ASSERT 476号 (2017年7月22日発行)

【投稿】 四面楚歌となった安倍政権
【投稿】 日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターのプルトニウム被曝事故
【投稿】 東京都議選の結果が示したもの---統一戦線論(38)---
【書評】 『フクシマの荒廃──フランス人特派員が見た原発棄民たち』 

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【投稿】 四面楚歌となった安倍政権
               ―批判勢力に求められる受け皿づくり―

「ムシャクシャして言った、今は反省している」
 193回通常国会閉会翌日の19日夕刻、安倍は首相官邸で記者会見を開いた。
 そこで安倍は「つい強い口調で反論した私の姿勢が、政策論争以外の話を盛り上げてしまった、反省している」「(加計学園問題については)丁寧な説明をしていく」と弁明を行った。
 共謀罪の可決強行で思想・信条の自由を否定する一方、政権の私物化で「首相・晋三の自由」を謳歌してきた「独裁者」にしては低姿勢の会見であった。
 しかしそれはあくまで、内閣支持率の急落と、近づく東京都議会選挙への危機感から行われたその場しのぎの対応であることは明白であった。
 会見終了を待っていたかのように、同日夜、大阪地検特捜部は森友学園への強制捜査に着手した。「反省」を口にする裏で、逆らった者に対する報復を行うという、自己保身の為の露骨な権力濫用が示された。
 記者会見と国策捜査で一連の問題に区切りをつけようとした安倍であったが、 翌20日、文科省は萩生田が「総理は平成30年4月開学とおしりを切っている」と、獣医学部の新設認可を強要したことを記した文書の存在を明らかにした。
 安倍の目論見は外れ、これ以前に明らかとなった文書に加え、加計学園に関する疑惑はさらに深まることとなった。
 萩生田は色をなしてそれらを否定しているが、自らのブログには安倍の別荘で3人が談笑する画像が掲載されており、獣医学部新設に関する「共謀」を彷彿させるものとなっている。
 こうした状況に民進、共産、自由、社民の4野党は6月22日、臨時国会の開会を求めることで一致したが、与党は臨時国会はおろか閉会中審査にも応じないと突っぱねた。安倍は記者会見で「丁寧な説明」を行うと述べたが、その場を作ることを頑なに拒否し、説明する気など微塵もないことが暴露された。
 
「私の五月晴れ」?
 6月23日、沖縄での戦没者追悼式は安倍にとって都議選告示日に東京を離れる格好の口実となった。多数の遺族や知事も参列する式典の場で、偽りの平和への祈りをささげた安倍は、帰京せず翌日、神戸で開かれた「『正論』懇話会」に出席し記念講演を行った。
 この場で安倍は「(今秋の)臨時国会終了前には両院の憲法審査会に、自民党の改憲案を提出したい」と発言した。5月3日には読売紙上で9条への自衛隊明記など、独自の改憲案を開陳した安倍であったが、今回は産経新聞に気を使い、またしても自民党内への配慮もなしの独断専行であった。
 さらに講演の最期には「逆風に神戸の空は五月晴れ」と一句を捻り出した。爽やかな気分を読みたかったのだろうが、本来季語の「五月晴れ」とは「5月のさわやかな晴天とは意味を異にする炎暑の訪れを予感させる晴れ」(NPO「季語と歳時記の会」)である。
 やがて訪れる大炎上を予感させるような意味深なものであるが、この時点で本人はまだまだ青空にも勝る能天気だったのだろう。
 都議選の告示前に行われた世論調査では「都民ファーストの会」と自民の支持は拮抗か僅かに自民リードであった。告示直後(24,25日)の毎日新聞の調査でも投票先は「都民フ27%」「自民26%」であり接戦が予想されていた。内閣支持率も急落したものの、不支持との逆転までには至っていなかった。
 都議選において安倍自身は腫れ物に触るような扱いを受け、応援も街頭から遠ざけられていたが、思想的親和性のある「都民」の伸長を心配するより、不倶戴天の敵である民進党の壊滅に期待を寄せていたと考えられる。
 こうした中、政府は自民党に対する援護射撃を開始した。厚労省は27日「子どもの貧困率が12年ぶりに改善した」とする「国民生活基礎調査」を公表、その要因を「景気回復で雇用や収入が上向いた」ためとアベノミクスの成果を宣伝した。
 
