ASSERT 468号 (2016年11月26日発行)

【投稿】 トランプに追従する安倍政権
     〜軍拡と差別、分断に対抗する取り組みを〜
【投稿】 廃炉・賠償費用さえ電気料金に転嫁する「資本主義」の腐臭
【投稿】 米大統領選が明らかにしたこと−−統一戦線論(30)
【本の紹介】 「日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか」 

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【投稿】 トランプに追従する安倍政権
      〜軍拡と差別、分断に対抗する取り組みを〜

<「親米倭王」>
 12月18日、ニューヨークで安倍は高級ゴルフセットを携えトランプ次期大統領と面談した。面談は非公式、非公開とされ詳しい内容は公表されず、数枚の写真と雰囲気だけが伝えられた。
 安倍は面談後のコメントで「トランプ氏は信頼できる指導者だと確信した」と述べ、菅や麻生も「大きな一歩を踏み出す素晴らしい会談」「予定時間を超えての会談は波長が合うと言うこと」と会見で述べるなど、会うこと自体が大目的であった今回の面談の性格を、億べもなく吐露している。
 そもそも、9月、早々と国連総会出席に合わせヒラリー・クリントンとの会談を設定したのは勇み足であった。11月9日トランプ当確が報じられると安倍は「話が違うではないか」と周囲に当り散らしたと言う。
 その後の囲み取材で安倍は、「お祝い申し上げる」と言いながら、とても喜んでいるとは見えない緊張した面持ちで「日米同盟は普遍的価値で結ばれた揺るぎない同盟であります」と言うのが精いっぱいであった。
 9月の失態を挽回するため、「いざ鎌倉」とばかりに各国の指導者が電話協議に止める中、真っ先に面談を取り付けたが、トランプ政権の基本政策や、主要人事が定まらない中、これもある意味勇み足であったと言えよう。
 安倍はこれまで、「民主主義」「法の支配」という価値観外交を前面に押し出しながら、当該国民や国際社会から「非民主的」「独裁的」と批判される権力者と親交を結んできたわけで、今回のトランプ訪問もその延長線上にある。
 かつて安倍は「オバマ大統領とはケミストリーが合う」と語っていたが、その後、歴史認識や人権問題など政治理念の違いから溝が深まり、結局疎遠になっていった。今回オバマとは正反対のポリシーを持つトランプと早速「ウマが合う」とは、いかに表面的な付合いに終始しているかが窺い知れる。
 それでもオバマは安倍に対し2015年4月に、日本の総理としては54年ぶりとなる上下両院合同議会での演説という栄誉を送るなど、手厚く処遇をしてきた。しかし、安倍政権は今回トランプとの面談に奔走するあまり、APECでのオバマとの会談調整は後回しにするという、手のひらを返したたような非礼さである。
 さらに安倍は、訪米前に空港で「トランプ大統領に会えるのが楽しみ」などと、すでにオバマは過去の人と言わんばかりの浮ついた様子を晒した。片やトランプサイドが今回の面談に関し「アメリカの大統領は一人だから」と非公式を強調して、オバマに気配りを見せていたのとは好対照であり、軽薄さが際立つこととなった。
 今回の行動に関して、民進党などは「朝貢外交」などと批判を強めており、確かに安倍の姿は「親米倭王」に相応しいとも言える。それにも増して明らかになったのは「ウマが合う」のは結局価値観が同じだからという、理念、価値観、政策より人間関係優先の安倍外交の本質であると言えよう。
 
