【投稿】イラン:米軍機・F-15戦闘機撃墜の波紋

<<「対空兵器を持っていない。レーダーも100%壊滅」の大ウソ>>
4/3、イラン国営テレビは、アメリカの軍用機2機を撃墜したと報道。1機は同国南西部上空を飛行していたF-15で、もう1機はF-15の乗員救出任務に当たっていた機体だという。米CBSニュースによると、F-15には乗員2人が搭乗しており、1人は救出されたものの、もう1人の空軍兵は行方不明となった。また、2機目のA-10(サンダーボルト2、ウォートホッグ)の操縦士は、ペルシャ湾上空で無事に脱出し、救助されたという。米CNNは、イラン上空で3日に撃墜された航空機について、米国の情報筋はF15E「ストライクイーグル」だと確認している。
米空軍によると、F15は通常1万フィート(約3000m)以上の高度を飛行し、レーダーにとらえられることなく、「戦いながら長距離を飛行して目標に到達し、敵の地上拠点を破壊してから離脱する能力を持つ」とされているが、実際にはレーダーにとらえられ、離脱するどころか、撃墜されてしまったのである。イランが運用しているロシア製地対空ミサイルS300が、破壊されることなく稼働している可能性が指摘されている。

 4/4、イラン国営メディアは、「米国F-15Eストライクイーグルがイラン上空で撃墜された」と主張する残骸の画像を公開。残骸画像には、米空軍第494戦闘飛行隊に関連する尾翼部分が撮影されている。

イランのタスニム通信は、米軍の救出作戦がイランの防空システムによる直接攻撃を受け、米軍機は現場から撤退を余儀なくされた、少なくともヘリコプター1機が被弾し、随伴機は撤退前に防御照明弾を発射したと報じている。

 イラン革命防衛隊(IRGC)は、2機目のF-35を含む複数の米軍戦闘機を撃墜したと発表している。その発表によると、2/28の違法な先制攻撃以来の米軍機の損失総数は、F-35戦闘機2機、F-18戦闘機1機、F-16戦闘機2機、F-15戦闘機4機となっている。
イラン領空内で、このように米軍機が撃墜されたことは、直接的な対立が急激にエスカレートしたことを示していると同時に、トランプ氏に言わせれば、「完全に破壊されていた」はずのイランの防空システムは堅固に機能し、米軍機への迎撃を強め、イラン上空における米国の作戦の自由を脅かしていることをも明らかにしてしまったのである。

トランプ政権にとっては、この事態は痛撃である。なにしろ、トランプ大統領は4/1の全国民向けのホワイトハウスからのテレビ演説で、「彼らは対空兵器を持っていない。レーダーも100%壊滅した。軍事力としての我々は止められない存在だ」と主張。「戦場で圧倒的な勝利を収めた。(イランの)ミサイルやドローンの発射能力は劇的にそがれ、残っているものはほとんどない」「イランを軍事的にも経済的にも完全に破壊した」とまで豪語していたのである。まさに、エイプリル・フールのとんでもない大ウソであったことを自ら証明してしまったのである。この発言から、わずか二日での出来事である。
トランプ氏は、米NBCニュースの電話取材で、この米軍戦闘機の撃墜がイランとの交渉に影響するのかと質問され、「いや、まったく。いや、これは戦争だ。我々は戦争しているんだ」と答えるのがやっとだったと報じられている。

<<米陸軍参謀総長「狂人が米軍を破滅に導くだろう」>>
4/5、トランプ氏は、イランで撃墜されたF-15E戦闘機の、行方不明となっていた副操縦士が無事であることを明らかにし、「彼は負傷したが、大丈夫だろう。」、「私の指示により、米国史上最も大胆な捜索救助作戦の一つ」が実施されたと述べた。少しばかりは、失地回復であろう。「親愛なるアメリカ国民の皆さん、ここ数時間、米軍は米国史上最も大胆な捜索救助作戦の一つを成功させました。素晴らしい乗組員の一人、尊敬を集める大佐の一人を救出したのです。そして、皆さんにお伝えできることを大変嬉しく思います。彼は無事です!」とTruthSocialで述べている。こんな事態をもたらした反省の弁は、一言もなしである。

反省どころか、さらなるエスカレートを公言している。トランプ氏は「Truth Social」に、ホルムズ海峡を船舶航行のために開放する期限が10日間であることを改めてイランに突きつけ、「地獄の業火が降り注ぐまであと48時間しかない」と警告し、「神に栄光あれ!」と宣言、「私がイランに10日以内に合意するか、ホルムズ海峡を開放するよう命じたことを覚えているか? 時間は刻々と過ぎている。あと48時間で地獄の業火が彼らに降り注ぐだろう。神に栄光あれ! ドナルド・J・トランプ大統領」と書き込んでいる。

要するに、トランプ氏はこれまでの事態の推移から何も学んでいないのである。常に相手側を過小評価し、その結果、自らが引き起こした惨状を解決する有効な手段がない。だから彼は、うろたえ、大言壮語でエスカレートし、結局は地上部隊を派遣する方向へと流されている。

そして現実に、トランプ政権は、すでに地上部隊の派遣を前提に続々と兵士を中東に送り込んでいる。
 そのエスカレート遂行の障害となる、軍内部の将軍たちの粛正にまで乗り出し、「若い兵士たちの即応態勢、そしてより重要なことに、彼らの意識と思考を的確に把握していた」とされる、ランディ・ジョージ陸軍参謀総長、デビッド・ホドネ将軍とウィリアム・グリーン・ジュニア少将、この3人の高官の解任をあきらかにしている。
解任を強行され、辞任を発表してから1時間後、当の米陸軍参謀総長は、「狂人が偉大なる米軍を破滅に導くだろう。」とまで述べる事態を招いている。

