【投稿】「ファンド帝国主義」に支配されるイラン戦争の認知戦とバブル崩壊

【投稿】「ファンド帝国主義」に支配されるイラン戦争の認知戦とバブル崩壊

福井 杉本達也

1 日経平均が一時6万円

4月23日、日経平均株価は一時6万円の大台をつけた。その後には値下がりに転じたものの、「24日の東京株式市場で日経平均株価(225種)は反発し、前日比575円95銭高の5万9716円18銭で取引を終えた。終値として、22日に付けた史上最高値(5万9585円86銭)を超えた。上げ幅が一時600円を超える場面もあった。中東情勢の緊張緩和への期待に加え、半導体関連株の上昇が相場を押し上げた。」(毎日:2026.4.24)と報道されている。

東証の1日での売買は、約6兆円で、米国系ファンドの売買は、そのうち、4兆円を占めていて、株価の全体を動かしている。世界の株式相場は「ファンド資本主義」になっている。企業経営の最重要課題とは利益の処分である。米国では純利益の配当と自社株買いが90%であるが、日本の企業も海外ファンドに押されて、配当と自社株買いが70%までを占めるようになっている。これでは、新たな企業投資もままならず、労働者への賃上げもできない。例えば半導体銘柄の東京エレクトロンは配当+自社株買いで80%を占める。これが、AI株が上がっているという正体である。

 

2 インサイダー取引とトランプの「コロコロ変わる」イラン戦争を巡る発言

「トランプの『2分ごとにコロコロ変わる』態度にイスラエル軍が困惑 — マアリヴ紙。高級将校らが『彼はレバノンでイスラエルの手を縛った』と不満、 彼の次の動きを待たざるを得なくなったと語る。トランプの『2分おき』の二転三転に翻弄されるイスラエル国防軍。」「『ツイートでは好戦的な姿勢を見せ、その2分後には正反対のことを言い出す。我々がどの方向へ向かっているのか、さっぱり分からない」(RT―X:2026.4.24)と書いている。

米Bloombergは「米国でイラン紛争を巡りインサイダー取引疑惑が浮上している。トランプ米大統領がSNSに紛争関連の投稿をする直前に原油先物などで売買高が増えているという。」(日経:2026.4.23)と報道している。3月23日、トランプ氏が自身のSNSに『イランの発電所への空爆を5日間延期する』と投稿した。その15分前に数億ドル規模の原油の先物が取引される「疑惑の取引」が発生していた。通常の取引の9倍もあった。投稿後に原油価格は急落した。4月7日には「2週間の停戦」をSNSに投稿する前に同様の動きがあった。(日経:同上)。これには、当事者のイスラエル軍でなくても困惑するであろう。コロンバイア大学の研究者は、2024年2月から2026年2月までにインサイダー取引の疑いがある売買で総額約1億4,300万ドルの不正利益が発生したという分析を出している。(日経:同上)。

トランプはSNSを使って、イラン戦争に関する(フェイク)戦況と攻撃や停戦を交互に発表している。米国に有利な戦況や停戦の発表に対して、インサイダーであるウォール街のファンドは即刻、株価先物の買い、原油先物の売りを行っている。ウオール街の資金運用総額は57兆ドルといわれている。このうち60%が株価運用されている。先物の買いが株価を上げ、清算の売りが下げる。株価変動の増幅機能をもつのがレバレッジ(信用借り)であり、1日の売買変動が3%ならば、10倍のレバレッジを掛ければ、30%の利益(又は損失)となる。イラン危機は「ファンド帝国主義」への膨大な利益還元のために粉飾されている。トランプの戦況発表がそのまま株価の変動に繋がる「認知戦」となっている。その間にも多くの血が流されている。

 

3 AIバブルは崩壊する

企業の純利益は株価を上げる目的に使われており、けっして企業の新たな成長分野への投資に使われているわけではない。経済的には非合理な株価バブルである。企業が株主から集めた資本(株主資本)に対して、どの程度の配当を支払っているかを示す総還元率はドイツが15倍であるが、日本は23倍、米国は24倍である。総還元率が高いことが、日米の株価を押し上げている。

