ASSERT 462号 (2016年5月28日発行)

【投稿】 参議院選挙で安倍政権包囲網を構築しよう
【投稿】 オバマ大統領の広島訪問と「核ありきの世界」
【投稿】 補選の結果をめぐって---統一戦線論(24)---
【書評】 『紅蓮の街(ぐれんのまち)』

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【投稿】 参議院選挙で安倍政権包囲網を構築しよう
        
5/3憲法を壊すな!大阪集会
<5/3憲法こわすな!戦争法を廃止へ!大阪集会(2万人が参加)>

<空振りに終わった安倍訪欧>
 安倍は5月1日から7日にかけて、イタリア、フランス、ベルギー、ドイツ、イギリスそしてロシアを駆け足で訪れG7の根回しと北方領土問題の進展を目論んだ。
 安倍は5月26、27日のG7伊勢志摩サミットで華々しくぶち上げようと、世界経済を下支えするための政策協調=財政出動を各国首脳に説いて回ったが、明確な同意は得られなかった。
 フランス、イタリアは「機動的な財政出動は必要」との見解は表明したものの、外交辞令的な対応に止まった。
 肝心のドイツは財政規律を重視する姿勢は崩さず、イギリスも財政出動は各国の状況が重要と慎重な対応を見せた。
 安倍は3月22日、消費増税再延期に向けたセレモニーであった「国際金融経済分析会合」席上、クルーグマンニューヨーク市立大教授に「ドイツに財政出動をさせるにはどうすれば良いか」と教えを乞うたが、やんわりとかわされた。
 このやり取りはオフレコとされたが、教授本人がSNSで暴露してしまった。説得材料なしに、意気込みだけで乗り込んでも成果は得られないばかりか、相手も対応に困惑しただろう。
 イギリスでは日英首脳会談が43年ぶりにロンドン郊外の首相別荘(チェッカーズ)で行われるなど、G7議長国への気配りがなされた。
 しかし空気を読めない安倍はオバマの真似をして「イギリスはEUに止まるべき」と差し出がましい口をきき、国民投票を控えたデリケートな時期に英国民の反発を買った。
 結局5月21日、仙台市でのG7財務省・中央銀行総裁会議では、財政出動に関しては各国の事情に応じて判断することが合意されるに止まり、安倍の目論見は大きく外れた。
 一方、為替政策に関しては通貨安競争を回避することで一致した。
 4月30日アメリカ財務省は上下両院に各国の為替政策を分析した半期為替報告を提出、この中で日本は不公正な為替政策を進める疑いのある「監視国リスト」入りとなった。29日に日銀政策決定会合で追加緩和を見送り、円安誘導で株価操作を目論む安倍政権にとっては打撃となった。
 仙台の会議で麻生はアメリカに円高懸念を伝えたが、ルー財務長官は、最近の円相場動きは正常と突き放した。G7の合意で、日本は野放図な円売り介入を行う余地がますます狭まり、アベノミクス起死回生策としては、マイナス金利の拡大、補正予算の乱発など、副作用の懸念がある投機的政策に頼らざるを得なくなった。
 
<訪露も成果なし>
 訪欧で思った成果を得られなかった安倍はその足で訪露、5月6日ソチでプーチンとの日露首脳会談に臨んだ。13回目となる安倍、プーチン会談は欧州首脳やオバマとの形式的な会談とは違い、夕食会を挟み3時間以上に及んだ。
 しかし前回会談で遅刻した安倍がプーチンに駆け寄ったにもかかわらず、今回遅刻したプーチンは鷹揚に構えたままだった。会談の前から飲まれているのである。
 会談の詳細は明らかにされていないが、北方領土問題に関しては「新たな発想に基づくアプローチ」に基づき、交渉を進めることで合意したことが明らかにされた。
 経済協力に関しては、日本が極東地域での天然資源開発、産業振興など8項目での協力案を提示、ロシアも積極的に受け入れる意向を表明した。これにより、領土交渉と経済協力は並行的に進められることとなったが「新アプローチ」の内容に関しては不透明なままとなっている。
 両国の一部では経済協力の進展と領土の返還がリンクするのではないかとの観測も流れた。しかし5月20日、プーチンは安倍との会談場所のソチで記者会見し「クリル諸島の島は一つとして日本に売らない」と経済関係と領土問題の分離を明言した。
 この発言で領土問題の先行きは再び不透明になった。さらに歯舞への自由渡航申請が「書類上の不備」を理由に却下されるなど、楽観論を打ち砕かれる事態が続いている。
 今回の訪露は、アメリカの懸念を振り切り踏み込んだ形となったが、リスクに見合うだけのリターンが得られたとは言えない結果になった。
 一方、ロシアはアジアでの存在感を高めている。先述のプーチン発言も19,20日ソチで行われたロシア、東南アジア諸国連合首脳会議を踏まえて発せられたものである。
 この会議ではアジア太平洋地域での安全保障問題に関し、ロシアのプレゼンス拡大を歓迎するなどとする「ソチ宣言」が採択された。これはアメリカ、中国に対する牽制であるとともに、日本抜きでもアジアでの影響力を拡大させるというメッセージであると言えよう。
 両者は9月にウラジオストックで会談し、年内のプーチン訪日=山口会談、広島訪問という先走った見方も取りざたされているが、何回会談しようが政権浮揚につながる外交的成果を得られる見込みはないのである。
  
