ASSERT 492号 (2018年11月24日発行)

【投稿】 捏造政治を強行する安倍政権
【投稿】 「日ソ共同宣言を基礎に日ロ交渉」に全面的に賛成する
【投稿】 米中間選挙の結果が提起したもの---統一戦線論(54)---
【書評】 『日本軍兵士──アジア・太平洋戦争の現実』

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【投稿】 捏造政治を強行する安倍政権
         ―内政、外交とも嘘と誤魔化し―


反省、謝罪は無し
 10月24日召集された197臨時国会の所信表明演説で安倍は、「謙虚、丁寧、低姿勢」を演出したが、三文芝居となった。
 演説の文字数は約6200字で、安倍政権で最短となった昨年11月の特別国会における約3500字に比べれば増えたものの、無味乾燥の内容は変わらなかった。
 安倍は冒頭「強い日本を創るため私が次の3年その先頭に立つ」とナショナリズムとナルシズムを混濁させた決意を開陳した後、「強靭な故郷づくり」として、最初にこの夏相次いだ自然災害の犠牲者に哀悼の意を表したが、「赤坂自民亭」などの愚行への反省の言葉は無かった。
 その後も、「地方創生」では全世代型社会保障、外国人材、「外交・安全保障」に於いてはロシア、中国との関係改善、日米同盟の強化などで自画自賛を繰り返した。
 さらに「平成のその先の時代の国創り」を進めるため、「国の理想を語るものは憲法」とし、「制定から70年以上を経た今議論を深め」と改憲への野望を改めて露わにしたのである。
 最期に、維新礼賛、薩長史観への批判を気にしてか、「戊辰戦争から50年」で政党内閣を樹立した南部藩出身の原敬の「常に民意の存するところを考察すべし」を引用し、「長さゆえの慢心は無いか」「国民の懸念にも向き合う」「身を引き締めて政権運営に当たる」と締めくくった。
 しかし、これらの美辞麗句は森友・加計事件で厳しい追及をかわすため、何回も聞かされた言葉であるが、それが実行されたことは無かった。
 今回も沖縄県民の民意、懸念を無視し、対話ポーズをとりながら辺野古基地建設を強行している中での決意は、口から出まかせの最たるものであろう。
 こうした嘘で塗り固められた所信表明は、そのなかで安倍が強調した日中、日露、日米関係、そして外国人労働者問題で次々と破綻していくことになる。
 
対中政策の矛盾
 10月26日、訪中した安倍は7年ぶりとなる単独での日中首脳会談を行った。この会談で安倍は習近平と「新たな日中関係」を構築していくことで一致したと成果を強調した。
 とりわけ「競争から協調へ」「パートーナーとして互いに脅威にならない」「自由で公正な貿易体制の発展」の「3原則」を確認したと述べていたが、それが捏造であったことが明らかとなったのでる。
 26日外務省は、李首相、習主席との会談で「3原則」という言葉での確認は無かった、との文書を発表し、翌日には安倍はそうした趣旨の内容を話したが、「3原則」とは言っていない、と重ねて否定した。
 中国外務省も「3原則」については一切言及しておらず、功を焦った安倍のフライングである可能性が高まった。
 今回の首脳会談で合意したのは、保護貿易主義への反対、朝鮮半島非核化等の抽象的合意と通貨交換(スワップ)の復活ぐらいである。懸案の尖閣諸島を巡る緊張緩和、ガス田開発問題では「不測の事態を避ける」ことでは一致したが、棚上げとなり、習近平への訪日要請も「真剣に検討したい」との回答で「来年のしかるべき時期」等の承諾までには至らなかった。
 それでも安倍は26日「日中第3国市場協力フォーラム」で「中国は長らく日本のお手本だった」と、歯の浮くようなお世辞を述べた。これまで様々な国際会議で中国を、無法者国家のように非難してきたことを忘れたかのような発言である。
 このことは今回の訪中の核心が「フォーラム」であったことを物語るものである。この場には日本企業からも多数が参加、両国の金融機関や総合商社により投資案件など52件の協力覚書が締結された。
 これは「一帯一路」への日本の参入を促進するものであり、安倍政権が資本の要求に突き動かされた結果である。これを仕切ったのは経済産業省であり、「3原則」発言で右往左往する外務省を後目に官邸、政権内での存在感をアピールした。
 一方、中国への大幅譲歩と受け取られないために、直後に来日したモディ首相を厚遇し、「一路」への対抗措置である「自由で開かれたインド太平洋構想」のアピールに努めた。
 しかし中国はこの地域への経済、軍事面での影響力を拡大しており、安倍政権も挑発を続けている。9月中旬、海自潜水艦による南シナ海での訓練が突如公表された。これは海自の行動を官邸が追認したものと考えられるが、安倍が自分で述べた「3原則」に悖る行為であり、中国は警戒を強めるだろう。
 安倍は対中国政策をいわゆる「先易後難」「先経後政」へと改めつつあるが、中途半端は否めず、このままでは米、印、豪との野合を画策したところで、この地域おいてもジリ貧になるのは必至である。
 したがって、中国包囲網、帯路分離工作は放棄し、全面的融和を進めるべきだろうが、政権内、支持基盤からの反発も予想され、今回の幻の「3原則」発言もそうした矛盾を糊塗するためのものであったと考えられる。
 しかし今後、経済協力と政治(軍事)対立がそれぞれ深化すればするほど権力内部の亀裂は深刻化し、安倍は窮地に立たされるだろう。

