アサート No.485(2018年4月28日)

【投稿】 東アジアの歴史的な転換点と安倍政権---統一戦線論(47)

<<朝鮮半島「終戦宣言を経て平和協定の締結へ」>>
 世界の、とりわけ東アジアの、戦争と平和をめぐる歴史を画することが期待される交渉、会談、駆け引き、つばぜり合いが朝鮮半島の非核化をめぐって展開されている。事態は、歴史的な転換点にさしかかっているとも言えよう。
 4/20、朝鮮労働党の中央委員会総会が開かれ、金正恩委員長は、21日から核実験と大陸間弾道ミサイルの発射実験を行わないことを宣言、「我々にはいかなる核実験、中・長距離ミサイル、ICBM発射も必要なくなった」述べたと報道されている。
 4/19、韓国の文在寅大統領は「北朝鮮は完全な非核化への意思を表明している」と述べ、南北首脳会談や米朝首脳会談を通じて南北や米朝との関係正常化に向けた合意の成立も難しくない、との認識を明らかにしている。4/20には、文在寅大統領と金正恩委員長、両者間のホットライン(直通電話)も開通している。
 さらに、米中央情報局(CIA)のポンペオ長官が北朝鮮を極秘に訪れ、金正恩委員長がポンペオ長官に「完全な非核化」の意思を伝えていたとも報じられている。
 4/27に行われる38度線の非武装地帯・板門店での南北首脳会談で、朝鮮戦争(1950年〜53年休戦)の終結、終戦宣言・平和協定締結が一気に達成される可能性さえ現実化しつつある。文大統領も19日、「終戦宣言を経て平和協定の締結へと進まねばならない」と言明、「北朝鮮は国際社会に完全な非核化の意志を表明している」とし、南北・朝米首脳会談を通じて「65年間続いてきた休戦体制を終わらせ、終戦宣言を経て平和協定の締結に進まなければならない」と述べる事態の急速な進展である。韓国政府は「朝鮮半島の非核化と恒久的な平和定着への道しるべとなるよう」南北首脳会談の準備を進めている。
 トランプ米大統領はこうした事態の進展に対して、「北朝鮮と世界にとって、とても素晴らしいニュースだ。大きな前進だ。我々の米朝首脳会談を楽しみにしている」、「朝鮮戦争はまだ終わっておらず今も続いている。南北は終戦に向けて協議する予定で、私も賛成している」「韓国は北朝鮮と会談し、朝鮮戦争を終わらせようとしている。私はそれに賛同している」「人々は朝鮮戦争が終わるとは思っていなかったが、今、それが進行している」と応じている。そして、すでに米朝首脳会談は「5月末か6月初め」に行われることが合意されている。
 4/20、中国も外交部の華春瑩報道官が「中国は朝鮮半島が戦争状態を早く終息し、各国が朝鮮半島の平和体制を構築することを支持する」と明らかにしている。これによって、朝鮮戦争停戦協定の当事国である米・中が平和協定への転換などに対して公式に支持する意思が明らかにされたことになる。きわめて重要な前進であり、環境は整いつつあると言えよう。
 しかし、文大統領は同時に「冷静に言えば、私たちは対話の敷居を越えているだけ」だとし、「南北だけでなく、史上初めて開かれる朝米首脳会談まで成功してこそ、対話の成功を語ることができるだろう」と述べ、「南北首脳会談ではまずは良いスタートを切り、朝米首脳会談の成果を見ながら、引き続き対話できる動力を見出さなければならない」と述べている。とりわけトランプ・金正恩、この両氏、ともに独裁者的な個人プレイに偏し、唐突で予測不能な移り気と不安定さが懸念される。その懸念をプラスに転じ、決裂と緊張激化を回避し、挑発と激高、罵り合いを避けさせ、対話を成功させ、逆行を許さず、着実、堅固に平和体制を構築するうえで、文大統領が述べるこの冷静さが最も必要とされよう。

