ASSERT 475号 (2017年6月24日発行)

【投稿】 恐怖政治へ突き進む安倍政権
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【投稿】 恐怖政治へ突き進む安倍政権
             ―共謀罪の強行採決を糾弾する―


アベ・ファースト
 6月15日早朝、安倍政権は参議院本会議で「共謀罪」法案の採決を強行した。同法務委員会での採決を省略する「中間報告」という禁じ手を使っての暴挙である。
 こうまでして強引に6月18日の国会会期内での成立を図ったのは、会期延長によって加計学園に関する疑惑拡大と追及強化を封じ込めるためである。安倍の保身を最優先とした、民主主義を無視の乱暴な国会運営が森友問題に続き、ここでも公然と進められた。
 5月17日に「総理のご意向」文書が暴露された当初、官邸は菅が記者会見で「怪文書」であると切り捨て、前川喜平前次官の告発に対しては「読売砲」の援護射撃を受けながら、「出会い系風俗店に通う人間の言うことは信用ならない」旨の個人攻撃を繰り広げた。
 安倍も国会で問題の本質には触れず、お決まりの「印象操作」を繰り返すのみでかえって疑惑を深める結果となった。一方の当事者である文科省は当初は松野大臣が「文書は確認できない、調査の必要はない」と黙殺し、国会審議でも義家副大臣が「私が知らない文書は行政文書ではない」「情報を明かした職員は守秘義務違反だ」などと、暴言を連発していた。
 しかし次々と新たな証拠が明らかになる中、官邸は6月9日になって再調査開始を公表、その裏で「共謀罪」法案の強行採決を準備するという手段を画策していたのである。
 再調査の結果として、国会閉幕直前に安倍政権が見せたのは「文章は存在したが、それは役人が勝手に作ったものであり、内容は不正確である」という開き直りであり、前川証人喚問や閉会中の審査も拒否した。
 一連の疑惑の中で文部科学省がスケープゴートとされ、強引な幕引きを合理化するため「都議選への影響を懸念する公明党への配慮」などという詭弁も持ち出された。
 森友事件でも、「昭恵夫人付き職員」が生贄にされたが、己の保身のためには部下であろうが、与党であろうが切り捨て、利用すると言う醜悪さが露呈した。一方自分に阿諛追従する者は、性犯罪の処罰強化が審議されている国会開会中に明らかになったアベトモ「ジャーナリスト」のレイプもみ消し事件に明らかなように擁護する。
 これが安倍と家族、さらに友人と一部の腹心で構成される「ファミリー」ともいうべき私党が権力を独占、私物化し、三権の上に超越すると言う「安倍一強=アベ・ファースト政治」の本質である。
 
「主権簒奪・欽定憲法」
 安倍のこうした驕慢さは止まるところを知らないようである。5月21日毎日新聞は一面トップで「陛下議論受け『ショック』」とセンセーショナルな見出しをつけ、天皇退位に関する政府有識者会議の内幕を報じた。
 同紙によると安倍昵懇の有識者会議メンバーが「天皇は祈っているだけでよい」と大災害の被災地慰問などの公務を否定し、それを伝え聞いた天皇が「ショック」だったと「強い不満を漏らした」という。つくづく「祈り、祈らす」のが好きなファミリーである。
 そもそも政権が武家に移って以降、大政奉還を経ても権力者にとって天皇は、支配の為に利用する道具であった。そのなかで現在の象徴天皇制は史上最も安定したシステムであると考えられる。
 しかし天皇が退位を仄めかしたことに、安倍が自分に対する批判の表明ではないかと反応したため、権力との関係が一気に不安定なものとなった。
 「護憲天皇」に対する不満と、天皇が退位する一方で、自らの総裁任期を延長することへの後ろめたさから、安倍は法制化に否定的であり代弁者を有識者会議に送り込み議論を引っ掻き回したのである。
 安倍は自分に対する忖度は大歓迎なのに、天皇の意向を忖度しなかったため、取り巻きの御用学者もろとも、「尊王」のメッキがはがれ、自分第一の本性が露呈してしまった。
 安倍はこの国で誰が一番偉いかを知らしめたかったのであろうが、今回ばかりは、世論はもとよりマスコミも有識者の多くも天皇を支持したため、退位特例法は「一代限り」としながら、これを先例とすることを是認したうえで成立した。
 これにより、2018年末の現天皇退位、19年初の新天皇即位が確定的となり、安倍の目論む2020改憲にも影響を及ぼすこととなった。「静謐が求められる代替わりの時期」に国論を2分する国民投票を強行することは、厳しい批判を受けることだろう。
 ただ権力亡者は「天皇も新しくなったから憲法も新しく」などと、退位を逆手に取った政治利用をも視野に入れかねない。日本国憲法は天皇の地位を「国民の総意に基づく」としているが、退位問題を含め安倍はあらゆる意思決定を「国民の総意=国民主権」の上に置こうとしている。
 これは「主権簒奪」ともいえ、その意味で改憲策動は新たな「欽定憲法」の制定に等しいものである。自民党は5月3日の安倍「改憲宣言」を受け、9条1項、2項はそのままに、自衛隊の保持規定は「9条の2」として別条項を設けるなどの具体案を検討し、今年中の成案を目指している。

