アサート No.476(2017年7月22日)

【投稿】東京都議選の結果が示したもの---統一戦線論(38)--- 

<<冷静さを失い、逆ギレ>>
 政局の流動化が、ようやく鮮明になりだしてきた。安倍政権が、連日繰り返される国会前や全国各地の安倍政権への抗議行動によっていよいよ追い込まれ、その自壊現象ともいえる事態が展開されている。
 きっかけは、「共謀罪」法案の委員会審議・採決をさえすっ飛ばして突然本会議を招集した問答無用の強行採決であった。安倍政権の焦りと驕りと開き直り、これらが一挙に露呈されたのである。国会を閉会させた6/16夜のBSフジの番組で、自民党の二階俊博幹事長は「今日は終業式」「自民党もそう痛手を負うことなく、国会を終えることができた」と豪語したつもりであった。
 ところがその翌日、6/17-18の毎日新聞の全国世論調査では、安倍内閣の支持率36%、不支持率44%と、ついに逆転現象が報じられた。不支持率が支持率を上回ったのは2015年10月以来のことである。「してやったり、にこにこ終業式」どころか、「痛手」は相当に深刻であること、取り返しも困難な事態に陥っていることが明らかとなった。
 さらに決定的なダメ押しが安倍首相自身によってなされた。東京都議会議員選挙の投開票が翌日に迫った7/1、JR秋葉原駅前「ガンダムカフェ」周辺での演説であった。ここは、2012年、2014年の総選挙で日の丸の旗を持った支持者が埋め尽くし、安倍首相への大きな応援コールが巻き起こった「総裁が選挙戦最終日に行う聖地」(自民幹部)である。支持率急落におびえ、街頭演説を控えていたが、「逃げている印象を与えるのも印象が悪い」と、首相自身が望み、都議選最終盤、最初で最後の巻き返しの最良の場として設定された。ところが、安倍首相が登場し、マイクを握り演説を始めると、支持者らの応援コールや拍手を圧倒する、大勢の大群衆の、「安倍やめろ!」「安倍帰れ!」の声がどんどん広がり、安倍首相が演説するごとにより一層拡大し、首相は冷静さを失い、逆ギレ。ついには目を血走らせて、目の前の聴衆を指差しながら「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と声を荒らげて叫んでしまった。支持者でさえカバーしきれない事態をもたらした。NHKはこの場面を放送せず、大手マスコミはほとんど無視したが、ネット上ではたちまち拡散された。口先だけの「反省」とは裏腹な、居丈高で、ファシスト的な政治姿勢をさらけ出してしまったのである。

