ASSERT 461号 (2016年4月23日発行)

【投稿】 強権で矛盾糊塗する安倍政権
             〜外交は迷走、内政は暴走〜
【投稿】 米覇権国家の後退とプルトニウム国家への道か否かの選択
【投稿】 熊本地震・原発固執政権めぐって−−統一戦線論(23)
【書評】 『リンゴが腐るまで──原発30km圏からの報告(記者ノートから)』

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【投稿】 強権で矛盾糊塗する安倍政権
             〜外交は迷走、内政は暴走〜

<日米、日韓首脳会談は不発>
 4月1,2日にワシントンで開かれた第4回核安全保障サミットは、ヨーロッパに拡散するイスラム国など武装勢力の脅威、北朝鮮の核開発などを踏まえ、核テロ対応など中心に50か国以上の代表が論議を行った。
 サミットで採択されたコミュニケでは、核テロ防止とともに「核に関する安全保障は永続的な優先課題」として「核物質の保安管理は各国の根本的責任」とされた。
 サミットに先立つ3月下旬、半世紀以上昔に提供された研究用プルトニウム331キロなどを返還するための輸送船が、東海村から処理施設のあるアメリカサウスカロライナ州に向かった。
 サミット後の記者会見でオバマ大統領はこれらを念頭に、核兵器に転用可能な高濃縮ウランやプルトニウムが、「決してテロリストの手に落ちることはない」と強調した。
 しかし、日本には依然としてプルトニウムが保管されており、核武装への懸念が国際的に存在している。しかし、会議に参加した安倍は伊勢志摩サミットと東京オリンピックのテロ対策に言及したのみで、核武装に対する疑念を払拭することはなかった。
 「核物質の保安管理」が最も粗雑な政府であるにもかかわらず「アンダーコントロール」などと言いつくろう安倍は核サミットでは、まったく存在感を示せなかった。
 安倍が力を注いだのは米韓との首脳会談であるが、これも特段の成果を上げることはできなかった。4月1日の日米首脳会談ではオバマから、辺野古新基地の建設遅滞について懸念を示され、安倍は「辺野古移設が唯一の解決策との立場は不変」と述べるのが精いっぱいであった。
 オバマも最後は「安倍を信頼する」と述べたものの、4月5日に翁長知事は「辺野古の埋め立て承認以降の事由で私どもが了解できないことがあれば、撤回も視野に入れる」(4月6日毎日)との見解を示し、安倍がオバマの信頼に応えきれない現実が露呈した。
 その後の日韓首脳会談では、昨年末に「最終的解決」とされた従軍慰安婦問題についての合意を、両国政府が着実に合意するとの確認がなされた。
 しかし4月13日の韓国総選挙で朴大統領の与党セヌリ党は過半数を大きく割り込む大敗を喫した。一方共に民主党など野党は躍進し、ソウル日本大使館前の少女像の撤去など当事者抜きの「合意」内容の履行は、ますます困難になることが考えられる。

<G7外相会合で露呈した矛盾>
 このように、核サミットを利用した安倍外交は、合意の直後からその足元を揺るがされる事態に直面しており徒労に終わったと言ってもよいだろう。
 外交での成果を作りたい安倍政権は、4月10日から広島市で開かれたG7外相会合にあわせ、過剰な警備体制を敷き各国外相の平和記念公園訪問を演出した。同会合で採択された「広島宣言」では核兵器の非人道性についての指摘は、核保有国の反発で盛り込まれず、核廃絶へのプロセス具体化にむけての展望は開けなかった。
 また、自ら原爆ドーム視察を提起するなど積極的な行動を見せたケリー国務長官に「謝罪したのではない」と釘をさされるなど、被爆国のイニシアティブは発揮できなかった。
 さらに、中国、韓国からは第2次大戦における日本の加害性を隠ぺいするものとの批判も上がっている。今回の外相会合で安倍政権は、事前に中国が懸念を示していた東、南シナ海問題を議題化し、「宣言」とは打って変わって共同声明では、当該海域での一方的な行動への強い反対などを盛り込むなど、中国への牽制ではイニシアティブを発揮した。
 これらのことで、従軍慰安婦問題の根本的解決など戦後補償を蔑ろにし、軍拡、緊張激化を進めながら被害者性を強調する安倍政権の危険性が浮き彫りになったといえよう。
 
