ASSERT 465号 (2016年8月27日発行)

【投稿】 核軍縮に背を向ける安倍政権
      〜野党・民主勢力の立て直しを急げ〜
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【投稿】 核軍縮に背を向ける安倍政権
             〜野党・民主勢力の立て直しを急げ〜


<高まる核軍縮への機運>
 国際的な核軍縮の動きが進む中、安倍政権は阻害物として登場している。
 7月上旬、ワシントン・ポスト紙はオバマ大統領が、核兵器先制不使用宣言を検討していると伝えた。さらに8月にはアメリカが核実験の全面禁止決議案を、国連安保理に提出することを検討しているとも報じた。
 核実験に関しては1996年に核実験全面禁止条約(CTBT)が国連で採択されたものの、アメリカ、中国などの核保有国が批准していないため発効のめどが立っていない。
 とりわけアメリカでは共和党の反対で、上下両院での議決が困難な状況が続いており、国連での全面禁止決議案はこの隘路を突破するものと思われる。5月の広島訪問を踏まえ、オバマの核軍縮に向けた取り組みが加速しているように見える。
 こうしたなか、8月19日にはジュネーブで国連核軍縮作業部会が開かれ、2017年中の核兵器禁止条約に関する交渉開始を、国連総会に勧告する報告書が採択された。
 作業部会には、核保有国は参加していないがアフリカ、中南米、東南アジアを中心とする非核保有国がイニシアティブを発揮し、賛成68、反対22、棄権13の圧倒的多数で可決され、これを支持する国は107か国にのぼった。
 今後報告書は9月に始まる国連総会に提出され、これを踏まえた総会決議案が作成される方向となっている。
 この間の 動きをみると、核保有国(アメリカ)と非核保有国がそれぞれの立場で核軍縮プロセスを模索しており、法的拘束力を持った包括的な核兵器禁止から廃棄に至るスキーム構築までには、困難な道程が存在している。
 しかしながら、既存のCTBT、核拡散防止条約(NPT)に現在提案されている宣言、条約を結合させることにより、より効果的な核兵器への規制が作り出されるであろう。
 そして何よりも、核保有国、非核保有国を問わず様々な核軍縮に向けた提案がなされることにより、核廃絶に向けた国際的な機運が醸成されることが、期待されているのである。
 
<核兵器信者>
 このような国際的な動きに水を差そうとしているのが安倍政権である。7月26日ハリス米太平洋軍司令官と会談した安倍は、オバマが検討している「核先制不使用宣言」に反対する意向を示したと、ワシントン・ポスト紙(8/15)が報じた。
 安倍はアメリカが核先制不使用を宣言すれば北朝鮮に対する抑止力に影響が出る、と懸念したと言う。これは「核の傘」という都合のいい言葉ではなく、核による脅しを全面的に肯定するものである。そもそもオバマは北朝鮮の「脅威」を勘案したうえで先制不使用を検討しているのであり、安倍は北朝鮮の「脅威」がそれほど高くないことが、明らかになるのが不都合なのだろう。
 主要な核兵器保有国のうち中国はすでに先制不使用を明らかにしている。さらに英仏が先制使用するとはだれも考えないだろう。
 ロシアは、NATO軍がロシア領内に侵攻した場合に核先制使用の可能性を排除していないが、ロシア軍が通常兵力で防ぎきれない規模の介入が生じることは考えられない。
 この様に国際的にも核兵器の先制使用は非現実的であるにもかかわらず、安倍政権は核抑止力にしがみついている。ジュネーブでの作業部会報告書採択に於いても日本は棄権に回った。日本は昨年の作業部会設置の際も国連総会で棄権しており、一貫して核軍縮に背を向け続けている。
 安倍政権は核兵器保有国が参加した枠組みでないと実効性がない、と理由をつけているが、核兵器廃絶を目指すどころか、実際には核兵器依存政策に拘泥し続ける姿勢が露わとなった。
 消極的な安倍政権の対応に批判が高まっている。8月6日広島、長崎の被爆者団体を始めとする国内外の115名の有識者らが連名で、オバマ大統領の核兵器先制不使用に反対しないように、とする書簡を安倍に送付した。
 9日の長崎平和宣言では、日本政府は核兵器廃絶を言いながら、核抑止力に依存していると、安倍政権の姿勢が厳しく批判された。さらに15日にはバイデン副大統領が、日本国憲法が日本の核武装を押しとどめている旨の、異例ともいえる発言を行った。
 こうした動きに動揺した安倍は20日羽田空港で、報道陣からワシントン・ポスト紙の報道について聞かれ、ハリス司令官とは「核兵器先制不使用に関するやりとりは全くなかった。どうしてこんな報道なるのかわからない」(8/20「毎日」)、と言い捨ててリオデジャネイロに出発した。
 
