ASSERT 450号 (2015年5月23日発行)

【投稿】 戦争法案を廃案に〜求められる平和勢力の連帯〜
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【投稿】 戦争法案を廃案に〜求められる平和勢力の連帯〜

<法案成立目論む安倍政権>
 安倍政権は5月14日の臨時閣議で、集団的自衛権の解禁などを核とする「武力攻撃事態法改正案」「重要影響事態法案」「自衛隊法改正案」等日本の交戦権に係わる10法案からなる「平和安全法制整備法」と、PKO活動など海外での武力行使に係わる「国際平和支援法」を決定した。これらの法案は15日、国会に提出され自公与党は夏までの成立を目指すことを確認した。
 これら法案が成立すれば、個別自衛権に基づく専守防衛政策は改廃となり、「憲法9条=戦争の放棄」は事実上放棄される。これにより政権は海外における武力行使についてフリーハンドを得ることとなる。
 さらに、アメリカからの軍事行動への参加要請に対し断る理由がなくなるため、自衛隊が海外で他国や武装勢力などと交戦する危険性は格段に高まることとなる。
 安倍首相は14日夕刻、首相官邸で記者会見を開き「国民に対する説明」を行った。安倍は冒頭「北朝鮮の弾道ミサイル」や「国籍不明機の飛行増加」を例示し危機を煽ったうえ、日米同盟により抑止力は高まり日本が侵攻される可能性は低減する、などという本末転倒の詭弁を並べ立て、戦争法案成立の合理化を目論んだ。
 北朝鮮の弾道ミサイルに関しては、日朝協議の進展による安定的な関係構築が、脅威を除去する最善の方法であろう。
 しかし日本人拉致問題に関する報告内容が、安倍政権の意にそぐわないことを察知した官邸は、朝鮮総聯の本部ビルからの放逐が失敗すると、次は「松茸の密輸」を口実に国策捜査を強行し、北朝鮮を挑発している。
 安倍政権は拉致被害者の帰国が絶望的になった現在、日朝協議の破壊に躍起になっており、そのすべての責任を北朝鮮に負わせようとしているのである。
 中国の偵察行動の背景には、日本の対中国にシフトした急激な軍拡がある。安倍は4月22,23日の「アジア・アフリカ会議」(バンドン会議)で空虚な「反省」を述べ、習近平と偽りの握手を演出し、大事の前の小事を済ませたかのようにそそくさと遣米に出発した。

<存在しない「抑止力」>
 そして、4月29日に上下両院合同議会で自己陶酔的な演説を垂れ流し、外交辞令を勘違いしたのか、翌日日本テレビのインタビューに答え、日米新ガイドラインの制定は北朝鮮、中国の脅威に対抗するため、とオバマも口にしてないことを明言した。
 自ら東アジアの緊張を激化させる行動をとりながら、中国、北朝鮮がその原因であるかのように強弁し、さらなる軍拡の口実としているのが安倍政権の手口である。
「日米同盟強化による抑止力向上」も詭弁である。国家間の紛争防止は当事国間、さらには多国間、国家連合による外交交渉によるところが大きい。
 それが破綻した場合「抑止力」の有無などは関係ない。日露戦争、太平洋戦争は交渉の行き詰まりで日本が先制攻撃をかけたことで始まった。当時の帝政ロシア、アメリカの強大な軍備は抑止力として機能しなかったし、第2次世界大戦以降の国際紛争を見ても、抑止力は砂上の楼閣に過ぎないことは明らかである。
 14日の記者会見では「戦争法案」という指摘に対し「無責任なレッテル」と色をなして反論した。自民党も「平安法案」などという本質を糊塗した愚にもつかないネーミングを提起している。
 安倍は、湾岸戦争やイラク戦争のような国際紛争に自衛隊を派遣することは決してない、現在の対「イスラム国」攻撃への後方支援も行わない、アメリカの戦争に巻き込まれることはない、と述べ集団的自衛権など武力行使に関しては「厳格な歯止め」をかけたことを強調しているが、その場しのぎの弁明であろう。

