ASSERT 454号 (2015年9月26日発行)

【投稿】 戦争法案強行採決を糾弾する
          −武力行使阻止への取り組み継続を−
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【投稿】 戦争法案強行採決を糾弾する
            −武力行使阻止への取り組み継続を−


830戦争法案反対大阪集会

<異論は圧殺>
 9月19日未明、参議院本会議において戦争関連法案が、与党の強行採決により可決、成立した。
 民主党、共産党など野党は、国会を包囲するうねりと連携し、内閣不信任案などを連続して提出したが、与党は一部野党を抱き込み委員会、本会議での採決を連続した。
 世論の強い反対の声を無視した安倍政権の暴挙は、戦後憲政史上、1960年の日米安保改定と並ぶ民主主義の破壊行為であり、歴史に汚名を残すものとなるだろう。
 安倍は法案成立後の記者会見で、国民の理解が得られていない現状に「これからも、粘り強く丁寧に説明していきたい」と述べた。
 しかし、一方的に戦争法の「意義」を語るだけで、世論には耳を貸さないどころか、相も変わらず反対意見に対し「誤解だ」とか「レッテル貼り」と、国民が間違っているかのような的外れの非難を行い、あまつさえ異論は許さないというのが本音であることは明らかである。
 採決に先立つ9月8日、自民党総裁に安倍が無投票で再選された。野田聖子前総務会長は、官邸サイドの圧力により20人の推薦議員が集められず、立候補断念に追い込まれた。
 総裁選となっても野田が戦争法案反対を打ち出すことは考えられず、安倍の勝利は揺るがないにもかかわらず、自らに異を唱える者は少しでも許さない、という異常性に安倍政権の焦りと余裕の無さが表れている。
 力づくで対立候補の出馬を封じ込めるのは正真正銘独裁者の手法である。恣意的な新憲法規定でアウンサン・スーチーの大統領就任資格を剥奪している、ミャンマーの準軍事政権(議会の四分の一は軍人枠)のほうがよほど「合法的」であろう。
 無投票再選は戦争法案成立の為に、挙党体制を演出する強硬策であった。しかし直後の政治関連のポータルWebサイト「政治山」のアンケートでは、安倍支持を含む6割が「総裁選をやったほうが良かった」と回答、かえって安倍政権の反民主性を際立たせることとなった。
 さらに翌9日、政府と沖縄県の辺野古基地建設に関する協議が打ち切られ、安倍政権は工事再開を表明した。県との協議の場はのこされたものの、安倍政権による事実上の工事強行宣言であろう。
 こうして異論を圧殺する姿勢をこれまで以上に明確にし、戦争法案に集中する体制を整えた安倍は、強行採決に邁進したのである。
 
<情勢と乖離する戦争法>
 法案成立により、自衛隊発足以降、日本を取り巻く様々な情勢の変化があっても封じられてきた集団的自衛権は解禁となった。政府が恣意的に認定する「存立危機事態」が発生すれば行使可能となった。
 これまで周辺事態法で自衛隊の活動は極東地域に限られてきたが、地理的制約がなくなり、支援対象国も事実上無制限となった。
 さらに、個別に条件を勘案し、特別法で行われてきた「後方支援」が「国際平和支援法」で常時可能になるなど、政権が判断すれば「いつでも」「どこでも」「だれとでも」開戦が可能となる。しかし現実には戦争関連法が必要となる可能性は縮小している。
 安倍政権は戦争法の必要性を説くのに「避難邦人を乗せた米艦船の防護」「ホルムズ海峡の機雷掃海」を挙げてきたが、いずれも破綻した。
 こうして砂上の楼閣が次々と崩れるなか、拠り所としているのが中国に対する牽制である。アメリカ軍との連携で中国軍に対抗することを思い描く安倍政権であるが、それは同床異夢というものである。
 オバマ政権は、中国と事を構える考えはない。一部の軍人は中国を念頭に挑発的、対抗的なメッセージを発してきたが、何人かは更迭された。米海軍は南沙の人工島12海里(領海)内の哨戒を2013年以降実施していない。
 9月25日の米中首脳会談で、オバマは南シナ海における埋め立てや、サイバー攻撃に関して指摘はしたが、偶発的衝突を防止するシステム構築など信頼関係構築も進められた。
 中国も国際的な影響力の拡大と軍拡は進めているが、巧妙な戦略をとっている。アジアでの大規模インフラ整備を進め、軍事面では今年初めてシンガポール、マレーシアとの合同演習を実施するなどバランス感覚をアピールしている。
 また中国は国内の政治・経済状況が桎梏となっており、アメリカや日本への攻勢は論外であろう。
 さらにオーストラリアでは9月14日、突然の自由党党首選で「安倍の盟友」アボットが敗れ、「親中派」のターンブル首相が就任した。日本は軍事連携の一環として潜水艦の輸出を目論み独仏と競合していたが、早速豪国防省は「国内建造が条件」と表明、完成品の輸出を提案する日本の脱落は確定的となった。
このように日米(豪)連合軍対中国軍という単純な図式も成り立たない。
 北朝鮮への対処を戦争法の根拠とするには、さらに怪しいものがある。8月に発生した軍事境界線付近での地雷爆破に端を発する緊張状態は、南北間の協議の結果北朝鮮が折れることで解消した。
 北朝鮮は10月10日の朝鮮労働党創立70周年に合わせ、長距離弾道ミサイル発射、さらには「核実験」を強行するのではないかと言われている。
 金正恩が威信回復のための手段を考えていることは事実であろう。しかし中露との関係はこれまでになく悪化している。習近平とプーチンは、それぞれの戦勝70周年式典を「ボイコット」した金正恩を苦々しく思っている。
 とりわけ中国は一昨年の張成沢処刑以来関係は冷却しており、18日中国の王外相はこれまでにない厳しい口調で、ミサイル発射を牽制した。また8月下旬に沿海州で行われた初めての中露合同上陸演習も、この間の情勢の推移をみるならば北朝鮮に対する圧力とも考えられ、米韓合同演習と合わせ北朝鮮は東西から挟み撃ちとなった。
 こうしたなか、北朝鮮は金体制の維持自体、「国体護持」が目的化しており、実施可能な手段は限られている。金政権としては、周辺国との関係改善が喫緊の課題となっている。北朝鮮に関して戦争法が想定している「存立危機事態」「重要影響事態」の現出はあり得ない。
 中東情勢も変化している。ISに対してはこれまで融和的だったトルコが空爆を開始した。ロシアはアサド政権支援のためシリアに海軍歩兵、戦闘ヘリなどの派兵を開始した。アメリカは懸念を表明しているが、ロシアと軍事的に対抗することはなく、この地域におけるアメリカのイニシアは低下している。
 この間の世界の動きと今後の方向性は、開会中の国連総会で明らかになっていくが、そこでは戦争法と国際情勢との乖離が明らかになるだろう。