万人恐怖
 今後、護憲平和勢力は安倍改憲に対する取り組みを強めていかなくてはならないが、安倍政権は森友、加計事件追及に対する意趣返しも含め、あらゆる手段を持って弾圧に乗り出してくるだろう。
 自民党は森友の籠池に対し「総理を侮辱した」として、「不敬罪」であると言わんばかりの理由で証人喚問を決定した。前川に対しても「ご意向文書」などは、機密指定もされていない情報であるにも関わらず、国家公務員法違反という恫喝がかけられている。
 釜山領事館前の少女像設置に関し、日本への一時帰国措置を批判した総領事は更迭された。今後内閣人事局の人事査定など、公務員に対する締め付けは改憲もにらんで一層厳しくなると考えられる。
 一般人に対する抑圧も強化される。今後「共謀罪」は周知期間を置かずに、異例の速さで7月11日施行される予定となっている。これは政権の焦りを表すものでもあるが、すでに弾圧の準備は整っていると言うことであり、運動体には於いては十分な警戒が必要である。
 この間、新左翼党派へのスパイ工作が露呈しているが、市民団体などへの潜入はより容易いであろう。組織にもぐり込んだネトウヨが「あいつら犯罪を準備しているみたいです」と権力に通報することは容易に想像できる。
 こうした密告、疑心暗鬼による内部からの弱体化と強権的な捜査を進めるのが共謀罪である。すでに沖縄では弾圧と「偽りの事実」の流布により反基地闘争への抑圧が進んでおり、今後この状況の全国化が目論まれている。これらは、安倍政権がまさに恐怖政治による支配へと突き進んでいることを示している。
 室町時代、王権簒奪を目論んだ足利義満の五男である六代将軍義教は、守護大名の家督相続に介入(人事権の濫用)し、批判するもの逆らうものは、庶民はもちろん公家であろうと武家であろうと容赦なく処罰した。
 この所業に当時の後花園天皇の実父は日記に「万人恐怖、言う莫れ、言う莫れ」と記した。このままではやがて「平成上皇」が同じ思いをする日が来るだろう。
 
国際連帯と野党共闘進めよ
 こうした日本政府の反動化に国際社会も懸念を強めている。5月12日には既報の通り、従軍慰安婦問題について国連専門委員会から見直しが勧告されたが、
18日には国連のケナタッチ特別報告者が「共謀罪」法案について、表現の自由を不当に制約する恐れがあると、懸念を表明した。
 また、30日にはケイ特別報告者が特定秘密保護法について、ジャーナリストが委縮しないように改正の必要性について言及、6月12日に国連人権委員会で同様の報告を行った。
 15日には同委員会で沖縄平和運動センターの山城議長がアピールを行ったが、日本の民主勢力はさらなる国際連帯を進めなければならない。
 これらに対して日本政府は、慌てて反論を行っているが説得力の乏しいものとなっている。安倍は懲りずに「価値観外交」「俯瞰外交」という主観外交を繰り広げているが、トモダチが「反民主主義のリーダー」であるトランプ、プーチンというのでは、警戒されるだけであろう。
  ヨーロッパでは、右派の伸長が著しかったが、この間の英仏の総選挙は違った結果になり、ドイツでもメルケルの支持が伸びている。東アジアに於いても、トランプ政権は北朝鮮に政府高官を派遣するなど、硬軟織り交ぜた対応を進め、ロシアも米露の緊張緩和が進まなければ、領土問題の進展は有りえないと、日露2国間の枠組みを変更する姿勢を見せている。
 このような世界の動きに安倍政権は相変わらず対応しきれていない。とりわけ中国、韓国との関係改善に関しては二階幹事長に丸投げとなっている。その二階は6月16日のテレビ番組で、国民投票と総選挙の同時実施、2020年の改憲施行についても「適当でない」と発言し、安倍の強引な改憲スケジュールに釘を刺した。
 この間の、あまりに強引な国会運営、政権運営には与党、省庁からも批判が出ており、加計疑惑では混乱が露呈した。内閣支持率は急落したものの、野党はそれ以上に低迷している。
 民進党は、全国的に党勢回復には程遠い状況が続いている。国会が閉会した現在、地域、街頭での取り組みが重要になるが、とりわけ東京では都議選を前に組織が事実上崩壊し、そうした活動が困難という有様である。
 都議選は今後の国政選挙の動向にも影響を与えることから、野党共闘の基盤づくりに尽力することが求められている。(大阪O)