アサート No.478(2017年9月23日)

【投稿】 アベ・ファッショ解散をめぐって---統一戦線論(40)--- 

<<「もり・かけ疑惑隠し解散」>>
 安倍政権は、9/28から始まる臨時国会を直前に控えて、急きょ、臨時国会冒頭での解散をも含めた「年内解散」に動き出した。野党が憲法に基づいて召集を求めてから約3カ月、逃げまくってきたが、国会審議が始まれば、加計学園、森友学園問題が国会で再び取り上げられ、もはや否定しがたい山のような疑惑がさらに明白となり、せっかく回復しかけた支持率がさらにいっそう下がってしまう、その前に解散してしまおうという、まったくご都合主義的な安倍首相の党利党略解散である。疑惑に対して「真摯に説明責任を果たす」とは一体何だったのか。「追い込まれ解散」「やぶれかぶれ解散」を避けるための、「もり・かけ疑惑隠し解散」「自己保身解散」とも言えよう。
 自民党内でさえ、首相の9条改正案には党内から異論が噴出し、8/25には「安倍降ろしの会」「反安倍の会」ともいわれる「日本の明日を創る会」の初会合が開かれ、そこでは「安倍一強って3権分立ではないじゃない? と子供に問われても説明できない」と、安倍首相の独裁的政治手法が公然と批判されている。
 今や取り巻きやお友達の側近政治の典型となってしまった安倍政権は、求心力の低下を阻止し、主導権再確立のために首相唯一の「伝家の宝刀」・解散権の行使を、「今がチャンス」「ここしかない」と踏んだのであろう。
 しかし、総理大臣の自己都合、私的利益があからさまな解散は、解散権乱用の違法な解散である。周知のように、憲法第5章「内閣」の第69条では「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と規定し、これが憲法上、衆議院解散についての唯一の規定である。一方、憲法・第1章「天皇」の第7条に「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」として、その第3項に「衆議院を解散すること」とある。この規定を逆に利用して、「内閣は天皇に助言することを通じて、いつでも好きな時に衆議院を解散することができる」とする、いわゆる“7条解散”論がこれまで罷り通ってきたのである。しかしこれは明らかな牽強付会である。第7条は、第69条に従って衆議院が解散された場合に、その形式的な宣言は第7条によって天皇が行うと規定したものにすぎないのである。内閣不信任案が可決もされていないのに、総理あるいは与党の自己都合で、手前勝手に好きな時に解散できるということは、法理上許されないことであり、違法なのである。今回の解散権の行使は、ファッショ的・独裁主義的手法による解散である。

<<「サンキュー金正恩」>>
 そしてこの党利党略解散に決定的ともいえる貢献をしているのが、朝鮮半島をめぐる戦争挑発の危険な火遊びである。安倍首相は、金正恩朝鮮労働党委員長とドナルド・トランプ米大統領の芝居がかった火遊びが、大火災、核戦争にまで燃え上がることを期待でもしているかのように煽りに煽りまくっている。ことさらに北朝鮮に対する「断固とした強硬姿勢」をことあるごとに強調し、「これまでとは異次元の圧力を科すべく、取り組みを進める必要がある」などと、軍事的介入・強行的先制攻撃に期待をかけ、外交交渉や対話の努力などまったく眼中にない。
 9/11、安倍首相は防衛省幹部や自衛隊の指揮官が一堂に会する自衛隊高級幹部会同に出席して、「発射直後から落下まで、(北朝鮮の)ミサイルの動きを切れ目なく完全に監視し、追尾した。国民から信頼を勝ち得ている自衛隊は私の誇りだ」と、まるで首相個人の私的軍隊扱いをし、この絶好の機会を逃さず膨大な軍事費拡大に前のめりとなっている。そして、何の役にも立たない「Jアラート」を乱発して、避難訓練に人々を動員し、不安をあおり、危機感の拡大を自己の政権延命と好戦的な世論形成と支持率上昇に利用しているのである。そもそもミサイルが本当に現実の脅威、「これまでにない深刻かつ重大な脅威」「日本にとって非常に深刻な事態」(8/29安倍首相会見)なら、最も危険な全国各地の原発を直ちに停止させるべきであろう。
 この朝鮮半島危機で、トランプ大統領に調子を合わせているのは、安倍首相だけである。説得に向かったはずのロシアのプーチン大統領には「制裁ではなく、対話による解決の必要性」を逆に説得されている。中国外務省も9/12、国連安保理が新たな対北朝鮮制裁決議を採択したことについて談話を発表し、「軍事的解決に活路はない。中国は朝鮮半島で戦乱が起きることを決して許さない」と強調。ドイツのメルケル首相も「われわれには平和的で外交的な解決しか考えられない」と明言している。
 安倍首相は、移り気で情緒不安定なトランプ氏としかうまく手を結べていないのである。8/23付ウォール・ストリート・ジャーナル「米大統領の忠実な相棒?」と題して「トランプ氏にとって頼りになる人物が1人いる。日本の首相はいつでも賛同してくれるのだ」と安倍首相を皮肉る記事を掲載している。しかしそのトランプ氏もまた、この朝鮮半島危機を利用して、韓国や日本に大量の高価なミサイル防衛システムや兵器を購入させることに余念がない。
 かくして安倍首相にとっては、この朝鮮半島をめぐる戦争挑発の危機は、自己の政権延命と悲願の憲法9条改悪にとって願ってもない好機到来というわけである。
  9/12付の韓国・ハンギョレ新聞は「安倍首相、サンキュー金正恩」と題して「安倍晋三首相の支持率が3カ月ぶりに『不支持』を超えた。北朝鮮の6回目の核実験とミサイル発射にともなう『北風効果』が大きく作用したと見られる。」と皮肉っている。安倍首相にとってはまさに「サンキュー金正恩」であろう。

