ASSERT 478号 (2017年9月23日発行)

【投稿】 「ミサイル解散・総選挙」目論む安倍政権
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【投稿】 「ミサイル解散・総選挙」目論む安倍政権
                ―野党共闘で政権の延命を許すな―


危機を演出、扇動
 8月29日早朝、北朝鮮は新型中距離弾道ミサイルの試射を行った。日本政府はミサイルが日本上空を通過すると思われたことから、12道県に向けJアラートを発信、急遽NSC(国家安全保障会議)を開催するなど最大限の危機を演出した。
 テレビは、通常放送を休止して「ミサイル特番」を延々と流し、北海道や東北地方の鉄道が一時運休するなど、いたずらに国民を不安に陥れる対応に終始した。北朝鮮の弾道ミサイルには、核弾頭はおろか通常弾頭も搭載されていなのに、あたかも奇襲攻撃を仕掛けて来たかのような演出が行われた。
 しかし今回も「破壊措置」=迎撃は実施されず、「北朝鮮への対応」を口実に、多額の予算を費やし整備されてきたミサイル防衛システムは沈黙したままだった。防衛省は「日本に被害を及ぼすことがないと判断したため」と弁明しているが、信頼性に自信がないからである。Jアラートも送信や内容に不具合が発覚、さらに被害想定も未定であり、避難実施も自治体任せというお粗末さが改めて浮き彫りになった。
 「北朝鮮の核・ミサイル開発があまりに急速」などと言われているが、この間の「火星シリーズ」弾道ミサイルはアメリカ向けであり、日本を射程に収める「ノドン」などの短距離弾道ミサイルは、とっくに戦力化されているのだから、長年にわたる不作為の批判は免れない。
 一連の対応は、核開発を中止させる外交努力の放棄を隠ぺいするため、ミサイル発射を台風や地震など不可避の天災と同等に位置づけてきた矛盾が露呈したものである。 
 無為無策の指摘を恐れた安倍は「ミサイルの動きは発射直後から完全に把握しており国民の命を守るため万全の体制をとった」と弁明したが、前夜にアメリカから発射準備に関する情報提供があったのではないか、との疑念に対してはその有無を明確にしていない。
 さらに安倍は「これまでにない深刻かつ重大な危機」とボルテージを上げたが、河野太郎は「(グアムに飛ばさなかったのは)北朝鮮が少し怯んだから」と述べるなど、閣内不一致ともとられかねないちぐはぐな対応が露呈した。
 
制裁強化で一致せず
 安倍は当日のトランプとの電話協議につづき30日には、豪、韓首脳との電話協議を行い、北朝鮮に対する厳しい姿勢で一致したと強調したが、こうした問題での同盟国、友好国との合意は当たり前のことである。
 その日の午後には訪日中のメイ首相とも、「断じて容認できない」との認識で一致したとしているが、その後は京都市内でお茶会を開き、続いて夕食会を催すなど、「非常時」とは思えない優雅な古都の一日を過ごした。
 こうしたなか、麻生太郎は「ヒトラーの動機は正しかった」とユダヤ人迫害を肯定するような発言を行い、ペンス副大統領との会談が急遽中止になった。政府は「北朝鮮情勢が緊迫したため」と取り繕っているが、そうであれば尚更、会談の必要があっただろう。
 さらに9月3日、竹下亘が講演で「北朝鮮のミサイルが島根に落ちても何の意味もない」と発言、選挙区の受け狙いにミサイルを引合いに出すとは、政権の危機意識の程度が窺い知れると言うものである。
 このように北朝鮮のミサイルは軍拡の口実はもとより、閣僚の失態隠蔽や、話のネタとなんでも使い放題の便利なツールとなっている。安倍政権が、勇ましい言葉ばかりで手を拱いているのを尻目に、金正恩政権は核・ミサイル開発を加速している。
 9月3日、北朝鮮は6回目となる核実験を行った。これに対し国連は9月12日、全会一致で北朝鮮に対する新たな決議案を採択した。決議を主導したアメリカは当初、石油の全面禁輸、金正恩の個人資産凍結、これを確実に実施するため臨検での武力行使容認など「最後通牒」に等しい措置を盛り込んだ原案を示していた。
 しかし制裁強化に慎重な中国、ロシアに配慮し北朝鮮への石油輸出に上限を設けるにとどめるなど、アメリカが譲歩する形で各国が妥協した。日本政府はアメリカの当初案に乗っかる形で採決を目指していたが、目論見は外れた。
 これに先立つ9月6,7日ウラジオストックで「第3回東方経済フォーラム」が開催され、日本、ロシア、韓国それぞれの首脳会談も行われた。会議には北朝鮮も参加しており、日露会談前に、露朝の協議が行われたと見られている。
 7日には日韓首脳会談が開かれ、「対話より圧力強化」で一致したとしている。しかし、文在寅政権は米韓軍事演習の縮小、北朝鮮に対する約9億円の人道支援など融和策を検討しており、圧力一辺倒ではない。
 