<トモダチ外交>
 そうした観点からいえば、この間官邸や政権はクリントン勝利前提で動いていたものの、安倍本人はそれを望んでいたとのではないかも知れない。人権問題に機敏なクリントンであれば、靖国参拝や従軍慰安婦問題に関して今後もプレッシャーをかけられるだろうが、トランプは心配ないだろう。
 政策面に関してもTPPは空中分解の危機に瀕しているが、もともと2012年の総選挙で自民党は「TPP断固反対」を謳っていたわけである。さらに先の参議院選挙において北海道、東北で野党共闘が功を奏した背景にはTPPへの根強い批判がある。
 次期総選挙の勝敗を考えるならば、実際はさしたる経済効果も望めないTPPがアメリカの都合で立ち消えになるのは、安倍政権にとって願ったり叶ったりであろう。こうした状況の中、APECの諸会合で各国が情勢の推移を伺いつつ、建前としてTPPの枠組み維持を確認する中、日本が一人TPP推進の旗を振る姿は戯画に等しいものがある。
 日米軍事同盟についても、トランプ政権から駐留経費の負担問題にかかわる「片務性の解消」要求が出たとしても、それは安倍政権にとってはさらなる自衛隊の任務拡大、軍拡合理化に利するだろう。
 これまでアメリカの歴代政権、とりわけオバマ政権は日本の軍拡が東アジアでの緊張を高めることに懸念を持っていたが、トランプ政権でそれは解消の方向に向かうだろう。
 南シナ海に関しては、米中関係が改善されれば、ドゥテルテの対中融和姿勢と相まって、南シナ海での日本のプレゼンスは後退を余儀なくされる。
 一方沖縄の米軍基地、のみならず在日米軍に関しては、米軍部の既得権益の問題なので、大きな変化が起きるとは考えられない。軍は圧倒的にトランプ支持であり(10月の調査では4軍平均トランプ68%、クリントン18,5%海兵隊に至ってはトランプ74%、クリントン9%)その意向は尊重されるだろう。
 東シナ海についても、もともと米中は緊張激化を避けたい思惑があり、状況に大きな変化はないと思われるが、南シナ海での圧力が軽減した中国がリソースを東シナ海に振り向ければ、日本の軍拡の格好の口実になる。
 このようにトランプ政権は、日米同盟や自由貿易の危機という表立った懸念とは裏腹に、安倍にとってはまたとない「トモダチ」となる可能性が高い。
 もう一人の「トモダチ」であるプーチンとの関係は微妙になるかもしれない。トランプはかねてからプーチンを称賛していたが、米露関係が修復に向かえばロシアにとっての日本の利用価値は低下する。
 11月15日、プーチンは収賄容疑で拘束されていたウリュカエフ経済発展相を解任した。これは2018年の大統領選挙を見据えた政略との見方もあるが、対日交渉よりもロシアの国内政治が優先されたことは間違いない。
 こうした、先行き不透明の中、18日リマで開かれた日露経済次官級協議で、資源、エネルギー開発など経済8項目の作業計画が合意され、経済協力は見切り発車される形となった。
 一方、領土問題―平和条約交渉に関する20日の日露首脳会談では、目立った成果は無かった。9月のウラジオ会談後安倍は「領土交渉の道筋は見えてきた」「手ごたえを強く感じとることができた」と胸を張った。
 しかし今回は「70年間できなかったわけでそう簡単ではない」「道筋は見えているが、一歩を進めることは簡単ではない」と足踏み状態であることを認めざるを得なかった。そればかりかNHKの報道によると、会談でプーチンは「日露貿易が今年の半年で対前年比36%も減少した。これは第3国の圧力の所為だ」とネガティブな発言をしたという。
 秋口の「2島返還+α」などという楽観的な見方は影を潜めた。潮目は変わりつつあり、今後のトランプ、プーチンの動向如何では「トモダチ」どころか三角関係になる可能性も出てきた。 

<軍拡と社会の分断>
 不安定さが付きまとう「トモダチ」は他にもいる。10月26日の日比首脳会談でドゥテルテは法の支配と民主主義の重要性を強調、中国寄りの姿勢を修正するかに思えた。しかし今回のAPEC首脳会議で、中国とは兄弟のようになりたい、南シナ海問題は協力して平和的に解決する、と述べるなど基本は対中融和であることが明らかとなった。
 それでも対中包囲網を取り繕うことに懸命な安倍は、11月2日ミャンマーに対し5年間で8000億円の経済支援を行うことを確認、7日にはカザフスタンとの間で、同国の原発建設計画への協力や、軍事交流の強化に関する共同声明を発表した。
 そして11日にはインドとの間で内外の批判をよそに日印原子力協定を締結、17日にはマレーシアに対し、退役した海保の巡視船2隻を供与することが決定された。これらは、いずれも訪日した各国元首級VIPとの会談で確認されており、次々とやってくるアジア各国の首脳を前に「アジアの盟主」を夢想したのであろう。
 さらに安倍はアフリカへの権益拡大をめざし、先のTICAD6(第6回アフリカ開発会議)で「自由で開かれたインド太平洋戦略」を掲げ、その最前線として南スーダンへの派兵を継続している。
 11月15日政府は、新たに南スーダンに派遣される部隊に対し「駆け付け警護」「宿営地の共同防護」任務を付与することを閣議決定した。これに基づき20日から交代部隊が順次出発し、12月12日から実施が可能となる。 
 南スーダンでは、マシャール前第一副大統領派のSPLM-IO「スーダン人民解放運動」が11月16日に3つの町を武力制圧、国連も「民族大虐殺」の危機が迫っていると警告を発し、日に日に緊張は激化している。国連側も7月の戦闘で各国のPKO部隊が民間人救出を拒否したとして問題となり、ケニア人司令官が解任された。これに反発したケニア軍が撤収するなど、PKO部隊の統率が乱れているのが現状である。
 安倍政権は「駆け付け警護」が発令されるのは「首都周辺で少人数の武装集団が国連関係者を拉致しようとした場合」などと「限定運用」を強調しているが、現地の状況では有りえない楽観的な想定である。
 首都ジュバの攻防戦が始まれば、7月のように戦車、攻撃ヘリなど重火器を用いた戦闘になると思われ、駆け付けるどころか宿営地に籠城していても損害を受ける危険性がある。
 安倍はこうした軍事活動拡大で実績を重ねながら、強引に総裁任期を延長し改憲に向けた長期独裁政権作りを目指している。そのためにはトランプに追従し、ある時はその手法を利用しながら強権政治を進めるだろう。すでにアメリカでのポリティカル・コレクトネス批判に乗っかり、「土人が差別か理解できない」という鶴保を擁護、レイシストを増長させ憎悪を拡大しようとしている。
 さらには、経済政策の失敗で増大する格差は分断支配には格好の材料である。これらに対抗すべき野党共闘、市民運動の連携再構築が求められている。(大阪O)