<「歯止めなき対応」>
そもそも「厳格な歯止め」と「切れ目のない対応」は矛盾し両立するものではない。
個別法案自体も、現行法の制約を撤廃し容易に武力行使への道を拓くものであるが、関連法案は平時から「グレーゾーン」さらには低強度紛争から本格的な戦争へと「切れ目なく」対応していく法体系となっている。
 つまり「厳格な歯止め」が外れて一端個別法案に基づく作戦が発動してしまうと「切れ目のない対応」により、「一発の銃声」から大規模紛争へと連続的にエスカレートしていく危険性を内包している「戦争ドミノ」なのである。
集団的自衛権の行使より敷居が低く、「積極的平和主義」の名のもと今後自衛隊が派遣される機会が増えると考えられる「国際平和支援法案」に基づく活動についても懸念が広がっている。
 軍事ジャーナリストの田岡俊次氏は、アフガンに派遣された豪州軍を参考に、1000人規模の自衛隊が海外で治安維持、補給任務に就いた場合、18名程度の戦死者が出るとの見積もりを出している(DIAMONDonline4月2日号「自衛隊海外派遣で想定される死傷者に我々は耐えられるか」)
 記者会見で安倍は「自衛隊発足以来1800人の隊員が殉職した」と、田岡見積もりの100倍の数字をあげ、戦死に対する予防線を張るという姑息な手段に訴えた。
自衛隊発足以来、「敵弾」で戦死した隊員は皆無、負傷者も不測の事態ではあるが、先ごろのチュニジアテロ事件の元2等陸佐が初めて、というのが現実であり、安倍の発想はあまりに飛躍しすぎであろう。
 記者会見だけでは到底様々な疑念を払拭できないと思ったのであろう、安倍は「国会を通じて丁寧な説明をしていきたい」と述べている。

<矛盾だらけの「Q&A」>
自民党も閣議決定を受け、国民向けに43問にわたる「切れ目のない『平和安全法制』に関わるQ&A」を策定した。
 逐条批判は別の機会にするとして、ここでも問2「我が国を取り巻く安全保障環境の変化とは・・・」に答える形で「中国の対外姿勢と軍事動向等は我が国を含む国際社会の懸念事項」「北朝鮮は日本が射程に入る様々なミサイルを配備」と両国を名指しし、戦争法案制定を正当化しようとしている。
 さらに問10の徴兵制を危惧する問いに対し「全くありえません。憲法18条は『何人も(中略)その意に反する苦役に服させられない』と定めており、徴兵制ができない根拠になっています。自衛隊は『志願制』であり、徴兵制が採用されるようなことはありません」と回答している。
 改憲を志向する自民党が現行憲法を論拠にするのは、そもそも矛盾であろう。また、自民党の現改憲案でも18条の条文はほぼそのままではあるが、徴兵は苦役ではない、と解釈すれば終わりである。
 現行憲法は集団的自衛権を否定していないと解釈する自民党にとっては簡単なことだろう。「自衛隊は志願制」と言っても現在はそうであるというだけである。実際は「予備自衛官」制度に加え陸自「予備自衛官補」制度を設立、今後空海にも拡大し「裾野」を広げようとしている。
 さらに改憲で「国防軍」「自衛軍」が設置されれば話は全く別である。軍事的、経済的整合性からいえば大規模な徴兵など不可能であるが、自民党の改憲案が「だらけた国民を鍛えなおす」意識に立脚したものである以上警戒が必要であろう。
 また他の項目でも今回の戦争法案が、現行憲法の理念に沿ったものなどと強引なこじつけが説明されており、この自民党「Q&A」は怪しげな投資の勧誘手引書のようなものとなっている。
 このような文書で国民の理解は得られないだろうし、丁寧な説明が約束されたはずの国会でも、自公与党は7月末成立ありきの拙速な審議日程を提示し、野党の反発を招いた。
 今後、国会で繰り広げられるのは、数の論理による審議打ち切り―強行採決の連続であろうことは火を見るより明らかである。

<法案の既成事実化>
 法案審議の外では、着々と法案内容の先取り、既成事実化が進んでいる。
 5月12日、海上自衛隊の護衛艦2隻がフィリピン海軍とマニラ湾近海で合同軍事演習を行った。両国の合同演習は初めてである。
 さらに5月13日にはP‐3C哨戒機がベトナムを訪問したことが明らかとなった。艦船、航空機とも海賊対処行動からの帰還途中の行動であるが、日本が南シナ海への進出を具体化させる端緒である。
 また陸上自衛隊は石垣島、宮古島など南西諸島に対艦、対空ミサイル部隊や監視部隊を配備する計画である。これらは中国艦船を「第1列島線」以西に封じ込め、バシー海峡に迂回を強要しそこで補足する戦略であろう。
 こうした自衛隊の活動は、リバランスを言いながらフィリピンへの再駐留は財政的に困難なアメリカにとってありがたいものだろう。そこを見た安倍は日本の国会を無視し、オバマにガイドライン改訂を約束し恩を売ったのである。
 訪米時の厚遇に安倍は喜んでいるが、オバマはその歴史認識、対中、対韓関係まで肯定したわけではない。戦後70年談話発表が近づくにつれ日本には国内外から厳しい視線が注がれている。
 5月6日には世界の歴史学者187人が歴史的事実の歪曲に反対する声明を発した。5月17日那覇市では辺野古新基地建設反対集会に3万5千人が結集した。
8月を再び悔恨の夏としないため、平和勢力は国会内外で連帯して、戦争関連法案を廃案に追い込むことが求められている。(大阪O)