ASSERT 479号 (2017年10月28日発行)

【投稿】 安倍政権の延命招いた希望の党
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【投稿】 安倍政権の延命招いた希望の党
             ―野党共闘再建し政権追及を強めよ―


生煮えの即席政党
 9月25日結成された希望の党は、28日には民進党を事実上併呑する形で総選挙への体制づくりを急いだ。当初、彗星のごとく現れた新党の支持率は急伸し、自公与党を脅かす存在となり、一部マスコミは「安倍か小池かの政権選択選挙」ともてはやした。
 しかし小池は29日の記者会見で、候補者選定に当たり民進党の「リベラル派」を排除することを平然として言い放ち、民進党内に動揺と反発が広がった。
 そもそも小池は都政に於いても、外国人学校への対応、関東大震災時の朝鮮人虐殺否定、また大日本帝国憲法の復活を唱える人物を側近に置くなど、民族排外主義を露わにしており「寛容な保守」とは程遠い政治姿勢を見せていた。
 さらに自民党時代からの小池のタカ派的言動を見ていれば、「合流」に際して危惧を持つのは当然なのだが、前原はそれを認識しつつ28日の小池との会談で綿密な詰めは行わず、曖昧なまま事を進めたのである。
 前原にしてみれば代表選挙で勝利したものの、幹事長に予定していた山尾がスキャンダルで離党、さらに細野Gなど保守系議員が次々と脱落、逃亡し、民進党での党勢伸長は期待できない状況に追い込まれていた。だからこその野党共闘なのであるが、前原はこのままでは「容共派」に民進党の主導権をとられてしまうとの危機感が先走ったのだろう。
 そこで、野党結集、安倍政権打倒を大義名分に希望の党に駆け込み「リベラル派」振るい落としも図ったと考えられるが、これは党内民主主義を無視した資金・組織の持ち逃げであろう。
 前原の一連の行動を「性善説」的に擁護する向きもあるが、総選挙の結果は別として、厳しく総括が求められるものである。日程的にも精神的にも追い詰められていたとはいえ、「一度立ち止まる(選挙後談)」タイミングを間違えたと言うほかない。 
 排除宣言後も小池は公認条件に当初「安保法制容認」「在日外国人の地方参政権反対」などタカ派的政策協定を求めるなど、差別・選別をより強化していった。実際の候補者選定作業は若狭らにさせていたそうだが、当の若狭が選挙戦に於いて有権者に排除されてしまったのは、因果応報というものである。
 こうして小池が権力欲のみで作り上げた希望の党の地金はむき出しとなり、傲岸不遜な小池の姿に支持率は一気に低下した。慌てた小池は若干言動を修正したが時すでに遅しであった。
 打ち出した政策も新自由主義と社民的施策の継ぎ接ぎで、いち早く党名を商標登録していた割には、検討不足で具体性に欠けるものであり、脱原発も消費税凍結も方便で、改憲姿勢のみが突出して見えた。お湯を注いだものの、具もスープも入れずにすぐに蓋を開けたカップ麺は、食べられることなくすぐに冷えてしまったのである。
 
拾い物の自民勝利
 一方、10月3日に結成された立憲民主党が支持を伸ばす中、多くの選挙区で野党乱立のまま選挙戦に突入し、死に体に成りかけていた安倍政権の延命に道を拓くこととなった。
 その結果、自民284という一人勝ち的状況になった反面、与党では公明が35→29、準与党の維新が14→11と議席を減らし、自民一強に拍車がかかった。野党は、立憲民主が15→55と躍進したが、希望は57→50、共産も21→12と議席を減らし、社民は2と現状維持という厳しいものになった。
 真の希望はポリシーを明確にした立憲民主が政権批判票の受け皿となったことである。また民主〜民進と続いた「失敗政党」のイメージが希望の党に移ったため、今回「リセット」ができたともいえ、その意味で前原の「功績」は大きいだろう。
 一方、共産党は大幅減となったが、これは同党が政権批判票の一時待避所でしかなかったことを示すものであり、セクト主義に回帰するか、より大胆な共闘路線に踏み込むか、志位指導部は決断を迫られるだろう。
 維新は国政での存在意義を失いつつある。小池に対しては「国政政党の党首が知事兼任はおかしい」「国政に出るべき」との批判が寄せられたが、同じ立場の松井に対してはそうした声は出なかった。地盤の大阪でも小選挙区での敗北が相次ぎ退勢は明らかとなった。
 選挙の結果を受けて小池はパリで「野党乱立が政権を利した」と他人事のように語り、「鉄の天井があった」などとジェンダーのせいにしているが、自分自身の問題である。党内からは、当選、落選組を問わず怨嗟の声が噴出しており、こうした小池の無責任な対応は混乱を増大させるだけであり、早期の空中分解が現実味をおびてこよう。
 野党乱立に助けられた安倍は、念願である改憲を一層強引に推し進めるだろう。23日の記者会見で安倍は、2020年の改憲について「スケジュールありきではない」「幅広い合意形成を重ねていかねばならない」と、2020年を前提とせず、野党を含めた賛同を得ていくため、丁寧な論議を進める姿勢を見せた。
 しかし、これは今回の総選挙勝利を踏まえ、18年自民党総裁選での3選を経て、21年の任期までに改憲施行ができればいいとの慢心の表れである。幅広い合意に関しても、維新や希望の一部が賛同すればそれでよいと言うことであり、丁寧な説明は「戦争法」「共謀罪」審議の際に聞き飽きた言葉である。
 一方森友、加計問題に関しては「国会審議を全て見た人は理解している」と説明責任を果たしたかのように切って捨てた。今回の選挙は政権に付いた疑惑というシミを洗い落とす「政権洗濯選挙」であったかのような言いぶりである。
 会見で安倍は、「今まで以上の謙虚な姿勢で真摯な政権運営に全力を尽くさなければならない」と発言したが、それらが偽りであることは明白である。
 
