アサート No.476(2017年7月22日)

【投稿】日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターのプルトニウム被曝事故
                            福井 杉本達也 

1 二転三転したプルトニウム被曝事故の発表
 6月6日、日本原子力研究開発機構(JAEA)大洗研究開発センター燃料研究棟(PFRF: Plutonium Fuel Research Facility)にて、プルトニウム(Pu)・濃縮ウラン貯蔵容器の点検中に汚染事故が発生、当時作業していた5人(内職員2名、派遣1名、請負2名)全員から放射性物質が検出された。当初、内1名からは肺モニタによりプルトニウム239で22,000ベクレル(Bq)、アメリシウム(Am)241で220Bqの汚染が確認されたと発表され、「50年間で12シーベルト」、「国内最悪」、「前例ない高レベル」という見出しで、最大級の被曝事故と報道された。ところが、その後、量子科学技術研究開発機構−放射線医学総合研究所(量研放医研)で再測定したところプルトニウム239は検出されなかったとし、「被ばく量は過大か」などとして事故は極端に矮小化されてしまい(福井:2017.6.10)、マスコミの事故に対する扱いは極めて小さいものとなっていく。しかし、世の中が事故を少し忘れかけた19日、原子力機構は、作業員5人の尿から微量の放射性物質のプルトニウムとアメリシウムを検出したと発表した。体内に取り込んだ後に排出したことを示す結果で、5人の内部被ばくは確定的となった。そのため、5人は放医研に再入院して放射性物質を体外に排出するため薬剤の投与を受けた(その後も3回目の入院・投与を受けている)。

2 事故を軽く見せようとする原子力機構
 原子力百科事典ATOMICAでの説明によると「プルトニウムは通常固体や液体で取り扱われ、気体にはならない。しかし、極微量エアロゾルやミストとして人体に摂取される可能性がある。…通常の物質は経口摂取の毒性が問題となるが、プルトニウム酸化物は非常に難溶性であり、更に消化管吸収性が極端に低く、血液中には極めて入りにくいので、経口毒性は実際上は問題にならない。一方、呼吸により体内に摂取された場合、肺にしばらく留まるとともに血液を介して、主に骨、肝臓に集まるので、肺、骨および肝臓に有意な発ガンが認められないように判断基準の目安が設定されている。プルトニウムを取り扱う施設では、プルトニウムを体内に入れないために「グローブボックス」又は「セル」内でのみ取り扱い、それらの密閉性が損なわれた場合は、内部を負圧にしてプルトニウムがまわりの作業室に出てこないようにしている。」(ATOMICA(13-05-01-07))
 そもそも、『JAEA 大洗プルトニウム汚染事故に関するQ&A】』(2017.6.26)によれば、「プルトニウムから放出されるα線は透過力が小さいため、肺に摂り込まれた場合に体外からはα線は検出できません。そのため、吸入されたプルトニウムの量を体外から測定するために、透過力の高い光子(X 線またはγ線)を測定します。」とあるように、体外測定は極めて困難である。より具体的には「原子炉内では、生成したプルトニウム239 は中性子を2 回吸収した後、ベータ壊変を起こしてアメリシウム241 を生成しますので、プルトニウム239 とアメリシウム241 は一定の割合で共存することになります。アメリシウム241 は、59.5keV のγ線を放しますが、プルトニウム239 からの17keV のX 線よりもエネルギーが高く、したがって減弱による影響が小さいために、体外からでも測定しやすい核種です。プルトニウム燃料の組成が混合物の場合、プルトニウムとアメリシウム241 の比を利用して、測定しやすいアメリシウム241 をもとにプルトニウムを推定することも行われます。」とあり、アメリシウム241のγ線を測定して、プルトニウムの被曝を推定することとなる。それでも、「肺モニタのみでは体内量を推定することが難しい状況もあるために、バイオアッセイ法が利用されます」としており、バイオアッセイ法(尿による検査)がより確実な測定法であると最初から分かっている。原子力機構の肺モニタによる当初発表は一体何だったのか。

3 なぜ爆発したのか
 原子力機構は7月3日、放射性物質がエポキシ樹脂で固められた状態でビニール袋に入れられており、放射線でエポキシ樹脂が分解されてガスが発生し爆発したという事故の再現実験結果を発表した(福井:2017.7.4)。事故で飛散したプルトニウムなどは、茶筒のような形のポリエチレン容器に入っていた。これを二重のビニール袋に包んだうえでステンレス製容器に密閉、1991年から26年間、一度も開けていなかった。今回、男性職員がステンレス容器のふたを開けたところ、ビニール袋が膨張して破裂、粉末が飛び散った。機構は、「作業でビニールが破れると想定していなかった」ので作業は密閉したグローブボックスでなくフードを使用したと説明している。しかし、プルトニウムという特殊な物質を扱う作業は、上記ATOMICA(13-05-01-07)の解説にもあるように、通常グローブボックスを使用するのが常識であり、なぜこのような作業方法が採用されたのか。密封された容器内での有機材料に大線量照射を行うと、照射による気体発生によって容器が破損する場合があると以前から指摘されている(「有機材料の耐放射性に関する基本事項(3)2000.2 放射線利用技術データベース」)。神戸大学の山内知也教授は(1)ビニール袋を破裂させたのは「ヘリウムではなく水素」であり、(2)空気中の酸素と反応して「水素爆発の危険」があり、(3)最悪の場合「部屋を吹き飛ばして、プルトニウムを近隣にまき散らす」大惨事の危険があった、と指摘している。原子力機構は「バカですよ」「ド素人にもほどがある」と切り捨てている(『サンデー毎日』2017.7.2 「たんぽぽ舎:情報」より)。

