、民主党などが「奇襲攻撃」に翻弄され満足に構築できなかったためである。
 こうした構図の中では投票機運は高まらず、与党への支持も確固たるものとはならなかったことが、投票率と議席数に反映された。
 マスコミ各社は押しなべて自民党単独で300議席を超えると報道していたが、実際は291議席と公示前から4議席を減らし、その分公明党が議席を増やし35議席とした。
 一方、民主党などその他の野党はほぼ予想通りとなったが、共産党の大幅増と、次世代の党の激減が際立った対照性を見せた。維新の党は30議席前後に低迷すると予想されていたが、41議席と1減にとどまった。
 自民党が予想ほどに伸びなかった要因として、沖縄の4選挙区で反基地統一候補、および大阪の5選挙区で維新に競り負けたのが響いたと言われているが、それは織り込み済みだっただろう。
 とくに大阪については、選挙終盤に安倍総理が来阪し「激戦区」で街頭に立ったが、対立候補である維新の批判は一切行わないという奇妙な応援となった。本当は橋下と握手をしたかったのだろう。
 これとは打って変わって、民主党と接戦となっている選挙区では、怨念の炎を燃えたぎらせるかのようなファナティックな言動で臨んだ。
 とりわけ、海江田代表、菅元総理、枝野幹事長、馬淵国対委員長ら民主党大物議員の落選を目論み、執拗な攻撃を続けた。
 しかし、安倍総理の異常な執念にもかかわらず、議席を奪うことができたのは海江田代表のみだった。
 安倍総理の批判者に対する偏執的な対応は、選挙期間中に続き開票時にも、望んだ勝利=「民主減、維新、次世代増」とは違う結果となった苛立ちを露わにしたものとなった。
 日本テレビの選挙特番で、キャスターが女性活用、賃上げ、中小企業対策など成果が表れていない分野での対応を質問したところ、安倍総理はイヤホーンを外して、自説を一方的にまくしたてるという異常な行動に出た。
 今回の総選挙で自民党は選挙報道への露骨な干渉を行ってきたが、総理自らがその先頭に立ったと言えよう。

<淘汰進んだ野党>
 その時大阪では維新の橋下共同代表が、安倍総理を超える醜態をさらけ出していた。
 議席数が流動的な中、記者会見に不機嫌な表情で臨んだ橋下は、質問に答えず「これはテレビで流れているのか」と確認したうえ「マスコミは3月の大阪市長選を低投票率で意味がないと報道したのだから、この選挙も意味がないと報道しろ」と意味不明な逆切れを起こした。
 同じ低投票率でも52,66%と23,59%では比べものにならないだろう。
 安倍にせよ橋下にせよ、自分の感情をコントロールできない人間は、政治指導者としては危険極まりない存在である。
 さらに党全体が危険な存在と言えた次世代の党は、公示前の20議席から2議席に激減し壊滅状態となった。
 この極右政党は選挙期間中、「タブーブタ」なる不気味なキャラクターを使い、ネット上でヘイトスピーチまがいの扇動を繰り広げ、自民党の反動性を覆い隠す「捨石」としての役割を果たした。
 反対に共産党は与党批判票の受け皿となり、公示前の8議席から21議席へと「大躍進」を果たした。
 しかし、唯一の小選挙区での議席となった沖縄1区は、選挙協力の賜物である。こうした要因を勘違いし、議席増を党路線の正しさの証明とするようでは、今後の建設的な役割は期待できないであろう。
 生活の党は5議席から2議席へと半減以下となり、社民党と並んだ。両党とも小沢代表と比例を除く小選挙区1議席はともに沖縄の議席であり、自力では獲得できなかったことを考えると、消滅したも同然となった。
 みんなの党は選挙前に自滅し、野党として残ったのは民主、維新、共産となった。「第3極」という美名のもと、事実上の与党など有象無象が乱立した野党は淘汰が進んだ。これは今次選挙の最大の成果であっただろう。

