Assert Webの更新情報(2026-01-25)

【最近の投稿一覧】
1月25日【投稿】「トランプ崩壊の到来」:危険なエスカレート
1月21日【投稿】トランプ政権:暴走・制御不能で危険な段階
1月19日【書評】『管理職の戦後史―栄光と受難の80年』濱口桂一郎著
1月5日【投稿】東電の「現金が底をつく」―原発再稼働の論理
1月4日【投稿】無謀・トランプ:対ベネズエラ、資源・領土略奪戦争開始
12月31日【投稿】米・イスラエル:対イラン戦争へのエスカレート
12月31日【投稿】日米安保条約からの潜在的脱退・「戦略的独立」の提起
12月26日【投稿】米国の敗北による焦りー高市政権官邸幹部の核保有発言の支離滅裂
12月19日【投稿】トランプ:対ベネズエラ・帝国主義戦争開始宣言
12月14日【投稿】トランプ政権の新しい国家安全保障戦略と日本
12月3日【投稿】トランプ米大統領:一晩に「陰謀論」投稿、数百回
11月30日【投稿】高市政権の経済政策は円安から物価高騰を招く
11月22日【投稿】トランプ大統領:極まる独裁者・ファシストの叫び
11月19日【投稿】台湾有事で「存立危機事態」との高市答弁は日本に大損害をもたらす
11月15日【投稿】特定食品関税撤廃:トランプ関税の敗北--経済危機論(172)
11月06日【投稿】ニューヨーク市長選:トランプ脅迫路線の敗北
10月31日【投稿】トランプ関税:脅しの敗退--経済危機論(171)
10月31日【投稿】日本の5500億ドルで米国の電力(原発)などインフラを整備
10月19日【投稿】反トランプ・「ノー・キングス」全米大規模抗議デモ
10月18日【投稿】古色蒼然とした「安全保障」と「エネルギー政策」
10月13日【投稿】トランプ政権:対中貿易戦争再開の脅し--経済危機論(170)
10月12日【書評】「西洋の敗北と日本の選択」・エマニュエル・トッド著
10月11日【投稿】「下駄の雪」公明党の連立政権離脱と80年間もの米国支配
10月5日【投稿】「ガザ和平計画」:トランプ・ネタニヤフ政権の岐路
9月16日【投稿】上海協力機構首脳会議と抗日戦勝80周年記念式典―日本はどこへ
9月13日【投稿】「悪意のない差別」?
9月4日【投稿】選択迫る「平和か戦争か、対話か対決か」
9月2日【投稿】上海協力機構サミット vs. 米欧覇権の終焉--経済危機論(169)
8月31日【投稿】トランプ関税、再び違法判決--経済危機論(168)
8月26日【追悼】岩田吾郎さん(リベラシオン社)
8月18日【投稿】戦争から対話へ―米ロ首脳会談の評価
8月18日【投稿】原発の使用済み核燃料の行き場所がない
8月13日【転載】「もし私の言葉があなたに届いたら、 イスラエルが私を殺害し、私の声を封じることに成功したことを知って下さい」
8月11日【投稿】旧民主党リベラル派の「高福祉高負担政策」の破綻と大連立の動き
8月10日【投稿】トランプ大統領:大恐慌再来を警告--経済危機論(167)
7月29日【投稿】でたらめ闊歩の米・EU関税交渉--経済危機論(166)
7月28日【投稿】 究極の売国的行為―トランプ関税合意と「石破降ろし」という欺瞞
7月27日【投稿】ずさんな日米関税交渉--経済危機論(165)
7月24日【投稿】参政党躍進の理由
7月21日【投稿】参院選での自公与党の大敗と日米関税交渉の行方
7月14日【投稿】トランプ関税:破綻への再始動--経済危機論(164)
6月28日【投稿】イラン核施設攻撃と停戦の真相
6月24日【投稿】トランプ大統領:「12日間戦争」終結の虚構
6月22日【投稿】トランプ米政権:対イラン直接爆撃、泥沼の幕開け
6月19日【転載】反戦の声、イスラエルの爆撃で殺害されたイラン人詩人パルニア・アッバシさんを追悼
6月18日【投稿】危険な乱心・トランプ:イランに「無条件降伏」を要求
6月16日【投稿】「ノー・キングス」デー:全米各地で500万人以上
6月14日【投稿】トランプ大統領:イラン奇襲攻撃「素晴らしい」と礼賛
6月6日【投稿】トランプ・マスク、蜜月から破局へ
5月25日【転載】11歳のヤキーン・ハマド:ガザ最年少のメディア活動家、イスラエルの空爆で死亡
5月24日【投稿】「一番困っている」国民の生活を守るには消費税減税しかない、財源は「外為特会」だ
5月24日【投稿】トランプ 氏 : 歯止めなきデマゴーグ政権を露呈
5月15日【投稿】トランプ関税の敗北--経済危機論(163)
5月12日【投稿】印パ戦争と排外主義の罠
5月10日【翻訳】何故に米価は上がり続けているのであろうか ?(後編)
5月4日【投稿】トランプ : 対中国全面禁輸へのエスカレート--経済危機論(162)
5月1日【翻訳】何故に米価は上がり続けているのであろうか ?(前編)
4月26日
【投稿】トランプ関税:後退と妥協へのディール--経済危機論(161)
4月26日【投稿】 「NEXUS 情報の人類史」を読んで
4月25日【書評】『日本経済の死角』河野龍太郎著 ちくま新書
4月22日【投稿】問題は「トランプ関税」ではなく米国のデフォルト危機
4月20日【投稿】反トランプ抗議デモ:全米規模へ拡大
4月13日【投稿】トランプ関税の混迷--経済危機論(160)
4月10日【翻訳】America なしでは the West ばらばらになり、枯れしぼみ、死んでしまうであろう
4月6日【投稿】「アメリカの驚くべき自傷行為」--経済危機論(159)
4月1日【投稿】「ヤルタ2.0」
3月30日【投稿】トランプ関税のエスカレーション--経済危機論(158)
3月19日【投稿】プーチン・トランプ電話会談、デタントへの前進と障碍
3月11日【投稿】トランプ関税:株価暴落を加速--経済危機論(157)
3月6日【投稿】トランプ関税戦争:世界恐慌への警告--経済危機論(156)
3月3日【投稿】トランプ・ゼレンスキー会談の決裂
3月2日【投稿】トランプ:対ウクライナで「平和」、対イスラエルで戦争拡大
2月26日【投稿】トランプ路線、拒否するEUの混迷
2月22日【投稿】西欧の敗北
2月16日【投稿】米ロ会談:軍事対決から外交への転換点
2月11日【投稿】内政干渉・政府転覆組織:米国際開発庁(USAID)の閉鎖と日本への影響
2月8日【投稿】トランプ:米軍ガザ「占領」のドタバタ
2月5日【投稿】「デープシーク(DeepSeek)ショック」
2月2日【投稿】トランプ政権:関税戦争の開始--経済危機論(155)
2月2日【投稿】トランプの「パリ協定」脱退とグローバル・サウス
1月31日【投稿】レーガン空港・航空機墜落事故とトランプ政権

1月22日【投稿】「帝国」再建に挑む:トランプ政権--経済危機論(154)
1月22日【書評】『反米の選択―トランプ再来で増大する“従属”のコスト』大西広著
1月18日【書評】『失われた1100兆円を奪還せよ』吉田繁治著
1月16日【投稿】ガザ和平:イスラエルとハマスの停戦合意
1月9日 【投稿】「米国の友人になることは致命的である」―バイデン大統領による日本製鉄のUSスチール買収阻止―
1月5日 【投稿】“歴史の教訓に学ばぬ”「エネルギー基本計画」改定案という作文
1月5日 【翻訳】中国は、U.S. Steel 買収商談が揺らぐことを望んでいる
12月31日【投稿】移民排除:トランプ陣営、亀裂拡大--経済危機論(153)
12月25日【投稿】トランプ次期政権の失速と破綻--経済危機論(152)
12月17日【投稿】韓国戒厳令と尹大統領の弾劾―そして属国日本は
12月15日【投稿】中東危機:米・イスラエル、イラン核施設攻撃へのエスカレート
11月22日【投稿】バイデン政権、退任直前の危険な世界戦争拡大への挑発
11月18日【投稿】「103万円の壁」と国民負担率の考え方
11月10日【投稿】トランプ勝利と日本の針路
11月6日 【投稿】米大統領選:バイデン/ハリス政権の敗北
10月30日【投稿】総選挙結果について(福井の事例を含め)
10月29日【投稿】衆院選:自公政権の大敗と流動化
10月29日【投稿】総選挙結果について
10月27日【書評】『大阪市立大学同級生が見た連合赤軍 森恒夫の実像』
10月23日【投稿】戦争挑発拡大と米大統領選--経済危機論(151)
10月12日【投稿】被団協・ノーベル平和賞受賞 vs. 石破首相「核共有」
10月2日【投稿】米/イスラエル:中東全面戦争への共謀--経済危機論(150)

【archive 情報】
2023年5月1日
「MG-archive」に新しい頁を追加しました。
民学同第3次分裂

2023年4月1日
「MG-archive」に以下のページを追加しました。
(<民学同第2次分裂について>のページに、以下の2項目を追加。
(B)「分裂大会強行」 → 統一会議結成へ
(C)再建12回大会開催 → 中央委員会確立

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【投稿】「トランプ崩壊の到来」:危険なエスカレート

<<「トランプ氏の精神の崩壊」が世界的な「崩壊」を招いている>>
1/23日付、ニューヨークタイムズ紙の社説は、「トランプ崩壊の到来」( The Coming Trump Crackup )と題して、ブルックス氏( David Brooks )が、「トランプ氏の精神の崩壊」が世界的な「崩壊」を招いている、と警鐘を鳴らしている。
 「出来事の軌跡を辿れば、我々は何らかの崩壊に向かっていることは明らかだ」、「我々は少なくとも4つの崩壊の真っ只中にいる。戦後の国際秩序の崩壊。移民・関税執行局(ICE)の職員が軍靴を脱ぎ捨てる場所では、国内の平穏の崩壊。FRB(連邦準備制度理事会)の独立性への攻撃、そして民主主義秩序のさらなる崩壊。そして最後に、トランプ大統領の精神の崩壊だ。この4つの中で、トランプ大統領の精神の崩壊こそが主要なものであり、他のすべての問題につながっている」、その「精神の崩壊」によって、米国内外で「暴力に訴えることがますます加速している」と厳しく警告している。
トランプ氏個人自身が、「専制政治の弧は堕落へ」と向かっており、「専制君主は概して自らの権力に酔いしれ、それが次第に自制心を減らし、特権意識と自己中心性を強め、リスクテイクと自信過剰を助長し、社会的な孤立、腐敗、そして防衛的なパラノイアをエスカレートさせるのだ。」とまで断じている。
本稿筆者が、前回の投稿(1/21)「トランプ政権:暴走・制御不能で危険な段階」で指摘した通り、そのエスカレートはますます危険性を帯びてきているのである。

 トランプ氏の「専制君主」としての異常さは、ニューヨークタイムズ紙の警告後の1/24、自らのソーシャルメディア・Truth Socialに投稿した「カナダに100%の関税を直ちにかける」という脅しにも端的に表れている。わざわざ、冒頭でカナダの首相・カーニー氏を、「首相」(Prime Minister Mark Carney)とは呼ばず、知事カーニー(Governor Carney)と呼んで、さげすんでいるつもりなのである。カナダを米合衆国に併合する、「州知事」と以前にカナダのトルドー前首相を揶揄したあの論法の再現である。

<<「NATOに米国に派遣させ、南北国境を守らせる」>>
対するカーニー氏は、1/21、トランプ氏も出席した、スイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)での演説で、冒頭、「カナダ国民は、地理的条件や同盟国であることが自動的に繁栄と安全保障をもたらすという、古くからの安易な思い込みがもはや通用しないことを理解しています。}と述べた後、「過去6ヶ月間で、四大陸で12の貿易・安全保障協定に署名しました。ここ数日では、中国およびカタールと新たな戦略的パートナーシップを締結しました。インド、ASEAN、タイ、フィリピン、メルコスールとは自由貿易協定の交渉を進めています。」と述べ、さらに、「北極圏の領有権に関しては、グリーンランドとデンマークをしっかりと支持し、グリーンランドの将来を決定する両国の独自の権利を全面的に支持します。」と述べたのであった。そして、「ハードパワーの台頭に惑わされてはならず、正当性、誠実さ、そしてルールの力は、共に行使することを選べば、依然として強力であり続けるという事実を見失ってはなりません。」、「強国には力があります。しかし、私たちにも力があります。それは、偽りの自分をやめ、現実を直視し、国内で力を築き、共に行動する力です。」と結んだのであった。
同会議での、トランプ氏の饒舌な発言とは対照的に、カーニー氏の発言は、演説後、スタンディングオベーションを受けるほどのものであった。トランプ氏にとっては怒り心頭であったことは間違いない。

こうした事態の展開に、アメリカの特権意識と思い上がり、自己中心性が、カーニー氏やそれに同調する諸国に対する憎しみとなって表出したのであろう。トランプ氏は、1/22の夜に帰国し、1/23 の「午前0時40分から午前1時30分までの50分間」に実に70回以上もTruth Socialに投稿し、最後には、狂気に満ちた復讐心に燃え、カーニー氏に賛同する連中や「NATOに米国に派遣させ、南北国境を守らせる」ことで、米国は「NATOを試すべきだった」と示唆する、異常な精神状態を吐露するにまで至っている。それが、これまでカーニー氏には言ったことがなかった、「知事カーニー」投稿となったのであった。ヨーロッパ諸国はこれまで、トランプ氏をなだめ、おだてて、同調してきたのであったが、もはやそれが通用しない段階を思い知らされた、と言えよう。

 トランプ氏は、世界経済フォーラムで、グリーンランドを奪取するために「武力行使」はしないと明言したが、ワシントンへの引き渡しに向けた即時交渉を要求し、「彼らには選択肢がある。イエスと言えば我々は非常に感謝する。ノーと言えば我々は忘れない」、最後に「ワシントンはグリーンランドを武力で奪取することができ、それは『止められない』だろう」とまで付け加えている。
1/24、米ホワイトハウスのXページは、グリーンランドには生息していない一羽のアデリーペンギンが、トランプ氏が氷に覆われた平原を手と翼でつないで、グリーンランドの国旗が掲げられた山へと向かうAI生成画像を公開している。もう片方の翼にはペンギンがアメリカ国旗を持っている。キャプションには「ペンギンを抱きしめて」と書かれている。トランプ氏個人どころか、政権全体がトランプ独裁におもねっているのである。「トランプ氏の精神の崩壊」はここまで進んでいる。

「トランプ崩壊の到来」と、その危険なエスカレートに、米国はもちろん、全世界がそれを食い止めるための闘いが要請されている。
(生駒 敬)

 

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【投稿】トランプ政権:暴走・制御不能で危険な段階

<<グリーンランドばかりかカナダも米国領土>>
1/20に、トランプ氏が自らのソーシャルメディア・Truth Socialに公開したAI生成画像は、「グリーンランドは米国領。2026年設立」(GREENLAND – US TERRITORY EST.2026)と書かれた看板の横で、J・D・ヴァンス副大統領とマルコ・ルビオ国務長官と共に、トランプ氏自身が星条旗を地面に突き立てている画像を、これ見よがしに誇示している。

さらに同じ1/20、トランプ米大統領は、やはりTruth Socialに、グリーンランドばかりか、カナダ、ベネズエラ、キューバが星条旗の色で覆われ、米国領土であることを示す巨大な地図を前にして、フランスのマクロン大統領、英国のキア・スターマー首相、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長など欧州各国の首脳らに演説する、大統領執務室での様子の画像を投稿した。もちろん、この写真も、昨年8月のウクライナ和平交渉際の実写写真を勝手に都合よく編集した、でっち上げの編集画像である。
こうしたでっち上げ画像は、「ノー・キングズデイ」に対して、上空から糞便をデモ隊に垂れ流す画像と本質的に同類であろう。怒りを制御できず、客観的現実を冷静に判断できない、トランプ氏個人、ならびにその政権の本質的欠陥を象徴している。

