ASSERT 497号 (2019年4月27日発行)

【投稿】 大阪ダブル選・維新大勝が突きつけるもの---統一戦線論(59)---
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【投稿】 大阪ダブル選・維新大勝が突きつけるもの
                 ---統一戦線論(59)---


<<安倍政治こそが維新の原動力>>
 4/7投開票の大阪府知事・大阪市長ダブル・クロス選挙は、維新政治=安倍政治に終焉をもたらすまたとない機会であったが、選挙結果は、逆に安倍=維新政治を正当化し、付け上がらせる結果となってしまった。知事選では約100万票、大阪市長選でも20万票近い大差をつけた維新の圧勝であった。なぜこのような大差がついたのか、野党を含めた反維新陣営は、この敗因をあいまいにしたり、しっかりと受け止めなければ、有権者から見放される事態となろう。
 第一は、表面上は安倍政権が維新候補ではなく、自民・反維新候補を支持していたが、実態は安倍政権が維新候補を強力に支援していたことの過小評価である。本来そのことが徹底的に批判され究明さるべきであったが、なおざりにされてきた。その直接的な反映は、朝日新聞の出口調査では、大阪市長選では維新支持層が全投票者の44%を占めたのに対して、自民支持層は21%にとどまり、共同通信社の出口調査では、自民支持層の50%が維新候補に投票したという実態に表れている。それは首相官邸、菅官房長官の、維新、公明幹部との癒着・連携が、自民党大阪府連、公明党大阪府本部の反維新姿勢を曖昧なものにさせ、自民支持層ばかりか公明支持層をまで浮動票化させ、事実上の「自由投票」と化させてしまったことに表れている。4/21投開票の衆院大阪12区の補欠選挙でも、投票日前日にしか自党候補支援に入らず、維新候補を勝たせた安倍首相の姿勢にも鮮明である。自民候補が敗れても、安倍首相や政権中枢が安堵する構図が出来上がっているのである。
 第二は、反維新陣営の政策的対決軸が全く後ろ向きであったことである。維新側の、「大阪の経済を停滞させるな」「大阪の成長を止めるな」という実態と乖離したでたらめな政策対決軸に対して、「都構想」反対以外に有権者を引き付ける政策的対決軸を設定できなかったことに象徴的である。敗因の決定的要因ともいえよう。ファッショ的集権主義・自由競争原理主義・賭博的投機主義に対して、反緊縮・分権・自治・所得再分配・成長の戦略、政策こそが問われていたのである。
 第三は、そうした事態はほぼ予想されていたにもかかわらず、反維新候補を支援する野党陣営は、政策的にも組織的にもバラバラで、野合した既得権益擁護勢力であるかのようなデマゴギーを許してしまったことにある、と言えよう。
 その結果として、本来獲得できるはずの政党支持なしの無党派層において、知事選61.5%、市長選56.5%もの過半数の有権者が維新候補に投票するという事態をもたらしてしまったのである。立憲民主党、共産党支持層でさえ、その実に30%前後が維新候補に投票しているのである(共同通信社の出口調査)。

