ASSERT 481号 (2017年12月23日発行)

【投稿】 四面楚歌を招く安倍軍拡
【投稿】 高裁段階で初―画期的な伊方原発運転差し止め決定
【投稿】 サーロー節子さんの警告---統一戦線論(43)---
【コラム】ひとりごと---5年ぶりの生活保護基準引き下げに思う---

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【投稿】 四面楚歌を招く安倍軍拡
          〜通常国会に向け野党共闘再建を〜


消し飛んだ「謙虚、丁寧」
 10月24日、衆議院選挙後初の閣議が開かれ、閣僚からは「謙虚」「真摯」という、あたかも選挙結果を厳粛に受け止めているかのような発言が相次いだ。
 安倍も前日の記者会見で「謙虚に政策を進めていく」と述べており、その夜ステーキ店で開かれた「祝勝会」でも、高村や二階を前に「謙虚」を繰り返したと言う。
 しかし、それらが全く上辺だけのポーズに過ぎないことが早くも露呈する。26日、麻生は自民党議員のパーティーで、自民党が大勝できたのは「明らかに北朝鮮のおかげ」と本音を億べもなく吐露した。
 また11月に入りさらに気が緩んだのか、山本「東北でよかった」前大臣が、「なんであんな黒いのが好きなんだ」と発言、さらに竹下「島根にミサイル」総務会長がLGBTを差別するなど暴言が続出した。
 さらに自民党は、当初特別国会に関し事実上首班指名選挙のみでの幕引きを画策したが、世論の反発を恐れ39日間とすることを余儀なくされた。しかし質問時間に関し、議席数に応じて配分を見直すという、姑息な手段で、森友、加計疑惑への野党の追及を封じ込める暴挙に出たのである。
 11月1日、第4次安倍内閣の発足を踏まえ記者会見した安倍は、改憲について「幅広い合意へ形成するため努力する」と述べ、改めて任期中の改憲を目指すことを明らかにした。
 一方第3次改造内閣のキャッチフレーズであった「仕事人内閣」の任務には、閣僚全員が再任されたにも関わらず全く触れることなく、自らの初仕事も国会における国民に対する丁寧な説明とは違い、トランプに対する丁寧な「おもてなし」であることが、露骨に示されることとなった。
 ゴルフ場で身を挺してトランプのご機嫌をとった安倍は、国会での追及から逃れるようにアジア歴訪に出発、APECやASEANの場で北朝鮮の脅威を吹聴して回った。これは総選挙大勝という「大恩」を仇で返すような行為であろう。
 安倍外遊中の11月14日には、文科相により加計学園獣医学部の新設が認可された。15日の衆院文部科学委員会では質問時間が大幅に削減(与党1、野党2)される中、立憲や希望が追及したものの、張本人である安倍の姿はなく丁寧どころか一言の説明も行われなかったのである。
 帰国した安倍は17日の衆院本会議で所信表明演説を行い、政策の実行として、北朝鮮危機を口実とした軍拡の推進、教育無償化の推進などを述べ、最後に与野党の枠を超えた改憲論議を呼びかけたが、森友、加計疑惑には触れることはなかった。
 そもそも安倍は特別国会での所信表明演説を行うつもりはなく、泥縄式にしたためた「3500字」程度の原稿を棒読みすると言う、端から国会軽視、論議封殺を象徴するような内容となった。
 「謙虚、丁寧」をかなぐり捨てた態度に、20日からの衆参両院での代表質問では野党のみならず、自民党岸田も森友、加計問題に対する丁寧な説明を求め、「上から目線では国民の信を失う」と、安倍の政治姿勢に苦言を呈さざるを得ないほどであった。こうした質問に安倍は岸田に対してはある程度「丁寧、謙虚」な答弁を行ったが、立憲、希望の追及に関しては不誠実な対応に終始したのである。
 
開き直りで国会閉幕
 しかし、11月22日会計検査院は、森友学園が学園用地を取得する際の「ごみ撤去費用」は算出根拠不十分とする報告を行った。これによりこれまで安倍が国会で述べてきた正当性の根拠が崩れ、真相解明には、佐川国税庁長官、安倍昭恵などの証人喚問がいよいよ不可欠となった。
 しかし政権はこれを頑なに拒み、一方の当事者である籠池泰典、詢子夫妻については、12月中旬現在で7月の逮捕から5か月近くという異例の長期拘留を続けている。これは先に、沖縄平和運動センターの山城議長に対して行ったもの(2016年10月逮捕、17年3月保釈)に匹敵する政治弾圧であり、安倍政権の恐怖政治を象徴するものであると言えよう。
 27日からの衆参予算委員会での追及を前に、24日、国有財産処分について、財務省は麻生が随意契約の価格を公開するなど透明化を図ることを表明、国交省も石井が「ごみ撤去費用の見積もりは適正」としたうえ、今後は算定に時間を確保し、根拠の確認や、資料の作成、保存を検討すると言う弥縫策を提示、予防線を張った。
 27日の衆院予算委でも質問時間が増えた自公が、延々と5時間にも及ぶ援護射撃を行った。これらに助けられた安倍も28日の質疑で「私がこれまで適切と言ってきたのは、自分で調べて適切と言ったのではなく、財務省の説明を信頼して述べたもの」と詭弁を呈し、通常国会では重視するとした会計検査院の報告を、一転軽視するという開き直りを見せた。
 政権が不誠実な対応を繰りかえす中、事実上の国会最終日である12月8日には、これを待っていたかのように十分な説明がないまま様々な案件が決定された。安倍が所信表明で述べた教育無償化については、2兆円規模の政策パッケージを閣議決定したが、無認可施設への補助など幼児教育にかかわる一部は先延ばしとなった。また、天皇の交代については19年4月30日退位、5月1日即位と統一自治体選挙と参議院選挙の隙間にはめ込む形となり、政権の都合が優先された。
 一方税制改正による企業減税、所得税増税は多少の議論はあったものの、8日の与党税制調査会の論議で、年収850万円以上のサラリーマン増税が確実となった。しかし同日内閣府は7〜9月期のGDPを年率2,5%増の上方修正し、厚労省も生活保護費の大幅削減を明らかにする一方、10月の実質賃金が0,2%の伸びであったと発表、「アベノミクスの成果」をもって、負担増決定の希釈化に腐心した。
 それでも14日に決定された18年度与党税制改正大綱によれば、所得税控除の見直し、森林環境税、「出国税」の新設、たばこ税増税により年2800億円の増税となることが明らかとなった。
 安倍政権の開き直りを許したのは、分裂を繰り返しその暴露話ばかりが目立つ野党、とりわけ民進、希望に大きな責任があり猛省しなければならない。
 