 これに先立つ1/18、トランプ大統領は、2月1日からデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、イギリス、オランダ、フィンランドに10%の関税を課すと一方的に発表している。「この関税は6月1日から25%に引き上げられます。米国がグリーンランド購入で合意するまで関税は継続される。」、「デンマークが恩返しをすべき時が来た」とトランプ氏は一方的に関税引き上げを通告している。そしてさらに、1/20には、スイスのダボスで開かれる会合について、トランプ氏は、「グリーンランドに関して、NATO事務総長マーク・ルッテ氏と非常に有意義な電話会談を行いました。スイスのダボスで関係者による会合を開くことに同意しました。皆様に明確に申し上げたとおり、グリーンランドは国家と世界の安全保障にとって不可欠です。後戻りはできません。この点については、皆様もご同意ください。アメリカ合衆国は、地球上で圧倒的に最強の国です。その理由の多くは、私の最初の任期中に軍の再建を進めたことによるもので、その再建はさらに急速に進んでいます。私たちは、世界の平和を確保できる唯一の力です。そして、それはまさに、力によって実現されるのです。」と断言、交渉の余地などなし、という決意表明である。

これらが冗談ではなく、本気で、狂気のごとく暴走せんとして脅迫している、トランプ政権の現状を全世界にさらけ出しているのである。それは同時に、こんな投稿をしても、何の恥じらいも感じない、現実から乖離した異常な精神状態をも明らかにしている。その意味では、トランプ政権の現段階は、その暴走が制御不能で危険な段階に達しつつあることを明らかにしている。

<<帝国主義的資源略奪、領土要求としっかりと結びついている>>
こうした徴候は以前から確かに存在はしていたのであるが、拍車をかけたのは、ノーベル平和賞問題であることを、トランプ氏自身が明らかにしている。
トランプ氏は、ノルウェー首相(ヨナス・ガール・ストーレ氏)にあてた手紙で、「ヨナス様:貴国が、8つの戦争以上を阻止したという理由で私にノーベル平和賞を授与しないことを決定されたことを踏まえ、私はもはや純粋に平和について考える義務を感じません。平和は常に最優先事項ではありますが、今はアメリカ合衆国にとって何が善であり、何が適切であるかを考えることができます。
私はNATO創設以来、誰よりもNATOのために尽力してきました。そして今、NATOはアメリカのために何かをすべきです。グリーンランドを完全かつ全面的に支配しない限り、世界は安全ではありません。ありがとうございます!大統領、DJT」と書いている(本物だと確認されている)。ノーベル賞は、ノルウェー首相が決めるものではないことさえ理解しておらず、完全な八つ当たりである。

平和賞をもらえないなら、もう平和には興味がない、グリーンランドの占領だ、占領を拒否するなら、関税の引き上げと軍事力の行使だ、一見、実に単純である。

しかし、ものごとはそう単純ではない。その背後には、アメリカの巨大独占資本の帝国主義的欲求が、トランプ氏のグリーランド占領要求と深く結びついていることが見逃されてはならない。
グリーンランドは、地球の他の地域よりも はるかに速いペースで温暖化 、氷河が急速に後退し、氷河が後退するにつれ、劇的な変化にも直面、漁業や狩猟といった伝統産業が脅かされ、貴重な鉱物資源が露出しだしているのである。逆に言えば、これらの貴重な鉱床へのアクセスが容易になっており、2023年の欧州委員会の調査によると、グリーンランドには、重要原材料に分類される34種類の鉱物のうち25種類が埋蔵されており、世界最大級のニッケルとコバルトの鉱床があり、その鉱物埋蔵量は米国の埋蔵量にほぼ匹敵すると言われている。
マーク・ザッカーバーグ氏やジェフ・ベゾス氏といった米テック界の大物たちは、すでにAIブームに不可欠な材料をグリーンランド西部で採掘することを目指すスタートアップ企業にどんどん投資しており、KoBold Metals社は 、政府資金による地質調査などのデータを解析し、重要な鉱床を特定。同社は現在、 ディスコ・ヌースアーク・プロジェクトの51%の権益を保有 、すでに銅などの鉱物の探査を行っている。KoBold Metalsは 最新の資金調達ラウンドで5億3700万ドルを調達し、評価額は30億ドル近くに達している。
昨年12月にトランプ大統領が、テック界のパートナーであるケン・ハウリー氏をデンマーク大使任命を発表し 、その際、「アメリカ合衆国はグリーンランドの所有権と管理権が絶対に必要だと考えている」と表明したのである。

 つまりはトランプ氏のグリーンランド占領は、単なる狂気の沙汰ではなく、ベネズエラと同様、帝国主義的資源略奪、領土要求としっかりと結びついていること、その根底に厳然として存在していることが見抜かれなければならないのである。

いずれにしても、トランプ政権の帝国主義的資源・領土略奪要求は、きわめて危険な段階に至っており、その危険性を何よりもまず、抑え込むことこそが要請されている。
1/20、グリーンランドに関する討論会で、デンマークの欧州議会議員がドナルド・トランプ米大統領を罵倒する発言を行い、EUは北極圏の自治島であるグリーンランドに対する米国の新たな主張に対抗していないと非難し、演説の冒頭で、「皆さんにも理解していただけるように言いましょう。大統領、くたばれ」と述べている。この声こそが、トランプ氏に突き付けられなければならない。
(生駒 敬)

 

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【書評】『管理職の戦後史―栄光と受難の80年』濱口桂一郎著

【書評】『管理職の戦後史―栄光と受難の80年』濱口桂一郎著・朝日選書950円+税

                          福井 杉本達也

1 はじめに

『ジョブ型雇用社会とは何か』などにおいて、欧米・アジアとは異なる日本の雇用システムの特徴を「メンバーシップ型雇用」と定義してきた著者が、今回はその日本型雇用システムにおける管理職の問題に迫った。通常の新書は200~250ページであるが、本書は340ページもある非常に分厚いものとなっている。厚くなったのは、著者が原資料を大幅に引用して、専門的な議論を紹介しているからであるが、そのため読み込むには若干苦しい。特に、ホワイトカラーエグゼンプションの部分は、規制改革会議や経団連の提言、労政審答申など、通常読む機会のない資料を多数紹介しており、経緯を把握するには便利であるが、かなり専門的ではある。

著者は小咄として、大企業の部長経験者が面接に来て、「あなたは何ができますか?」と聞かれて、「部長ならできます」と答えた笑い話である。欧米のジョブ型雇用社会ならば、これは笑い話でもなんでもない。しかし、日本では「私は管理という『仕事』のできる人ですというレッテルをぶら下げて」「これがいかに日本の雇用社会の現実と乖離しているか」「ジョブ型雇用社会というのは、この日本では完全に現実離れした建前でしかないものが、現実社会を支配するルールとして社会的に存在している社会」であると説く。

2 女性管理職の時代

著者は「戦後確立した経営秩序においては…女性管理職の存在する余地はなかった…ホワイトカラー女性が管理職に昇進することは全く想定外」であったと書く。それを大きく変えたのが、1985年に成立した男女雇用機会均等法であった。これを受け、1986年、私の所属組合でも人事課長との団体交渉が行われた。団交参加者は女性専門職の多い職場が中心だったが、そこに本部・総務課・会計課などの若手女性職員が多数押し掛けたのである。その日の朝、管理職の机を拭き掃除したり、お茶を出したりしていた女性職員が団体交渉に参加したのである。当時、キャリア職はもちろん、ノンキャリア職を含め、男性職員の95%は管理職に登用されて退職するといわれていた。一方、女性職員の管理職は専門職などのごく一部であった。人事課長は、団体交渉の場で組合の男性役員に対し、もし、女性管理職を増やすと、男性の管理職への登用は60%まで落ち込むが、それでもよいのかとつぶやいた。当時、団体交渉に参加した女性職員の多くが、いま定年を迎えたが、部長職・課長職で退職している。

3 管理職手当を要求した団体交渉

著者は終戦直後の「管理職がリードした労働運動」において、「産業報国会と工場ソヴィエトのアマルガムのような従業員組合が戦後日本の労使関係の出発点」になったとし、「『俺たちと奴ら』という社会学的対立構造の中にはめ込まれている欧米型雇用社会とは全く異なるもの」であると説く。終戦直後からはかなり時のたった私的な経験であるが、労働組合側から管理職手当を要求するというはどうであろうか。1993年の団体交渉では組合側から管理職手当を要求した。当初、技術専門職の職場では、高度成長前期に採用した職員から順に管理職に登用されていたが、管理職のポストが限られており、年齢順にポストがあてがわれていた。いわゆるキャリア採用の団塊の世代が管理職の年代に差し掛かっていたが、管理職のポストがない、このままでは管理職にもなれないと不満を募らせていた。しかし、労働組合から管理職ポストを増やせなどとはいえない。当時、管理職は部長級のA級、次長級のB級、課長級のC級、課長級スタッフ職のD級に分類されていた。労働組合としては課長級スタッフ職D級の管理職手当相当を管理職年代に差し掛かった団塊の世代に配分せよと要求した。結果、D級管理職手当よりは若干手当額は低く、もちろん超過勤務手当はなくなるが、管理職ではなく組合員として処遇するポストが新設された。交渉後、人事課長は、これまでの人事管理に不備があったと組合役員に詫びた。

4 超過勤務

バブル期はともかく仕事が多かった。あるプロジェクトの担当として15億円の事業費を1人で抱えることとなった。当時、月150~200時間の超過勤務を行った。深夜1・2時、土日もないとなると少し体調も崩した。笑い話であるが、深夜2時にFAXを東京のある事業所に送って、今日の仕事はこれで終わりだと課員とともに帰宅した。翌日、FAXが返っていたので時刻を確認するとAM3の文字があった。

著者は「時間外・休日労働の上限規制」において、「普通の一般ホワイトカラー労働者が、法律上時間外・休日労働の制限もなく、会社から与えられた膨大な仕事をこなすために無限定の長時間労働を強いられていることこそが問題」と主張してきた。それが、2018年の「日本の労働時間法制の歴史上、成人男子の時間外、休日労働に初めて明確な上限規制を導入した」とし、著者が「かつて孤立無援で主張していたことが法改正の本丸にまで出世したという意味でも、まことに感慨深い」と述懐している。

著者は、しかしそこに「大きな忘れ物があった」とし、「管理監督者については、これらの上限規制は一切適用される余地はありません」と書く。そして、企業現場への影響として、「残業が月間40時間を超えると、本人と上司のところへアラートがいく。60時間になるとさらに上の上司までアラートがいく」「部下の時間外労働時間が月40時間を超えると、上長の人事評価に影響する」等々が例示されている。さらに「部下の健康管理、とりわけメンタルヘルスの管理も管理職の責務」である。

私的な経験としてはメンタルヘルスで休職していた職員が復職する場合が大変である。200人程度の本部と支所の人事を統括していると、人事課から10人程度の復職者の受け入れを迫られる。本人と直接会話することもなく、復職可能とする医師の診断書のみで判断せざるを得ない。復職後、月曜の朝に「今日は休ませて欲しい」という電話がかかってこないかどうかドキドキである。

先日、ある元職員と話をする機会があったが、元職員の退職理由は、時間外労働時間が月40時間を超えるにも関わらず、上司がそれを認めず時間外労働時間を削るように指示していたからだという。超勤時間を全て記入するよう通知されてから30年以上経つが、いまだに闇超勤が行われていることは実に嘆かわしい。採用者よりも中途退職者が多いとも聞く。職種によっては求人を出しても全く応募者がいない。元職員は退職後、士業を志して、今は士業で働いている。

本書はどこから読み進めても非常に味のある構成となっている。是非、一読をお勧めしたい。

カテゴリー: 労働, 書評, 杉本執筆 | コメントする

【投稿】東電の「現金が底をつく」―原発再稼働の論理

【投稿】東電の「現金が底をつく」―原発再稼働の論理

                             福井 杉本達也

1 「倒産企業」東電の資金繰り難で柏崎刈羽原発再稼働

東電はもうすぐ「現金が底をつく」と日経新聞は1月5日付で報道した。元々、2011年3月の福島第一原発事故以降、東電は倒産企業である。それを、政府や各電力会社の持ち寄りによる財政支援と電気料金への転嫁などの「点滴」により、無理矢理・形式上生きながらえてきたゾンビ企業に過ぎない。しかし、そのゾンビ企業も、「点滴」も入らないほど衰弱しており、明日の現金(キャッシュフロー)さえ尽きかけているのが現状である。いつ不渡りを出してもおかしくない。政府もこれ以上東電を支える財政余力はない。また、LNGなど輸入エネルギー物価の高騰によりこれ以上電力料金に負担をかけることもできない。そこで、政府は是が非でも柏崎刈羽原発を再稼働をせよと命じ、東電は柏崎刈羽原発6号機を1月20日に再稼働させると公表したのである(日経:2025.12.23)。

福島第一事故対策もままならぬ状態で、「事故後初めて原発を再稼働させる。柏崎刈羽原発ではテロ対策の不備が相次いで発覚。安全性確保や避難計画の実効性に対する住民の懸念は根強い」(福井:2025.12.23)。11月6日に新潟県は柏崎刈羽原発の再稼働に関する県民の意識調査結果を公表したが、「原発から半径30キロ圏の9市町村別の集計で、立地する刈羽村を除く8市町では、再稼働の条件が現状で整っていないとの回答が53~64%と多数を占めた」と報道された(福井:2025.11.7)。こうしたことを全く無視して、11月21日、花角英世新潟県知事は、6,7号機の再稼働を容認するとした。これは、政府の強力な再稼働圧力と、東電が柏崎刈羽原発1、2号機を廃炉とし、「新潟県に1000億円規模の資金も拠出する」(日経:2025.10,17)ことで、新潟県の買収を図ったからである。

これに便乗しておこぼれを預かろうと、北海道の鈴木知事は泊原発3号機の再稼働について、原子力規制委による審査合格からわずか4カ月で地元同意に応じた。「二番煎じと思われでも構わないと腹を決め、流れに乗った」のである(福井:2025.12.11)。

2 経済性の全くない原発

日本では、原子力発電は「安価な電力」であるとされている。電力会社は止まったままでは莫大な不良資産に過ぎない原子力発電を再稼働したがる。そこには、国民には見えない形で莫大な国家資金が流し込まれている。電力会社は国家資金によって利益が保証され、実際の原価を大きく割り込んだ発電価格で販売を行っている。将来的な廃炉や高レベル放射性廃棄物処理などの管理費も免除される。これは市場経済ではない。原子力経済という全く別の原理の閉鎖市場が動いている。

3 原発は脱炭素には貢献しない

政府は2025年8月に再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電力の発電所の近くに、半導体関連などの産業を集める「GX戦略地域」を創設すると表明した。風力・太陽光などの再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電力を使う企業を対象に、先進技術への設備投資の支援に乗り出すという構想だが(日経:2025.10.4)、原子力を脱炭素というのは詐欺も甚だしい。

化石燃料にしても、鉱物を採掘するために工業的なエネルギーの投入が必要である。したがって、採掘された化石燃料の持つ熱量の一部は自家消費される。原子炉燃料(5%濃縮の6フッ化ウラン(UF₆))を得るために投入されるエネルギーは電力であり、原子炉の熱出力は核分裂による高温蒸気であり、高温蒸気によって発電機のタービンを回して電力を取り出している。高価な電力を投入して、核分裂熱を取り出している。大量の電力を投入して別の形態の熱を得るためエネルギー的価値は低下している。近藤邦明氏の計算によれば火力発電の熱出力は投入した電力の熱量の3倍程度と考えられる。この場合、火力発電所で投入された化石燃料に対する235U濃度5%のエネルギー産出比は2.4/3=0.8<1.0となる(「環境問題を考える」2025.10.7)。ウラン燃料の製造は化石燃料を浪費している。原発は「化石燃料由来の電力」を大量に消費して燃料を準備する。結果、全体のエネルギー効率では火力発電より劣る。エネルギー供給技術としての合理性は存在しない。

4 ゾンビ企業=東電は解体すべき

Wikipediaの説明によれば、東京電力ホールディングスは「福島第一原子力発電所事故の復旧および損害賠償のために、日本国政府による公的資金が注入され、認可法人である原子力損害賠償・廃炉等支援機構が議決権の過半数超(潜在的には3分の2超)を有する大株主となっている。同機構は実質的に国の機関であり、当社は同機構を介して国有企業化され、日本国政府の管理下にある」「同機構による東京電力への出資金(1兆円の優先株引き受け)や、10兆円強におよぶ資金援助の原資は、日本国政府が交付もしくは日本国政府保証により同機構が借り入れたものであり、同機構は管理運営・財政において実質的に国の機関である。したがって、東京電力は同機構を介して半国有化され、日本国政府の管理下にある」。東電は、2011年11月以降、「機構(実質は日本国政府)より、毎月数百億から数千億円規模の資金援助を受けており、2024年度末現在で累計13兆4058億円に達している。当社は機構からの交付資金を特別利益として会計処理しており、交付された資金と同額を特別損失として賠償金に充てている。」。「これにより、当社は損益計算書上の赤字決算と貸借対照表上の債務超過を回避」していたのだが、このスキームが破綻しかかっている。