<<「安倍・菅・松井は盃を交わした義兄弟」>>
 維新圧勝で舞い上がった橋下・前維新代表は、「僕は彼ら(松井・吉村)の性格とか、大阪維新の会のメンバーの性格をよくわかってますので、公明党の衆議院選挙の選挙区に大阪維新の会、立てます。で、もう関西は6選挙区あるんです、公明党のね。これが公明党の力の源泉ですよ。この6選挙区全部(に維新候補を)立てて、しかももう、大阪維新の会のエース級のメンバー、もう準備できてます。もう戦闘態勢に入ってます。だから、今はこれ第一幕で、第二幕は公明党を壊滅させる、というところまでやりますから。そうすると、日本の政治構造も大きく変わります。自民党との協力がね、公明党じゃなくてもしかすると維新となって、憲法改正のほうに突入していくと」「安倍さん菅さんと松井さんは盃を交わした義兄弟みたいなもの。松井さんは菅さんのこと大好きだし、菅さんも松井さんのこと大好きだから。本当にファミリーみたいで、すごいよ」「もし安倍さんが任期の最後に憲法改正をどうしても、ということであれば、連絡を取り合って、松井さんが『公明以外から2議席を取りました。オッケーですよ』と。そこで安倍さんが衆議院解散ですよ。維新はすでにエース級が揃っていて、準備体制もできてる。ここで大阪の公明党をすべて落選させて、憲法改正!」とまで放言している(4/8フジテレビ,4/11AbemaTV)。この本音は、安倍首相の本音でもあろう。
 吉村洋文大阪府知事も大阪12区補選の応援演説で「自衛隊も(憲法9条に)明記されていない」と嘆き、「(自民党、公明党、維新の会と合わせて)いま衆議院と参議院で3分2以上の改憲勢力がある。なんで本気で憲法改正の議論をしてくれないの」「僕たちは、ダイナマイトみたいにボカンと国会でやりたい。日本を前に進めていくためには今の自公だけじゃだめ。特に公明党と組んでいる限りは、なかなか国のあり方は決められない」と安倍首相の本音を代弁している。
 さらにこの大阪12区補選では、維新候補はダブル選では触れようともしなかった消費税増税問題にまで踏み込み、「(補選で)私を押し上げていただいたら『消費税の増税を吹っ飛ばせる』と言われている。(大阪12区の)寝屋川市、大東市の皆さんが維新と藤田文武にもう一回期待をかけてもらったら、消費税の増税までドーンと吹っ飛ばせるかも知れない。吉村さん(府知事)流に言えば、ダイナマイトみたいな戦いをさせて欲しい。もう火の玉になって突っ込んで行きますので是非とも勝たせて下さい」と訴え、続いて松井一郎・維新代表が「増税の前に(政治家の)自分達も身を切る改革をする。ここで増税を許すと、これから高齢者が増える中で、高齢者の社会保障費を掲げられて、どんどん大増税国家になります。増税を凍結するために勝たせて下さい」とまで訴え、当選している。安倍政治のお先棒を担ぎながら、何という欺瞞であろうか、と思われるが、ここでも安倍首相の本音を別の形で代弁しているのである。
 これは、安倍首相の最側近と言われる萩生田幹事長代行が、6月の景気指標次第では衆院の早期解散=増税見送りもありうると言及し、さらに「(天皇の)譲位が終わって新しい時代になったら、ワイルドな憲法審査を自民党は進めていかないといけない」と発言したこととぴたり符合するものである。

<<「れいわ新選組」>>
 この大阪12区補選では、共産党が急遽、現職議員の宮本岳志氏を辞職させて無所属で擁立するという「奇策」に打って出て、野党統一候補を目指し、野党支持層や無党派層の支持拡大を狙ったが、敗れた旧民主党の樽床伸二氏の得票にも及ばず、得票率は2割にも届かなかったのである。付け焼刃的で、自党中心主義的な「奇策」では事態が打開できないことが明示されたと言えよう。
 一方同じ補選でも、米軍基地・辺野古移設の是非が争点となった沖縄3区では、「オール沖縄」の屋良朝博氏が勝利した。候補擁立に曲折があったにもかかわらず、幅広い勢力を結集し、大衆運動を背景に粘り強く築き上げられてきた統一戦線形成の努力の成果と言えよう。
 しかし沖縄以外では、参院選を目前に控えていても、いまだにオール野党共闘の姿が見えてこないばかりか、停滞さえしている。このままでは32の1人区で、きわになって形ばかりの「野党共闘」がたとえ組まれたとしても、とても有権者の共感を勝ち取れず、まともに選挙を戦える態勢も作れず、その多くが敗北する怖れさえある。。
 しびれをきらした山本太郎参議院議員が4/10、自由党からの離党と、新党「れいわ新選組」の結成を発表。「8つの緊急政策『政権とったらすぐやります!』」として「@消費税廃止 A全国一律! 最低賃金1500円『政府が補償』 B奨学金徳政令 C公務員増やします D第一次産業戸別所得補償 E『トンデモ法』の一括見直し・廃止 F辺野古新基地建設中止 G原発即時禁止・被曝させない」という政策を明らかにした。同時に「日本国憲法改正なんて、当面は全く必要ないから、野党は憲法改正の検討や議論などしなくていい」とも述べている。大胆な財政出動を前面に掲げたことは、「何よりも、人びとのための経済政策を!」という薔薇マークキャンペーンと連動しており、評価できよう。選挙戦術では、支持者から募った寄付額に応じて、参議院選での擁立する候補者数を決める、まずは5月末までに1億円を集め、「10億円集まれば、比例区で25人、選挙区では2人区以上に立てたい」という。元号改定に迎合したような名称はいただけるものではないが、「野党が結集できたときには、(新党の)旗を下ろそうと思います」とも述べている。明らかに混迷する野党の結集に一石を投げかけているのである。
 安倍政権や維新がほくそ笑んでいる現実を、しっかりととらえなおす闘いのあり方、野党共闘、統一戦線のあり方が厳しく問われているのである。
(生駒 敬)