ASSERT 467号 (2016年10月22日発行)

【投稿】 国会翼賛化進める安倍政権
        ―野党は解散総選挙の準備進めよ―
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【投稿】 国会翼賛化進める安倍政権
            ―野党は解散総選挙の準備進めよ―


<与党ペースの前半国会>
 9月26日開会された192回臨時国会で、安倍政権は不誠実な対応をとり続けている。安倍は所信表明演説で自衛隊、海保、警察に敬意を示そうと呼び掛け、自民党の多くの議員がスタンディングオベーションで答えた。自己陶酔と阿諛追従の極みであろう。
 これには民進、共産などの野党、さらには「ほぼ与党」と言ってもよい維新までもが、異常な事態だとし再発防止を求め、27日の衆院議運理事会で確認された。しかし当の本人の安倍や閣僚は意にも介せず、野党の質問に対し不誠実な対応に終始している。
 民進党などは衆参の代表質問で、憲法審査会再開の前提として、超復古主義的な自民党改憲草案の撤回を求めた これに対し安倍は頑なに撤回を拒否、あくまでも現行憲法の全面的否定に拘泥する姿勢を示したが、結局自民党は改憲草案の事実上の棚上げで妥協し、審査会の論議が再開される方向となった。
 10月3日の衆院予算委では、韓国の元従軍慰安婦への対応に関し「(自らの)お詫びの手紙は毛頭考えていない」と言い放ち、元慰安婦など関係者の神経を逆なでした。手紙等は昨年末の日韓最終合意に含まれていないとしているが、「10億円渡したのだからごちゃごちゃ言うな」との安倍政権の考え露骨に表れている。こうした不誠実な対応が続けば、韓国の次期政権による合意見直しの動きも浮上するだろう。
 国会では連日、野党からアベノミクスの行き詰まりを追及されたが、安倍は農協改革や電力自由化などを進めてきた、働き方改革は待ったなし、年金運用(GPIF)は民主党政権時よりうまくいっているなどとはぐらかした。
 ところが10月3日の日銀短観では、業況判断指数(DI)は6月調査と変わらず、2期連続の横ばいであることが明らかとなった。さらに6日、ワシントンで開かれたG20財務相、中央銀行総裁会議では「毎度おなじみ」の政策総動員が確認されたものの具体策は打ち出せず、同会議では日本経済に関しても、デフレ脱却が進まずに金融緩和が長期化し今後も低成長が続くと、ネガティブな見通しが示された。
 国民生活レベルでも電通社員の過労自殺が衝撃を与え、新たな年金ルールでの支給額削減が明らかになった。このように国内外でアベノミクスの行き詰まりが明らかにされているにもかかわらず、安倍は今国会を「アベノミクス加速国会」と位置づけ、「マイナス金利の深堀り」=「墓堀」などという異常な金融政策に依拠せざるを得ない経済政策を強引に進めようとしている。
 こうした失政を糊塗するための16年度補正予算3兆2869億円が、11日自民、公明に加え日本維新の会も賛成し成立した。維新は事実上の閣外協力の立場を鮮明にし、あまつさえ自公維連立政権―翼賛体制の様相を呈した。
 このような維新の対応を批判した民進党の江田憲司に対し、大阪府知事でもある松井一郎は「江田は痴呆症」と暴言を吐いた。猖獗を極める「3分の2勢力」の知性レベルを如実に示すものである。

<軍拡は着実>
 足元がおぼつかない経済、金融政策に対して、安倍政権の軍拡、緊張激化政策は着実に実行されている。安倍政権は自衛隊への「駆け付け警護任務」「宿営地の共同防護任務」の付与を目論んでいる。
 10月8日、先月南スーダン訪問をドタキャンした稲田防衛相が首都ジュバを訪れた。稲田は国会前半で、核武装に関する過去の言動等について追及され、満足な答弁ができなかった。
 中国漁船を「公船」、中国艦艇を「戦艦」(これは右派が批判する福島瑞穂の「米空母からB52が飛び立つ」に匹敵する)と言い間違え、さらには「防衛費」を軍事費と本当のこと言ってしまい(これは仙谷由人の「暴力装置」に匹敵するヒット)審議を混乱させた。
 さらに9月30日の衆議院予算委では、戦没者追悼式に関する矛盾した言動を指摘され泣き出してしまった。これは靖国参拝問題をクリアさせるための稲田への官邸の配慮が裏目に出た形となった。
 こうしたなかジュバ入りした稲田だが、視察は陸自の軽装甲機動車に便乗、前後をいつ敵対するか判らない政府軍部隊に挟まれてのものだった。現地の滞在は約7時間であり文字通りとんぼ返りの形式的なもとなった。
 南スーダンでは7月に発生したジュバでの大規模な戦闘の後も、大統領派、元副大統領派の交戦や民間人への襲撃が続いている。11月になれば乾期に入るため、泥濘で移動が困難だった北部でも戦闘が激化すると懸念されている。
 稲田は帰国後の11日の記者会見で「ジュバの市内、かなり何点か行きましたけれども、そこは比較的落ち着いているという印象をこの目で見て感じたところであります」と感想を述べた。
 同日の参議院予算委では安倍が「衝突はあったが戦闘行為ではなかった」と詭弁を呈した。これは小泉元総理の「自衛隊の活動する地域が非戦闘地域」はおろか、戦争を「事変」と強弁した旧軍部にも通じるものがある。
 翌日の衆院予算委では共産党の質問に対し安倍は「南スーダンは永田町より危険」と国会を愚弄するような答弁を行い、18日の閣議後の記者会見で稲田は「ジュバではPKO5原則は保たれている」と再度強弁、新任務付与を押し通そうとしている。新任務では隊員の戦傷死の危険性が高まるが、戦場医療体制はお粗末なままであり、国会での拍手も空虚に響くのみである。
 この動きに連動し、アフリカ大陸に対する軍事的プレゼンスが強化されようとしている。NHKは10月14日、ソマリア沖での海賊対処活動について、防衛省は近年海賊が激減したことと、中国、北朝鮮への対応から、年内にも派遣護衛艦を2隻から1隻に減勢する方針と伝えた。これが事実なら海賊対処のため設けたジプチ基地は縮小するのが筋であるが、事態は逆である。
 政府はすでに昨年ジプチ基地の拡張方針を示していたが、13日のロイター通信によれば、今後ジプチに輸送機と新型装甲車を常駐させる方向だと言う。護衛艦は減らすが、対地攻撃も可能な哨戒機については2機のまま据え置くとしており、基地の任務が海賊対処からアフリカ大陸における橋頭堡へと変貌したことを示している。これはアフリカにおける権益確保とともに、同地、東シナ海における対中シフトの強化という安倍政権の方針に沿ったものである。
 