日露も行き詰まり
 帰国した安倍は臨時国会での論戦を避けるように、11月14日から18日にわたり、シンガポール、オーストラリア及びパプアニューギニアの歴訪に出発した。
 この間、ASEANやAPECなど様々な国際会議への出席や各国首脳との会談がセッティングされたが、それらはアリバイ作りとセレモニーに過ぎず、14日の日露首脳会談こそ真の目的であった。
 シンガポールで行われた23回目の会談後、安倍は「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速化させる」ことで合意し「年明けにも訪露し会談を行う」と述べ、4島から2島への方針転換を明らかにした。
 「2島返還論」は以前から水面下であったが、今回安倍はそれを浮上させ公的に認める方針転換を行ったのである。菅は15日の記者会見で「4島の帰属問題を解決し平和条約を締結する政府の立場に変更は無い」と釈明した。
 しかし安倍は「私とプーチンでこの領土問題に終止符を打つ」と言っており、この間の文脈と2人の任期も勘案すると、歯舞、色丹返還は第1段階ではなく、領土問題の最終的な解決と言うことになる。
 そもそも「共同宣言」は出発点であり、そこからどう前進させるかが求められていたはずであるが、突然それがゴールになってしまったのである。もし2島返還後に、国後、択捉の返還を求めれば、韓国を「『完全かつ最終的』『不可逆的』を反故にする」と非難する立場と矛盾することが判っているのだろうか。
 しかし、15日プーチンは「56年の共同宣言には2島の帰属の問題は何も書かれていない」と発言した。このプーチンの見解は以前から明らかにされてきたのであるが、今回の会談に向けた事前折衝でそれが覆る見通しも無しに、安倍は会談に臨み、あたかも鬼の首を獲ったかのような発言をしたのである。
 さらにプーチンは2島に米軍基地を置かないことを、日米政府が文書で確認することも求めていたことが明らかになった。これに対して安倍は北方4島の非武装地帯化を提起したと言うが、どちらの提案も論議を停滞させるものであり、駆け引きの材料にもならないだろう。
 今回の首脳会談では平和条約、領土問題について譲歩したのにも関わらず、安倍は前進したかのような虚偽の説明を行ったのである。これは「退却」を「転進」と誤魔化した大本営発表より姑息である。
 一昨年のプーチン来日前も2島返還確定のような情報が流されたが、来年6月の再来日(G20)を睨み、またしても楽観論が捏造され続けるだろう。

排外主義と決別を
 安倍は第2次世界大戦の結果を覆し、戦後外交の総決算を言うのであれば、尖閣諸島問題を棚上げした日中平和条約、2島の帰属について曖昧にした日ソ共同宣言を見直すと表明すべきだろう。しかし、そうした外交を推進してきたのは歴代の自民党政権であり、その結果に責任を持たなければならない。
 安倍が大好きであろう「西郷どん」では不平等条約の改定に苦悶する明治政府の姿が描かれた。時の力関係の下、不利な条件を飲まされた国がその是正を求めるのは当然であろう。
 その意味で日韓基本条約の事実上の見直しを進める韓国の対応は当然である。一方安倍政権は、とりわけ対米関係に於いて、日米地位協定ひいては日米安保の見直しに背を向けている。さらには貿易問題に於いても「国益」を棄損する譲歩を重ねようとしている。
 11月13日来日したペンスは安倍に対して貿易不均衡の是正を強く求めた。会談後の記者会見でペンスは「free trade agreement」と述べ、NHKは最初これをFTA(自由貿易協定)と報じた。しかし、直後に「先程の訳は誤りで正しくはTAG(物品貿易協定)です」とあからさまに捏造するという醜態を見せた。
 こうした安倍の捏造政治は止まることなく、国会でも外国人労働者問題の受け入れは移民政策ではないと誤魔化し続けている。そのため、基本的人権が制約されたまま日本で就労すれば賃金、労働条件のみならず生活上の様々な問題が惹起することは火を見るより明らかである。
 すでに実習生はそうした劣悪な条件下で労働を強いられているにも関わらず、法務省が調査結果を捏造し、審議を強行しようとしたことが明らかとなった。
 この様に、安倍政権は内政、外交の諸問題において「不都合な真実」を隠蔽し、捏造を積み重ねながら、延命を図らんとしている。これに対して野党は徹底追及すべきであるが、この間ナショナリズム、排外主義に取り込まれ民主主義、人権擁護の観点からの論議が欠落している状況がある。
 韓国最高裁の判決に対しては、野党はもちろんマスコミも「挙国一致」で批判を加えている。国家間の取り決めに、個人や司法が異を唱えることができないのであれば、辺野古基地建設反対も日米地位協定の改定も求めることが出来なくなる。この間の野党、マスコミの対応はダブルスタンダードであろう。 
 外国人労働者問題も、移民受け入れ、多文化社会の構築を前提としながら、政府案に対しては基本的人権、市民としての諸権利の欠落をもって反対すべきことを徹底しなければならない。 
 野党はこうしたスタンスに立たなければ、自ら政権延命に手を貸し、国会の大政翼賛会化への道を拓くことになるだろう。(大阪O)