中国には「偽装降伏」
 特別国会は総選挙大勝の余勢のまま与党ペースで押し切られた形となったが、国際情勢は、安倍政権の思惑など歯牙にもかけない動きを見せている。とりわけ中国との力関係は決定的に変化しようとしている。
 11月のアジア歴訪は中国への柔軟姿勢が際立ったが、12月4日安倍は都内の会合で「一帯一路」構想への協力姿勢を改めて示し、政府もこれへの日本企業の参加指針を策定した。
 これは、TPPがアメリカの離脱で11か国での再編を余儀なくされる中、背に腹は代えられないということである。麻生はムーディーズからトリプルAに格付けされたAIIB(アジアインフラ投資銀行)をサラ金呼ばわりしたが、負け惜しみ、引かれ者の小唄であろう。
 11月29日、北朝鮮は新型ICBM「火星15号」の試射に成功したと発表した。これを受け安倍政権はアメリカとの軍事同盟強化を進めているが、韓国との関係では中国に先手を打たれており、影響力の拡大を阻まれている。
 THAADミサイル配備で悪化した中韓関係は、日米韓軍事同盟否定などの政府間協議(三不一致)を踏まえ12月14日の首脳会談で、北朝鮮問題の平和的解決をすすめること等で一致した。
 朴政権を否定し成立した文政権であるが、日本を最初の訪問国にしないことに関しては前政権を踏襲する形となった。慰安婦問題では一昨年の日韓合意のため表立った行動ができない韓国政府であるが、サンフランシスコでは中国系市民団体が慰安婦像を市に寄贈、恫喝が跳ね返えされた維新・吉村は姉妹都市を解消すると言う暴挙にでた。
 しかし、フィリピンでもマニラに中国系市民の協力で慰安婦像が設置されたことが明らかになり、日本の歴史修正主義者が騒ぐほど慰安婦像は世界に拡散していくであろう。また12月13日にはネパール総選挙で左派同盟が圧勝し、親中政権の樹立が確実となるなど、アジアでの中国の影響力は拡大している。
 安倍は日米豪印の「自由で開かれたインド太平洋戦略」で対抗しようとしたが肝心のアメリカが乗り気でないばかりか、トランプの「エルサレム首都認定」「北朝鮮対話戦略」など迷走中の現在、不安感を募らせている。
 このため準同盟国としてイギリスを巻き込み、独自軍拡で巻き消しを図ろうとしているが、イギリスはEU離脱に伴う新たな経済連携が主眼であり、中国を封じ込める気などさらさらないであろう。
 南シナ海に派遣されるとしている艦船も、空母2隻のライフサイクルコストが英財政を圧迫する状況から、アジアでの運用費を日本が負担することに期待しているのではないか。日英同盟の再現は困難であろう。
 独自軍拡については北朝鮮の脅威を口実に、巡航ミサイルやイージス・アシュアの導入が矢継ぎ早に決定され、12月15日には安倍が防衛大綱の抜本的見直しを表明した。
 しかしロシアがイージス・アショアなどミサイル防衛強化に難色を示すと、小野寺がショイグ国防相に「北朝鮮の脅威が無ければMDは必要ない」と中国を忘れたかのように漏らすなど、アメリカに劣らず迷走している。
 日本が軍備増強に進んだとしても、中国との戦力差は今後開くばかりであり、軍拡競争は破綻するだろう。逆に本気でMDや巡航ミサイルを北朝鮮対応と考えているのなら、オーバースペックもいいところである。
 こうした支離滅裂ともいえる動きは、アメリカも含めて周辺国との信頼関係が希薄な中、明確な軍事ドクトリンを持たない安倍政権は、不安に駆られて軍拡は進めるものの、単独で中国と対峙するのも不可能と考えている故のものである。
 このような外交は各国の不信感を増大させるものであるが、とりあえず、中国に柔軟姿勢を示して緊張緩和を演出するという方策と考えられる。これは真の友好とは程遠いものであり、中国が反応を示しているのは国内基盤を固めた習近平の余裕というものであろう。
 年明けの通常国会では特別国会の総括を踏まえ、野党各党は政党交付金の配分を睨んだ離合集散劇ではなく、内政外交の政策転換を求める共闘体制の再構築を急ぐべきであろう。(大阪O)