これは、水俣病の補償のために原因企業であるチッソを存続させたスキームを踏襲したもので、菅直人民主党政権下—枝野幸男官房長官―海江田万里経産相時代に作られたが、水俣病とは規模も社会的影響も解決の不可能さも全く異なる。政府の責任逃れの策であった(「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて」(2011.5.13閣議決定)。無理矢理、福島第一原発の廃炉ロードマップ作成し30~40年と決めているが、全くの絵に描いた餅であり、いったいいくらかかるのか、本当にできるかも明らかではない。というか廃炉は全く現実的ではない。原発事故補償・廃炉費用など、年間に兆単位の金がかかる。民間企業のレベルの話ではない。国家予算にも大きな負担がかかっている。いくら、柏崎刈羽原発を再稼働しても、ゾンビ企業=東電の近々の破綻はまぬかれない。もうこれ以上国民を誤魔化すことは諦めて、経産省はまともなスキームを発表すべきである。

立憲民主党の枝野幸男元代表は12月20日の講演で「古い原子炉を廃炉にしてリプレースし、最新鋭にした方が安全性は高まる」と主張したが(福井:2025.12.29)どこに反省の弁はあるのであろうか。

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【投稿】無謀・トランプ:対ベネズエラ、資源・領土略奪戦争開始

<<トランプ「大規模な攻撃を成功裏に実施した」>>
1/3、新年早々、トランプ米大統領は、自身のソーシャルメディアで「米国はベネズエラとその指導者、ニコラス・マドゥロ大統領に対する大規模攻撃を成功させた。マドゥロ大統領は妻と共に拘束され、国外に連行された。この作戦は米国の法執行機関と連携して実施された」と投稿した。
さらにトランプ大統領は、マドゥロ大統領がカリブ海に停泊中の強襲揚陸艦イオージマに連行され乗艦している写真まで投稿している。

南米アメリカ大陸で、これほど大規模な米軍の軍事作戦、直接的な軍事介入行動が実施されるのは、冷戦以来初めてのことであり、トランプ政権の無謀さが際立つ事態の展開である。

同じ1/3、ベネズエラの国営テレビはロドリゲス副大統領のメッセージと、パドリノ・ロペス国防相の声明を伝え、軍隊を直ちに全国に展開すると表明、ベネズエラに対する「過去最悪の侵略」を前に、国民が連帯して抵抗するよう呼びかけ、政府は「マドゥロの命令」に従い全軍を配備する」、「我々は決して屈服しない」と強調している。ベネズエラ外務省も米国による攻撃を断固非難するとの声明を発表した。ロドリゲス副大統領は、「ベネズエラは決していかなる国の植民地にもならない」付け加えている。ベネズエラ最高裁判所は、直ちにロドリゲス副大統領を大統領代行に任命している。
 ベネズエラのイヴァン・ヒル外相は「今朝、コロンビア、ブラジル、南アフリカ、ナミビア、ロシアの外務省から電話がありました。私たちは複数の支援表明を受けており、世界中から電話を受けています」と述べている。

ロドリゲス副大統領

以下、米軍軍事介入に対する反応を列挙すると、
* メキシコ外務省は、米国の介入を強く非難し、「地域の安定を深刻に脅かす」ものであり、ラテンアメリカ・カリブ海地域は「平和地帯」であり続けなければならないと強調した。
* 中国外務省は声明で、「中国は、主権国家に対する米国の露骨な武力行使と大統領に対する行動を強く非難する」、「米国のこのような覇権主義的な行為は、国際法とベネズエラの主権を深刻に侵害し、ラテンアメリカ・カリブ海地域の平和と安全を脅かすものだ。中国は断固として反対する」、「我々は米国に対し、国際法と国連憲章の目的と原則を遵守し、他国の主権と安全保障の侵害を停止するよう求める」と強調している。
* ロシア外務省は、米国指導部に対し、マドゥロ大統領夫妻の釈放を強く求めたと発表。
* ブラジルのルラ・ダ・シルバ大統領は、声明の中で、ベネズエラにおける米軍の行動を「国際社会全体にとって極めて危険な前例」として強く非難した。
* フランスのジャン=ノエル・バロ外相は、「マドゥロ氏の拘束につながった軍事作戦は、国際法の根底にある武力不行使の原則に違反している」と述べている。さらに、「永続的な政治的解決は外部から押し付けられるものではない」とし、「主権を有する国民のみが自らの未来を決定できる」と付け加えた。
* スペインのペドロ・サンチェス首相は、攻撃への対応として国際法と国連憲章の遵守を求めた。
* 国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、米国の攻撃は「危険な前例となる」、「国際法のルールが尊重されていないことを深く懸念している。」と警告している。
* ニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長は、トランプ米大統領に直接電話をかけ、「連邦法および国際法に違反する政権転覆の追求」に反対する意向を表明したと述べた。米ニューバーグ空軍基地の外では、ベネズエラにおける米軍の行動に抗議するデモが行われた。

ベネズエラ政府は声明で「アメリカが首都カラカスなどの民間・軍事地域に対して行った極めて重大な軍事侵略を国際社会に対して、拒否し、非難し、告発する」とする声明を発表し、「この行為は、国連憲章の明確な違反である。このような侵略は、国際的な平和と安定、特にラテンアメリカおよびカリブ海地域の平和と安定を脅かし、何百万人もの人々の生命を深刻な危険にさらしている」と強調し、非難している。声明は、この首都カラカスへの攻撃が「ヴェネズエラの戦略的資源、特に石油と鉱物を奪取する」こと、そして「国家の政治的独立を強制的に破壊する」ことを目的としていると非難している。

「我々は負けてはいない」 ― ベネズエラ内務大臣は、「国内は完全に平穏だ。彼らは攻撃を試みたが、国民は敗北するだろうと考えたのかもしれない。だが、現実はそうではない」と、ベネズエラのディオスダド・カベジョ内務大臣は、米軍によるベネズエラ攻撃後の声明で述べている。
そして現実に、ベネズエラ市民が、米国の軍事的攻撃に反対し抗議するため、街頭に繰り出し、「マドゥロを返せ」と要求している行動が報じられている。

<<トランプ「米国当局が無期限にベネズエラを運営する」>>
1/3、トランプ大統領は、フロリダの氏の別荘、マール・アー・ラーゴでの記者会見で、ベネズエラへの地上部隊派遣を躊躇しないと表明し、「米国当局が無期限にベネズエラを運営する」と発表した。まさに、「一体、どこの何様か?」、露骨極まりない帝国主義者の、思いあがった暴君の発言である。
「彼らはいつも『地上部隊』と言いますが、まさにその通りです。必要なら地上部隊を恐れることはありません。実際、昨夜も非常に高いレベルの部隊が地上に派遣されました」、「言うのは構いませんが、ベネズエラが適切に運営されるように確実にするつもりです」、さらに「必要であれば、第2次、より大規模な攻撃を行う用意はある」とまで発言している。

メキシコシティの米国大使館前で抗議する人々

 以下、会見での重要ないくつかのキーポイントを列挙すると、
* 米軍の軍事作戦を声高に支持している、ノーベル平和賞を受賞したベネズエラの野党指導者マリア・コリーナ・マチャド氏について問われると、「彼女が指導者になるのは非常に難しいだろう。国内では支持も尊敬も得られていない。彼女はとても良い女性だが、尊敬されていない」と切り捨てている。
* では、ベネズエラの政権を誰が担うのかと問われると、トランプ大統領は両脇に座るピート・ヘグセス国防長官とマルコ・ルビオ国務長官を指さした。「まあ、しばらくの間は、私のすぐ後ろにいる人たちが主に運営することになるだろう」、「我々が運営することになる」
* 地上部隊について問われると、「何かは必要になるかもしれないが、それほど多くはないだろう」と答え、地上に展開するアメリカ人のほとんどは石油・ガス業界関係者だろうと示唆した。
* 近隣諸国への影響について問われると、マドゥロ大統領の主要同盟国であるコロンビアのグスタボ・ペトロ大統領への批判を強め、「彼にはコカイン工場があり、コカインを製造する工場もある」、「彼は自分の尻拭いをしなければならない」と、次なる侵略目標を示唆した。
* 大統領はまた、キューバ問題については「いずれ議論の的になるだろう」と述べ、ベネズエラと同様に、この「破綻しつつある国」の「国民を支援」したいという意向を示唆した。
* 「石油に関しては、ベネズエラにプレゼンスを維持することになる」として、ベネズエラの石油埋蔵量に言及し、米国の占領は「何の費用もかからない」、なぜなら、米国は「地中から湧き出る資金」から補償を受けるからだ。ベネズエラの米軍によって破壊されたインフラは、米国の監督下で米国のエネルギー企業が再建すると述べた。

これほど露骨で、何の取り繕いもない、資源と領土に対する帝国主義的野望に取りつかれた会見内容は、あきれるばかりである。全世界が、あらためてトランプ政権の危険に満ち満ちた、本質を思い知らされ、確認させられたのである。

関税攻撃に始まった経済戦争は、今や軍事攻撃を仕掛けることに何の躊躇もなく、戦争を拡大させるトランプ政権の実体を見せつけたのである。

米国から距離を置き、独自に独立した経済・外交政策を追求する動きを、平和と緊張緩和の政策を一層加速させる、具体的な政策と行動の必要性を、トランプ政権はあえて指し示したのだとも言えよう。
(生駒 敬)

 

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【投稿】米・イスラエル:対イラン戦争へのエスカレート

<<トランプ大統領「イラン攻撃に青信号」>>
12/30、イスラエルの大手ヘブライ語新聞・Yedioth Ahronoth イェディオト・アハロノトは、一面トップ記事で「トランプ大統領、イラン攻撃を承認」と大きく報じている。その英字ニュース・ynetnews は、「イラン攻撃に青信号」と報じ、イスラエルが待ち望んでいたイランへの青信号であり、これは、「トランプ大統領はイランのミサイル増強に対するイスラエルの行動を支持し、核問題への米国の介入を誓った。これは、イスラエルが先制攻撃を仕掛けるのか、それともイランが次のラウンドを形作る最初の一撃を放つのかという疑問を提起する。」と述べた後、その詳細を以下のように報じている。(ynetnews 2025/12/30)

* 「今、イランが再び勢力を拡大しようとしていると聞いている。もしそうなったなら、我々は彼らを打ち倒さなければならないだろう。徹底的に叩きのめしてやる。だが、そうならないことを願っている」とトランプ大統領は語った。
* イランが弾道ミサイル戦力の再建や核開発計画の再開を試みた場合、米国は介入するかとの質問に対し、トランプ大統領は前者については「イエス」、後者については「直ちに」と答えた。
* トランプ大統領は、珍しく率直な言葉でイスラエルへの支持を肯定し、イランの長距離重精密誘導ミサイルによる脅威を認め、中国がテヘランを支援している可能性が高いとの認識を示したものの、具体名までは言及しなかった。彼は、イランの能力を弱めることを目的としたイスラエルの計画された作戦を公的に承認するところまで行った。

POTUS – アメリカ合衆国大統領

12/30のネタニヤフ首相とドナルド・トランプ大統領の会談の結果は、同盟国間の通常の協議といったものから、対イラン戦争拡大、さらなる壊滅的な地域戦争拡大への転換点となり得る、危険極まりないものである。

イスラエルのネタニヤフ首相にとっては、トランプ氏をイランとのより広範な戦争に引きずり込むことに自己の政権継続の命運をかけてきたのであるが、いわば一歩前進であろう。 なにしろ、イスラエル国内でのネタニヤフ政権支持率は、今や、イスラエル在住のユダヤ系住民のわずか4分の1、イスラエル在住のアラブ系住民のわずか17%強でしかない。エルサレムの超党派のイスラエル民主主義研究所(IDI)が実施した直近の世論調査では、ユダヤ系イスラエル人の67.5%、アラブ系イスラエル人の76%が、自分たちの意見を的確に代表できる政党は存在しないと回答するという驚くべき結果であった。12月下旬に実施された別のIDI世論調査でも、ネタニヤフ首相の続投を望むイスラエル人はわずか15%という、末期症状である。
ともに支持率の低下に悩まされ、翻弄されている、トランプ、ネタニヤフ両氏は、危険な戦争政策推進で事態の転換を計ろうとしているわけである。

<<イラン:「全面戦争に突入している」>>
同じく12/30、このような危険な事態の進展に対して、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は、イランが米国、イスラエル、そして欧州と「全面戦争」に突入していると宣言し、新たな攻撃に対してより断固たる対応を取ることを明確に表明している。同時に、イランは、一貫して核兵器開発の追求を否定し、核開発計画は平和目的であることを明確にしている。

 「イラン・イスラム共和国は、いかなる侵略と抑圧に対しても厳しい対応を取り、後悔させるだろう」とペゼシュキアン大統領はXニュースで表明している。

この表明には、今年6月の「12日間戦争」と呼ばれるイスラエルの奇襲攻撃に対して、イランのミサイルが猛烈にイスラエルに降り注ぎ、イスラエルのミサイル防衛システムがあと1日で尽きる寸前という状況に陥いらせ、多くの国々がイランに圧力をかけた結果もあり、イランは「停戦」に同意したのであったが、その際、イランは、「イスラエルが再びイランを攻撃すれば、再び停戦は行われない」と明言していることを想起させるものであり、それが「厳しい対応を取り、後悔させるだろう」という表明となっている。

イランと同盟関係にあるロシアのプーチン政権は声明で、「イランとその核開発計画をめぐる緊張の高まりを控え、2025年6月に彼らが犯した致命的な過ちを繰り返さないよう呼びかける。この過ちは、イランにおけるIAEAの検証活動に深刻な悪影響を及ぼした」と述べている。(スプートニク 2025/12/30

ここ数週間、トランプ政権はカリブ海域で国際法に明確に違反して、各国の商業タンカーを拿捕しているが、拿捕された船舶の一つ、ベラ1号はイラン産原油を積んでいたと報じられている。12/17、トランプ大統領は、「ベネズエラに出入りするすべての制裁対象石油タンカーの全面封鎖」を発表し、「この包囲は今後さらに拡大し、彼らにはかつて見たことのないような衝撃が降りかかるだろう。彼らがかつて我々から奪った石油、土地、その他の資産をすべてアメリカ合衆国に返還するまでは」とまさに露骨な帝国主義戦争の開始を宣言している。

そしてまた、台湾への大規模な武器移転など、トランプ政権の戦争挑発のさまざまな同時行動は、イランと中国両国に対するより広範なエスカレーションを示唆しており、トランプ政権のあがきとも言える強硬路線を露呈させている。

年明け早々の、危険な展開が危惧される事態の進展である。緊張緩和と平和への外交・経済政策の全面的転換こそが喫緊の課題であり、要請されている。
(生駒 敬)

 

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【投稿】日米安保条約からの潜在的脱退・「戦略的独立」の提起

【投稿】日米安保条約からの潜在的脱退・「戦略的独立」の提起

                             福井 杉本達也

1 米国の覇権が急速に崩壊しつつあるとの時代認識

アレック・ラッセルは『FINANCIAL TIMES』(日経:2025.12.31)紙上において、「米国が数十年担ってきた世界の監督者としての役割を放棄するなか」、「長年に及んだ覇権が急速に崩壊」し、「長きにわたって超大国として覇権を握ってきた世界が揺らいでいる。」と書いている。また同紙上において、既に、インドのジャイシャンカル外相が2025年春に、「世界秩序が変わり、各国が発言力を高める時代が『ようやく訪れようとしている』とし、さらに『古い秩序の価値は誇張されている』」と付け加えたとも指摘している。

また、ジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学教授は2025年12月30日付けの『YouTube 』「Japan Breaks Free: How Strategic Independence Could End American Dominance in Asia |John Mearsheimer」において、「地域のダイナミクスの変化は、これまでの数十年間にわたるアメリカの覇権的支配下では存在しなかった日本の戦略的独立の機会を生み出しました。韓国がアメリカの戦略的指導から独立性を高めていることは、主要なアメリカ同盟国が自律的な安全保障政策を追求する前例を提供しています。」とし、「中国の台頭は、日本が孤立や脆弱性なしに戦略的独立を確保するための代替的なパートナーシップの機会を生み出しました。」と述べている。

