ASSERT 446号 (2015年1月24日発行)

【投稿】 戦後70年を平和の年に
               −軍拡と歴史修整に歯止めを−
【投稿】 ドル―IMF−世銀体制の没落か「水晶の夜」の再現か
【投稿】 15年1月・佐賀県知事選をめぐって−−統一戦線論(12)
【投稿】 私の闘病(難病サルコイドーシス等)から得た実践的教訓

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【投稿】 戦後70年を平和の年に
               −軍拡と歴史修整に歯止めを−


<軍拡突出した15年度予算>
 政府は1月14日、一般会計で総額96兆3420億円の来年度予案を決定した。歳入のうち税収は、54兆5250億円と前年度比9%の高い伸びを示した。
 これはアベノミクスで潤った大資本からの税収であり、本来社会保障費や文教費に投入すべきものである。
 しかし、文教費はマイナス1,3%、社会保障費は介護報酬を2,27%減とするなど抑圧する一方、軍事費は2%増と過去最大の4兆9801億円に増額された。
 さらに、今年度補正予算での先取り分約2千億円を合わせると、軍事費は実質5兆を突破する。
 軍事費の内訳は、イージス艦、F35など最新兵器やオスプレイ、水陸両用装甲車という「島嶼防衛」用の装備、さらには南西諸島への部隊配備など、あからさまな対中国シフトとなっている。
 昨年11月の「日中首脳会談」に至るなかで「合意文書」作成や「笑顔無き対面」など、「煮え湯」を飲まされた安倍総理は中国に対する敵愾心を一層激しくしており、その意向を色濃く反映したものとなっている。
 安倍内閣の閣僚にも総理の情念が憑依しているようである。
 中谷防衛大臣は、1月5日、防衛省での「年頭の辞」で東シナ海近辺での中国軍の活動を挙げ「中国軍が不測の事態を招きかねない危険な行為を繰り返している」と批判した。
 また中谷大臣は11日、中国軍に占領された離島の奪還を想定した、陸自第一空挺団の「降下始め」に参加した。
 中谷大臣は昔取った杵柄の訓練塔からの降下を披露し、「リーダーシップを持って、率先垂範でやろうという意気込みで飛んでみた」と一人悦に入っていたが、有事の際はぜひ先頭で突撃すべきであろう。
 さらに「産経新聞」によれば、岸田外務大臣は1月17日、訪問先のインドで中国との領有権紛争が継続しているアルナチャル・プラデシュ州について「インド領土と認識している」と明らかにしたという。
 こうした挑発的言辞に中国は「中国の脅威を誇張している」と反発し「首脳会談時の合意文書の順守」を求めている。

<覇権拡大狙う外遊>
 主要閣僚が総理の分身の様に妄言を呈するなか、安倍本人は1月16日、エジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナをめぐる中東歴訪に出発した。
 翌17日は阪神淡路大震災20年にあたり、神戸など被災地では慰霊行事などが挙行されるにもかかわらず、これを欠席しての外遊である。いくら防災、東日本大震災からの復興を唱えても、まったくの上辺だけであることが露呈したと言えよう。
 エジプトに到着した安倍はギザのピラミッドなどを見物したのち、カイロ市内で演説、「中東の安定に貢献するため」25億ドル、約2900億円におよぶ経済支援を、中東地域に実施すると大見得を切った。
 その内容は、難民支援やインフラ整備など非軍事分野とされている。しかし今回の援助でもエジプトへの円借款430億円には、エジプト空軍も使用するカイロ国際空港の拡張事業が含まれている。
 日本政府はODAに関し、当該国軍への支援を可能とするよう、その大綱を11年半ぶりに改定する方針であるが、その目論見はすでに実質化していると言える。
 安倍は「積極的平和主義」の名のもと、先述のような対中軍拡を強行し、東アジアでの緊張を激化させているが、アフリカ大陸への影響力拡大も、一歩先を行く中国を牽制し、進めようとしている。
 2013年のクーデター後、14年の大統領選挙で成立した、事実上の軍事政権であるシシ政権に、人権問題については注文を付けずに大規模支援を約束し、訪日を要請したのは、その一環である。
 安倍は「イスラム国」を引合いにだし「反テロ」「中東の安定」を訴えたが、パリでのテロに対する抗議行動に各国首脳が参加する中、ゴルフに興じていた人間の訴えは虚しいものがある。
 今回の外遊もこれまでのものと同様、自己満足と魂胆の見え透いたものとなった。
 