<進む南シナ海への介入>
 事実外相会合直後の4月12日には、フィリピンを訪れた海自の護衛艦2隻がベトナムのカムラン湾に寄港、さらに同日からインドネシアが主宰する「コモド演習2016」にヘリ空母「いせ」(1万9千トン)を派遣した。コモド演習には中国も参加しているが、アメリカを含めた参加海軍中、最大の艦艇を送り込んだのは中国に対する示威行動に他ならない。「いせ」は日本への帰途の際にはフィリピンに寄港することが明らかとなっており、海自艦のフィリピン寄港は常態化しつつある。
 また、4月15日には、フィリピン、ベトナムに寄港した2隻とは別の護衛艦2隻、そして潜水艦1隻が合同演習参加のためオーストラリア、シドニーに寄港した。海自の潜水艦が豪州を訪れるのは初めてであり、豪海軍へのセールスも兼ねているが、最大の目的は中国への対抗であろう。
 南シナ海ではアメリカ海軍が単独で「航行の自由」作戦、さらにフィリピンとの合同パトロールを展開している。さらに4月4日〜15日には「バリカタン演習2016」が実施され米比両軍9千人が参加した。
 しかし、これらはアピール性は高いものの、偶発的衝突を招き、敵愾心を煽る性格のものではない。中国も当然のことながら、米韓演習に対して北朝鮮が見せたような対応はとっていない。
 先月号で日米演習時の米軍司令官の不祥事を紹介したが、米比演習直前の4月2日には南沙諸島を望むパラワン島の酒場で、米兵が比警察官に悪戯をしかけ、グループ同士の乱闘事件が発生した。アメリカ軍は「このことが合同演習に影響を及ぼすことはない」とコメントしたが、上も上なら下も下であり、アメリカ軍の緊張度が推し量れるというものである。
 こうしたなか4月14日、アメリカのABCニュースは南シナ海で日米共同パトロールが行われた、と報じた。詳細は明らかになっていないが、事実であればこの間の艦艇の動きから、フィリピンからベトナムに向かう途中の護衛艦2隻が参加したと考えられる。
 また「バリカタン」は米比2ヶ国演習であるが、安倍政権は来年以降これへの正式参加を目論んでいる。護衛艦2隻は演習開始時にスービックに停泊しており、4月6日の出港後パトロールに参加したとなれば、演習参加の先取りと言っても過言ではない。また安倍政権は否定しているが、「航行の自由」作戦への海自艦艇の参加も排除できないだろう。
 こうした動きは南シナ海での緊張のレベルを引き上げるものになる。アメリカに対しては慎重に対応している中国も、日本が本格的に介入してくれば警戒の度合いを高めるだろう。
 
<対露外交も限界>
 中国、韓国、さらには北朝鮮との関係改善に展望が見いだせない中、安倍は対露政策に活路を見出そうとし、5月連休中の訪露と年内のプーチン訪日を計画し、4月15日にはラブロフ外相が訪日、外相会談が行われた。
 その際対露融和に否定的なアメリカの理解を得るため、安倍は事前にウクライナのポロシェンコ大統領と会談し、約2千億円の経済支援とクリミア問題に関する理解を明らかにした。アメリカに苦情を言われないための2千億円ならお安いものなのだろう。
 一方で安倍政権は、自民党の稲田政調会長をロシアに派遣し、訪露の根回しを行わせた。 安倍訪露は確定的であり、年内にはロシア上下両院議長の訪日も実現する見通しであるが、懸案の北方領土問題の進展は難しいであろう。
 日露外相会談では平和条約締結に向けての協議を進めることでは合意したが、領土問題に関してラブロフ外相は原則論を固持した。
 そもそも、北方領土はロシアにとって対米戦略上の要衝であり、米露が緊張緩和に向かわなければ、問題は動かないだろう。したがって現状で日露首脳会談を何度しようが成果は得られないだろう。

<粗暴極まる内政>
 外交で突破口を見いだせない安倍は、内政に於いては相変わらず強引な政権運営を進めている。政府与党は民進党など野党4党が提出した安全保障関連法廃止法案を審議さえ行わないという、国会を軽視する卑劣な行動に出た。
 さらにTPPを巡っては、野党の求める資料がほとんど黒塗りで出されたのに対し、衆院TPP特別委員会の西川委員長の著書では、交渉経過に係わる記述があることが暴露され審議が中断した。
 さらに衆議院選挙制度改革では、アダムズ方式による抜本的な定数見直しを押しつぶし、「0増6減」という小手先の手直しを強行し、「改革」の名分としようとしている。
 こうした強硬姿勢で反発を抑えながら5月26,27日のサミットで「対中包囲網」「世界経済の回復」を華々しく打ち上げ、その後率先して財政出動、さらには今年度予算12兆円の前倒し執行に加え「消費増税再延期、税率見直し」を含む経済対策を持って、参議院選挙、もしくは衆参同時選挙に臨もうと言うのが安倍政権の戦略であろう。
 さらに安倍は14日夜に発生した熊本地震に際し、その時点では被害が比較的小さかったのを踏まえ、16日に現地入りし復旧を指揮する姿をアピールしようとしたが、16日未明の本震による激烈な被害拡大で中止に追い込まれた。また17日に予定されていた自身が出演するバラエティ番組の放送も中止された。
 しかし、安倍政権は様々な形で震災の政治利用を進めようとするだろう。まさに「選挙のためならなんでもする」である。安倍政権の暴走は震災以上の災厄を日本にもたらすであろう。
 民進党を始めとする野党は再度、選挙戦略を練り直し選挙区のみではなく比例区での統一候補擁立を進める必要があるだろう。(大阪O)