4 そもそもプルトニウムはどのように管理されているのか?何から分離・抽出されたのか?
 プルトニウムとウランの元素比が26.9%:73.1%であることが公表されたが,相変わらず核種の構成比(同位体比)は非公表となっている。おしどりマコ氏は6月13日、試料の核種比Pu239/Am241はどのくらい とツイートした。元原子力機構研究員の井田真人氏も「みーゆ@リケニャ」で、機構事故続報4の「今後の原因究明で核物質の総量を明確にすることになると、比率等で核物質防護上公開できない値が算出できてしまうことになる。従って、核不拡散上からも現状は公開を差し控えたい。原因究明等で明らかにできるかどうか判断できるようになった際に説明できる範囲で説明する。」と書かれていることに対し、「全く意味不明である」と批判している(6.15)。
 機構の発表による、元素比の見た目では高速増殖炉用のMOX燃料の比率に似ている。しかし、問題はプルトニウムとウランの比率ではなく、プルトニウム同位体の比率にある。プルトニウムは原子炉の使用済燃料を再処理することにより回収プルトニウムとして取り出される。回収プルトニウムには各種のプルトニウム同位体が色々な割合で含まれ、その組成は原子炉の型、燃料の種類、燃焼度により異なる。軽水炉ではプルトニウム239は60%程度である。核兵器は純度が高いプルトニウムの方が作りやすい。プルトニウム同位体に半減期がたった14年しかないプルトニウム241が多く含まれるとどんどんアメリシウム241という核分裂しない、しかも中性子を吸収する物質に変わって行ってしまう。そうなると核兵器がどんどん劣化して使い物にならなくなる。しかも、劣化する間に強い放射線を出すので極めて危険で扱いにくいものである。高速増殖炉のブランケットでは純度が98〜99%もの兵器級のプルトニウム239ができる。同位体比率を公開しないというのは、プルトニウムがどこから抽出されたのかを明らかにしたくないからである。仮に、高速増殖炉「常陽」の炉心を取り巻く核分裂しないウラン238を主体とするブランケットという燃料集合体で得られたプルトニウムであるとすれば、日本の核武装計画の一端が明らかとなってしまう。それは当然、核拡散防止条約(NPT)違反であり、日米原子力協定違反ともなる。とんでもない国家であり、とても北朝鮮の核実験やミサイル発射を批判できる立場にはない。国際社会から原油輸入禁止や金融制裁などの経済制裁を受ける国家となってしまう。また、原子炉級のプルトニウムならば機構の安全管理は全く杜撰であり、低水準ということになる。日本は核管理が全くできていないこととなる。新聞は「被曝の説明二転三転」・「背景に未熟な検査技術」(日経:2017.6.10)と書くが、肝心な核開発の『証拠』を詮索されないための煙幕とも見える。放医研ともあろう組織がプルトニウムの内部被曝検査技術を習得していないとは思われない。また、現在のところ、どの政党もこうしたことに言及しないのはどうしたことか。核開発に関しては一蓮托生なのか。
 こうした中、7月6日、田中原子力規制委員長は再稼働した高浜3,4号機の立地町である高浜町を訪れ町長や住民と懇談したが、 北朝鮮からのミサイルへの対応についての町民からの質問に「ミサイル攻撃を想定した対策は立てていない」と明言。その直後に、「私だったら東京のど真ん中に落とした方がよっぽど良いと思う」「向こう(東京)には何十万人もいる」などと発言した。これに対し、取材中の記者は『東京にミサイル』というのは不適切ではないかと田中氏を問い詰め、地元福井新聞は「 人の命をどう考えているのか。原発は小さく標的になりにくいという解釈であれば、地元の不安軽視であり、あまりに無理解だ」(福井論説:2017.7.8)と批判したが、福井県だけで15基も集中する原発がミサイル攻撃され破壊されれば日本の終わり・地球の終わりである。原発だけは攻撃してほしくないというのが旧日本原子力研究所(現原子力機構)副理事長として核開発を指揮してきた田中氏の本音であろう。この間、北朝鮮の核ミサイル開発をさんざん煽り極東の緊張を高めつつ、自らの本音をひた隠しにして密かに核開発・ミサイル開発を行う日本。それを知りつつも思わず本音が出ると国民に知られないようにあわてて「人命軽視」などと焦点を外すマスコミとの合作で日本はますます危険な方向に進んでいる。

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