ASSERT 457号 (2015年12月26日発行)

【投稿】 安倍政権が牽引した不安の1年
              ―来年こそ安倍退陣の実現を― 
【投稿】 「イスラム国」(IS)とは何か
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【書評】 「雇用身分社会」(森岡孝二 岩波新書)

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【投稿】 安倍政権が牽引した不安の1年
              ―来年こそ安倍退陣の実現を― 


 戦後70年の年が終わろうとするなか、今年の漢字として「安」が選ばれた。「安心、安全」を願う民衆の思いが反映されていると言われるが、実際は不安の年であり、新たな戦争を予兆させる1年であったと言えよう。
 国際的には「イスラム国」による、1月の日本人殺害に始まり、11月パリのテロに終わった感があるが、国内的には様々な不安定状況を醸成したのは安倍政権であった。
 当の本人は今年の漢字についての記者団の問いに「『安』が『倍』になると『安倍』」などと軽口をたたくなどしていたが、安倍としては9月に戦争法を強行採決―成立させ、11月には盟友橋下の「おおさか維新の会」が大阪府知事、大阪市長W選挙に圧勝するなど、ほぼ満足の1年だっただろう。
 
<反中行脚続ける安倍>
 しかしそれは自己満足であることは明らかで、安倍政権は相も変わらず国内外に災厄をまき散らさんとしている。
 11月21日、クアラルンプールで開かれたASEAN+3(日中韓)首脳会議の席上、安倍は李克強首相を前に南シナ海情勢に関し「深刻な懸念」を表明した。ソウルでの日中韓首脳会談では友好ムードを演出したものの、今回は本音をさらけ出した。
 引き続き安倍は国会の閉会中審査から逃亡する形で、11月30日からパリで開かれたCOP21に出席し演説を行った。しかしその内容は、温室効果ガスの削減やクリーンエネルギー開発への意欲を強調する一方、原発再稼働に関しては口をつぐむという姑息なものとなり、十八番の「反中演説」ほどの力の入れようは伺えなかった。
 また2020年以降の温暖化対策に関する「新たな枠組み」を巡り、論議を牽引するアメリカ中国と、反発する途上国、さらには深刻な状況を訴える島嶼国のアピールの間に、日本政府の一般論は埋没してしまった。
 12月12日訪印した安倍は、モディ首相との間で原子力協定の締結を合意した。インドは核兵器を保有しながらNPT未加盟であり、原発を輸出することは日本のこれまでの立場と矛盾するものである。
安倍は「インドが核実験をすれば協力を停止すると伝えた」と明らかにしたが、効力には疑問符をつけざるを得ない。インドは核兵器の他、原子力潜水艦を保有、今後原子力空母を建造する計画であると言われており、原子力を利用した軍拡を進めようとしている。
 これに対しては広島、長崎両市長が遺憾を表明するなど、内外から批判が挙がっているが「平和利用」を口実に、核軍拡への支援が糊塗される危険性をはらんでいる。
 安倍はこうした懸念をよそに、「対中包囲網」を目論み、兵器や技術の移転、共有する軍事情報の保護、日米印海軍合同訓練の継続も確認している。
 11月26日には、オーストラリアに対し潜水艦に関する技術提供が国家安全保障会議で決定された。豪海軍の次期潜水艦については、日本の他、ドイツ、フランスが受注を目指しており、激しい競争が繰り広げられている。
 安倍政権はオーストラリアを「対中包囲網」に引き込まんとして、技術者の育成や現地での建造も含めた「破格」の提案をしており、兵器輸出にかかる制約の空洞化が、一層進もうとしている。
 12月17日には東京で、日本、インドネシア両政府の2+2(防衛、外交閣僚)会議が初めて開催され、同会議の定例化と日本からの飛行艇輸出交渉の開始などが決まり、高速鉄道導入で「中国に傾いた」同国を引き戻そうと、躍起になっている。
 このように安倍政権は緊張状態を東シナ海から南シナ海、さらにはインド洋、そして南太平洋にも拡大しようとしている。

