ASSERT 449号 (2015年4月25日発行)

【投稿】 アメリカの衰退と孤立する安倍政権
【投稿】 ブレトンウッズ体制に対抗するアジアインフラ投資銀行
【投稿】 統一地方選をめぐって−−統一戦線論(15)
【訳出】 古賀氏の追い出しの意図はその目的を果たさないかも知れない
【コラム】 ひとりごと--西堺警察署「自白強要」と「権力犯罪」

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【投稿】 アメリカの衰退と孤立する安倍政権

<中国の影響力拡大>
 安倍政権はアメリカの覇権を前提として、新たな安全保障法制整備を目論んでいる。このうち集団的自衛権解禁の論拠の一つとして、紛争地から邦人を輸送する米艦護衛を挙げている。
 しかし先日、混迷を深めるイエメンでこの想定に重大な疑義が生じる事態が発生した。4月2日、アメリカ国務省はイエメン在住アメリカ市民に対し、同国の空港のほとんどが戦闘激化により使用不能となったので、外国艦船に便乗して退去することを勧告した。
 イエメン近海には、ペルシャ湾に対「イスラム国」作戦中の、アメリカ、フランスの原子力空母部隊、ソマリア沖に海賊対策、さらにテロ対策に従事している多国籍艦隊が展開している。
 フランス、ロシア、韓国、インドなどは自国市民保護のため、艦艇を派遣したが、アメリカは、空母に随伴している駆逐艦などを救出活動に派遣することはなかった。アメリカは早期にイエメンから大使館員や軍部隊を撤収させ、「フーシ」を攻撃するサウジアラビアなどへの軍事的支援を継続している。
 しかし民間人保護に関しては他国任せとなっており、この地域での部隊の運用に余裕がないことを物語っている。
 これと対照的な動きを見せたのが中国である。中国はいち早く3月下旬からイエメンに艦隊を派遣、港湾に特殊部隊を配置したうえ、自国民のみならず多数の外国人を収容し、ジプチなどに移送している。
 4月7日には補給艦「微山」が日本人を乗せてオマーンに入港したことが明らかとなった。
 この想定外の事態に菅官房長官も中国に対し渋々「謝意」を表さざるを得なかった。安倍政権が思い描く朝鮮半島有事での主役はアメリカであるが、万が一南北武力衝突が惹起した場合、民間人保護に重要な役割を果たすのは中国、ロシアであろう。
 中国を巡るこの間最大の想定外の事態は、AIIB(アジアインフラ投資銀行)を巡る動きである。同銀行への創設時加盟申請は57か国に及んでいる。開発途上国、新興国は言うに及ばず、G20、G7加盟国からも加盟申請が相次いだ。
 アジア、オセアニアからは韓国、インド、オーストラリアに加え、中国とは南シナ海を巡る領土問題で激しく対立しているはずのフィリピン、ベトナムも加盟する。
 安倍政権の「価値観外交」がいかに無価値であったかを如実に物語っている。安倍は官邸で状況報告を受け「聞いていた話と違うではないか」と官僚に当り散らしたという。己の無知蒙昧さを恥じるべきであろう。こうした一連の出来事は、国際社会におけるアメリカの地位低下と中国の影響力拡大を示すものである。

<アメリカ世界戦略の実態>
 この間アメリカは中国の軍拡、海洋進出に関し盛んに警鐘を鳴らしている。しかしそれらはリップサービスに止まり、1996年台湾総統選挙に係わり、台湾海峡に空母部隊を派遣したような実態を伴うものとはなっていない。
 4月1日には岩国基地から嘉手納を経由し、シンガポールに向かっていた海兵隊の戦闘機2機が台南空港に「緊急着陸」した。武装した米軍機の台湾着陸は35年ぶりであり、これは意図的なものとも考えられているが、96年の空母2隻とは比べものにならない。
 中国はこの「台湾海峡危機」以降、アメリカ軍のプレゼンスを排除する「接近阻止戦略」に基づき海軍力の増強を進めており、状況は大きく変わっている。南シナ海に空母部隊を展開させるのはリスクが大きすぎる。
 それどころかアメリカでは、政権内からも「中国に近すぎる沖縄などに部隊を配備しておくのは危険である」という主張が唱えられている。
 アメリカの対中軍事戦略としては、従来の前方展開戦略を改め、日本本土からグアムに至るライン以東からの長距離攻撃を軸とする「エアシーバトル戦略」が主軸になってきている。
 ワームス国防次官は、南シナ海や東シナ海での中国の動きに警戒を示したうえで「沖縄に集中している兵力のハワイ、グアムや日本本土、オーストラリアへの分散を進めている」と述べている。
 またカーター国防長官は訪日を前にした4月6日の講演で、「中国がアメリカをアジアから排除するとか、この地域でのアメリカの経済的機会が中国により奪われるとの主張があるが、そうした見解には与しない」旨を明らかにしている。
 オバマ政権の唱えるリバランス政策とは、今後経済的発展が見込まれるアジア地域でのTPPに基づく権益の確保が第1義であり、中国と本気で軍事的に対峙しようという考えではない。
 だからこそ「危険な」最前線から撤退するのであり「エアシーバトル戦略」は、旧日本軍の大本営発表における「転進」と同様であろう。
 世界的に見てもオバマ政権の基本政策は「緊張回避」である。中東地域からの地上部隊の撤収、キューバとの関係正常化、イランとの核開発問題合意などを「切れ目なく」推進している。
 一方でアメリカ軍部としては、存在力と予算を確保しなければならない。中東地域における限定的な空爆だけでは、多数の原子力潜水艦や空母、戦略爆撃機を維持する理由にはならない。
 そこで中国との正面衝突は避けつつ、適当な緊張状態は維持していくことが基本となっている。「エアシーバトル戦略」はそのようにも利用され、海軍、空軍の権益を擁護している。
 陸軍はイラク戦争以降その価値は低下し、第2次大戦後最少まで縮小されようとしている。しかしウクライナ危機が僥倖となった。この間アメリカ陸軍はロシアと国境を接する東欧諸国を縦断する形で演習を実施し、存在意義をアピールしている。 ただオバマ政権は、ウクライナには訓練部隊の派遣に止め、同国への重火器類の供与にも慎重であり、危機回避に基づくコントロールに腐心している。