「人工知能(AI)企業が拡大している資金調達や設備投資を巡り、米国の投資家が相次ぎ訴訟を起こした。市場の「巨額すぎないか」という懸念である(日経:一目均衡・山下真一:2026.4.7)。AIは膨大な電力消費と半導体使用による重厚長大産業であり、巨大なデータセンターは会員の使用料では利益を生みだしえない。かつて、オープンAIのアルトマンはAIを利益の出ない公共事業であるといっていた。会員の利用時間と料金を増やすと、処理速度を上げるため、高度な処理速度の半導体の追加投資と、より一層の電力消費が必要となる。イラン戦争後の株価上昇は、AI半導体メーカー・製造機器メーカー・検査機器メーカー・電力・電送メーカーの株価上昇であった。NVIDIAの1個700万円の半導体を数十万個使うデータセンターへの投資総額は2兆円にもなる。必要電力1GW/Hの電力費は年間2000億円にもなる。さらに競争力維持のため、先端半導体を4000億円づつ投資し続けなければならない(5年償却として)。これを維持するには年間会費4万円として、1基のデータセンターの有料会員は1500万人いなければならないが、現在、オープンAI・とマイクロソフトの7基のデータセンター計画では、有料会員は1000万人+法人会員400万人しかいない。(吉田繁治チャンネル:2026.4.24)。これではどう考えても採算が取れるはずはない。

FRB議長の口先介入で、超高速取引で、レバレッジのかかった先物買いを行い、株価を押し上げる。この口先介入を行っているが、昔はFRB議長であったが、現在はトランプ大統領である。毎週金曜日の口先介入で株価をコントロールしている。中間選挙で負ける恐れがあるので、トランプは躍起になって、株価を上げるために、イラン戦争を材料にして口先介入しているのである。

「『焼け石に水』煽るメディア。『やった、やった。高市外交の大成果。”日本に原油100万バレル輸出 メキシコ大統領が合意発表”』とされたが、①日本の原油消費量:約310万〜336万バレル/日。今回輸入:100万バレル → 約0.3日分、こういうのをどう表現。『焼け石に水』」と孫崎享氏はXに投稿している(孫崎享:2026.4.24)。また宮田律氏も「なおかつメキシコ産原油の主力は『マヤ原油』という極端に重質・高硫黄の性質のもので、中東産の軽質〜中質原油の処理に最適化された日本の製油所には向かない。マヤ原油をそのまま日本の製油所で単独処理することは経済的・技術的に困難であり、元売り各社は国家備蓄の軽質原油(アラブ・エクストラ・ライトなど)や米国産軽質スイート原油と精緻にブレンドして処理する必要があると考えている。こうして見ると、メキシコ産原油の輸入というニュースは国民への目くらましのようなものであり、気休めにもならない。」と投稿している。これも米国の「ファンド帝国主義」に命令されて、株価を上げるための、高市政権とマスコミの口先介入の一種であろう。

マクロ経済の所得指標と金融相場は15倍と史上最大の乖離となっている。世界の債務はGDPの3倍を超えている。原油危機でインフレになれば金利が2%上がる。金利が上がれば利払いはGDPの6%となる。(吉田繁治チャンネル:2026.4.24)

 

4 米国債11.5兆ドルを誰も買わない

米国の既発国債は39兆ドルあるが、このうちの2026年会計年度(2026年10月~2027年9月)で、9兆ドルが借換債となり、財政赤字で毎年新たに2兆ドルの新規国債が発行される。そして、イラン戦争による軍事費が1兆ドルから1.5兆ドルになり、増加分5千億ドルの国債=11.5兆ドルの国債を発行しなければならない。しかし、この国債を買うものがいない。FRBは2008年のリーマン危機時に4兆ドル、2020年のコロナ危機時に5兆ドルの国債を買って、紙幣を増発したが、原油インフレ時に紙幣を増発して、さらにインフレを加速する訳にはいかない。かつては中国が1.3兆ドルと積極的に購入していたが、今は米国債を売り、金を準備資産として購入している。インド・ブラジルなどBRICS連合は米国債ではなく金を買っている。ペルシャ湾岸諸国は、石油を輸出してペトロダラーを貯め、それを米国債の購入資金としていたが、イラン戦争により米国債を買うどころではなくなっている。石油危機が長期化すると、米国と日本のインフレ率は2ポイント上昇して、国債の金利も2ポンイト上がり、既発国債(米国39兆ドル、日本1300兆円)の時価は約15%下がる。国債をもつ日米の金融機関は大きな損失を被り(米国930兆円:日本195兆円)、2028年には世界金融危機になっていく。(吉田繁治チャンネル:2026.4.24)

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