<軍拡は積極的>
 核軍縮に消極的な安倍政権は、戦争法成立1年を迎えようとする中、軍拡、緊張激化には極めて積極的となっている。8月3日の内閣改造で稲田朋美が防衛大臣に就任した。これは小池百合子に対するあてつけもあるだろうが、中国、韓国はもちろんアメリカからも警戒の声が上がった。
 そして同日、北朝鮮は中距離弾道ミサイル「ノドン」の試射を行い、その一部が秋田県沖250qの排他的経済水域に落下した。7月の潜水艦発射弾道ミサイル試射につづき、事前に察知できなかった日本政府は8日、破壊措置命令を発令、これを3か月ごとに更新し常時発令状態とすることを決定した。
 中国に対する、挑発、牽制も引き続き強められている。8月2日閣議了承された防衛白書では、中国に対して「強い懸念を抱かせる」と南シナ海や東シナ海での動きに言及し、厳しい批判を行った。
 8日には東シナ海の中国ガス田施設に水上レーダーと監視カメラが設置されているとして、外務省が抗議を行った。政府は軍事利用の可能性があるとしているが、件のレーダーは漁船やプレジャーボートについているのと同等のもので、軍事的脅威にはなりえない。中国としては「倭寇」対策のつもりで設置したのではないか。
 さらに安倍政権は、オーストラリア、フィリピンの政権交代で綻びた「対中包囲網」を取り繕おうと躍起になっている。
 8月12日ダバオで日比外相会談が行われ、中国に対する「懸念を共有」することで一致し、「法の支配を尊重」することを確認した。18日には円借款で沿岸警備隊に供与する10隻の巡視船の一番船がマニラに到着した。
 これは自衛隊練習機貸与につづく「軍事援助」となるが、いずれもアキノ前政権時に決まったものである。今後対中交渉を模索するドゥテルテ大統領がこれらをどう利用するか不透明であり、国内の犯罪組織や武装勢力対策に活用されることも考えられる。
 この様な「努力」にかかわらず、この間中国は海警局などの公船を連日多数尖閣近海に出動させている。事態は泥沼化しており収束の兆しは見えていないが、安倍政権としては、このまま緊張状態が続くことを望んでいるのだろう。
 
<軍拡阻止へ総力を>
 中国の脅威を利用した沖縄への圧力も強まっている。7月22日政府は、辺野古埋め立て承認取り消しの撤回を求めた国の是正指示に従わない沖縄県を提訴した。そして同日同県高江地区のヘリパッド工事を再開し、辺野古での陸上工事も近く再開しようとしている。
 さらに菅は8月4日の記者会見で、これまで別問題としてきた基地と沖縄振興措置についてリンクさせることを明言した。これは兵糧攻めを行うと言うことであり、あまりに露骨な圧力である。
 19日には普天間基地の施設が老朽化しているとして、大規模補修を行うことを明らかにし、普天間基地の固定化から辺野古基地の併存をも目論んでいることが明らかになった。これら軍拡は中国の脅威に対抗するためのもので、それに反対する沖縄は問題だ、との宣伝が進められている。
 自衛隊の任務拡大も止まらない。参議院選挙を勘案し先延ばしになっていた「駆けつけ警護」が、11月に南スーダンに派遣される部隊から可能となる。南スーダンでは7月以降、現大統領派と前第1副大統領派との間で内戦状態に陥っている。
 8月に入り前副大統領はコンゴに脱出、8月13日には国連がPKO部隊4000人の増派を決定したが、戦闘は南部の首都ジュバから北部にも拡大している。稲田は15日の記者会見で南スーダンの現状は「『PKO5原則』は満たしている=安全」と強弁しているが、それならジプチ訪問でお茶を濁さず自らジュバに乗り込み「安全」を証明すべきだった。
 安倍政権はアメリカと稲田の面目を立てるためジプチに派遣したが、服装のチャラさとも相まって(さすがに基地では「戦闘服」に着替えたが)逆効果だったと言えよう。
 7月の戦闘では、国連の装甲車が戦車の砲撃を受け中国兵7人が死傷した。正規軍同士の衝突に等しい状況下に駆けつければ、多大な損害を被るのは明らかであり、安倍政権は新たな戦死者を生み出す方向へと向かっている。
 8月15日の戦没者追悼式で安倍は「戦争の惨禍を決して繰り返さない」と述べたが、加害責任や謝罪抜きの言葉は白々しいものだった。
 同式典で「深い反省」を述べた天皇は、8月8日に「生前退位」の意向を強く滲ませたメッセージを発した。天皇が「任期短縮」を望んでいる一方、安倍は総裁=総理の任期延長を目論んでいる。その目的が改憲にあることは火を見るよりも明らかであろう。
 これに対抗すべき野党は、東京都知事選挙の惨敗以降まったく存在感を示せていない。民進党は代表選挙があるにもかかわらず、政策抜きの党内政治が優先され社会から遊離している。
 共産党も選挙が終われば日常の風景に戻った感があり、社民、生活は相変わらず風前の灯である。市民運動も8月15日をもってSEALDsは解散し、三宅洋平は安倍昭恵さんと高江に現れ現地を混乱させた。
 野党、民主勢力はこの間の選挙総括を踏まえ、早急に立て直しを進めなければならない。(大阪O)