<<トランプ「気に入らない――全く受け入れられない!」>>
5/11、トランプ米大統領は、対イラン戦争終結に向けた米国側の最新提案に対するイランからの回答について、「私は、今、イランのいわゆる「代表者」からの回答を読んだところである。それは、気に入らない――全く受け入れられない!」(I don’t like it — TOTALLY UNACCEPTABLE! )と、怒りもあらわにイラン側の回答を拒否している。

何しろほんの数日前まで、トランプ氏は「彼らは合意を望んでいる。過去24時間、非常に良い協議を行ってきた。合意に至る可能性は非常に高い」と、イラン側の屈服を予見し、合意が実現すれば対イラン戦争は「すぐに終わる」だろう、原油価格は急落すると予測していたのであった。
ところが、パキスタンを介したイラン側の回答(5/10)は、その詳細はまだ明らかにされてはいないが、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、イランは戦争終結に向けた米国の最新提案に対し、多ページにわたる回答を送付したものの、トランプ氏の期待したものとは程遠いものであった。
イランは、米国がイラン港湾への封鎖を解除することを条件に、戦闘の終結とホルムズ海峡の段階的な再開を提案、核問題に関する交渉は、今後30日間に行われる、イランはウラン濃縮の停止に同意するが、米国が提案する20年間のモラトリアムよりも短い期間である。また、高濃縮ウランの一部を希釈し、残りを第三国に移管することを提案、交渉が失敗した場合や米国が後に合意から撤退した場合にウランが返還される保証を明確にする。
イランの要求事項の骨子は、
* 戦闘の終了とホルムズ海峡の段階的な再開
* 米国はイラン港湾に対する封鎖を解除しなければならない
* 核問題は今後30日間にわたって交渉される
* イランはウラン濃縮を一時停止する用意があるが、20年間のモラトリアムよりも短い期間
さらに、戦争終結に向けた条件を提示
* 米海軍の封鎖を終了し、石油輸出を許可
* レバノンでの停戦(非交渉事項)
* すべての米制裁の解除と資産の凍結解除
* ホルムズ海峡のイラン支配
* 戦後30日間の協議で詳細を最終決定
イラン側の回答は、核協議の最中に、2/28の突然の無法な米・イラン共同の「先制攻撃」以来、莫大な人的・物的被害を被った当事者としては、至極冷静で、合理的、平和的解決の道筋を明確にしている、と言えよう。
<<トランプ「イランは47年間、我々を翻弄してきた」>>
ところがトランプ氏にとっては、この冷静さが受け入れられない。米側が全世界からますます孤立し、劇的に米国の帝国主義的支配、軍事的支配力が低下してきてしまっていることを、時々刻々と全世界にさらけ出してしまっている事態である。
5/11、トランプ氏は、自己の窮地から脱出すべく、歴代大統領、とりわけ、オバマ、バイデン両前大統領に八つ当たりし、イランは、「弱くて愚かなアメリカ大統領という、最大のカモを見つけた。イランは47年間、我々を翻弄」してきた、「我々の新たな偉大な国を嘲笑してきた」と愚痴り、「イランのチンピラ」を揶揄しながら、「今や再び偉大になった我々の国を嘲笑ってきた。もう笑わせてはやらない! と宣言している。トランプ氏自身がチンピラの強がりを宣言し、チンピラになり下がってしまっている事態にまったく気付いていないのである。
しかし問題は、この「チンピラ」・トランプ氏は放置すれば、危険極まりない存在でもある。すでに、3日前の5/8、イランへの核兵器使用をほのめかしているのである。
停戦が破棄されたのかという記者団からの質問に対し、トランプ氏は、「停戦がなければ…イランから巨大な光が一つ放たれるのを見るしかないだろう。彼らは早く合意に署名した方がいい…署名しなければ、ひどい苦痛を味わうことになる。」と発言している。これは失言ではなく、戦争の再燃と、「巨大な光」=イランに対する核兵器使用の脅迫を平然と公言する事態である。
ロイター通信によると、ワシントンとテヘランが敵対行為の停止を目的とした「限定的かつ一時的な合意」に向けて動いているとも報じられている。
トランプ氏は5月13日に中国を訪問し、習近平氏と会談する予定である。会談が、緊張激化ではなく、事態の平和的解決に寄与できるかどうか、その核心が問われている。
(生駒 敬)