<崩壊する「対中包囲網」>
 顕著な外交的成果が見いだせない中、安倍政権が執拗に追及しているのが対中包囲網である。しかしこの間、この構想を根幹から揺るがす事態が相次いでいる。
 4月26日、オーストラリア政府は次期潜水艦建造計画に関し、フランスDCNS社を選定したと発表し、本命視されていた日本の「そうりゅう」型は脱落した。安倍はアボット前首相との個人的信頼関係を頼りに、対中軍事協力を進め「そうりゅう」型の採用はその象徴と位置づけられてきた。
 しかし、オーストラリアの政権交代で状況は大きく変わり、雇用拡大や技術移転という経済ベースより政治ベースに偏向する日本案は忌避される傾向にあった。
 しかし安倍政権は政治主導で事を強引に進め失敗した。対中連携を前面に出さなければ受注できずとも技術的、経済的問題が要因とできたものを、前のめりになるあまり、対外政策の失敗というレベルの違う問題となってしまったのである。
 菅は同日の記者会見で「日豪の防衛協力を進めることに変わりはない」と取り繕ったが、前日電話連絡を受けた安倍は「大変残念な結果だ」と落胆し、中谷防衛相は憮然として「豪政府に経緯を糺す」と公言、政権内の動揺は隠しきれなかった。
 この件に関し、一部の海自幹部には「中国に軍事機密が流失する心配があったので安心した」などという声があったという。負け惜しみにしか聞こえないが事実だとすれば、オーズトラリアは信用できないということであり、「準同盟国」どころか防衛協力以前の問題であまりに非礼であろう。
 対中包囲網のパートナーとし、軍事協力を進めるフィリピンでは5月9日大統領選挙が行われ、ロドリコ・ドゥテルテ現ダバオ市長がアキノ大統領の後継候補らを破って当選した。
 ドゥテルテ次期大統領は南シナ海の領土問題に関し「中国が経済協力を進めるなら、領土問題は対話で解決する」と表明しており、現在の対中強硬路線は修正される可能性が高い。
 大統領選挙直前に哨戒用航空機を「プレゼント」した安倍政権としては、あてが外れた形となり、フィリピンを巻き込んだ中国封じ込め政策は思い通りには進まないだろう。
 
<日米同盟の虚構を選挙で暴け>
 こうしたなか、5月17日南シナ海海上で中国軍戦闘機2機が米軍の電子偵察機に異常接近する事案が発生した。2001年に両軍機が空中衝突した海南島事件を彷彿とさせる事態に、対中強硬派は色めきたった。
 ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は「戦うべき時には戦う」と表明、グリナート前海軍作戦部長は共同通信のインタビューで、南シナ海での日米共同作戦を提唱している。
 しかしグリナートは対中強硬姿勢が問題視され(本誌444号参照)た人物であり、母が日本人のハリーも「母国」への思いが過ぎればオバマ退任の道連れにされるであろう。
 4月21日、アメリカ上院軍事委員会で証言にたったロビンソン太平洋空軍司令官とスカパロッチ在韓米軍司令官(共に大将)は「アメリカが直面する最大の脅威はロシア」(ロ大将)「ロシアはますます攻撃的になっている。アメリカは強く、一貫した態度で臨むべき」(ス大将)とロシア主敵論を開陳した。
 両将軍はこののち北米、欧州担当に転任する予定だったのでロシアを意識した面もあるが、中国、北朝鮮と対峙する司令官の考えは米軍、米政府の本音であろう。
 この間、米太平洋軍の軍紀の乱れを指摘してきたが、4月28日沖縄で元海兵隊の軍属による殺人事件が発生した。安倍政権はサミットで経済面での成果が期待できないなか、南シナ海問題での対中連携を打ち上げようとしていた。
 しかし直前にその枢軸である日米同盟の暗黒面が最悪の状態で露わになり、オバマ広島訪問で日米の戦後問題を終わりにしようとする安倍の目論見は外れた。ヒロシマ、ナガサキの悲劇とともに、オキナワの悲劇も改めて明らかになったのである。
 日米両政府は大慌てで事態の収束に動いているが、及び腰であることは隠せない。犯人は当然重罪に処されるべきであり、オバマ政権も同意するであろうが、そのことはトランプを勢いづかせることにもなるだろう。
 こうした事件の再発を防ぐためにも沖縄県議選、参議院選挙の重要性は増している。5月19日の党首討論で民進党は消費増税の先送りを主張した。これに他の野党も同調し「消費増税再延期」を大義名分に衆参同日選挙を目論む安倍は出鼻をくじかれた。
 消費税問題が後退する中、格差、非正規雇用の拡大に露わな安倍政権の経済政策の失敗を争点として浮上させるとともに、野党、民主勢力は参議院議員選挙で、戦争法、日米軍事同盟の問題点を訴えていかねばならい。(大阪O)