<<「お前は国民の敵だ」>>
 この重要な歴史的転換点に遭遇しながら、何の積極的な役割も貢献もせず、取り残されてきたのが安倍政権である。安倍首相は、むしろ逆に「北朝鮮との対話は意味を持たない」と何度も公言して水を差し、対話の努力を一切放棄し、緊張緩和の流れに掉さし、平和の構築ではなく、対話が挫折し、緊張が激化する方向へと事態を引き戻そうと必死にあがき、孤立してきたのである。
 今年の2/8に行われた文大統領と安倍首相の非公開の日韓首脳会談の中で、安倍首相が「韓米軍事演習を延期する段階ではない。韓米合同軍事演習は予定通りに進めることが重要だ」と発言したことに対して、「この問題は私たちの主権の問題で、内政に関する問題だ。首相がこの問題を直接論じてもらっては困る」と、文大統領から内政干渉に類する発言に強い遺憾を表明されていたことが韓国政府側から明らかにされている(2/9)。
 この安倍首相の内政干渉発言を、小西洋之参院議員(民進)が取り上げ、「文氏『内政問題』と不快感=安倍首相の米韓演習要請に日本国憲法下で他国に威嚇のための軍事演習を主張した総理は初めてだろう。また、北朝鮮からは長距離砲でソウルが攻撃可能であり、韓国が直面する脅威は日本の比ではない。まさに内政干渉そのものだ。」とツィートしていた(小西ひろゆき (参議院議員)@konishihiroyuki 21:33 - 2018年2月10日)。
 4/16、その小西議員が参院会館前を歩いていたところ、ジョギング中の男が、現職自衛官であることを名乗った上で「小西か? お前は国民の敵だ。お前は気持ち悪い」などと執拗にののしり、同議員が「ここがどういう場所だか分かっているのか?」と問うと、自衛官は「何が悪いんだ。市民が国会議員に文句を言って何が悪いんだ?」と居直ったという。暴言の主は、統合幕僚監部指揮通信システム部所属のエリート将校、30代の3等空佐であった。統合幕僚監部は陸・海・空の3自衛隊を束ね指揮する中枢組織であり、しかも今回の日報隠しでは中心的な役割を担っている。この中枢組織に属する現職幹部自衛官の危険極まりない意識が、この暴言に直接反映されていると言えよう。そしてまた安倍首相の焦りが、この自衛官の暴言を引き出したとも言えよう。
 問題はさらに、小野寺五典防衛相が4/17、一方で謝罪しながら、同時に「若い隊員でさまざまな思いもあり、国民の一人であるので当然思うことはある」とこの暴言を擁護したことである。現職の自衛官が、政権を批判する議員を「国民の敵」だと恫喝したこの問題の深刻さをまったく理解していないのである。気持ちは分かる、とでも言いたかったのであろう。「国民の一人であるので当然思うことはある」などと間の抜けたことを平然と言える小野寺氏は、シビリアンコントロール下の防衛大臣としては完全に失格である。期せずして表面化したこの問題は、「政権を批判する国民の敵に銃口を向けて何が悪い」という、戦前の軍事ファシズム体制下で首相や大臣を襲撃した二・二六事件、五・一五事件の青年将校と同じ意識、メンタリティが、安倍政権下の自衛隊で確実に醸成されている証左とも言えよう。決して、うやむやにさせてはならないし、小野寺大臣と河野統合幕僚長を即刻辞職させない限り、危険なテロとクーデターの芽は温存され、拡大さえしかねないであろう。その小野寺大臣は国会審議での追及を逃れるように日米防衛大臣会合出席で訪米。モリ・カケ疑惑、セクハラ擁護で窮地に立たされた麻生副総理・財務大臣もG20財務相会議でやはり逃げるように訪米。どちらも野党6党の徹底審議の要求を無視し、国会の承認も得ずに、まさに遁走である。

<<「立憲民主党の失格幹事長、福山哲郎へ」>>
 そして、トランプ大統領に色目を使い、その戦争・軍拡政策と緊張激化政策に同調、いやむしろ煽ってきたつもりが、はしごを外され、対話路線で先を越され、あわてて泣きつくように訪米した安倍首相。4/17からの日米首脳会談で「拉致問題」を「なによりも重要」と再確認を要請、何とか受け入れられたが、さらなる武器購入と通商問題を二国間で協議する新たな枠組みを設置することを約束させられ、会談の成果を引っ提げて政権再浮揚というシナリオはもはや期待できないじり貧状態に安倍政権は突入したと言えよう。
 4月15・16日におこなわれたNNN(日本テレビ)世論調査で、内閣支持率が26.7%を記録、前回調査で第二次安倍政権発足後最低となる30.3%をさらに3.6ポイントも下げて最低を更新。政権維持の危険水域と呼ばれる30%をついに切る事態となった。隠蔽・圧力・権力乱用をほしいままにしてきた安倍政権の崩壊・退陣のカウントダウンがいよいよ始まったのである。
 しかしそれでもなお安倍政権が持ちこたえ、政権維持が可能だとすれば、それは対決すべき野党のふがいなさにあると言えよう。
 『週刊金曜日』編集委員の佐高信氏が、同誌2018/3/30号で「立憲民主党の失格幹事長、福山哲郎へ」と題して、「4月8日に投開票される京都府知事選挙に自民党と公明党が推薦する前復興庁事務次官の西脇隆俊が立候補しました。それに民進党、希望の党、そして立憲民主党が相乗りしたと知って、開いた口がふさがりません。この間の立憲民主党のキャッチコピーは、福山が提案した『まっとうな政治』でした。それに共鳴して多くの人が票を投じ、立憲民主党は躍進したわけですが、京都府知事選で自民党と組むのは『まっとうな政治』ですか?最終的には代表の枝野幸男も了承したのでしょう。希望ならぬ絶望の党の前原誠司は、もう『終わった人』だからともかく、同じ京都育ちのあなたまで、それに乗っかるとはどういうことですか。いま、安倍(晋三)政治を倒そうと国会で対決しているのに、京都でその安倍と手を組む政治センスのなさは、上げ潮ムードの立憲民主党の幹事長として失格でしょう。自由党と社民党は自主投票だとか。せめて、そうすることはできなかったのですか。」と鋭く指摘されている。こうした政治センスのなさこそが安倍政権を延命させてきたのである。
 同じことは共産党についても言えよう。2018/4/10付しんぶん赤旗は、「京都府知事選 福山氏得票44% 大健闘」と題して、「京都府知事選が8日投開票され、日本共産党も加わる『民主府政の会』と幅広い市民で結成した『つなぐ京都』の弁護士、福山和人氏(57)は、前回知事選で『民主府政の会』などが推した候補から約10万票増やし、31万7617票を獲得して大健闘しました。」、「蜷川民主府政が終わって以降で最高」「京都府政のあり方に新しい一ページを開いた」と絶賛しているが、そこまで肉薄し得たのであれば、なぜ野党共同統一候補の実現が出来なかったのか、またその実現への真摯な努力がなされたのかどうかが問われなければならないであろう。政治センスのなさは、統一戦線についてもいえることである。肉薄したとはいえ、その差は8万5千票以上ある。自民党関係者が「仮に京都で野党が共闘していたら、負けていたかもしれない」と深刻な受け止めを漏らしているとすればなおさら、それぞれの党のセクト主義や縄張り意識が払しょくされなければ、統一戦線は成果を上げられないのである。
(生駒 敬)

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