<<ほくそ笑んでいる図>>
 いずれにしても安倍首相は年内解散に舵を切り、9/28召集の臨時国会冒頭で踏み切ることも視野に入れつつ、最も早い場合で、10/10公示〜10/22投開票、または10/17公示〜10/29投開票の日程を目論んでいる。
 野党第一党の民進党が期待の山尾志桜里元政調会長の不倫スキャンダル離党などで前原執行部は出鼻をくじかれ、離党者が続く苦境にあり、小池新党も準備が間に合わない、臨時国会冒頭解散であれば、野党も、もり・かけ疑惑の追及どころではなくなる、とほくそ笑んでいる図である。
 これが報道された9/17、民進党の前原誠司代表は「『森友問題』や『加計問題』の国会での追及から逃げるため、北朝鮮の状況も全く度外視した自己保身解散だ。受けて立つ」と強調した。枝野幸男・民進党代表代行は「衆議院解散のようです。しっかりと受けて立ちたいと思います。森友・加計問題から逃げ回り、国会が開かれると逃げられないから解散。あからさまな疑惑隠し解散です。北朝鮮問題を抱える中、党利党略で選挙による政治空白が生じることにもなります。この選挙はこの時期の解散の適否がひとつの争点です。選挙がないと議席が増えないから、野党にとって解散は歓迎です。厳しい状況ですが、予想を覆し大善戦した英国労働党の例もあります。問われているのは、臨時国会召集という憲法上の義務に違反し、ようやく召集したら質疑もせず解散する判断です。疑惑追及がイヤで逃げた、隠したと言われて当然です。」とツィートしている。
 共産党の志位和夫委員長は「臨時国会の冒頭 衆院解散の見通し 一体、何のための解散か。冒頭解散となれば、北朝鮮問題を利用し、国政私物化疑惑に蓋をして、『今やれば多数を取れる』という党略的打算のためだけの解散となる。堂々と迎え撃ち、必勝を期し奮闘したい。」とツィートしている。
 いずれもわが党の姿勢の強調である。個々の党が「しっかりと受けて立ち」「堂々と迎え撃っ」ても、バラバラでは安倍政権を利するだけである。問題は、野党が統一して闘う姿勢が前面に出てきていないところにある。200以上の小選挙区で民共候補がぶつかる状況は解消されていない。競合と分散、野党同士の票の取り合いを回避しなければ「政権批判票」はまったく生かされないのである。
 最低限、全ての小選挙区で野党共闘の候補者を一人に絞り、「安倍政治を許さない!」、その一点での合意に基づいた統一候補の闘いにするべきであろう。その形態はいかに柔軟であってもよいが、この際、野党統一会派へのすべての反安倍会派の合流、統一候補への一本化が提起されるべきであろう。
(生駒 敬)

No478のTOPへ トップページに戻る