同床異夢の日露
 同日安倍はプーチンと19回目となる首脳会談を行い、北朝鮮に対する圧力強化をロシアに求めたが拒否された。会談後の記者会見でもプーチンは改めて対話による解決の重要性を指摘し、日露の立場の違いが改めて明らかとなった。
 この間、中国にもましてロシアの北朝鮮問題への関与が顕著になってきているが、これは太平洋方面におけるアメリカの圧力縮減を期待してのことである。ロシアの主要な関心は、地中海からバルト海にかけてのヨーロッパ方面である。約5千キロに及ぶ戦線には、シリアや東部ウクライナ、さらには南カフカスなど「ホット・スポット」が点在している。
 ロシアは自らの勢力圏内にNATOが親露政権の転覆など「秘密工作・謀略」を含めた浸透を目論んでいると警戒しており、武力侵攻には核兵器の先制使用も辞さない構えでいる。
 プーチンとしては欧州方面に全力を傾注したいところであるが、原油安と経済制裁で軍拡の修正を迫られている。また来年からロシア唯一の空母「アドミラル・クズネツォフ」が長期の改修に入るため、戦力の低下は免れない状況である。
 ロシアは7月にバルト海で中国と合同軍事演習を実施、9月14日からは北方艦隊がバレンツ海で、陸上ではベラルーシとの大規模な合同演習が開始されNATOは警戒を強めているが、これらはロシアの危機感の表れでもある。
 こうしたなかプーチンとしては「東部戦線」の緊張が高まるのは避けたいわけであり、安倍の要望が一蹴されるのは当然のことである。日露首脳会談では経済協力で合意があっったが、極東地域での緊張緩和に資する提案は無く、日露間の緊張も高まりつつある。
 9月16日から自衛隊は北海道で初めて、兵員1万7千の他車両3200、航空機50、艦艇2を動員した大規模演習「北演29」を開始した。この間の北方4島を含めた極東ロシア軍の演習は、22日からの中露演習「海洋協同2017」も含め、対米が主軸であったが、日本の「北演29」は対露演習に他ならず「北方領土問題に関する環境づくり」に逆行するものである。
 
軍事オプションは断念へ
 こうした関係国の連携のなさと足元を見透かしたように、9月15日には再び弾道ミサイルを発射、射距離を3700キロに延ばした。翌16日、朝鮮中央通信は金正恩が「火星12の戦力化が実現した」と述べたことを明らかにした。
 実際は核弾頭の小型化、水爆の実用化、大気圏再突入技術の確立など主要な部分が確認できていないが、「経済制裁による屈服強要路線」は破綻し、北朝鮮の核・ミサイル開発阻止は失敗したと言える。
 しかし、安倍政権は圧力強化一辺倒の姿勢を変えようとはしない。一方当事者であるアメリカは「あらゆる選択肢は排除しない」として、軍事オプションを保持しつつ、対話も有りうることを示唆しているが、そもそも、トランプ政権の国家戦略、さらには米軍の体制も不安定であり、問題の着地点を不透明にしている。
 事故が相次ぐ第7艦隊では8月にもイージス駆逐艦「ジョン・Sマケイン」がマラッカ海峡でタンカーと衝突、乗員10名が死亡した。米軍は全艦艇の運用を一時停止、8月23日には第7艦隊の司令官が解任されると言う事態となり、その後のアメリカ議会付属監査院の調査で、第7艦隊の人員4割が規定の訓練を終了していないことが判明した。
 精鋭艦隊のお寒い実態が明らかになったにもかかわらず、9月1日ウォール・ストリート・ジャーナルは、米軍が南シナ海での「航行の自由作戦」の強化を計画していると報じた。またトランプはアフガンからの撤退方針を転換、治安状況が改善されるまで関与を続け、兵員を増派する戦略を明らかにした。戦力の逐次投入での戦線拡大は泥沼への道であり、戦闘や事故での犠牲者の増加は避けられないだろう。
 さらに欧州や中東の戦力を縮小・転換するわけにもいかず、北朝鮮への軍事力行使は不可能になりつつある。いくらB−1B戦略爆撃機を飛ばしてもパフォーマンスであることは北朝鮮は見透かしている。
 
逃げ得を許すな
 アメリカの軍事オプションが非現実さを増す中、安倍政権は「ミサイル危機」をフル活用している。国民の不安を煽るだけ煽って、平和的な解決策を示さず軍拡、差別扇動を正当化しているのであるが、ここに来て9月28日の衆議院解散―10月下旬投票が濃厚となった。
 臨時国会冒頭の解散は、森友、加計問題の論議を封じ込め、野党の体制が整わない間隙をついての戦略である。また「さらなる挑発が懸念される朝鮮労働党の創設記念日(10月10日)」を挟んで政治的空白を作ることは、いかに「ミサイル危機」が政権にとってご都合主義的なものでしかなかったことを物語っている。
 このような逃げ得ともいえる解散で安倍政権の延命を許してはならないが、対抗すべき野党の体制は惨憺たるものである。離党が相次ぐ民進党は、国会解散と共に解散しそうな危機を迎えている。「日本ファースト」が候補者を擁立すれば、民進党は壊滅するだろう。
 前原は野党共闘に批判的だったが、民進に残った議員は野党共闘推進派という皮肉な現象が起きつつある。17日の3党党首会談は中止となったが、共産を含めた4党会談を早急に設定し、選挙協力の具体化を進めるべきである。(大阪O)