<沖縄への差別、冷遇>
 安倍が外遊で大盤振る舞いを繰り広げているのとは対照的に、この間の沖縄への冷遇は常軌を逸するものであった。
 昨年末、上京した翁長雄志知事を、安倍政権は「官邸出禁」という屈辱的対応で迎えたうえ、沖縄関連予算の減額を示唆した。
 果たせるかな15年度予算で沖縄振興関連予算は、14年度から約160億円削減され約3300億円となった。逆に、辺野古新基地建設関連経費は倍増の約1700億円となった。
 菅官房長官や政府首脳は「13年度予算で38億円余っている。きちんと精査した結果だ」と開き直っているが、そうした予算執行状況を作ったのは仲井真県政であり、責任転嫁を超えたチンピラの言いがかりに等しい。
 こうしたなか、1月15日辺野古現地では基地建設に向けた準備作業が強行された。これに反対する運動も高揚してきているが、権力はさらなる弾圧強化で臨み、逮捕者、負傷者が続出している。
 この様な安倍政権の沖縄に対する対応は、宗主国が属国、植民地に行う仕打ちというものである。
 
<表現の自由擁護せず>
 安倍政権に批判的な人々に対する抑圧は政治レベルに止まらない。
 爆笑問題の政治家風刺ネタはNHKの「事前検閲」で禁止となった。籾井会長は「政治家ネタはよくない」とこの措置を追認した。
 「紅白歌合戦」でのサザン・オールスターズのパフォーマンスは、ライブであったため放映された。虚を突かれた形の籾井は「ピースとハイライト」について「歌詞の細かいところまで承知していない」とうろたえたが、放送直後から右翼、レイシストなどからの脅迫が相次ぎ、桑田佳祐は謝罪に追い込まれた。
 桑田は年末のライブでも、「総選挙なんか無茶」と批判したが、来場していた安倍は、恥をかかされたと思ったのだろう。
 ヘイトスピーチやヘイト本に関しては、野放しにしているにも関わらず、政権批判に関しては極めてナーバスになっているのが現在の日本の権力者である。
 両事件とも、直接政権幹部は言及していないが、政権の意向を忖度しての行動であったことは想像に難くない。
 これは沖縄への子供じみた対応と同様、日頃、安倍政権が批判する中国や北朝鮮の権力と同じメンタリティというべきである。
 安倍はパリのテロに関し「言論の自由、報道の自由に対するテロは許さない」などと表明しているが、まさに天に唾するというものである。

<地方の反発に動揺>
 これらの事象は、与党で12月の総選挙で絶対安定多数を獲得したものの、決して政権は安定していないことへの不安の表れである。
 1月11日の佐賀県知事選挙では、自公推薦の樋渡候補が県農協連などの支持を受けた山口候補に敗れた。
 与党候補の敗因は強引な農協改革への批判だけではない。古川前知事に玄海原発再稼働と佐賀空港への陸自オスプレイ配備を容認させた直後に、衆議院に転出させ、後釜に樋渡武雄市長を据えるという、地方自治を無視した官邸の手法に対する反発が大きい。
 政権の都合しか考えていないこうしたやり方は、「大名は鉢植え」と評された徳川幕府の政策を彷彿とさせるものがある。
 安倍政権はこの間滋賀、沖縄、佐賀、さらには相乗りに追い込まれた福島を含め、県知事選挙では連敗を重ねている。
 「地方創生」を内閣の最重要課題としているものの、それは政権に協力的な自治体を金の力で作るものでしかないことは、見透かされているのである。
 
<重要さ増す自治体選挙>
 政権基盤の動揺を糊塗するため、政策、政治手法はますます硬直化してきている。異を唱える者への排除や報復はさらに強まるだろう。
 この様な傾向は周囲にいるものも不安に陥れている。
 アメリカの議会調査局は、先日公表した日米関係に関する報告書の中で「安倍政権は周辺諸国との関係を悪化させ、アメリカの国益を棄損した可能性がある」と指摘した。さらに同報告では「安倍総理は過去の侵略を否定する歴史修正主義的視点」を持つと、危惧を露わにし、戦後70年に際しどのような発言をするか、世界が注目している、と「戦後70年安倍談話」に釘を刺した。
 「安倍談話」を巡って官邸からは「『村山談話』」を全体として継承する」=「侵略への反省など具体的な部分は変更する」との観測気球が挙げられている。
 このような危険な動きに対しはすでに中国、韓国から厳しい牽制が投じられているが、アメリカに加え天皇からも懸念の声が上っている。
 天皇は新年のあいさつで「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び・・・」と極めて異例な言及を行った。
 安倍政権は今後、有識者会議を立ち上げ内容を検討していくとしているが、御用学者の集まりでは歴史の批判に耐えうるものができるとは考えられない。
 毎日新聞は1月14日「安倍総理が5月連休に真珠湾訪問を検討」と報じた。菅官房長官は即座にこれを否定したが、強まる批判、とりわけアメリカからのそれを和らげるための方策であろうし、動揺の表れである。
 戦後70年を平和の年としていくため当面する統一自治体選挙では、民主勢力の糾合、前進を実現しなければならない。(大阪O)