<的外れな安倍軍拡
 安倍政権は、このようなアメリカの思惑を一知半解的に捉え、アジアから世界へ緊張を拡大しているが、核心は対中軍拡と東シナ海での武力行使である。
 そしてその要となるのがアメリカ海兵隊と考えているようである。実はアメリカ3軍が巧妙に存在意義を演出しているのに対し海兵隊は宙に浮いている。今後予想される中東地域での作戦でも海兵隊の出番はなく、投入されるのは「Navy SEALs」などの特殊部隊となる。
「エアシーバトル戦略」でも沖縄駐留海兵隊は撤収、縮小の対象である。この海兵隊の最大の援軍が安倍政権である。海兵隊が「中国軍に占領された尖閣諸島」に上陸するかのような幻想をふりまき、沖縄居座りを継続しようとしている。このおかげで海兵隊は「日本政府が駐留を望んでいる」とアピールできる。
 この様な「対中日米共同作戦」を推進するため、「見返り」として世界的規模での日米共同作戦を可能にする、新たな安全保障法制整備を強行しようとしている。これまでに与党協議会では、現行の周辺事態法から周辺概念を撤廃したうえ「重要影響事態法」として、地理的制約なしでのアメリカ軍への後方支援を可能としようとしている。
 集団的自衛権の根拠として「武力攻撃事態法」に「存立危機事態」が規定される。この発動要件として「我が国の存立を全うし、国民を守るために他の適当な手段がない」との文言が、対処基本方針に記載され、これが歯止めとなると言われている。
しかしこのような抽象的な表現では、時の政権の判断でどのようにでも解釈できるものである。「敵」の投入戦力の評価など、具体的な数値基準がなければ無意味であろう。
 自衛隊が集団的自衛権を行使する地域として、中東とりわけホルムズ海峡での機雷掃海が考えられている。しかし、イランの核開発問題が包括合意に向かう中で、アメリカも要請してない作戦を吹聴するのは常軌を逸している。
 同海域で機雷封鎖があるとすれば引き金はイスラエルの暴発であろう。当のアメリカさえ距離を置いているネタニヤフ首相に、のこのこと会いに行き、中東地域の混迷に油を注いだ安倍が、機雷掃海などというのは「マッチポンプ」以外の何物でもないだろう。
 安倍政権がこのまま新たな安保法制に基づく軍拡と緊張激化政策を続ければ、中東地域はもとよりアジアでもアメリカの戦略と齟齬をきたすだろう。
 アメリカのアジアに於ける最大の懸念事項は、安倍の歴史修正主義と強権的政治姿勢である。4月17日安倍は翁長沖縄県知事と初めての会談を持った。訪米前に「沖縄と話し合いはしています」との体裁を整えたかったのだろうが、翁長知事は「辺野古移設は無理という沖縄の民意をオバマ大統領に伝えてほしい」と要望し安倍を慌てさせた。
 予定されるアメリカ議会での演説は、関係国に配慮せざるを得ないだろうが、戦後70年談話は、官邸のなすがままにすれば「新たな宣戦布告」になりかねない。安倍政権の動きに対し国内外での憂慮と警戒の声は高まっている。天皇も年頭あいさつに続き、パラオ訪問に先立つ行事で安倍を前に「悲しい歴史があったことを忘れてはならない」と発言した(※)。
 これに対し政府、自民党は言論抑圧、運動弾圧で臨もうとしている。4月5日沖縄を訪問した菅官房長官は翁長知事、県民の厳しい追及に「今後粛々は言わない」と述べた。しかし高浜原発再稼働差し止めに関し記者会見で「政府の原発政策は粛々と進める」と発言、国会で「粛々」「我が軍」と発言した安倍と相まって政権は全く反省していないことが露呈した。
 こうした状況の中、今回の統一自治体選挙では、府県議会で共産党が80議席から111議席に増加したが、総体的に平和勢力の力不足が明らかとなった。地域からの運動の再構築が求められている。(大阪O)