2 時代錯誤の高市首相の認識

韓国の『中央日報』紙は12月31日付けで佐橋亮・東京大学教授のインタビュー記事を載せ、「日本の専門家の間で、高市首相について、自ら後継者を自任した安倍晋三元首相とは違い、精緻な外交戦略が不足しているという評価が出ている。」とし、「高市首相の発言について『米中関係の好転など、日本外交が直面する国際政治状況を理解していなかったように思える』とし、首相の発言は米国による台湾有事への介入を前提にしていたが、米国は戦略的曖昧性を維持している。米中関係は非常に改善しており、中国は自信を持っている。こうした国際情勢など、日本外交が置かれた状況を理解していたとは思えない。日本と中国の関係は複雑であり、強硬一辺倒で進むのがよいとも限らない。首相のアジア外交ビジョンには不明確な点がある」と指摘したとしている。

また、遠藤誉中国問題グローバル研究所所長は、12月19日、「台湾の林中斌・元国防部副部長(民進党の陳水扁政権時代)が<トランプと習近平は両岸平和統一に関して合意する>と指摘した」とし、林氏は「アメリカは、アジア太平洋地域における軍事力が中国本土の軍事力に遅れをとっていることに既に気づいており、そのため、中国人民解放軍に軍事力を用いて対抗することを、できるだけ避けようとしている。」と述べ、「中国文化は『戦わずして勝つ』戦術を提唱しており、中国人民解放軍の行動から判断すると、習近平は『決裂するやり方ではなく、政治的・経済的・心理的など超軍事的手段』を用いている。」とコメントしたことを紹介した。.さらに林氏は、「現在の障害は、台湾の頼清徳政権が強硬で、中国大陸側と交流しないことだ。しかし、『アメリカが(頼清徳政権に)背後から圧力をかければ』、両岸の政治対話や社会交流は自然に進むだろう。」と述べたことを紹介している。(猿渡誉「Yahooニュース:2025.12.26」。高市首相の外交は現在の情勢からズレまくっていることを如実に示している。

3 対米従属からの日本の「戦略的独立」を提唱するミアシャイマー教授

上記『YouTube』において、ミアシャイマー教授は、日本の日米安保条約からの潜在的脱退を示唆する。「戦略的独立。私は、アメリカの保護によって莫大な恩恵を受けてきた大国にとって、これほど劇的な方向転換が戦略的に理にかなっている状況を目にしたことはありません。日本がアメリカと決別する可能性は、単にアジアの地政学を再構築するだけではありません。それは同盟関係の連鎖的な離反を引き起こし、わずか十年のうちにアメリカの世界的支配の全構造を崩壊させる可能性があります。最も重要な同盟国が、あなたの安全保障の保証が利益よりもむしろ負担になっていると結論づけた」と大胆にも提唱した。教授は続けて、「日本の独立計算を推進する戦略的な数学は、基本的に変化しており、アメリカとの継続的な同盟を経済的には非合理的に、軍事的には逆効果にしています。中国は日本の最大の貿易相手国となっています。日本の貿易の23%を占めています(アメリカは18%)。日本の経済回復は、ますます中国の消費、中国のサプライチェーン、中国の投資に依存するようになっています。同時に、アメリカの安全保障は、中国の軍事力の増大により、信頼性が低下しています。」と述べている。

また、「アメリカとの同盟関係による政治的主権の制約は、国内の緊張を生じさせ、日本の民主主義を損ない、日本の戦略的能力を制限している。潜在的に危険な軍事作戦への日本の参加に対するアメリカの要求は、憲法上の危機や政治的分裂を生み、日本の統治力を弱める。沖縄の基地問題は、アメリカの戦略的要請が日本の民主的プロセスや地域社会の利益とどのように対立するかを示している。」と述べている。

4 「戦略的独立」のためミアシャイマー教授は核武装の可能性を選択肢とするが

「戦略的独立は、日本の領土に対する脅威を抑止するために特化した核兵器開発を意味する可能性」を指摘し、「日本の技術力は、政治的な判断がこの選択肢を支持する場合、核兵器の開発を迅速に進めることを可能にします。あるいは、日本は他国を脅かさずに領土の征服を非常に高コストにする防衛的自給方針に依存することで、核兵器開発なしに戦略的独立を追求することも可能です。」(同上)と述べている。同時にミアシャイマー教授は「日本の地理的な位置は、技術の発展によって劇的に強化できる自然の防衛上の利点を提供します。島嶼防衛は水陸両用の攻撃に対して異なる能力を必要とし、広範な距離にわたる戦力投射とは異なります。日本は、世界的な同盟義務のために必要な高額な戦力投射能力を維持せずとも、最適な防衛システムを開発することが可能です。」(同上)とも述べていて、必ずしも独自核武装論だけではないようである。人類絶滅兵器としての核武装には100兆円以上の負担がかかるともいわれ、戦略的独立を達成するにはあまりにも負担が大きい。また、15年目を迎える福島第一原発事故において自力での核事故の収束に失敗し、一時は6000万人避難かとなったものの、偶然も手伝ってかろうじて最悪事態をまぬかれた日本の核管理の脆弱性も考慮する必要がある。

5 「戦略的独立」から東アジア経済統合への夢を語るミアシャイマー教授

「中国、タイ、カンボジアの3カ国の外相会談が29日、中国雲南省で開かれた。タイとカンボジアの停戦合意を着実に実行すべきだと強調する文書を発表した。地域の平和維の推進や相互交流の再、政治的信頼の再構築も盛り込んだ。中国外務省が発表した」(福井=共同。2025.12.30)。先の7月のトランプ氏の仲介よる停戦に比較すると新聞の扱いは非常に軽いが、東南アジアへの中国の経済的影響力は極めて大きい。今回の停戦仲介はその大きさを示す。カンボジアは2010年代から、日系企業の進出が盛んになってきた。特に自動車産業はタイが東南アジア最大の集積地で、同国に部品を供給する企業がカンボジアトに多く進出する。タイとカンボジアの供給網が一体化が進んでいる。カンボジアからタイに自動車部品などが輸出され、矢崎総業やミネベアミツミなど多くの日本企業が進出しており、中国が主導する停戦合意は地域の安定化をもたらす。

ミアシャイマー教授は東アジアの経済統合について、「日本が戦略的独立を追求しつつ、中国との経済的統合と地域パートナーシップの発展を進めることで生まれる。東アジアの経済統合は、アメリカの政治的干渉や制裁の脅威がなければ、急速に進む可能性がある。」「日本の中国や他のアジア諸国との経済関係は、アメリカ市場に代わる十分な選択肢を提供する可能性がある。制裁の効果は対象国の孤立に依存するが、中国のような主要経済国が代替関係を提供すると、孤立は不可能になる。中国との経済的統合によって支持される日本の独立は、アメリカ中心のシステムに代わる実行可能な選択肢を持つ国に対する制裁の限界を示すことができる。」「日本がアメリカと決別する可能性は、アジアの地政学を再編するだけでなく、アメリカ覇権の時代が終わり、多極化世界が始まったことを確認するものです。最も忠実な同盟国が、依存よりも独立が自国の利益に適うと判断したとき、同盟の持続性やアメリカの不可欠性に関するあらゆる前提は根本的に見直される必要があります。アジアにおけるアメリカ支配の時代は、軍事的敗北によってではなく、同盟国が継続的な従属が戦略的に非合理的になったことを認識することによって終わります。」と述べている(上記『YouTube』)。全く情勢を読めない「戦略的に非合理的」な高市外交の早期の転換が必須である。また、対米従属・情勢ボケの野党やリベラル派の外交姿勢の転換も必要である。

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【投稿】米国の敗北による焦りー高市政権官邸幹部の核保有発言の支離滅裂

【投稿】米国の敗北による焦りー高市政権官邸幹部の核保有発言の支離滅裂

                         福井 杉本達也

1 高市政権官邸幹部の核保有発言

12月18日、官邸幹部が記者団の取材で「日本は核保有すべきだ」と語った。だが、大手マスコミはオフレコ発言だとして、いまだ発言者名を明らかにしていない。しかし、『週刊文春』の取材で、尾上定正総理大臣補佐官であることがわかった。「発言をしたのは〈核軍縮・不拡散問題担当〉の尾上定正総理大臣補佐官です。元航空自衛官で、2023年から防衛大臣政策参与を務め、高市早苗政権で補佐官に。首相と同郷の奈良出身のお友だちで、防衛問題のブレーンです。本音では核を持つべきと考えている人物を核軍縮担当にしている時点で、適材適所には程遠い。首相の任命責任も問われる事案で、本来は更迭され得る発言ですが、その距離の近さから斬れていないのが現状です」と書いた(『文春オンライン』2025.12.24)。日本のマスコミは一部を除き腐り果てている。

 

2 背景には米国の敗北による焦りと対米自立

米国は日本が核攻撃を受けたからと言って、必ずしも相手国に核反撃を行うなどとは一度も言ってはいない。東洋人のために自国民を核報復の危険にさらすようなことはしない。『文藝春秋』2026年1月号で、用田和仁元陸将×神保謙慶大教授×小黒一正法政大教授の対談「高市首相『持ち込ませず』見直しでは甘い…中国には核保有も選択肢だ」において、神保は「日本が直面する安全保障環境を考えれば、核を含む抑止のあり方を正面から点検し直すことは、もはや避けて通れない課題」とし、「米国は自国のみならず同盟国が核攻撃を受けた場合、報復として核を使用する『拡大抑止』で国際秩序と地域の安定を保ってきました」が、「米国の核の傘の信頼性をめぐる国際環境は不確実性」を増しているとし、小黒も「日米同盟と米国の核の傘で日本は守れるかと疑問を持つようになり、その危機感は強まるばかりだ」と応え、用田は神保・小黒に同意する形で、「米国から見て日本は、黙っていても大切だから守ってやるという状況ではない」そこで、「中国を封じ込めるための通常戦力が米国に十分にないことが明らかになりつつある今、日本などの核保有が問題の解決策になり得る」と、日本の核武装を公然と求めている。これは、米国は敗北しつつあり、覇権が縮小しつつあることを実感している同盟国からの焦りの発言である。しかし、そこには、米国に従属しながら、核武装を考えるという甘さがたっぷりの発想である。また、用田は陸将という立場にあったにもかかわらず軍事知識に乏しく「核保有するにしても、米中露のような大量保有は不用で、最小限の核抑止力で十分」だと、核抑止力に対する理解も浅く、核戦争というものの結果に甘々と言える。

一方、同誌で、エマニュエル・トッドは佐藤優の対談「米国の敗北を直視して核武装せよ」において、米国はウクライナにおいて敗北しつつあり、日米同盟の「核の傘」というものは幻想であるから、日本が核武装して対米自立すべきであるという主張であり、「私は多くの日本人の代わりに、日本の核保有を提案した…敢えて口にしないことを私が言葉にした」と述べる。

3 核の抑止理論―相互確証破壊(Mutually Assured Destruction, MAD)」

米ランド研究所の軍事歴史家、バーナード・プロディーは核兵器によって戦争を抑止する「核抑止」の概念を生みだした。「従来は軍事体制が掲げる最大の目的は戦争に勝つことだった。これからは戦争を回避することが最大の目的になる」(プロディー)。プロディーは核の数や運搬手段で勝っていても、核戦争において勝利は保障されないと考えた。「たった一つの爆弾だけで想像を絶する破壊をもたらせる事実…敵国から先制攻撃を受けても報復する能力を身に付けなければならない。」「報復を恐れなければならないとすれば、先制攻撃を仕掛ける意味はない。敵国の都市を破壊しても、自国の都市が数時間後か数日後に破壊されるのだから」「アメリカがソ連の先制攻撃によって致命的な打撃を受けても、なお十分に反撃する軍事能力を持っていると分かれば、ソ連はよほどのことがない限り核兵器を使用しようとは思わないはずだ」と(『ランド・世界を支配した研究所』アレックス・アベラ)。

核の抑止理論は、どちらかが先制攻撃を行えば必ず自分も壊滅的な報復を受けるため、理論上は先制攻撃を思いとどまらせる効果がある。しかし、その要件は①十分な核兵器を保有し、報復攻撃の能力(第二撃能力)が確実に保証されること。②報復能力の非脆弱性と残存性が必要で、核搭載戦略爆撃機の常時待機や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)など、探知や迎撃を困難にする手段が求められる。③発射の早期探知と迅速な報復指令の遂行が可能な体制が不可欠となる。(参照:コトバンク・Wikipedia )

尾上定正は日本は核保有すべきだと発言したが、上記の条件を考慮しているとは思えない。このような者を核戦略の助言者として官邸に置くとは、日本の自滅を招く。危険極まりない。

4 原発への攻撃

3.11の福島第一原発事故以降、全ての原発が停止したが、その後、再稼働が進み、関電の高浜原発や九電の川内原発など13基が稼働中である。さらに、今後、東電の柏崎刈羽原発6号機や北海道電力泊原発3号機も再稼働することとなる。しかし、稼働中の原発がミサイルで攻撃された場合は防ぎようがない。ウクライナ戦争ではザポリージャ原発への攻撃がしばしば行われてきた。100万Kw級原発が稼働中に攻撃された場合、広島型原爆1000発分の放射能がまき散らされる。現在関電高浜原発は4基の原発が稼働中であるが、4基とも制御不能に陥る恐れが高く、日本は壊滅状態となる。原発を考えずに核武装のみを考える尾上はとても核問題のブレーンとはいえまい。

5 核輸送手段の進歩

ロシアはウクライナで最大射程5500kmの中距離極超音速弾道ミサイル「オレシュニク」を実戦に投入している。オレシュニクは複数の独立標的再突入体(MIRV)を搭載可能な中距離弾道ミサイル(IRBM)であり、高精度の複数標的攻撃を可能にする。極超音速推進システムに組み込まれており、音速の10倍にあたるマッハ10まで速度に達することができ、パトリオットやTHAADのような従来のミサイル防衛システムによる迎撃が困難となる。飛行時間をわずか数分に短縮しながら防空網を突破し、敵に反応する時間をほとんど与えない。このようなミサイルを迎撃することなど全く不可能である。

一方の日本の核運搬手段のミサイルは、12月22日に失敗したH3・8号機など、全く技術的に不安定である。ミサイルや原潜などの運搬手段を含めると核武装には100兆円もかかるという。尾上は「空将」の軍事知識で高市首相にアドバイスするのではなく「空想」で高市首相を煽っている。核実験場もなく運搬手段も考えずに核保有を宣言しても袋叩きにあうだけである。

日本は「独自核武装」で核保有超大国のロシアや中国、そして北朝鮮と対決するのではなく、平和外交で核を持たずとも安全を守れる体制を模索していく現実的な道を選ぶべきである。その中で、米国の属国から、いかに自立した外交に踏み出せるかが試される。

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【投稿】トランプ:対ベネズエラ・帝国主義戦争開始宣言

<<「石油、石油、石油、石油、石油だ」>>
12/17、トランプ米大統領は、自らのソーシャルメディア・Truth Socialで「ベネズエラに出入りするすべての制裁対象石油タンカーの全面封鎖」を発表し、「ベネズエラは南米史上最大の艦隊に完全に包囲されている。この包囲は今後さらに拡大し、彼らにはかつて見たことのないような衝撃が降りかかるだろう。彼らがかつて我々から奪った石油、土地、その他の資産をすべてアメリカ合衆国に返還するまでは」と述べ、「私は本日、ベネズエラに出入りするすべての認可済み石油タンカーの完全かつ完全な封鎖を命令します。」と宣言した。
 「以前我々から奪った石油、土地、その他の資産の全て」を米国に返還するまで継続する、と表明して恥じない、あからさまな帝国主義戦争開始宣言である。

トランプ氏は、記者会見で、「彼らは我々の石油権を奪った。我々はそこに豊富な石油を持っていた」、「彼らは我々の企業を追い出した。我々はそれを取り戻したい」と述べ、ベネズエラがかつてアメリカ企業が保有していた資産を掌握することを可能にした、過去の米政権の弱腰をも非難したのであった。トランプ氏は、前日12/16の投稿で、石油、石油、石油、石油、石油、と5回も石油利権を繰り返していたのである。

この宣言で決定的に重要なことは、国際法に違反してまで、これまでカリブ海域でベネズエラの麻薬密輸船とされる船舶への爆撃で100人近くも殺害してきたのであるが、真の目的は、麻薬密売とは何の関係もない、「石油利権を取り戻す」という、対ベネズエラ戦争の真の自国帝国主義の目的を露骨に表明したことである。これまでの対麻薬戦争は、単なる口実で、ウソとでっち上げに過ぎないことを自ら認め、その空虚さ、アメリカの外交・戦争政策の本質的目的とその欠陥を自らさらけ出したことである。

