ASSERT 485号 (2018年4月28日発行)

【投稿】 満身創痍の安倍政権
【投稿】 中東からも東アジアからも撤退する「米国第一主義」のトランプ
【投稿】 東アジアの歴史的な転換点と安倍政権---統一戦線論(47)---
【書評】 津島裕子『半減期を祝って』 

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【投稿】 満身創痍の安倍政権
              ―外交ではすでに瀕死状態に―


官邸と官僚の共謀
 3月27日、衆参両院予算委員会で、佐川前国税庁長官の証人喚問が行われた。
 喚問で改竄の経緯や自身の関与について問われると佐川は「刑事訴追の恐れがある」として、55回にわたり証言を拒否し、真実を語ることはなかった。一方証言で強調したのは、改竄された文書について「首相官邸に報告しなかった」「改竄について首相や昭恵夫人、官房長官等、官邸から指示は無かった」という点である。
 しかし、安倍答弁を聞いた佐川を含めた財務官僚が、改竄前の文書に「昭恵夫人」の記載があることを、官邸筋に伝え、「それはまずいよ」などとの意向、意思、あるいは感想を聞いたなら「行政的な指示」を受けなくても改竄するのが、政権に忠実な官僚の作業であろう。
 逆に言えば問題がないのに、官僚が決裁済み文書を改竄することは考えられない。証人喚問で改竄の動機については一切明らかにならず、疑念はさらに深まることとなった。
 これに対し政権は、喚問終了後菅が記者会見で「官邸は何もしていなかった」と強弁、29日には麻生が参院財政金融委員会で「日本の新聞はTPPについて一行も書かず森友ばかりだ」と暴言を吐くなど開き直りを見せた。
 さらに自民党は28日の18年度予算成立を踏まえ、財務省に全責任を負わせる形で問題を公文書管理の在り方に矮小化し、それを改善することで幕引きを図ろうとし、4月に入ってからは安倍や麻生が出席する衆参予算委員会の開催を拒み続けた。
 しかし、4月9日参院決算委員会で財務省は、森友学園用地のごみ撤去に関し昨年2月理財局職員が、「大規模な撤去作業が行われた旨の説明をしてほしい」と学園側弁護士に依頼していたことを認めた。これにより改めて8億円の値引きに関し、官邸の関与が濃厚となり政権の目論む早期収束は遠のくこととなった。
 さらに翌日には、加計学園獣医学部新設に関し、柳瀬首相秘書官の発言として「本件は首相案件」と書かれた愛媛県作成の備忘録が示され、その後農水省でも同様の文章の存在が判明し、安倍の直接的関与が暴露される事態となった。
 このように安倍ファミリーの醜悪な所業が次々と明らかになるなか、4月3日には、これまで存在しないとされてきた、陸上自衛隊がイラク派遣時に作成した大量の日報が見つかった。
 2月に発覚した裁量労働制に関わる調査データの恣意的作成も含め、一連の事件で、公文書の取り扱いが不適切とか、個々省庁の管理問題ではなく、安倍政権が公文書を自らの都合に合わせ改竄、偽造、隠蔽させてきたという犯罪的行為が浮き彫りになり、官邸の意向に唯々諾々と従うままの官庁、官僚の実態も暴かれたのである。
 この構造はまさに官邸と官僚の共犯関係を如実に表すものであるが、ここにきて官邸にとって不都合な文書が出てきたのは、一方的に罪をなすりつけられた官庁の抵抗であろう。

北からの援護射撃なし
 安倍が自らの首を絞め、国会でもがき苦しんでいる中、その姿をあざ笑うかのように国際情勢は急展開を見せた。
 3月25〜28日金正恩が北京を訪問、習近平と中朝首脳会談を行い、朝鮮半島の非核化で一致するなど、関係修復をアピールした。この電撃的訪中を安倍は28日の参院予算委員会で「報道は承知している。情報収集に努めたい」と述べ、ニュースで知ったことが明らかとなった。アメリカは発表前に中国から報告を受けていたことを明らかにしたが、日本には知らされなかったのである。
 日米連携のお粗末な内実がまたしても露呈したが、それにも増して外務省のインテリジェンスのレベルの低さが明らかになった。河野が3月31日「北は核実験の準備を進めている」と発言したのに対し、38Northは核実験場衛星写真を解析し「活動は極端に減少」と評価、河野はこれに異論を唱えたが、まったく説得力を待たかった。
 安倍政権が右往左往している間に金正恩は、南北、米朝首脳会談に向け着実に地歩を固めている。3月30日IOCのバッハ会長が北朝鮮を訪問、金正恩と会談し、北朝鮮の東京オリンピック参加意向が確認された。
 4月4日になり、電話でバッハから報告を受けた安倍は「拉致問題で国民感情があるので配慮してほしい」と懇願したが、IOCがそのような配慮をするわけがない。可能性として、安倍が開会式に出席できたなら、南北統一選手団により北朝鮮国旗が入場しない光景に安堵する以外は無いだろう。
 焦りを濃くした安倍政権は4月11日河野を韓国に派遣、南北首脳会談で安易に妥協せず、日本人拉致問題を取り上げるよう、大統領、外相に注文をつけた。これに対し韓国政府は非核化を最優先とする対話重視の姿勢を示し、拉致問題の取り扱いも明言を避け、河野訪韓は徒労に終わった。
 朝鮮半島情勢へのコミットが不発に終わる中、4月13日、米英仏の有志連合が空海から巡航ミサイル105発でシリア攻撃を実施、これも報道で知ったであろう安倍は「決意を評価する」と述べるのが精いっぱいであった。
 この攻撃は欧米の喫緊の課題、ひいては国際社会の関心がシリア=中東情勢とロシアへの対応にあることを如実に示したものであり、安倍が吹聴して来た北朝鮮の脅威より、現実の脅威への対処が優先されたのである。
 4月15日には中国から王毅外相が来日、河野、安倍と相次いで会談し日中関係の改善をアピールした。安倍は会談の際、王を同じグレードの椅子に座らすなど「厚遇」を見せたが、昨秋の総選挙勝利、トランプ訪日を経て居丈高になり韓国外相を冷遇した昨年末から、昨今の意気消沈さへの転落は滑稽である。安倍は王の前で足を組むことにより、暫しの優越感に浸るしかなかった。
 懸案の日中韓首脳会談は5月9日に東京で開かれる見通しとなったが、この段階で李克強、文在寅両氏は金正恩と会っており情報は共有していることから、安倍の存在感稀薄化は免れないだろう。
 