<民主党の責任>
 民主党は海江田代表が小選挙区は言うに及ばず、保険を掛けたはずの比例区でも落選するという惨憺たる事態となった。しかしながら公示前の62議席から73議席へと増加、維新を引き離し野党第1党の座は確保した。
 それでも伸び悩んだ要因は無節操な「野党共闘・選挙協力」にある。とりわけ政策的乖離が甚だしい維新との候補者調整は自らの首を絞めたも同然であった。
 準備不足を「野党共闘」という野合で糊塗しようとする戦略は、失敗したのであり、多くの選挙区で選択肢を提示できなかった責任は大きい。
 「野党共闘」の現場は、個別の選挙区事情が優先され政策は無きにひとしい状況となった。沖縄1区では下地候補が維新公認で立候補し、知事選に続き統一戦線の破壊者として登場したことで、維新の本質を如実に示した。
 維新の牙城で、都構想を巡りねじれ現象が惹起している大阪では、19選挙区中5選挙区でしか候補を立てられなかった。
 この惨状は候補者調整以前の問題で「ごみ箱をひっくり返しても候補者が出てこなかった」のが実際ではないか。
 小選挙区での擁立見送りは、結果として比例票の上積みにつながらず、近畿ブロック内では大票田の大阪が足を引っ張る形となり、共産党の後塵を拝することとなった。「案山子でもいいから立候補させればよかった」ということであろう。
 民主党としては「橋下チルドレン」を標的とした「維新主要打撃」で臨むべきだったのではないか。
 政策的に水と油の政党が協力など無理筋であるのに、党内でイニシアが発揮できなかった海江田は、落選以前に代表失格だったと言わざるを得ない。
 年明けの1月18日に選出される予定の次期代表の責任は重いものとなるが、今回の「野党共闘」の失敗を真摯に総括すべきであろう。

<認められない「白紙委任」>
 今回の選挙で与党へは消極的な支持しか集まらなかったにもかかわらず、安倍政権は白紙委任を得たかのようにふるまっている。
 安倍政権は12月17日、「子育て給付金」の来年度支給中止を決定した。政府は消費増税延期に伴う措置と説明しているが、それなら解散時に明言すべきであろう。
 消費税に関しては与党、とりわけ公明党の目玉公約であった軽減税率は、対象品目も固まらない中、再増税時に8%と相対的な軽減で幻惑しようとしている。
 また介護報酬の来年度からの引き下げも強行されようとしており、選挙終了を待って堰を切ったかのような負担増が押し寄せている。
 さらに、選挙翌日の記者会見で安倍総理は「経済最優先」を強調しつつ、「憲法改正にむけて努力したい」と本音をさらけ出した。
 原発についても「依存度を減らしていく方針に変わりはない」などと言いながら、17日には原子力規制委員会が高浜原発3,4号機の安全審査を「合格」とし、経済産業省も老朽化した原発の立て替えを検討することを明らかにするなど、逆方向の見切り発車が進もうとしている。
 しかし、安倍政権の反動的政策に対する防壁が高くなったのも事実である。
 与党は3分の2を超える議席数を獲得したが、国家主義的改憲勢力は後退した。次世代は壊滅し、維新は現状維持であるが、その中には石原慎太郎が「護憲勢力」と忌み嫌い、旧維新分裂のきっかけとなった旧結の党出身者が存在している。
 集団的自衛権関連法案について政府は、行使できる範囲を日本周辺に限定する方向となりつつある。さらに日米防衛協力の指針(新ガイドライン)改訂も来春以降への先送りが日米間で合意された。
 辺野古新基地建設も知事選に続く総選挙での自民敗北で、ますます困難となりつつある。
 安倍総理は戦後70年の「安倍談話」に意欲を見せているが、歴史修整を強行しようとすれば、中国、韓国のみならずアメリカなど「友好国」からも厳しい批判にさらされることは確実である。
 安倍政権は数の上では安定していても、実態は必ずしもそうではない。
 民主党を中心とする野党は、政界再編を目的とするのではなく、安倍政権に批判的な様々な動きと柔軟かつ丁寧に連携し、新たな政治勢力の構築に努め、当面する統一自治体選挙への展望を切り開かなければならない。(大阪O)