20年以上も前、ベネズエラの故ウゴ・チャベス大統領の下で行われた大規模な石油産業の国有化、これによってエクソンモービル、コノコフィリップス、BP、トタル、シェブロンといった石油エネルギー大手の国有化、2000年代初頭のボリバル革命による国有化、これを絶対に忘れることも、許すこともできない、とトランプ氏は宣言したのである。

 ベネズエラは、世界最大の確認済み原油埋蔵量を保有し、2024年時点で約3030億バレルと推定されており、なおかつ、中国、ロシア、インド、BRICS諸国と緊密な経済関係を維持しており、これも許しがたい、というわけである。

歴史を20年以上も前に逆転させ、1999年以来、米国の支配から独立した道を歩んできたベネズエラ政府を打倒し、ベネズエラ政府を米国企業の支配に友好的な傀儡国家に置き換える、それこそがこの戦争開始宣言の真の目的であることを明らかにしたのである。
ベネズエラどころか、ラテンアメリカを含む南半球の資源は自分たちの所有物だと本気で信じ、行動してきたトランプ政権のあきれ返るほどの時代錯誤であるが、それがまかり通っているのが、トランプ政権である。トランプ氏はベネズエラ以外のラテンアメリカ諸国への攻撃も否定してはいない。「必ずしもベネズエラである必要はない」とまでのべている。

<<「今や誰もが真実を目の当たりにしている」>>
12/17、ベネズエラのマドゥロ大統領は、首都カラカスでの演説で、「これは単なる好戦的で植民地主義的な見せかけに過ぎない。我々は何度もそう言ってきたが、今や誰もが真実を目の当たりにしている。真実は明らかにされたのだ」、「トランプ政権の目的はベネズエラの政権交代であり、傀儡政権を樹立し、憲法、主権、そしてすべての富を手放し、ベネズエラを植民地化することにある。そんなことは決して起こらない」と強調。
 同じく、ベネズエラのロペス国防相は、ベネズエラが米国から石油、土地、その他の資産を奪ったという「錯乱した」主張を強く非難し、ロドリゲス副大統領は「我々はエネルギー関係において自由かつ独立した立場を維持する。マドゥロ大統領と共に、祖国を守り続ける」と述べている。

12/17現在、ベネズエラ産原油の輸送経歴がある石油タンカーは、少なくとも34隻が現在カリブ海を航行している。国際貿易情報会社Kplerの船舶位置情報データによると、これらのタンカーのうち少なくとも12隻はベネズエラ産原油を積載している、とされる。ロシアのタンカー「ハイペリオン」は12/17、カリブ海に入ったところである。
なおかつ、2025年には、中国はベネズエラが輸出する原油の約76%を購入しており、中国政府は、ベネズエラによる国連安全保障理事会会合の要請を支持し、一方的な圧力戦術に反対することを明確にし、カラカスが主権と正当な利益を守る姿勢を支持すると述べ、王毅外相は、ベネズエラ外相に対し、中国は米政権の「国際的な脅迫」を拒否すると伝えている。

 12/17、トランプ政権与党のトーマス・マシー下院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、トランプ大統領が米国議会の承認なしにベネズエラに対していかなる軍事行動も取るべきではないと主張し、「(合衆国憲法の)起草者たちは、戦争遂行権限が一人の人間に集中するほど、自由は消滅するという単純な真理を理解していた」と述べ、 イラクやリビアといった政権転覆戦争におけるアメリカの過去の失敗を例に挙げ、南米で同様の事態を起こすべきではないと警告し、「歴代大統領は、存在しない大量破壊兵器のために戦争をしろと命じてきた」と大量破壊兵器について述べ、「今は同じやり方だ。ただ、麻薬が大量破壊兵器だと教えられているだけだ。もし麻薬が問題なら、メキシコや中国、コロンビアを爆撃するだろう」、もしトランプ大統領が本当に米国への違法薬物の流入を懸念しているのであれば、2024年に400トンのコカインを米国に密輸した罪で有罪判決を受けたホンジュラスの元大統領、フアン・オルランド・エルナンデス氏を恩赦しなかったはずであると、トランプ氏の最も痛いところを明確にし、「これは石油と政権転覆の問題だ」とマッシー氏はトランプ氏を痛烈に批判している。

トランプ氏は、明らかに孤立しており、歴代大統領で最低の支持率への転落という事態で、その孤立はより一層鮮明になりつつある。その孤立を挽回するために、この時期に緊張を激化させ、戦争事態に突入させれば、関税や国内経済政策の失敗や、社会保障費削減に伴う差し迫った医療危機等々から、都合よく目を逸らすことができるだろう、という敗者の論理が透けて見えている。
つまりは、今回の事態は、アメリカの強さの象徴ではなく、アメリカ帝国の疲弊の兆候、政治的経済的危機の象徴である、と言えよう。

問題は、こうした客観的評価とは別に、事態を放置すれば、危険極まりない戦争拡大が現実のものとなる可能性が差し迫っていることであり、そうした事態を食い止める闘いこそが要請されている。
(生駒 敬)

 

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【投稿】トランプ政権の新しい国家安全保障戦略と日本

【投稿】トランプ政権の新しい国家安全保障戦略と日本

                         福井 杉本達也

1 「ロシアの脅威」という表現は時代の遺物

米国の新しい国家安全保障戦略(National Security Strategy of the United States of America November 2025 ・NSS)の序文は「冷戦終結後、アメリカの外交政策エリートたちは、アメリカが世界全体を永続的に支配することが我が国の最善の利益であると自分たちに信じ込んだ。しかし、他国の問題は、彼らの活動が我々の利益を直接脅かす場合にのみ我々の関心事である。」と述べている。これは悪名高いウルフォウィッツ・ドクトリン(1992年~)の終焉を意味する。

NSSは「ロシアがヨーロッパやアメリカ合衆国にとって脅威ではないという現実、ロシアが何十年も前から人工的にそのような脅威として描かれてきたこと、そしてこの誤った解釈の結果がヨーロッパにとって全くの大災害であり、アメリカ合衆国の国家安全保障に対する脅威であった」と書く。

スコット・リッター元米軍情報将校は、「トランプ政権は、これが本質的に不安定化をもたらす政策であることを認識しており、さらに『極めて危険』であることも指摘している。なぜなら、ロシアとの対立は『最終的には核戦争を意味する』からだ。」と指摘している。「この新たな地政学的計算において、現在のヨーロッパの軌跡はロシアよりも自ら、米国、国際平和と安全保障にとってはるかに大きな脅威である」と主張している(Sputnik日本:2025.12.5)。欧州のロシア政策は米国の国家安全保障目標と「両立しない」。

2 NATOは終わった

スコット・リッターはさらに、「新しいNSSは、NATO加盟に関するウクライナの非現実的な期待と、ウクライナがいつかNATO加盟国になるかもしれないというヨーロッパの同様に非現実的な期待に終止符を打ち、心臓部に杭を打ち込む」と述べ、アメリカは「いいえ、あなたは終わりだ」と言います。さらに、あなた方の進む軌道はアメリカの国家安全保障と両立しないと述べ、もしヨーロッパがロシアと戦争を始めた場合、アメリカは救済をしないと。「NATOが真に防御的な同盟に変貌しない限り…NATOが存在する正当な理由はない」。「NATOは死んだ。NATOは決して復活しない」と述べる(Sputnik日本:2025.12.5)。

3 ウクライナ戦争の終結

NSSはウクライナ戦争について「米国の核心的関心は、ウクライナでの敵対行為の迅速な停止を交渉し、ヨーロッパ経済の安定化を防ぎ、戦争の予期せぬエスカレーションや拡大を防ぎ、ロシアとの戦略的安定を再確立し、ウクライナの戦後の再建を可能にして国家としての存続を可能にすることです。」と述べている。これは実質的な当事者である米国の敗北宣言である。とにかくウクライナの泥沼から早く撤退したいのであるが、米国の覇権への打撃をできるだけ少なくしたいがために、あたかも第三者として交渉しているかのように装っている。さらに、NSSはウクライナ戦争に対するヨーロッパの好戦的政権を批判し、「トランプ政権は、不安定な少数政権に支えられた非現実的な期待を持つ欧州の当局者たちと対立している。これらの政権の多くは民主主義の基本原則を踏みにじって反対派を抑圧している。大多数のヨーロッパ人は平和を望んでいますが、その願いが政策に反映されていないのは、その政府が民主的プロセスを歪めている」からだと述べている。

4 中国は対等な競争相手

NSSでは、中国はもはや主要脅威、「最も重要な挑戦」、「ペース設定脅威」等の表現で定義されていない。中国を同盟国やパートナーとして定義していないが、主に1) 経済競争相手、2) サプライチェーンの脆弱性の源泉、3) 地域支配を「理想的には」拒否すべきプレーヤーとして扱っており、それは「米国の経済に重大な影響を及ぼす」からであるとする。そこにはイデオロギー的な次元が一切ない。民主主義対独裁の枠組みも、守るべき「ルールに基づく国際秩序」も、価値観に基づく十字軍もない。中国は、敗北させるべきイデオロギー的敵対者ではない。彼らは「世界の諸国と良好な関係および平和的な商業関係を求め、彼らの伝統と歴史から大きく異なる民主主義や他の社会的変革を強制しない」。 そして、彼らは「我々の統治システムと異なる統治システムを持つ国々と良好な関係を求める。」と述べる。また、2017年に始まった関税アプローチが中国に対して本質的に失敗したことを認めている。これに「中国は適応」してしまい、逆に「サプライチェーンへの支配を強化した」と書く。

5 台湾問題

NSSは「台湾に大きな注目が集まっているのは当然である。半導体生産で台湾が圧倒的な地位を占めていることも理由の一つだが、より重要なのは、台湾が第二列島線への直接的なアクセスを提供し、東アジア(北東アジアと東南アジア)を二つの明確な戦域に分断している点である。世界の海上輸送の3分の1が南シナ海を通過していることを踏まえれば、これは米国経済にとって重大な影響を及ぼす。」と書く。米国の関心は「米国経済」への影響である。「したがって、台湾をめぐる紛争を抑止すること、できれば軍事的優勢を維持することによってそれを実現することが最優先事項となる。また、台湾に関する米国の長年の声明政策も維持する。つまり、米国は台湾海峡の現状をいかなる一方的な形でも変更することを支持しない、という立場である」と書く。

高市首相は、台湾有事の際、米国が防衛しようとするが、それは「日本の存立危機事態になり得る」ので、日本も軍事介入するとの答弁をしたが、これは「現状維持」を望むトランプ政権としては看過しがたい。高市首相は中国を挑発し、いまだに悪名高いネオコンのウルフォウィッツ・ドクトリンの思考線上にあるが、NSSはそれを否定する。米国が介入するかどうか(できるかどうか)は米国経済への影響による。結果、壊滅的な損失を被るのは日本国民である。高市首相は二階に上がって梯子を外されたどころか、最初から梯子をかけられてもいない。

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【投稿】トランプ米大統領:一晩に「陰謀論」投稿、数百回

<<「一体何が起こっているんだ?」>>
12/1、トランプ大統領は月曜日の夜、自らのソーシャルメディア・Truth Socialに、一夜にして1時間に「数百」回、「10秒ごとに新しい投稿を1時間も続け、合計約400件の投稿があった」という。常軌を逸した、通常では考えられない異常さである。

CNNのエグゼクティブ・プロデューサー、ヴォーン・スターリング氏は「昨夜は一体何が起こっていたんだ?」と疑問を呈している

しかもその投稿の大部分は、「陰謀論」で占められており、「ミシェル・オバマが『バイデンのオートペンを操っていた』とか、バイデンの大統領令は実際にはミシェル・オバマによって発令されていた」、オバマ大統領の毎週の『殺害リスト』といった、何の裏付けもない、実証しようとさえする気のない、得手勝手な主張を矢継ぎ早に連射しているのであった。挙句の果てに、「バラク・オバマが軍事法廷にかけられることを保証する」と宣言する投稿までしている。

 さらには、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領がトランプ氏に屈服し、トランプ氏がベネズエラを支配していると主張するAIビデオまで投稿、おまけに、マドゥロ氏は「ジョー・バイデン前大統領が彼らのカルテルのリーダーだと自白したことを認めた」とまで主張。さらに、カナダが不正選挙に関与していたという投稿までしている。2020年大統領選挙に関する嘘、翌年、自らが煽り立てた1月6日の議会突入占拠事件を、民主党下院議長ペロシ氏のせいにする、民主党を扇動者呼ばわりする、イルハン・オマル氏、ティム・ウォルツ氏への怒りなど、

要するにトランプ氏の気に入らない人々に片っ端から当たり散らし、自らの被害妄想に基づいた「陰謀論」を、立て続けに投稿したのであった。完全な精神異常状態をさらけ出したものと言えよう。

トランプ氏の、追い詰められた精神状態がもたらしたものとはいえ、これらは、まだほんの一部であり、「明らかに精神的に衰弱しかけており、頭に浮かんだことを何でも投稿していた。今後さらに悪化するだろう」と指摘される事態の進行である。

<<「トランプ氏の完全な失敗」>>
こうしたトランプ氏の異常な事態の進行は、彼に追従し、付き従うことしかできない取り巻きを除いては、かつてないほど孤立していることの反映にほかならない。

 そして今や、これまでのトランプ支持者自身からさえ孤立しつつある。
アトランティック誌のジョナサン・レミア氏によると、縮小する支持基盤の支持を集める代わりに、トランプ氏は「海外旅行、個人クラブでのゴルフ、裕福な友人、ビジネスリーダー、大口献金者との会食」を選んでいるという。「集会以外では、トランプ大統領は就任1年目と比べて、演説、公のイベント、国内旅行を大幅に削減している」。「そして、有権者との定期的な接触の欠如は、共和党員とホワイトハウスの支持者たちの間で、トランプ氏が孤立しすぎていて、国民が大統領に何を求めているのか分からなくなっているのではないかという懸念を強めている」、さらに、「トランプ氏の鈍感さは、彼の側近たちをも動揺させ始めている」と指摘している。

ガーディアン紙のモイラ・ドネガン記者は、共和党への影響力が低下するにつれ、「トランプ大統領の権力の衰退は無視できなくなっている」、「政府閉鎖の間、彼はマール・アー・ラーゴでギャツビー・パーティーを開いている。ほとんどの時間を舞踏室の建設に費やしているようだ。それに、イースト・ウィングの破壊は、一部の人が予想していなかった象徴的な打撃を与えたかもしれない」、「トランプ大統領はある程度の個人的な衰退に陥っているように思われ、その衰退は無視できなくなっている」とも指摘している。

12/2、深夜の「Truth Social」での異常な投稿の連発の直後、トランプ大統領は火曜日にテレビ中継された閣議を招集。冒頭、まずはバイデン前大統領を攻撃し、自らのホワイトハウス復帰以来、アメリカ経済は急成長を遂げていると、またもや大嘘を繰り返し主張、「電気料金が下がっている」と、現実とかけ離れた虚をつき、「有権者のコスト上昇に対する懸念は、すべて彼らの空想に過ぎない」と、インフレを「空想」だと言い募り、「『手頃な価格』という言葉は民主党の詐欺だ」と断言、「彼らはそう言って、次の話題に移り、皆『ああ、物価が安かったんだ』と思うんです。いいですか、住宅価格の高騰という問題は、民主党が仕掛けた作り話です。民主党が価格問題を引き起こしたのです。」と開き直っている。

 12/3、シルビア・ガルシア下院議員(テキサス州選出、民主党)は、「トランプは「手頃な価格は民主党の詐欺だ」と言う。億万長者で、食料品と電気代のどちらかを選ばなければならなかったことがない人には、簡単に言えることだ。テキサスの労働者家庭は、本当の詐欺が彼の関税、彼の保険料の高騰、そして住宅危機に対処したり、実際に価格を下げるためのいかなる計画も提供しない彼の完全な失敗であることを知っている。」と、手厳しく批判している。

トランプ氏は、今や窮地に追い込まれつつある、と言えよう。追い詰められた政権が危険な賭けに打って出ることを、封じ込める政策、闘いの戦略が要請されている。
(生駒 敬)

 