訪米も成果なし
 内閣支持率とアジアでの影響力低下に焦る安倍は、一縷の望みをかけて4月17,18日、日米首脳会談に臨んだが惨憺たる結果に終わった。
 北朝鮮に対しては、最大限の圧力をかけ続けること、米朝首脳会談で拉致問題を取り上げることで合意したが、圧力云々は以前からの再確認に過ぎない。
 拉致問題は「シンゾーにとって一番大事な問題だと判っている」とのリップサービスがあったが、本番の首脳会談での成果は望めないだろう。これらは本当に信頼関係があれば電話でも確認できることであるが、直接確認しなければ不安だったのだろう。
 また安倍訪米中にポンペイオCIA長官が4月上旬に訪朝し金正恩と会談していたことがワシントン・ポストにより報道され、トランプは安倍に手の内を明かす気がないことが判った。
 今次会談の最大の焦点は経済問題であったが、鉄鋼、アルミに係る制裁措置が撤回されなかったのは決定的打撃であった。さらにトランプは一時復帰を仄めかしたTTPは歯牙にもかけず、日米二国間交渉を要求、日米で新たな貿易協議の枠組みを設けるとして、文言は入らなかったものの事実上FTAへの突破口が開かれた。
 実際の交渉窓口もこれまでの麻生―ペンスという形式的なものから、茂木―ライトハイザーという実務者協議に移行し、日本側は今後よりタフな対応を迫られることになった。
 失意のうちに帰国した安倍を待ち受けていたなはさらなる打撃だった。18日には、セクハラ事件で福田財務事務次官が辞任を表明したが、官邸は訪米前に辞任させようとしたものの麻生の抵抗で頓挫、結局麻生がG20に向かう直前に引導を渡すと言う無様な結末となり、統治能力の低下が露わになった。
 さらに同日、東方軍管区のロシア軍がクリル諸島の国後、択捉で2500人を動員する大規模な演習を開始、20日には同太平洋艦隊30隻が日本海で対艦、対空ミサイル試射を含む戦術演習を行った。
 この間ロシアは日本のミサイル防衛に懸念を表明してきたが、イギリス、シリアでの化学兵器使用疑惑に関し、安倍政権がロシアと距離を置く(欧米に比べれば近いが)動きを見せたことも影響しているだろう。
 さらにロシア海軍が演習を繰り広げている最中、人民解放軍の空母部隊が西太平洋に進出、艦載機の飛行訓練などを実施していることが確認された。
 安倍は日中関係改善の流れの中、海空連絡メカニズムや佐官クラスの交流を進めているが、一方で「島嶼奪還」のための水陸機動団など中国を睨んだ部隊の新設、硫黄島への対空レーダー設置、新型対艦ミサイルの取得などを進めている。
 図らずしも中露に挟撃された形となったが、これらは信義に基づくことなく、政権維持のための外交に終始する安倍自らが招いたものである。
 追い打ちをかけるように金正恩は20日の労働党中央委総会で、核、ICBM開発中止と核実験場の放棄を表明、韓中露に加えトランプも「良いニュース」と歓迎、安倍や河野は「前向き」との評価を出さざるを得なかったが、河野の見立ては完全な誤りだったことが証明された。
 北朝鮮は、既存の核兵器や短・中距離弾道弾の廃棄について表明していないとされているが、既存の核兵器が戦力化できているかアメリカは懐疑的であるし、スカッド系列のミサイルは韓国への脅威がより大きいわけであり、東アジアの全般的緊張緩和の課題である。米朝会談に向けた米中韓での調整は5月中に進む見通しであり、安倍支持者からも「訪米は焦りすぎた」との酷評も出ている。
 こうしたことから政権は「内患外憂」で満身創痍になっており、この間の自治体選挙では自公候補の敗北が相次いでいる。これに焦燥感を抱く一部政治家、官僚、自衛官、さらにはネトウヨ、レイシストなど安倍親衛隊は議会、街頭で手段を選ばない攻撃に出ている。民主、平和勢力は真摯にテロへの警戒を強めなければならない。
 そのためにも野党内の主導権争いにエネルギーを浪費することなく、市民運動、労働組合と連携し共同行動を推進しなければならない。そして当面6月10日にも予想される新潟知事選挙に統一候補を擁立し、勝利を目指すことが求められる。(大阪O)