ASSERT 452号 (2015年7月25日発行)

【投稿】 戦争法案強行採決を許すな
【投稿】 情報戦の中の安保法案と日本エスタブリッシュメントの正体
【書評】 『琉球独立論』
<紹介> 「戦争法案−粉砕」から「安倍政権‐打倒へ」(14)

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【投稿】 戦争法案強行採決を許すな

<国民理解は不必要か>
 7月15日、自公与党は衆院特別委で「安全保障関連法案」の採決を強行、さらに翌16日の本会議でも同様に採決を行い、衆議院を通過させた。
 これは憲政史上稀に見る暴挙であり、厳しく糾弾されなければならない。政府は当初「与野党共同で円滑に」国会を通過させるため、安倍、橋下のボス交で維新の党の抱き込みを目論んだ。
 しかし、法案に反対する世論の高まりと、橋下の独断専行に反発した松野、江田ら元民主党、旧結の党グループが反発、紆余曲折はあったものの、最終的に7月8日維新の独自修正案2本に加え、領域警備法を民主党と共同提出したことにより「自民・維新共闘」の目論見は頓挫した。
 この動きを見て、官邸、自民執行部も維新との連携に見切りをつけ、与党単独の採決強行へ動かざるを得なくなったのである。
 維新が提出した「対案」も事実上店晒しにされ、日頃与党が口にする「反対なら対案を出せ」という批判の欺瞞性が明らかになった。
 採決を巡っては政権内からも石破地方相が前日の記者会見で「国民の理解が進んでいるとは言えない」と発言、当の安倍も当日の特別委総括質疑で「国民の理解が進んでいないのも事実だ」と認めざるを得なかった。
 にもかかわらず直後に採決を強行したのは、まさに日程優先、成立ありき以外の何ものでもない。
 安倍は「今後も国民に丁寧に説明していく」と表明しているが、自民党は反発を恐れ、当面街頭宣伝は行わないことを決定した。また自民執行部は「百田発言問題」以降、マスコミへの露出を規制し、さらに報道機関からの戦争法案関連の質問には回答しないよう、所属議員に「箝口令」まがいの指示を出したという。
 自民党は今後参議院でも形式的な議論で誤魔化し、「60日」が過ぎるのを待つという「籠城戦」を決め込んだようである。「私は貝になりたい」とでも言うのだろうか。

<国際潮流から逸脱>
 安倍政権が身を潜めるかのようにしている間にも、国際情勢はドラスティックに展開している。
 7月14日、ウィーンでイランと関係6か国(米英仏独中露)は核開発問題での最終合意を達成した。2002年にイランの核兵器開発計画が明らかになって以来、7カ国は、各国での政権交代を経ながら交渉を進め、平和的手段による国際問題の解決に至ったのである。
 安倍は戦争法案の必要性を説くのに一つ覚えの様に「ホルムズ海峡の掃海」を持ち出してきた。当事者の努力をよそに「機雷封鎖」を大地震のような不可避のものとして、集団的自衛権解禁の論拠として利用してきたのである。このような対応はアメリカにも失礼であろう。
 本来なら、アメリカの「同盟国」であり、イランとも関係を維持してきた日本としては、積極的にこの地域の安定に寄与すべきであった。しかし民主党を含む歴代政権は、思考、行動とも停止してきた揚句、「結果にコミット」できず、国際的な動きから取り残されることとなった。
 そもそも軍事的整合性が希薄だった「ホルムズ海峡の機雷封鎖」という想定は、ますます非現実的なものとなったにも関わらず、安倍政権は今後もこれを理由として使い続けるつもりなのだろうか。それともこれからは「ISがホルムズ海峡を封鎖する」とでも言うのだろうか。
 戦争法案は戦争が起こること、起ったことを前提としたものであり、紛争防止方策として、安倍政権は「武力による抑止」しか示していない。
 安倍政権には、緊張を緩和し、平和的手段で安全を確保する包括的な外交、安全保障政策が根本的に欠如しているのである。
 その中で、戦争遂行に関する各論、施策を突出させ強引に推し進めようとするのは戦争準備と思われても仕方ないだろう。
 今回のイラン核問題最終合意は、安全保障のあるべき道筋を明らかにしたが、安倍政権はこれを教訓とすることなく、外交能力の無さの露呈と法案論拠の崩壊から、むしろ煙たがっているのではないか。