<孤立化進む日本、民進党>
 8月のTICAD6(第6回アフリカ開発会議)開催にも明らかなように、アフリカへの思いを強くする安倍であるが、アフリカ諸国はプラグマチックである。 
 10月4日南アフリカのヨハネスブルグで開かれていた、ワシントン条約締約国会議は、米国やケニアなど10か国が提案した象牙の国内取引禁止=市場閉鎖決議を採択した。日本は修正を求めていたが押し切られた形となった。政府は半ば負け惜しみかのように「日本の市場は対象外」と強弁している。
 しかしTICAD6を「大成功」「日本はパートナー」と称賛したケニアは今回「日本市場も当然対象」と手のひらを返したようにけんもほろろである。決議は中国が米国、アフリカ諸国と協調し賛成に回ったのが大きいが、またしても、安倍外交の無価値さが露呈し、アフリカ大陸での対中劣勢が明らかとなった。
 安倍の片思いはアジアでも進行している。ドゥテルテ大統領の反米、親中路線が加速している。フィリピンではアメリカとの合同軍事演習が行われているがドゥテルテは「これが最後だ」と突き放した。
 武器購入を巡っても「アメリカが売らなくても、中国やロシアから買えばよい」と発言するなど、ますますアメリカへの対決姿勢を強めている。10月18日の中比首脳会談では、南シナ海問題は脇に置かれ、共同声明では経済協力の推進など友好関係の発展が確認された。
 この動きに安倍政権は困惑を隠せないが、25日に訪日するドゥテルテにどう対応するのか。アジアでは先にプミポン国王が死去したタイでも、潜水艦購入など対中接近を進める軍部の影響力が強まるのは明らかであり、インドシナ半島はベトナム以外すべて親中になろうとしている。
 10月15日からインドのゴアで開かれたBRICs首脳会議は、各国の思惑が交錯し強力なメッセージは発信できなかったが、それでも共同声明で「第2次世界大戦の結果を否定することは許されない」と名指しはしないが、日本を牽制することでは一致した。このようにアジアでも対中劣勢が進むのは確実であるが、世界的にも孤立が進もうとしている。
 パリ協定を巡り、9月以降アメリカ、中国、インド、EUなど主要国、地域が雪崩を打ったように批准を決定し、11月4日の発効が確定した。慌てた日本政府は10月11日ようやく閣議決定を行ったものの、批准手続きは11月7日からの協定締約国会議には間に合わず、温暖化対策における影響力の低下は避けられない情勢となった。
 日本の孤立化が進む中、同盟国アメリカは大統領選の混沌とその後の動きが不透明であり、現在安倍が頼るのはロシアしかないようである。この間、歯舞、色丹の返還は既定路線の様に喧伝され、あるいは日露共同統治など安倍政権に都合の良い観測気球が揚げられている。しかし、ロシアは足元を見て「対日68項目の要求」などハードルを高めてきており、楽観できる状況ではないだろう。
 11月にはロシアの空母機動部隊がシリア沖に到着し、イスラム国など反アサド勢力に対する攻撃を始めると見られている。アメリカとの緊張がさらに高まれば、12月のプーチン訪日も不安定となるかもしれない。
 こうした中にあっても安倍が国内では失政をものともせず高支持率を維持し、依然1月解散説が根強いのは、民進党の軸足が定まっていないことにある。
 東京、福岡の補選結果は織り込み済みとはいえ、ここで野党が動揺すれば安倍政権の思う壺であろう。2012年野田が3党合意の直後に解散していれば、民主党のあそこまでの惨敗は無かっただろう。解散権を持つ野田が躊躇している間に、安倍の復活を許し維新に十分な準備期間を与えてしまった。 
 次期衆院選には小池新党は間に合わないかもしれないが、新党が旗揚げすれば東京の民進党は壊滅し、蓮舫の足元も崩れ去るだろう。新潟知事選で民進党は市民共闘から脱落した。中途半端な対応ではさらに窮地に追い込まれ、孤立化するだろう。野党4党には新潟知事選の教訓を踏まえ、後半国会では経済政策、TPP問題での追及を強めながら、安倍政権の解散戦略を受けて立つ選挙協力体制の構築が求められている。(大阪O)