宴の後に待つもの
 安倍は強引に国会を解散し一ヶ月の政治的空白を作ったが、その間国際情勢は待ってくれなかった。安倍は今回の選挙を「国難突破解散」と詐称し、北朝鮮の脅威を煽ったが、それに対する具体的な解決の方途は示さなかった。
 10月16日からは米韓合同演習が始まり、米空母「ロナルド・レーガン」など約40隻が、日本海や黄海で北朝鮮に対する牽制を行った。また、19日にはモスクワで「核不拡散会議」が開会、これには北朝鮮の代表が参加し「アメリカが共和国の核保有を認めない限り、核に関する交渉を拒否する」ことを明らかにした。
 今後、北朝鮮はアメリカ本土を射程に収めるICBMの開発、戦力化を淡々と進めるだろう。中露が決定的な経済制裁を実施しない限り、北朝鮮の核開発は止められない。アメリカも軍事的な威嚇を継続しつつ先制攻撃は避けると思われる。恐怖を煽ったからには、安倍政権は国民が安心するような措置をとらねばならないが、北朝鮮の脅威は政権のツールでしかない以上、今後も放置されるだろう。
 10月18日からは中国共産党の第19回党大会が始まり、中央委員会報告で習近平は「富強・民主・文明・調和の美しい社会主義現代化強国」を構築することを明らかにした。第1義的には富=経済大国、強=軍事大国化が進められることとなるが、日中国交正常化45周年の現在、両国関係は最悪となっている。
政府は、来年首脳の相互訪問を企図しているが、中国側は慎重な姿勢を崩していない。
 韓国に関しても従軍慰安婦問題に続き、徴用工問題も惹起するなか、「問題は解決済み」を繰り返すだけでは、未来志向の関係などは築けないだろう。政府は年末の文訪日、2月の平昌五輪に合わせての安倍訪韓を目指していると言うが「年末から来年初めにかけて北朝鮮情勢が緊迫するから10月選挙説」とどう整合性をとるのか。そもそも北朝鮮は平昌五輪参加を表明しているのである。
 対露関係も11月10〜11日のベトナムAPECで日露首脳会談が開かれる見込みであるが、米露関係が緊張し、ロシアが北朝鮮への支援を強めている中、今度も会うだけで終わる可能性が高く、平和条約、領土問題の進展は難しい。
 また選挙期間中、軍事演習が続けられる一方で自衛隊、米軍の事故が相次いだ。選挙公示翌日の11日には沖縄で米軍ヘリが炎上、17,18日には空自ヘリ、戦闘機が墜落、炎上した。また会計検査院の調査で海自の艦対空ミサイル約10億円分が、整備不良のため使用不能であること報じられた(10/17毎日)。「この国を守り抜く」との掛け声は勇ましいが、その足元は相変わらず不安定であることが明らかとなった。
 
野党共闘で国難突破を
 足元の不安定さは国内経済でも顕著である。相次ぐ基幹産業での不正発覚は深刻なものがあるが、これらには目をつぶり株高ばかりを強調、「期待される人間像」と「人間革命」をミックしたような「人づくり革命」を唱えているが、格差や排除を生み出す社会構造は放置されている。
 消費増税についても、増収分の半分程度を教育無償化などに充当し、全世代型の社会保障を目指すとする一方、リーマンショック級の出来事があれば3度目の延期を示唆するなど方針は定まっていない。
 このように内外には国難が山積したままであり、本来なら首班指名の特別国会に続き臨時国会を開催しなければならないはずである。先の臨時国会は一切の論議を封じ込め冒頭解散したのだから、なおさら早期の招集が求められている。しかし安倍政権は来年1月の通常国会までの論議の先延ばしを目論んでいる。これも「北朝鮮年末〜来年初頭危機説」と矛盾する。
 自民党は284議席であるが、安倍政権への強い支持の結果ではないことは明らかである。内閣支持率は不支持が支持を上回っており、自民党は支持するが安倍は変わってほしい、という民意の反映である。比例区の得票率は自民党33,28%、立憲民主党19,88%、希望の党17,36%であり小選挙区での候補者数、得票率を勘案すると安倍政権の基盤は盤石ではない。
 すなわち、国会審議如何では再び内閣支持率は急落する可能性があり、安倍政権は早期の国会開会を回避しようとしているのである。11月1日開会が予定されている特別国会に向け、野党は一致して臨時国会召集を求め、政権への追及を強めなければならない。(大阪O)