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【投稿】高市政権の経済政策は円安から物価高騰を招く

【投稿】高市政権の経済政策は円安から物価高騰を招く

                            福井 杉本達也

1 高市政権の積極財政

高市首相は「責任ある積極財政」を唱えるが、実態は。11月5日付けの日経新聞によれば、「高市氏は自民党総裁選の勝利後、デフレでなくなったと安心するのは早い」と早期利上をけん制し、金融政策について『政府が責任を持つ』と唱えた。」(日経:2025.11.5)。しかし、高市首相の「デフレ」という意識は完全に現実とは乖離している。2022年以降の世界的なインフレの波は、日本においてもインフレによって生活苦が高まっている。もうデフレではない。金融緩和や野放図な財政出動に依存しないインフレ抑制的な経済政策をとるべきである。

 

2 日本経済停滞の主因は大企業による労働者の収奪にある

BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏は、日本経済の長期停滞の主因は、大企業が利益を内部にため込み、賃上げや人的資本投資、国内按買に対して消極的なことにあると指摘する。実質賃金の低迷を指摘すると、多くの人は生産性の低さを理由に挙げる。しかし、河野によると、1998年から2023年の間に日本の生産性は30%上昇しているが、実質賃金は横ばいで、この間のインフレにより2%減少している。生産性が上がっても賃金が引き上げられていない。賃上げを抑えて労働分配率をどんどん下げてきたのである。しかも定期昇給の枠外にある非正規労働者をどんどん増やしてきたのである。かつては包摂的だった日本の社会制度は収奪的社会に向かっている。労働者から絞りとっで、配当と内部留保を増やしている。結果、大企業の利益剰余金は600兆円にも積み上がっている(河野龍太郎『日本経済の死角』)。

 

3 「アベノミクス」への反省が全くない

11月21日に閣議決定された高市政権の総合経済対策は財政支出21・3兆円、事業規模41・8兆円という大型のものとなった。また、28日には18.3兆円という大型の補正予算も組むとした。日経新聞11月27日付けのコラム『大機小機』は「季節は外れのアベノミクス」と題して、アベノミクスの結果は犯罪的であったことを上げている。①積極的な財政も緩和的な金融もデフレからの脱却には効果が小さく、長期的な成長率を引き上げることには無力だった。②為替レートはアベノミクス直前の11~12年の円の対ドルレートは80円前後だった。これが「異次元緩和」によって円安に向かった。ここ数年は140 ~150円へと円安が進むことで、輸入物価の上昇を通じて物価情勢を一段と困難なもとしている。③金利のある世界に入った近年では、財政赤字の累積は国債費を増加させ、今後の財政運営をさらに厳しくなる、と総括している。

高市政権発足後、金融市場ではこの1か月間で警戒感が一気に強まり、国債と円を売る動きが加速している。円は157円台と1カ月で7円も円安となった。10年物国債利回りは1.835%と17年半ぶりの高水準になった。東短リサーチの加藤出氏は「市場には円安が止まりづらくなることでインフレ率も高止まりするとの予想」もあるとし、「足元のインフレは円安で押し上げられ…食料も顕著に値上がりしており、家計は圧迫されている。」とし、「円安を放置したまま、財政で物価高に対応してもきりがない」と高市政権の経済対策に全く否定的である(日経:2025.11.28)。

4 「インフレ税」をとる高市経済政策

島澤諭氏は「物価高で財政が改善するのは、インフレにより所得税率の適用区分を超える人が増える『ブラケットクリープ』や名目額で固定された債務を目減りさせる『インフレ税』のためだ。」それにより、「意図的な財政健全化を行わずともインフレ税によって財政再建が自動的に進む」。また、「インフレ税は、所得税や消費税のように法律によって決められたわけではなく、特定の税率があるわけでもない」から財政民主主義の破壊でもあると書いている(日経:2025.11.24)。

政府には①「支出を減らす」か、②「税収を増やす」か、③「インフレを進める」の3つの選択肢しかない。①と②は国民の抵抗が大きいので選択が難い。そこで、高市政権は③の「インフレ税」を選択し、家計への負担はどんどん重くなる。増税せずに、インフレによって「家計から政府へと所得が移転する」現象が起きている。物価が上がると生活費が増えるので、これまでためていた預金などを取り崩して、モノやサービスの購入に回す。国民はインフレのせいで、今までよりも控えめな量や質での財やサービスの購入を強いられ、国民の可処分所得は減って消費を手控える。所得や貯蓄の少ない人、つまり社会的に最も弱い立場の人々ほど、その影響を受ける(河野龍太郎×唐鎌大輔『世界経済の死角』)。

今の高市政権の経済政策は③の「インフレ税」である。野党も給付金や減税要求のみで「インフレ」や「円安」の効果についてはよく理解いていない。しっかりと批判しなければ、いつの間にか国民はさらに貧しくなっていることになる。

 

5 円安で物価は上がるのに、賃金が上がらないスタグフレーションに

トヨタなどの大手輸出型企業の海外事業では、円安で為替差益が利益となる。しかし、国内経済は円安ではインフレになり、国民の所得(賃金+年金)の上昇はインフレ率より低いので、スタグフレーションになってきている。貿易のほとんどが、ドル建てで行われている。95%以上を輸入に頼る資源・エネルギー、30%しか国内自給率のない食品は、価格がどんどん上がっても輸入しなければならない。

2012年末からの安倍内閣による「異次元緩和」で、日銀による国債の買い→円の増刷(約500兆円)が行われたが、膨らんだ資金は国内には投資されず、マイナス金利となった円が売られて、2%から4%の金利差のあるドルが買われ(円が売られ)円安が進んだ。さらに、2020年からは、コロナ危機の財政対策で100兆円もの国債が発行され、それを日銀が買い、円を増刷したため、1ドルは150台の超円安になってしまった。2023年:23兆円、2024年:27兆円、2025年:30兆円のペースで、「円売り/外貨買い」の超過がある。日銀の短期政策金利は0.5%であるが。インフレ率は約3%であり、本来は2.5%程度の政策金利でなければならない。しかし、それでは、安倍→菅→岸田の自民党政権下で積み上がった1300兆円の国債残高があり、国家財政が支払金利で破綻してしまうので金利を上げられない。低い金利を嫌って、海外の高い金利の通貨に資金が移動し、さらなる円安を引き起こし物価は高騰する(参照:『ビジネス知識源』吉田繁治:2025.11.29)。

高市政権にはアベノミクスの大失態の責任を問われているが、全く反省することなく、また同じことを繰り返そうとしている。失態の負担はインフレとして国民の肩に重くのしかかる。消費支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数は3割にもなり、国民は必要な消費を削減せざるを得ず、日本経済の低迷と国民の苦痛はさらに続く。発足1カ月・マスコミは高市政権を盛んにもてはやすが、「死神」でもあり、「貧乏神」でもある。

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【投稿】トランプ大統領:極まる独裁者・ファシストの叫び

<<「民主党議員6人を絞首刑にすべきだ」>>
11/20、トランプ大統領は、民主党議員6人が、軍務に就く者に対し、軍法と法律に基づき、大統領の違法な命令に従わない義務があることを訴える90秒のビデオを公開したことに対して、「これは最高レベルの扇動行為だ。国家を裏切るこれらの者たちは全員逮捕され、裁判にかけられるべきである。彼らの言葉は許されるものではない。もはや私たちの国は存在しなくなる!!! 模範を示さなければならない。大統領、DJT」と自らのソーシャルメディアTruth Socialに投稿。
これに応えた「反乱」「国内テロリスト」「ジョージ・ワシントンなら絞首刑にするだろう!!」といった右翼のコメントをリポストし、トランプ氏自身が、「民主党員は死刑に値する」と述べ、「扇動行為、死刑に値する」、「民主党議員6人を絞首刑にすべきだ」と書き込んだのであった。

 民主党の6人の議員は、主に退役軍人で、アリゾナ州選出のマーク・ケリー上院議員(海軍担当)、ミシガン州選出のエリッサ・スロットキン上院議員(CIA担当)、ペンシルベニア州選出のクリス・デルジオ下院議員(海軍担当)、ニューハンプシャー州選出のマギー・グッドランダー下院議員(海軍予備役)、ペンシルベニア州選出のクリッシー・ホウラハン下院議員(空軍担当)、コロラド州選出のジェイソン・クロウ下院議員(陸軍担当)であった。彼らが公開したビデオで述べられた内容はすべて完全に合法であり、トランプ政権の現在および過去の行動を考慮すると、全く適切なものであり、彼らは、トランプ政権は「軍服姿の軍人と情報機関の専門家をアメリカ国民と対立させている」と述べ、「違法な命令を拒否することはできるし、拒否しなければならない」と述べ、「我々の法律、我々の憲法のために」立ち上がるよう呼びかけ、「あなた方は我々と同じように、この憲法を守り、擁護する誓いを立てた」、「今、我々の憲法に対する脅威は、海外からだけでなく、まさにここ国内からも来ている」と「船を放棄するな」(“Don’t give up the ship.”)というメッセージで締めくくられていた。

 11/22、トランプ氏が、民主党議員6人を絞首刑にすべきだと示唆した翌日、ビデオ・メッセージの議員の1人、クリス・デルジオ下院議員が複数の爆破脅迫を受けたことが明らかになった。「本日午後、カーネギー郡とビーバー郡の選挙区事務所が爆破脅迫の標的となりました。議員と議会職員は無事であり、迅速な対応をしてくれた法執行機関に感謝します。このような政治的暴力と脅迫は容認できるものではありません」と明らかにしている。
 草の根の退役軍人団体コモン・ディフェンスは、この爆破予告を確認した後、
「第一に、コモン・ディフェンスは、あらゆる形態、あらゆる政党による政治的暴力を断固として非難します。暴力は我々の民主主義にあってはならないものです。我々は法の支配を信じています。しかし、ここでの因果関係を無視することはできません」と指摘している。

トランプ大統領の今回の暴言は、これまでのような単なる暴言の繰り返しではない、と言えよう。明らかに、自分に敢えて反対する者の殺害を要求し、死刑を要求するとき、それは、自らが独裁者であり、ファシストであることを宣言したものだ、と言えよう。

<<「トランプ氏は今やレームダック=「死に体」、誰もがそれを知っている」>>
トランプ氏は、11/20の1日だけで、民主党議員を反逆罪と扇動罪で非難する16件もの錯乱した投稿と再投稿を繰り広げている。そこまでパニックに陥ってしまったのであろう。隠しおおせない、パニックの現実である。

こうした現実の展開に直面して、もはや与党・共和党議員でさえ、トランプ氏に同調できない段階に追いやられ、上院多数党院内総務ジョン・スーン氏は、記者の追及に対して、「大統領による同僚議員の処刑要請には同意できない」と認めるに至った。そして、最も忠実なトランプ氏の報道官、キャロライン・リービット氏でさえ、数時間後にはトランプ氏の発言を撤回せざるを得なくなり、大統領は野党議員の殺害を望んでいないという速報が流れるという、予期せぬ、驚くべき混乱を招いたのであった。

 11/21付けロサンゼルス・タイムズ紙は、「トランプ氏は今やレームダックであり、誰もがそれを知っている」として、共和党全体がトランプ大統領に背を向けつつある、少なくとも5つの主な理由がある、との分析を掲載している(Five reasons the GOP is finally bucking Trump 共和党がついにトランプに反抗する5つの理由)。
1.憲法違反となる3期目の就任を公然と示唆しているにもかかわらず、トランプ氏は2028年以降も大統領職にとどまることはできず、トランプ氏よりも長く政権にとどまりたい共和党員を怯えさせている。
2.2024年の大統領選では僅差で一般投票での勝利を収めたかもしれないが、支持率は急落しており、今週初めのロイターの世論調査では38%となっている。
3.トランプ氏が有権者からますます孤立している。これは、最初の任期に比べて集会の回数が減っていることに象徴される。「今や彼は物理的に孤立し、支持基盤との接点もますます薄れている。彼の側近はイデオローグと億万長者で構成されている。彼らは牛乳の価格を気にしない人々だ。」
4.彼の健康と死亡率への懸念があり、「MRI検査も受けているが、その検査内容については誰も十分に説明できない」という報道も、懸念に拍車をかけている。
5.トランプ氏の政治連合は常に不安定なものだった。その結束力が弱まるにつれて、矛盾が露呈し、あからさまな争いは避けられなくなってきている。

トランプ政権に好意的なFOXニュースでさえ、自社の世論調査の結果を踏まえ、回答者の76%が、経済は「それほど良くない」または「悪い」と回答し、共和党支持者でさえ、食料品、公共料金、医療費がトランプ政権下で上昇したと回答し、住宅価格、賃金、医療、気候変動問題に関しては、民主党の方がより良い計画を持っていると回答したと報じている。

レームダックに陥り、パニックに陥ったトランプ政権が、危機打開により危険な内戦や対外戦争挑発に乗り出しかねない、危険な展開であり、それを孤立させ、阻止する広範な闘いが要請されている。
(生駒 敬)

 

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【投稿】台湾有事で「存立危機事態」との高市答弁は日本に大損害をもたらす

【投稿】台湾有事で「存立危機事態」との高市答弁は日本に大損害をもたらす

                           福井 杉本達也

1 高市早苗首相が台湾有事で「存立危機事態」と答弁

高市首相は11月7日の衆院予算委員会で、中国が台湾に侵攻する台湾有事に関し、状況次第で安全保障関連法に基づく存立危機事態に該当するとの認識を示した。これに対し、中国側は日本が台湾情勢に武力介入する意思を示したと受け止た。「存立危機事態」は日本と密接な関係にある他国が攻撃され、日本の存立が脅かされる明白な危険がある場合を指す。「仮に中国が台湾を武力侵攻し、米国がそれを防衛しようとした場合、日本領内にある在日米軍基地が攻撃される可能性は高い」場合(日経:2025.11.10)などであるが、米国は必ずしも台湾を防衛をするとは限らない。中国からは、日本が台湾「防衛」のために自衛隊を派遣し、米国を巻き込むと受け止められた、これには伏線がある。

2 日中首脳会談後、手のひらを返しての台湾代表と会談・元駐日台湾代表に旭日大綬章

高市首相は10月31日にの習近平主席との会談後、11月1日に慶州で台湾の元行政院副院長(副首相)の林信義と会談し、握手する写真を自身のXに投稿した。また、11月3日付けで、台湾の謝長廷・前台北駐日経済文化代表処代表(=事実上の台湾駐日大使)に旭日大綬章を授与した(日経:2025.11.7)。

この一連の行動の前段で、高市首相による市川恵一氏の国家安全保障局長(NSS局長)への任命(2025年10月21日)がある。これは、高市政権の外交・安全保障政策の基本設計図を変える行為である。「発足直後の高市政権は、石破前内閣による『市川氏をインドネシア大使とする』という閣議決定を覆すという極めて異例の手段に訴えた 。これは、前政権の方針・政策を『一変させる強い意志』 の表れである。そして、そのポストにあてられた市川氏は、安倍政権下で「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」戦略の策定に深く関与した人物である」(https://note.com/takeokmt )。「高市政権の統治戦略の最も巧妙かつ重要な点は、『官邸』のイデオロギー的中枢と、『閣僚』の実務的な布陣との間に見られる、意図的な乖離(かいり)である。これは矛盾ではなく、計算された『二重構造(デュアル・ストラクチャー)』である。…首相官邸は日本の最も自己主張の強い外交政策の設計者たち(市川、今井、秋葉)によって固められた 。ここが、高市政権の真の国家戦略を策定し、推進する「エンジン」となる。…対照的に、高市首相が任命した閣僚、特に国民の目に触れる安全保障の主要ポストは、『穏当で比較的バランスの取れた布陣』と評されている 」(同上:2025.11.15)。

したがって、高市首相の発言は、「偶発的な失言ではなく、政権交代に伴う日本の国家戦略の意図的な転換を示唆している。従来の自民党・公明党連立政権下では抑制されてきたタカ派的な安全保障観が、公明党の連立離脱と日本維新の会との連携強化という国内政治基盤の変容を経て、一気に表面化した形である。これに対し、中国政府は『断じて容認しない』とする激しい反発」を見せているのである(同上:2025.11.16)。