830戦争法案反対大阪集会

<闘い継続し参議院選へ>
 このように集団的自衛権行使を想定した事態の発生確率が低下する中、武力行使はどう現実のものになるか。最も危険なのは集団的自衛権とは関係ない中国との偶発的衝突と国連平和維持活動であろう。
 今回、警察力では対応しきれないとする「グレーゾーン事態対処」は法案には盛り込まれず、「海自と海保の連携強化」という運用で対応することとなった。民主、維新両党は法の縛りをかけるため「領域警備法案」を提出したが与党に否決された。
与党は尖閣諸島近海での「武装集団」の攻撃を想定しているが、極めて曖昧な規定である。1999年の能登半島沖不審船事件では「海保では対処しきれない」として、初の海上警備行動が発令された。海上自衛隊が出動し不審船からの攻撃がない中、護衛艦、哨戒機から艦砲射撃、爆弾投下が行われた。
 一方2001年の東シナ海での不審船事件では、不審船から機関砲やロケット弾による激しい攻撃があったものの海保のみの対処で終わった。
 民間人に化けた中国軍が尖閣諸島に上陸するというのは荒唐無稽な妄想であるが、中国海警と海保が対峙した際、海自が介入する事態はありうるだろう。
 今後、日中間の偶発的衝突の回避システムが構築されないまま、自衛隊の行動範囲が南シナ海に拡大されれば、不測の事態が惹起する危険性は拡大していく。
 こうした衝突がエスカレートした場合、少なくとも安倍政権にはコントロールする能力はないだろう。
 PKO活動はより危険である。南スーダン派遣部隊に係わる統幕の「駆けつけ警護」計画は、法案成立で「粛々と」進められることとなった。しかし現地の武装勢力は、前号でも指摘したように国連の部隊や駐屯地を正面から攻撃するほど強力である。
 これに対応するためには武装の強化が必要として、今後「機動戦闘車」(431号参照)などの配備が計画されるだろう。武器の使用基準も緩和され「駆けつけ警護」さらには「邦人防護・救出」という枠を超えた、武力衝突の危険性は他の地域に派遣された場合も含めますます高まるだろう。
 可能性は低いが、IS掃討が進展し、旧IS支配地域でのPKO、「後方支援」に自衛隊が参加するようなことがあるなら、かなり危険な事態に直面することとなるだろう。 
 このような武力行使を呼び起こす危険性のある戦争関連法の発動を許してはならない。そのため戦争法案阻止のため結集した勢力は、法廃止を求め安倍政権を追い込んでいくため運動を継続していかなければならない。
 とりわけ法案に反対した野党は連携し、来年の参議院選挙における、選挙区での統一候補、比例区での統一名簿の擁立、作成に向けて最大限の協力を進めるべきである。(大阪O)