<増大する軍事費>
 日本国内の軍拡にも歯止めはかからない。政府は12月24日、16年度予算案に於いて、軍事費を4年連続で増加させ、補正を含まない単年度予算としては初の5兆円台とすることを決定した。
 消費増税などの影響で来年度税収が57兆数千億円と、25年ぶりに高い伸びを示す中、社会保障費など生活関連予算は抑制され、軍事費が突出することとなった。
 中身的には、1機200億円のオスプレイやF35戦闘機など高額な兵器の調達費が嵩み、減額するとしていた「思いやり予算」も11〜15年度分約130億円増の9465億円となった。
 政府・防衛省は「不要不急の装備調達は抑制する」としているが、14年度から18年度までの現「26中期防」期間内での調達予定兵器を見ても、来年度以降での大幅な削減は不可能と見積もられ、5年間で約24兆円とされた現中期防の予算計画の見直しも懸念される。
 さらに「次期中期防」では「弾道ミサイル防衛」を口実とした新型ミサイル「THAAD」や「早期警戒衛星」、「島嶼防衛」として1隻1500億程度と考えられる、「多機能輸送艦」(強襲揚陸艦)を最低でも3隻導入することなどが計画されるなど、軍事費の増大は継続される可能性が高い。
 安倍内閣はこうした軍拡を、情報操作と管理によって推し進めようとしている。安倍政権にとって都合のいい情報=「中国、北朝鮮の脅威」については、誇張をも憚らず拡散させる一方、都合の悪い情報に関しては軍事関連のみならず原発事故関連、TPP交渉などでも隠蔽が行われている。
 本来こうした問題は、臨時国会を開催し論議するのが「憲政の常道」であるが、安倍は外遊を口実に議論の場そのものを無くしてしまうという暴挙に出た。
 さらに政府は特定秘密保護法を駆使し、軍事関連の特定秘密などに関しては、会計検査院の会計検査さえ対象外とすることを目論んでいることが明らかになった。
 戦前海軍省は戦艦大和建造に当たり、架空の艦艇数隻分の建造費として予算を計上した。これらは軍事機密とされ大蔵省も検査院も手が出せなかった。こうしたことの反省から、日本国憲法ではすべての支出入の検査を義務付けているが再び「聖域」が設けられようとしている。

<極右利用し反対派攻撃>
 戦争関連法を筆頭に憲法の軽視が常態となった安倍政権に対しては、様々な立場の人々から批判の声が上がり続けている。
 とりわけ戦争関連法に対しては全国的な反対運動が展開されたが、安倍政権は「国際テロの脅威」を持ち出し、治安管理体制の強化を進めようとしている。
 とりわけ来年の「伊勢志摩サミット」及び関連国際会議、さらには東京オリンピックを口実に、漠然とした不安を増大させ、様々な団体、運動への監視、弾圧が顕著になるだろう。
 そうした極端な反応は社会そのものを自壊させる。フランスでは12月6日に行われた州議会選挙の第1回投票で、「国民戦線」(FN)が仏本土13州中6州で首位に躍進した。アメリカではトランプが排外主義的姿勢にも関わらず、共和党の大統領候補レースのトップを走り続けている。
 こうした現象は日本に於いても顕著になってきている、日本のレイシストは韓国・朝鮮人をはじめとする外国人、さらには沖縄を憎悪の対象としている。
悪質なのは日本の場合、権力が妄動暴挙を助長していることである。オバマもオランドもメルケルもイスラム国との対決を進める一方、排外主義に対しては、毅然たる態度をとっている。
 各国の極右はそれを攻撃しているのであるが、日本の場合は政権と極右が極めて親和的であることだ。安倍は聞かれてもいないのに「3本の矢」や「積極的平和主義」を口にするが、排外主義に対する批判は出てこない。欧米の政権とは価値観が違うのであろう。
 安倍政権はヘイトスピーチを規制する立法措置に消極的な対応をとることで、差別主義者に勇気を与え、公安など「官」とレイシストなど「民」を車の両輪として政権に批判的な人士、運動への攻撃に利用しているのである。

<安倍―橋下枢軸阻止を>
 これの最大の援軍が冒頭にも述べたおおさか維新の会である。12月19日、東京で安倍、菅、橋下、松井の4者会談が行われた。橋下は前日に大阪市長を退任したばかりであるが早速政治活動を再開したことになる。会談では参議院選挙での協力や、橋下の政界復帰のタイミングなどが話し合われたのだろう。両者の協力は改憲をめざし、さらに進むことが懸念される。
 フランスでは州議会選挙の第2回投票で「ルペンよりサルコジのほうがまし」との判断から与党社会党が共和党に協力し、FNの議席増大を阻止した。
軍拡と排外主義によりさらなる災厄をまき散らすのは、国内に於いては安倍―橋下枢軸であろう。
 1月4日からの通常国会では反安倍政権を掲げる野党は、徹底した審議を要求しなければならない。安倍政権は参議院選挙対策として、自衛隊のリスクが高まる「駆けつけ警護」発令などは先送りし、消費税軽減税率導入、臨時給付金などの懐柔策を準備している。
 野党は、戦争関連法だけでなく、まっとうな経済政策、社会保障政策を対置し与党の矛盾を追及するとともに、自・公とおおさか維新の間に楔を打ち込んでいかねばならない。
 そうした場合、先のフランス社会党の対応は極めて戦術的ではあったが、大いに参考にすべきであろう。少なくとも端から「共産党は除外」として、テーブルにもつかない対応は薄慮にすぎるであろう。様々な戦術を包摂する基本的な戦略の構築が求められるのである。「ReDEMOS」(リデモス)など柔軟な発想を持つ運動と連携し、再び国会を包囲する取り組みで安倍政権を追い詰めていかねばならない。(大阪O)