こうした脅迫に対して、イラン側は、「イランの橋梁、発電所、またはエネルギーインフラに対するあらゆる攻撃は、中東地域内のすべての米国およびイスラエル資産だけでなく、米国同盟国およびホスト国に対する主要な拠点への攻撃を引き起こすだろう。その反撃は、これまで以上に激しく、壊滅的なものとなるであろう。」と応えている。

そして現実に、イラン革命防衛隊(IRGC)の航空宇宙軍と海軍は、報復作戦第95波の一環として、イスラエルはもちろん、バーレーン北部の米国のパトリオットミサイル防衛システムをはじめとする地域内の主要目標に対し、精密攻撃を実施。
4/4、IRGC広報部は声明を発表、「包括的かつ多面的な作戦が今朝開始された」、この報復攻撃では、IRGCの最新鋭ミサイル、ハジ・カセム、ハイバル・シェカン、カドルなどが使用され、クウェートに配備された米国のHIMARSミサイル陣地とバーレーン北部の米国のパトリオットミサイルシステムは、「作戦で破壊された」ことを明らかにしている。また、アラブ首長国連邦(UAE)にある米軍のHIMARS発射部隊、司令部、および米軍上級幹部や教官のための訓練施設を標的にすることにも成功した、と述べている。米、その同盟国側にとっては、深刻な事態の進展である。

<<トランプ「戦争に追われている。保育園の面倒を見られない!」>>
追い詰められたトランプ政権は、ついに米国を戦時経済体制に移行させる方向を明確にし出している。
新たに発表されたトランプ政権の予算案は、事実上あらゆる分野を犠牲にして、米国政府の軍事力強化を軸とした政策転換を図るものとなっている。国防総省への1兆5000億ドルの予算要求に加え、イラン関連費用としてさらに2000億ドルを要求。国防費は実に42%もの増額である。この増加率はレーガン政権時代を上回り、第二次世界大戦直前の水準に迫るものである。

逆に、公衆衛生、科学研究、住宅、教育といった非国防費は10%、すなわち730億ドル削減される。最も大幅な削減となるのは、環境保護庁(EPA)で52%、国立科学財団(NSF)で55%、中小企業庁(SBA)で67%の削減となっている。

トランプ氏の痛ましい場面のスーパーカット

つまりは、戦時経済体制への移行である。ついこないだまで、トランプ氏は「戦争はもうすぐ終わる」と何度も公言していたのである。
4/2、CNNがトランプ氏の終わりのない戦争を否定する痛ましい場面のスーパーカットを公開している。それによると、
* 「ご存知の通り、勝利を早々に宣言するのは良くない。我々は勝利した」とトランプ大統領は3月11日に宣言。
* 「もうすぐ終わると思う」と彼は3月13日に述べた。
* 「もうすぐ終わるだろう」と3月16日。
* 「もうすぐだ。順調に進んでいる」と3月17日。
* 「ああ、我々は勝ったと思う」と3月20日。
* 「こんなことを言うのは気が進まないが、我々は勝った。この戦争は終わった」と3月24日。
* 「少し回り道をしたが、もうすぐ終わるだろう」と3月26日。
* そして最後に「我々は間もなく撤退する」と3月31日。

ほんの数日前に、「もうすぐ終わる、我々は間もなく撤退する」と述べていて、どうして、戦時経済体制への移行が必要なのであろうか。なんという豹変ぶりであろうか。あきれるばかりであろう。

トランプ大統領が1か月前、2/28にイランに対して開始した戦争は、核協議の合意を反故にする、まったく一方的な侵略行為という犯罪行為であった。これは、トランプ政権の傲慢さと中東の複雑な現実に対する軽率な無視、過小評価から生まれた、壊滅的な誤算であった。誤算が誤算を生み、正当化の根拠が二転三転し、場当たり的で、衝動的な一連の行動を次から次へと繰り出す迷路へと自らはまり込み、残りは危険なエスカレートで脅迫する、という出口なしの事態を露呈してしまったのである。

4/1に発表されたCNNの最新の世論調査によると、戦争に2000億ドルを費やすという国防総省の提案には、米国民の71%が反対と回答している。賛成の29%とは圧倒的な差がついてしまっている。またこの世論調査では、イランに対する軍事行動に踏み切る判断を支持しないとする回答が66%、戦争を起こすだけの「価値があった」かとの問いに対しては、否定的な回答が70%にまで

達している。

言うに事欠いて、トランプ氏は、「私たちは保育園の面倒を見られない。大国だ、50の州がある、何百万もの人々がいて、戦争に追われている。私たちが保育園、メディケイド、メディケア、こうしたすべてを面倒見るのは不可能だ。」と本音を吐露している。「戦争に追われている」、戦時経済の独裁者、その地位で居座り続けたい、これが、トランプ氏の本心であろう。だとすれば、ノーベル平和賞どころか、選挙公約とはまった相対立するものであり、直ちに辞任すべきであろう。野党は、トランプ氏を弾劾し、解任すべきであろう。世界は、こんなトランプ氏を、徹底的に孤立化させ、危険なエスカレートを封じ込めるべきであろう。
(生駒 敬)

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