<未来の戦争へ>
 中東での緊張が緩和される中、戦争法案に係わる「予定戦場」は東アジア地域に集約されていく。ここでも安倍は「邦人を移送する米艦の防衛」を繰り返すばかりで朝鮮半島の安定は語らない。
 北朝鮮に関しては、日本政府が朝鮮総連への国策捜査を行って以降、拉致問題は放置されている。7月4日の再調査回答期限はなし崩し的に延長されたが、イラン核合意のようにはいかないだろう。
 韓国に対しても関係改善の歩みは遅々としている。先ごろボンで開かれた第39回世界遺産委員会で懸案となった「明治日本の産業革命遺産」は、日程延期の末、からくも選出された。
 今回日本、韓国を除いた委員国は19カ国であったが、このうち議長国のドイツをはじめ10カ国は安倍が外遊で訪問している。さらに副議長国のクロアチアは6月に首相が来日したばかりであり、安倍外交が有意義であれば多数決でも選出されたであろう。
 ところが韓国の説得で多数派工作が危うくなり、日本政府は最終局面に至ってスピーチで「against their will」「forced to work」という表現を使わざるを得なくなった。これにより国際的には強制労働が確認された形となったが、安倍政権は認めようとしていない。
 さらに従軍慰安婦問題でも、こうした不誠実な対応を続けるようでは、事態好転にはつながらないだろう。
 中国に対してもこの間2度の「首脳会談」を行う一方で、対中軍備増強、アメリカ、フィリピンなど関係国との合同演習が進められている。
 とりわけ南シナ海問題への介入は露骨である。6月23,24日には海自のP-3C哨戒機をフィリピン・パラワン島に派遣し、比軍要員を搭乗させ周辺海域での飛行を実施した。
 これは中国軍機が韓国軍人を乗せて竹島(独島)近海を飛ぶようなものである。中国政府は不快感を示し、フィリピンの平和団体も「火に油を注ぐようなもの」と批判している。
 この様に自ら緊張を拡大しておきながら、「国際環境が変わった」として戦争法案を合理化する安倍政権が、周辺国に「未来志向」を語りかけても「未来の戦争を志向」しているのではないかと疑われても仕方ないだろう。

<8月、反対運動の高揚を>
 安倍は世論の歓心を買うため、強行採決後の17日に新国立競技場建設計画の白紙撤回を表明した。
 不透明な選考と法外な建設費は以前からわかっていたにもかかわらず、戦争法案の強行採決までは見直しはできないと強弁していたものが、一転してゼロベースに戻った。本人が悪いとはいえ、元総理の森の顔に泥を塗って踏みにじっても延命を図ろうという、あまりに露骨な政治決断である。
 しかし17,18日の世論調査では、「支持35%、不支持51%」(毎日)「支持37,7%、不支持51,6%」(共同通信)と軒並み内閣支持率は急落した。今後舞台は参議院に移るが、そのなかで70年目の8月6日、9日、そして15日を迎える。安倍政権は盆前後の自然休会を利用し、嵐が過ぎ去るのを待つ構えである。
 しかし、8月には原水禁大会を軸とした大衆行動が準備されている。過去原水禁運動統一の試みは頓挫してきたが、この危機的な情勢を踏まえ、原水禁、原水協は共同行動を実現すべきである。
 そして、既存勢力のみならず、この間新たに登場した各地、各層の取り組みを糾合するプラットフォームを構築しなければならない。 
 さらに8月には「戦後70年談話」が発表されることとなっている。国内外世論の厳しい監視により「談話」に関しては閣議決定を行わないなど、当初の意気込みよりはトーンダウンしつつあるが、内容は不確定である。
 ぎりぎりまで過去の侵略に対する明確な謝罪表現―和文と英文の表現の誤魔化しなどではない―を盛り込むよう、国際世論と共同で追い込んでいかねばならない。 
 参議院は来年改選予定であり「合区法案」における与野党ねじれ現象、さらには18,19歳の新有権者の動向など、流動的要素が多い。
 野党は国会を取り囲む闘いと連携し、一致して与党の動揺を誘い戦争法案の廃案を追及しなければならない。(大阪O)