3 高市首相には手持ちのカードは何もないが、中国にはカードはいくつもある

『観察者』11月18日付けにおける劉承輝氏によれば(中文機械翻訳)、「中国は高市早苗に対し誤った発言の撤回、火遊びをやめ、中国への約束を果たすよう繰り返し強調しているが、これまでのところ高市は関連する発言の撤回を拒否している」。強硬派の高石首相が、「中国と妥協すれば大きな政治的反発に直面すると見ている。これにより日本は最大の貿易相手国である中国と膠着状態に陥りますが、緩和の明確な方法はありません。中国は、状況が制御不能になれば制裁を課す」。「中国の日本経済や企業への圧力が予想を超える可能性があることです。 中国の重要鉱物供給は日本の自動車産業の重要な依存であり、自動車産業は中国にとって最も明確な圧力手段の一つでもあります」。ブルームバーグの吉田達雄氏は「もし(中国)が希土類禁輸措置を課せば、特に希土類含有量の高い電気自動車の生産が混乱するでしょう。」と述べている。グローバリゼーション・シンクタンク創設者の王輝耀氏は「この(危機)は完全に日本の首相によって引き起こされた。」と述べている。11月18日の日本の株式市場は引き続き急落した(日経:2025.11.19)。ブルームバーグは、中国の反撃が日本に大きな損失をもたらすと警告した。

 

4 なぜ中国はトランプに対し、レアアースカードを切れたのか

なぜ中国は今初めて、米国に対して、レアアースカードを切れたのか?石原順氏がX上に投稿しているが(2025.11.18)、「2022年まで中国はヘリウムの95%を輸入に依存しており、その大半は米国が支配していた」。ヘリウムは「量子コンピューティング、ロケット技術、MRI装置、半導体リソグラフィ装置の冷却剤など、数多くの産業用途がある」。もし、2022年時点で、米国がヘリウム輸出の「締め付け」をすれば、中国は深刻な影響を受けることとなる。そこで中国は「ヘリウムの枷」を断ち切るため7つのヘリウム抽出施設が稼働を開始。さらに輸入先を米国からロシアなどへ転換した。結果「2024年末までに中国の米国ヘリウム依存度は5%未満に低下」した。「力とは意図やレトリックではなく、実際に何ができるかだということだ」。今、米国にはレアアースの代替手段も、技術も、サプライチェーンも欠けている。「中国は、あらゆる圧力ポイントを体系的に排除するために、途方もない努力を払った…だからこそ、今になってようやくレアアースという切り札が使えるのだ。中国が突然攻撃的になったからではなく、彼らが『ノー』と言える能力を育んできたからだ。」

 

5 共同通信のばかげた世論調査と日中対立を煽るマスコミ・SNS

国民民主党の玉木雄一郎代表は定例記者会見において、メディアに対し、「台湾有事の際に集団的自衛権を行使すべきか否かのような設問で、国民のみなさんにイエス・ノーを聞くケースがありますけど、結論を言うと『簡単には答えられない』」とした。「日本は何重ものハードルをくぐらないと、武力行使はできないんです。でも、台湾有事で武力行使すべきかと単に設問で聞くと『やったらいいんじゃないか』みたいな答えになることが多くなる」とし「そういった設問が分断と緊張感をあおりかねない。」と述べた(『スポーツ報知』2025.11.18)。これは、集団的自衛権の行使について、「台湾有事での行使について賛否を聞いたところ『どちらかといえば』を合わせ『賛成』が48・8%、『反対』が44・2%だった。」(福井:2025.11.17 共同通信世論調査)との世論調査を踏まえての発言である。さらに、薛剣・駐大阪総領事の「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない。覚悟ができているか」とのXへの投稿を「国外退去」だとマスコミ各社は激しく煽った。また、11月16日放送のTBS「サンデー・ジャポン」に出演したタレントの杉村太蔵は、予算委員会での岡田克也立憲民主党元幹事長の質問に対し、「聞く方も聞く方で、どういう状況だったら武力行使をするか、これ、敵国のスパイからすると、最も欲しい情報じゃないですか。これをわざわざ世界中が見ているこの国会の予算委員会で追及する」。「こういうふうに厳しく追及する。いったい誰が得するの」かと、あたかも高市答弁を引き出した質問者の岡田氏が悪いかのように発言した。日本は、高市首相の発言をSNSばかりでなく、大手マスコミもこぞって煽っているという非常に危うい状況にある。

6 中国を「G2」と呼ぶトランプ・

キッシンジャーは「中国と日本を比較した場合、中国は伝統的に世界的な視野を持ち、日本は部族的な視野しか持っていない。」「日本は突然の大変化も可能で、三ヵ月で天皇崇拝から民主主義へと移行した。日本人は自己中心的で他国に対する感受性に欠ける」。と述べている(周恩来・キッシンジャー極秘会談録:1971年)。

米国は伝統的に、台湾について「戦略的曖昧さ」を維持してきた。日本が台湾について踏み込んことに警戒感がある。しかし、トランプ政権は中国との取引を優先しており梯子を外されるリスクがある。

トランプ米大統領は10月30日の米中首脳会談を「G2会談」と表現した。トランプ氏は自身のSNSに「習近平国家主席とのG2会談は両国にとって非常に有意義だった」と記した。(日経:2025.11.3)。この「G2」表現は、重要なことは2国間で決めると言うことである。「トランプ米政権は静観の構えを見せている。中国が反発を強め、日中関係の緊張が高まる中、米中通商交渉への影響を避けたい思惑がある」、「米シンクタンクのアジア協会政策研究所のエマ・シャンレットエイブリー氏は『トランプ政権は中国政策で広く曖昧な立場を取っているが、高市氏の発言はこの方針から逸脱している』と指摘し、対中政策を巡る日米関係の行方に懸念を示した。」(時事:2025.11.18)。

篠田英朗氏は、属国日本は、米国という覇権国による「巻き込まれ」や、逆に「米国第一」のトランプ政権下では「見放され」ることを恐れる。そこで高市政権はタカ派路線をとり、米国を「巻き込む」作戦に活路を見出そうとしたが、トランプ政権に見透かされ、かえって「見放され」つつある(参照:篠田英朗X:2025.11.16)と分析する。

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【投稿】特定食品関税撤廃:トランプ関税の敗北--経済危機論(172)

<<ウソ、でたらめの破綻>>
11/14、トランプ政権は、「牛肉、ココアとスパイス、コーヒーと紅茶、バナナ、オレンジ、トマト、その他の熱帯果物と果汁、そして肥料への関税を撤廃する。」ことを明らかにした。主要輸入品に対する「相互」関税という、怪しげな違法関税の撤廃に、ついに追い込まれたのである。
 発表された大統領令は、「本日の命令は、大統領が二国間貿易関係においてより互恵的な条件を確保する上で成し遂げた重要な進歩を踏まえたものである。」と言い訳しながら、「米国では十分な量が栽培または生産されていない農産物を大量に生産している国々が関与している。したがって大統領は、特定の農産物は相互関税の対象から外されることを決定した。これらの製品には次のようなものがあります。」として、上記の広範な食品、ならびに肥料への関税撤廃を明らかにしている。

これは、明らかなトランプ関税政策の破綻である。CNNのジム・シュート記者は、「トランプ政権は今、経済学者やビジネスリーダーたちが当初から指摘してきたことを認めている。関税が価格を押し上げているのだ」と断じている。

 トランプ氏は、この大統領発令の直前、11/12、11/13両日に至っても、「食料品は大幅に下落している」と強弁していたのである。「あらゆるものが大幅に下落している」、「トランプ政権下で物価は下落しており、しかも大幅に下落している」、「誰もがトランプ政権下では物価がバイデン政権下よりもはるかに安くなっていることを知っている。そして、物価は大幅に下落している」と大うそとでたらめをばらまいていたのである。11/9には、「関税に反対する奴らは愚か者だ! 我々は今や世界で最も裕福で、最も尊敬される国であり、インフレ率はほぼゼロ、株価は史上最高値を記録している。」とまでうそぶいていたのである。

CNNのダニエル・デール記者は、こうした大ウソを厳しく検証し、ファクトチェックとして発表、トランプ氏が「インフレについて嘘をつき続けている」ことを明らかにした(11/10)。「インフレは依然として存在しているだけでなく、(関税発表の)春以降加速している」、「この政権下で物価は上昇している。連邦消費者物価指数の最新データによると、9月の平均物価は1月より??1.7%上昇し、2024年9月より3%上昇した。政権期間中、毎月インフレが発生しており、価格が上昇した製品は安くなった製品よりもはるかに多かった」、「9月時点で、前年比のインフレ率は5ヶ月連続で上昇している」。「あらゆる価格が下落している」、「バイデン政権下よりもはるかに安くなっている」と言ったトランプ氏の「これらの言葉はどれも真実ではない。」と断言されていたのである。

しかも、食料品価格はとりわけ上昇している筆頭でもある。消費者物価指数(CPI)によると、食料品の平均価格は1月から9月の間に1.4%上昇し、2024年9月から2025年9月の間には2.7%上昇している。一方、2025年7月から2025年8月にかけての平均食料品価格の0.6%上昇は、過去3年間で最大の月間上昇率であり、その後、8月から9月にかけて0.3%上昇している。牛肉だけではない。数十種類の食料品が値上がりしている。

「関税は物価上昇につながらない」、「食料品は大幅に下落している」などと、平気で、現実からかけ離れた大嘘を繰り返し吐き続けられるのは、庶民の生活実態を全く知らない大金持ち故なのか、認知不全、あるいはあえて固執する人格破綻なのか、問われるところであろう。

<<「他の何千もの品目についても当てはまる」>>
しかし、トランプ氏にとっては、直近のニューヨーク市長選挙の敗北に引き続いて、ニュージャージー州とバージニア州の知事選でも敗北、シアトル市長選でも敗北濃厚という、有権者の怒りで、連続惨敗を喫し、トランプ政権の「存続危機」に直面し、ついに関税政策の変更に追い込まれたのが、実態であろう。

この政策変更は、議会合同経済委員会の民主党議員が、「トランプ大統領が1月に大統領に復帰して以来、米国の世帯が生活必需品に毎月約700ドル多く支払っている、アラスカ州やカリフォルニア州など、一部の州では、世帯平均で毎月1,000ドル以上の負担に直面している。」ことを明らかにした報告書を発表した、その翌日に発せられたものであった。トランプ政権が追い込まれ、対応せざるを得なかったのである。

物価問題は、「民主党によるペテンだ」と主張してきたトランプ氏に対して、下院歳入委員会貿易小委員会のドン・ベイヤー下院議員(民主党、バージニア州選出)は、11/14の声明で、「トランプ大統領はついに、我々がずっと知っていたことを認めた。つまり、彼の関税はアメリカ国民にとって物価上昇をもたらしているのだ」と述べている。
 さらにベイヤー氏は、「トランプ大統領の関税がコーヒー、果物、その他の食料品の価格を押し上げているという同じ論理は、関税が残っている他の何千もの品目についても同様に当てはまる。今回の措置はトランプ大統領が引き起こしたコスト上昇をいくらか緩和するかもしれないが、インフレの上昇、企業の不確実性、そしてトランプ大統領の狂気じみた関税政策による経済的損害といった、より大きな問題を止めることはできない。憲法に基づく貿易規制の法的責任を取り戻し、トランプ大統領の貿易戦争の混乱に恒久的に終止符を打つことができるのは議会だけだ。」、「議会の共和党議員は、ごく少数を除いて、依然としてトランプ大統領に立ち向かい、関税を中止し、アメリカ国民のコストを削減することを拒否している。彼らが決意を固めない限り、我が国の経済は引き続き苦境に立たされるだろう。」、「関税を撤廃し、関税に関する議会の合法的な権限を取り戻す。」ことを呼びかけている。

今や、トランプ政権の破滅的な関税政策が岐路に立たされ、その撤廃、全面的な政策転換に踏み切らない限り、政治的経済的危機は止められない段階に直面しているのである。
(生駒 敬)

 

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【投稿】ニューヨーク市長選:トランプ脅迫路線の敗北

<<マムダニ氏:「希望は生きている」‘Hope Is Alive!’>>
11/4・投開票のニューヨーク市長選で、トランプ大統領から「ニューヨークを破壊しようとしている」「共産主義者の狂人」などと激しく攻撃を受けていた民主党左派のゾーラン・マムダニ(Zohran Mamdani)氏が勝利を獲得した。

マムダニ氏は、2020年のNY州議会議員選挙で初当選し、22年、24年と当選を果たし、24年にニューヨーク市長選への立候補を表明、草の根の選挙運動に支えられ、25年6月の民主党予備選挙で、アンドリュー・クオモNY州前知事に勝利し、今回の市長選候補となった。その時点で「世論調査でわずか1%の支持率から始まったマムダニ氏は、現代アメリカ史における最も偉大な政治的番狂わせの一つを成し遂げた」(氏を支持するバーニー・サンダース上院議員)のであった。DSA(Democratic Socialists of America 米国民主的社会主義)に所属している。

3候補による激戦で、マムダニ氏は50.4%の票を獲得し、民主党予備選でマムダニ氏に敗れた後、無所属で出馬し、トランプ氏の支持を受けたアンドリュー・クオモ氏の41.6%、共和党候補のカーティス・スリワ氏の7%強を劇的に引き離しての勝利であった。約850万人の人口を抱える全米最大の都市での、トランプ政権、民主党右派の敗北は、歴史的でもある。

トランプ氏は、わざわざ投票日前夜に、「共産主義者の候補者ゾーラン・マムダニがニューヨーク市長選で当選すれば、必要最低限のものを除いて、連邦政府資金を拠出することはまずないだろう」と宣言。さらにマムダニ氏がICE(移民関税捜査局)の強制捜査を妨害しようとした場合、逮捕するとまで脅迫。
これに対してマムダニ氏はXで、「大統領は私を逮捕と強制送還で脅迫したが、それは私が法律を破ったからではなく、ICEが私たちの街を恐怖に陥れるのを許さないからだ」と反撃している。
 そしてトランプ氏は、投票日当日、投票開始からわずか数時間後に自らのTruthSocialに「ゾーラン・マムダニ、この明白な、そして自称するユダヤ人嫌いに投票するユダヤ人は、愚か者だ!」と、ユダヤ系住民の40%以上がゾーランに投票していることに怒りをぶちまける投稿までしている。

こうしたトランプ氏の必死の巻き返し、ニューヨーク市民への脅しにもかかわらず、マムダニ氏は勝利を獲得したのである。

 マムダニ氏はニューヨーク・ブルックリンのパラマウント・シアターで行われた勝利演説で、「希望は生きている」‘Hope Is Alive!’として、以下のように宣言した。
* 「専制政治ではなく希望を。巨額の資金と狭量な考えではなく希望を。絶望ではなく希望を。私たちが勝利したのは、ニューヨーカーたちが不可能を可能にできると信じることを許したからだ。そして、政治はもはや私たちに押し付けられるものではなく、私たちが自ら行うものだと主張したからこそ、私たちは勝利したのだ。」「数年後、私たちが唯一後悔するのは、この日が来るのにこれほど時間がかかったことだけでしょう」
* 「ドナルド・トランプに裏切られた国に、彼を打ち負かす方法を示すことができるとしたら、それは彼を生み出したこの街以外にないでしょう。」「もし専制君主を恐怖に陥れる方法があるとすれば、それは、彼が権力を蓄積することを可能にしたまさにその条件を解体することです。これはトランプを止める方法であるだけでなく、次の独裁者を止める方法でもあるのです。」「この政治的な暗黒の時代において、ニューヨークは光となるでしょう」
* 「ニューヨークは移民の街であり続ける。移民によって築かれ、移民によって支えられ、そして今夜からは移民によって率いられる街だ。だから、トランプ大統領、よく聞いてほしい。私たちの一人に手を出そうとするなら、私たち全員を相手にしなければならない。」

<<同時5選挙すべてで、トランプ敗北>>
トランプ政権にとって、さらなる痛手は、同じ日に実施された5つの選挙すべてで、トランプ大統領に痛烈な批判を浴びせ、物価高騰とトランプ氏を攻撃した候補者たちが勝利を収めたことであった。
* 民主党がバージニア州、ニュージャージー州、ペンシルベニア州、カリフォルニア州、ニューヨーク市の主要選挙で勝利しただけではない。どの選挙でも勝利の差は予想以上に大であった。
* バージニア州のアビゲイル・スパンバーガー氏とニュージャージー州のミッキー・シェリル氏は、法執行機関とのつながりを強調し、物価引き下げを公約し、トランプ氏の経済運営を批判することで大勝した。
* ペンシルベニア州では、民主党は反トランプ、中絶権利擁護のメッセージを掲げ、州最高裁判事選挙3議席すべてを獲得した。