秋葉原 飛んで火にいる夏の虫
 しかしそうした努力を水泡に帰す発言が飛び出すことになる。稲田は27日都議候補の応援演説で「防衛省、自衛隊としてお願いしたい」と発言した。この後出待ちの報道陣の多さに驚いた稲田は「どうしてこんなにたくさんいらっしゃるんですか?」と自分が何を言ったか判らない様子であった。
 稲田は発言の真意を問われその場ではあやふやな釈明をしたが、直後に官邸からの指示が入り、深夜になって発言を撤回せざるを得なかった。野党は一斉に罷免要求を突き付けたが、この期に及んでも安倍は稲田をかばい続け、本人も「職責を果たしていきたい」と辞任を拒否した。
 しかし、同盟国アメリカも半ば公然と稲田に駄目だしを突き付けた。7月14日に予定されていた日米2+2は突如中止、内閣改造後と目される9月下旬に延期された。
 さらに29日には「週刊文春」が下村博文の加計学園に係わる政治資金疑惑を報道、下村は「選挙妨害だ」と全面的に否定したがその後、文科相在任中からの加計学園との密接な関係が暴露されるなど、窮地に追い込まれた。さらに豊田の乱暴狼藉など、相次ぐ身内の失態で都議選情勢は自民にとって危機的なものとなり、自民内部からも安倍に対する怨嗟の声が聞こえ始めた。
 28日には、16年度一般会計税収が1兆円減と7年ぶりに前年度割れすることが明らかになった。これはアベノミクスの効果に疑問符つくという、前日の厚労省発表とは真逆の事態となり、省庁間の迷走が明らかになった。
 こうした状況に焦りの色を濃くした安倍は、「逃げている」との批判への反発から、選挙戦最終日に街頭に立つこととなった。
 7月1日午後4時、秋葉原に現れた安倍を迎えたのは、すさまじい批判の嵐だった。「帰れ、やめろ」コールに激昂した安倍は「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と指をさして罵った。6月18日の記者会見で口にした反省の言葉が全くの嘘であることが満天下に晒され、まさに飛んで火にいる夏の虫状態となった。「こんな人たち」は、惨敗への堰を自ら切った歴史的迷言といえよう。
 7月3日、都議選の結果を問われた安倍は「自民党に対する厳しい叱咤と考えている」とあくまで自分への支持は盤石であるかのような、度し難い勘違いの感想を述べた。
 翌日の毎日新聞のインタビューでも、今秋の臨時国会に改憲案を提案する考えは変わっていないとし、自民党内からもあがる厳しい批判に関しては、内閣改造、党役員人事で押し切る考えを示した。
 安倍は維新と同じく「都民フ」をシンパと思っている。事実小池側近の若狭はフジテレビの番組で、年内の国政政党立ち上げと改憲での協力に言及した。
 しかし有権者の思いは全く違うであろう。大阪の各級選挙で自民が維新に負け続けてきた時は、安倍政権は高支持率を維持しており、安倍は盟友の躍進に喜んでいられた。菅野完氏は「大阪では維新支持=安倍支持」と喝破しているが、今回は明らかに「都民フ支持=安倍不支持」である。安倍は完全に世論を読み違えている。
 
全世界の安倍離れ
 事実、選挙後の世論調査ではついに軒並み不支持が上回る結果が出てきており、安倍批判は強まっている。今後自治体選挙で負けが続けば安倍離れはさらに加速するだろう。都議選惨敗を受け、自民党は加計事件に関する閉会中審査に応じざるを得なくなったが、開催日が安倍外遊中の7月10日というガス抜きに等しいものとなった。
 こうした中、厳しい現実から逃れるように安倍は7月5日、訪欧に旅立ったが、その夜九州北部で集中豪雨による大災害が発生した。しかし、あとを任されていたはずの稲田ら防衛政務4役は6日日中、「民間の勉強会」参加のため、防衛省を不在にした。ここでも「職責を果たす」という言葉が真っ赤なウソであることが明らかになった。批判にさらされた稲田は、本来日米2+2開催日だった14日、被災地を視察したがこれが最後のお勤めとなるだろう。
 安倍は訪欧中北朝鮮のICBM試射を天佑として、北朝鮮に対する圧力強化を図ろうとしたが、ほぼ合意したのはアメリカだけで、対話を重視する中、露、韓との温度差が浮き彫りとなった。
 訪欧の成果として、EUとのEPA大筋合意が言われているが、都議選後の成果作りのため、生産者の不安を置き去りにしての見切り発車であることは否めない。
 G20総体としては、アメリカと他主要国の通商、貿易政策、地球温暖化対策の対立に議論が集中したが、日本の出番はなかった。安倍はトランプを説得できるどころか、貿易不均衡の是正を要求され、両者に隙間風が吹き始めた。
 安倍―習会談では初めて両国国旗が掲げられたが、安倍が提案した相互訪問は合意できなかった。首脳会談直前の7月3日には中国艦が津軽海峡で領海を侵犯、さらに日本が7月開催を目指していた、日中韓首脳会談が頓挫するなど、緊張関係が続いている。
 日露会談は直前の米露会談延長のあおりで開始が大幅に遅れ、あいさつ程度で終わった。6月下旬には官民調査団が北方領土を訪問したが、参加予定の根室市長がロシアの要請で除外され、報道陣の同行も許可されないなど異例の事態となった。
 さらに調査団帰国直後の7月5日には、昨秋択捉島に配備された対艦ミサイルの発射訓練が実施された。9月中下旬には、大規模な中露海軍合同演習が日本海、オホーツク海で予定されている。今後、弱体化しつつある安倍政権に対して、関係各国はさらなる強硬姿勢に出てくるだろう。
 政権支持率は崩壊の目安とされている「内閣支持率+自民支持率<50%」に近づいているが、批判の受け皿もおぼつかないものがある。戸籍公開要求を人権侵害と理解できない民進党は論外である。「都民フ」もNNNの調査では55,2%が国政進出を期待していない。都議選で共産党は健闘したが全国的には伸び悩みを見せている。
 また「連合」も官製春闘に埋没し「残業代ゼロ法案」容認で釈明に追われるなど、既存組織は押しなべて精彩を欠いており、政権たらい回しを傍観するだけになるだろう。(大阪O)