<<「落とすなら落としてみろ」>>
 当然のことながら、東京都議選の結果は、自民党にとって惨憺たるものであった。投票率51.27%、都民ファースト49、公明23、自民23、共産19、民進5、その他8。自民党は現有議席57の60パーセントを失って、23議席へと激減した。一種の雪崩現象である。自民党の二階幹事長は、6/30の都議選の応援演説で「落とすなら落としてみろ。マスコミの人たちが選挙を左右すると思ったら大間違いだ」とすごんで見せたが、「落とすなら落としてみろ」が現実となってしまった。安倍氏や二階氏、自民党もマスコミも含めて、ここまで減るとは誰もが予想していなかった。「40議席割れの可能性はあったが、23議席は全くの想定外。何が起こったのかわからない」と嘆くほどの「自民の歴史的惨敗」である。都議選が、安倍政権への審判の場と化したとも言えよう。
 都民ファーストへの支持というよりは、むしろ安倍政権の傲慢な政治姿勢に対する怒りが、自民議員落選へと向かわせたものであることは明らかだろう。
 公明は、自らが関与してきた泥船が危ないと、自公与党路線から都民ファーストとの与党路線に転換。
 民進党は、蓮舫代表が小池都知事支持表明でそのあいまいな路線に離党者続出、離党者の都民ファーストへの鞍替え、それでも議席ゼロの予測がかろうじて5議席を確保。
 共産党は、選挙戦の対決構図が「自公対日本共産党」にあるとして、小池都政に対しては「半ば与党」の「是々非々」路線を公言して、2議席増。これを志位委員長は「大きな勝利だと考えております」と評価している(7/3記者会見)。
 民進と共産合わせて24議席、自民の23議席を超え、結果として自民党だけが壊滅的な打撃、敗北を被ったのである。
 問題は、共産党をも含めて、都民ファーストに明確な批判と政策対決を掲げた勢力が皆無に等しい選挙戦だったことが指摘されるべきであろう。小池知事は、自民党と袂を分かつ結果になったとはいえ、9条改憲でも核武装でも、軍事力増強でも、安倍首相の路線と極めて近く、腹心の部下である野田数(かずさ)氏は、もと東京維新の所属で、「国民主権は傲慢、直ちに放棄せよ」と主張する極右で、2012年、日本国憲法無効論に基づく大日本帝国憲法復活の請願を東京都に提出した人物である。小池知事は都議選で圧勝した翌日、小池氏の一存で、幹事長であった野田氏を「都民ファーストの会」の代表に復帰させている。年内にも立ち上げかという国政新党「国民ファースト」と自民・公明・維新の極めて危険な連立さえ画策されるであろう。彼らの思い通りにいくものではないとはいえ、都民ファーストに対する根本的批判姿勢が堅持された共闘、統一戦線が不可欠な事態の到来と言えよう。

<<「安倍退陣」の現実化>>
 都議選の自民敗北が示したのは、盤石とみられていた、“一強”のもろさである。「1強」のもとで批判が表に出ない自民党内の権力構造、政府権力の支配構造、それに胡坐をかいた国政の私物化、傲慢な政治姿勢がいったんほころび始めると、彼ら自身が予測できないほどの規模とスピードで崩壊現象が進行するという冷厳な現実である。
 有権者は自民党にNO! を突き付け、自民党以外の受け皿として、たとえ曖昧模糊としていてぬえ的であっても、事態を転換させる当面の受け皿として都民ファーストを選択したのであった。言い換えれば、自民党と同根である都民ファーストより、より魅力的で平和と民主と自治に貫かれた期待の持てる革新的な受け皿が形成されれば、根本的なば政治の転換が可能であるという展望をも示したと言えよう。逆に言えば、そのような明確な対抗軸をもった受け皿が革新の側に存在しなかったということでもある。
 いずれにしても、安倍首相が既定路線化していた2018年9月の自民党総裁3選と、それに連動する衆院解散、「9条改憲」戦略に相当巨大な壁が立ちはだかったのである。それどころか、「安倍退陣」が現実化しだしたのである。内閣改造どころか、「変えるべきは総理」という事態の進展である。
 時事通信が7月7日〜10日に行った最新の世論調査では、安倍内閣の支持率29.9%、不支持率48.6%となった(時事ドットコムニュース 7月14日)。報道各社の最近の世論調査で内閣支持率は軒並み30%台に急落したが、それでも政府高官は、「今が底だ」と強気であった。しかしついに3割を切り、2割台まで落ち込み、首相周辺は「非常事態だ」と宣言せざるを得なくなった。同調査で、政党支持率は、自民が前月比3.9ポイント減の21.1%、民進は同0.4ポイント減の3.8%。以下、公明3.2%、共産2.1%、日本維新の会1.1%と続いた。そして支持政党なしがは同4.5ポイント増の実に65.3%となった。無党派が圧倒的多数なのである。既成政治勢力が見放されていることの証左でもある。
 現状の野党共闘ではまったく不十分なのである。可能な限りの全野党が結集し、様々な市民運動やグループ、個人を結集した、共同候補を擁立できる、新たな統一戦線組織、あるいは統一戦線党を結成することを呼びかけ、現実化させていく、そのような努力とアクションが求められていると言えよう。
(生駒 敬)

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