AP通信は、「火曜日の選挙は、多くの有権者にとってトランプ氏への静かな非難だった」と有権者調査を報じ、フォックスニュースは「経済不安が、左派が有権者の不満を利用したことで、重要な選挙における民主党の圧勝の鍵となった。」と報じている。トランプとその取り巻きが、すべては順調で、インフレはなく経済は好景気だと主張し続けていることが状況を悪化させている、との指摘である。

 11/5、マムダニ氏は、来年1月の市長就任に先立つ、改革市政をリードする、全員女性からなる移行リーダーシップチームを発表、住宅、規制、社会政策の分野で経験と識見を持つ、5人からなるこのチームは、元連邦取引委員会(FTC)委員長のリナ・カーン氏、マリア・トーレス=スプリンガー氏、グレース・ボニラ氏、メラニー・ハーツォグ氏、そしてエレナ・レオポルド氏が共同議長を務めることを明らかにした。
マムダニ氏は、市政運営において「オーガナイザー、政策専門家、そして働く人々」の意見を取り入れる、「公的説明責任を優先する」と強調している。

マムダニ氏が選挙戦で掲げた
* 手頃な価格の住宅、テナント保護、ユニバーサル・ヘルスケア
* 生後6週間から5歳までのすべての子どもを対象とした無料保育プログラムの創設
* 時給30ドルの最低賃金
* 住宅政策:200万戸の家賃安定化アパートの家賃凍結、公共投資による20万戸の低価格住宅建設を公約
* 政府補助金による無料食料品店の設置、市バス運賃の無料化
* コミュニティ・ランド・トラスト(CLT)を通じて「土地と住宅の社会化」を提案し、地域社会が管理する低価格住宅への転換を目指す。
* 経済的正義:法人税の最高税率を11.5%に引き上げる

これらの政策が、マムダニ氏の移行チームの課題となろうが、
今やトランプ氏にとっては、こうした政策課題は、新自由主義政策に相反する、逆に唾棄すべき政策なのである。しかし、唾棄すればするほど、トランプ政権の孤立化は避けられない事態の進行である。
(生駒 敬)

 

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【投稿】トランプ関税:脅しの敗退--経済危機論(171)

<<「いじめっ子は、いじめ返された」>>
10/30、トランプ米大統領のアジア歴訪の締めくくりであった、韓国(釜山)・APEC会合での、米中首脳会談について、トランプ氏は、中国の習近平国家主席との会談は「本当に素晴らしいものだった」、「両国間には計り知れないほどの敬意があり、今回の会談によってそれがさらに深まるだろう。」、「0から10のスケールで、10が最高だとすれば、今回の会談は12点だったと言えるでしょう」と自らを礼賛した(TruthSocialへの投稿)。
 しかし、トランプ政権のおべんちゃら閣僚以外は誰も絶賛などしていない。ガーディアン紙の外交担当編集者パトリック・ウィンター氏は、トランプ氏は「いじめっ子はいじめ返される可能性があることを発見した」とまで述べている。

トランプ氏が仕掛けた一方的な関税戦争は、米中間においては、11/1に実施予定であった100%関税の脅しが撤回に追い込まれ、少なくとも4月までは一応とりあえず「休戦」、「安定」が確認されたというのが、実態なのである。

 米中間で、何が確認されたのか、列挙してみよう。
* 中国政府、米国産大豆の大量購入を再開へ : トランプ大統領「中国が米国産大豆やその他の農産物を「膨大な量」購入し、米国の農家に救済を提供する」
* 中国、レアアース輸出制限を1年間停止 : 中国商務省の声明によると、「中国は10月9日に発表した関連輸出管理措置の実施を1年間停止し、具体的な計画を検討・改善する」としている。
* トランプ大統領、中国のフェンタニル関税を即時10%に引き下げる。
* 中国政府は、米国は一部の相互関税の停止を1年間延長すると発表し、TikTokに関連した問題の解決に向けて米国と協力する。
* 米国、ブラックリストに掲載された中国企業の子会社を対象とした規則を一時停止する。
* 中国はアメリカからのエネルギー購入を開始する。
* 両国は特定の輸送関税と手数料を撤廃することにも合意。
* トランプ大統領は、中国が米国への投資を強化することに楽観的な見方を表明し、4月に中国を訪問すると表明。中国政府は、米国が習氏の訪米を招待したと発表。

<<「解決どころか、ごまかしているだけ」>>
しかし、これらの合意・確認では、真の解決策は何も提示されはていない。あくまで一時しのぎなのである。
 10/30、『アトランティック』誌や『ファスト・カンパニー』誌への寄稿で知られるジャーナリストのスロウィエツキ氏はXへの投稿で、「これはトランプが自ら作り出した問題を、解決どころか、ただごまかしているだけだ。トランプが最初に大統領に就任した当時、中国は米国から年間3000万トン以上の大豆を購入していた。トランプによる最初の対中貿易戦争でその量は激減し、ブラジルが市場シェアを奪った。そして、トランプの2度目の貿易戦争で状況はさらに悪化した。中国の大豆需要は2017年当時よりもはるかに大きい。しかし、今回の合意後でさえ、中国による米国産大豆の購入量は2017年当時よりもはるかに少ないだろう。これはすべてトランプのせいだ」、「トランプ氏は、最新の政策ミスによって、自らが引き起こした問題さえも解決できていない。トランプ大統領は問題を作り出しただけで、真の解決策は何も提示していない」と手厳しい。

これらの合意で露呈され、確認されたのは、米国の弱さと中国の強さであった。
* トランプ大統領が発動した中国の大豆規制は、米国農家が頼りにしていた126億ドル規模の市場を壊滅させたが、中国はブラジルなど他の供給元へ直ちに転換することが可能であった。
* また、トランプ大統領が中国企業に課した制裁は、逆に中国のレアアース輸出制限をもたらし、中国が保有し、米国のテクノロジー企業が電気自動車、スマートフォン、AI搭載デバイスに必要不可欠なレアアース(希土類金属)の入手を困難にさせ、米軍事企業まで悲鳴を上げ、操業停止にまで追い込まれる結果をもたらしたのであった。世界のレアアースの約70%は中国産なのである。
* 中国の習主席は、米中貿易協議について、「私たちは常に意見が一致するわけではなく、世界をリードする二つの経済大国が時折摩擦を抱えるのは当然のことです」と述べ、「風や波、そして様々な困難に直面する中で、中国と米国の関係を担う私たち二人は、正しい方向性を堅持し、米中関係という巨大な船が着実に前進していくことを確保しなければなりません」と念を押している。
* そして、この中国の強さは、ドル一極支配の弊害から自立的経済圏の形成を目指し、拡大しているブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカを中心とするBRICS+諸国の存在と協力に支えられているところにある。

トランプ政権は、中国と世界を相手に次から次へと違法な一方的関税を課し、貿易戦争を展開、過去6ヶ月間、脅迫と威嚇を繰り返してきたが、成果を得られるどころか、実際にはほとんど何も達成していないのが現実である。引き続き政治的経済的危機が押し迫り、根本的政策転換を迫られているのは、トランプ政権なのである。
(生駒 敬)

 

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【投稿】日本の5500億ドルで米国の電力(原発)などインフラを整備

【投稿】日本の5500億ドルで米国の電力(原発)などインフラを整備

                                                                                            福井 杉本達也

1 トランプ大統領との会談で徹底的に売国をアピールした高市首相

⾼市早苗⾸相は10月28⽇、都内でトランプ⼤統領と初の⽇⽶⾸脳会談を⾏った。会談後、トランプ⽒とともに横須賀基地を視察した。トランプ⽒のスピーチした際、⾼市⽒は表情を崩しながらサムアップで応じた。また、肩を引き寄せられる場⾯もあった。これが一国の首相の態度であろうか。目を疑わざるを得ない。宗主国の「国王」に媚びへつらい、従順に従う植民地の総統そのものである。しかし、我々国民の問題はその映像にあるのではない。会談での米国との正式の約束事にある。①5500億ドルの米国への投資、②米国産米の75%輸入増、③防衛装備品購入2兆5000億円、④ボーイング社の航空機100機の購入、⑤米産トウモロコシ・豚肉など1兆2000億円の購入、⑥アラスカ産LNGの新たな調達計画への参画などなど国民の生活を直撃するものばかりである。

これに加えて、小泉進次郎防衛相は、「へグセス米国防長官と会い、防衛力強化を前倒しする方針を説明した。へグセス氏は、「速やかな実行に期待を表明した。」(日経:2025.10.30)。これについいて、日経新聞は「日本の防衛費増額は米国の要求に先手を打つもので、財源や自衛隊の人材確保は見切り発車という危うさを抱える」とのコメントを付け加えた(日経:10.30)。防衛費GDP比2%強を前倒しにするというが、財源は国有財産の売却など一時的なものが多く、所得税の増税は先送りされている。トランプ政権内にはGDP比5%を求める発言もあり、5%強となれば30兆円、「25年度の一般会計歳出総額は115兆円あまり。防衛関連予算が却兆円に膨らむと全体の4分の1を占める」(日経:10.30)こととなり、社会保障費に匹敵することとなる。消費税のさらなる増税か、赤字国債の発行かしか財源の手当てはできない(日経:同上)。いったい、高市内閣は日本をどこへ導こうとしているのか。

2 江戸末期の不平等条約よりも不平等な5500億ドルの投資先

トランプ氏との会談で5500億ドルの71.5%=約4000億ドル(約60兆円)の投資先が「日米間の投資に関する共同ファクトシート」で少し明らかとなった。「原子力発電などのエネルギー、人工知能(AI) 向けの電源開発、AIインフラ開発、重要鉱物の4つの投資分野を列挙した。」ソフトバンク・東芝・日立・三菱電機・村田製作所など「日本企業8社が『プロジェクト組成に関心』を持っていると明らかにした。」(日経:2025.10.29)。

これについて、野村総合研究所の木内登英フェローは「投資計画の最終決定が米大統領に委ねられる点、日本企業を支援する日本の政府系金融機関が資金を出資、融資、融資保証の形で提供する枠組みに、米国企業が参加すること、米国政府が投資から得られる収益を得ること、など、米国主導で日本にとっては不平等な取り決めになってしまった」「日米合意の投資に関する覚書:米国優位の不平等な取り決めにである。」「また、投資対象は日米が協調する経済安全保障分野とすることで、日本の国益にもよりかなうもの、とされたが、実際には米国の製造業の復活と拡大に資する枠組み」である。「投資計画が日本にとって不平等なものであり、それが日本の国益を損ねていないか」とコメントしている。

3 80兆円でアメリカの原発を建てる

見た目は「投資」、中身は「公共事業の肩代わり」。日本の費用でアメリカの電力インフラを再建しようとするものである。日本が直接米国の電力会社に出資するのではなく、特別目的会社(SPC)を作り、日本政府系の金融機関──JBIC(国際協力銀行)、NEXI(貿易保険)、JOGMEC(資源機構)──がこのSPCに融資や保証を行い、SPCが原発や送電設備の建設を担う構造である。しかし、日本も同様だが、電力料金は勝手に電力会社が上げることはできない。米国でも州ごとの認可制である。日本でも建前は同様だが(実際は日本は電力会社優先だが)、消費者保護が最優先されるため、「外国投資家の利益確保」は理由にならない。その結果、電気料金は上げられず、融資返済の原資が失われる。原発建設には常に想定外のコスト超過と遅延がつきまとう。損失が出れば、融資保証をしているのは日本の政府系機関──JBIC、NEXI、JOGMECである。損失はアメリカではなく、日本の国費が負担することになる。「受益者はアメリカである。日本の資金によって、原発や送電網といった老朽インフラをほぼ無償に近い形で再建できる。建設に伴って地元では雇用が生まれ、関連企業にも発注が広がる。完成後は安定した電力供給を確保し、政治的にも『エネルギー再建の成果』としてアピールできる。さらに、電気料金を抑えることで国民の支持を得ることもできる。コストを負担せず、成果だけを享受する理想的な構図だ。」(くもnote:2025.10.28)。東芝の名前が出てきた時点で、東芝が倒産した、かつてのウエスチングハウス原発事業のみじめな過去を思い起こさざるを得ない。ウエスチングハウスは10月28日、全米で800億ドル分の新たな原子力発電所を建設すると発表した。「日米両政府が発表した投資枠組みを使うとみられる」(日経:2025.10.30)。日本は国内に投資できず、上下水道や道路など、老朽化したインフラの更新もできず、金は全て米国に巻き上げられ、ますます貧しくなる。これを売国といわずしてなんというのか。野党は投資の枠組みをまともに理解しているのか。

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【投稿】反トランプ・「ノー・キングス」全米大規模抗議デモ

<<米史上最大の抗議活動>>
10/18、当日の「ノー・キングス」抗議デモの主催者は、前回・6月14日の「ノー・キングス・デー」に結集した500万人を上回る人々が、全米50州、約2,500か所以上の集会に参加し、「これは間違いなく、アメリカ史上最大の抗議活動の日となるでしょう」、「トランプ大統領は自分の統治が絶対だと考えている。しかしアメリカには王などいないし、混沌、腐敗、そして残虐行為にも屈しない」と表明している。その抗議行動のライブ映像が、同サイトで公開されている。

 この「ノー・キングス」抗議活動を主催している団体には、ACLU(アメリカ自由人権協会)、全米教職員連盟、コモン・ディフェンス、50501、ヒューマン・ライツ・キャンペーン、インディビジブル、環境保護有権者連盟、ムーブオン、全米看護師連合、パブリック・シチズン、SEIU、ユナイテッド・ウィー・ドリーム、その他の地元の政治団体や社会団体を含む、全米140以上の団体などが結集している。
 集会の組織化を支援しているパブリック・シチズンの共同代表、リサ・ギルバート氏は、「前回の抗議活動以来、人々は現政権の何が間違っているのかをはるかに深く認識するようになりました。」と指摘している。

また、デモの主催団体の一つであるインディビジブルの共同創設者兼共同会長であるリア・グリーンバーグ氏は、「デモクラシー・ナウ!」の番組で、「私たちは、平和的な抗議のために結集している」が、トランプ大統領や他の共和党議員が、「ノー・キングス」集会を「アメリカ憎悪」集会だと非難したことに触れて、「抗議活動に対するトランプ大統領の脅しは、恐怖を煽り、脅迫し、人々を事前に退かせようとする、権威主義的な手法の典型的な例です」と、トランプ政権の対応を鋭く糾弾している。

<<「内なる敵」に対して軍隊を>>
トランプ政権と与党・共和党は「ノー・キングス」抗議活動の高まりに激怒し、デモ参加者を「テロリスト」「アンティファ」「過激で小規模で暴力的」などと中傷し、トランプ氏自身、特にワシントンD.C.で行われる抗議行動を「アメリカ憎悪集会」と断じている。ホワイトハウス報道官のキャロライン・リービット氏に至っては、「主要支持層はハマスのテロリスト、不法移民、暴力犯罪者で構成されている」とまで語っている。
ショーン・ダフィー運輸長官は、抗議行動参加者は、大統領に恥をかかせようとするアンティファの金で雇われたメンバーだと非難し、「キングがいなければ給料はなく、給料がなければ政府もない」と、「キング」礼賛にまで踏み込んでいる。共和党のマイク・ジョンソン下院議長も、抗議活動をアンティファとパレスチナ武装組織ハマスと関連付けて誹謗中傷。
 今や、ホワイトハウスから発せられる言語は、内戦を煽る言語にまで至り、トランプ大統領自身が、「内なる敵」に対して軍隊を投入するよう呼びかける事態である。ホワイトハウスは、トランプ大統領に直接の指揮下で全米に軍隊を展開する広範な権限を与える反乱法(Insurrection Act)発動の準備を進めている、と報じられている。トランプ氏は、裁判所が全米の都市への軍隊派遣を引き続き差し止める場合は、100年以上前に制定された反乱法を用いて不利な司法判断を回避する可能性、意向を明らかにしたのである
こうしたトランプ政権に呼応して、テキサス州のグレッグ・アボット共和党知事をはじめとする一部の州知事は、抗議活動に対応して州兵の出動を決定し、アボット知事は、「テキサス州は犯罪行為を抑止し、地元の法執行機関と協力して、暴力行為や器物損壊に関与した者を逮捕する」と脅しの声明を発表している。。バージニア州知事グレン・ヤングキン氏は、警察を支援するため「バージニア州民の安全を守る」ため州兵の動員を明らかにしている。
しかし、こうした事態の進展は、トランプ政権の焦りと孤立化が一層進んでいることをも明らかにしている。

今回の「ノー・キングス」抗議デモの高揚が明らかにしたものを列挙すれば、
* 前回よりも、新たな抗議活動参加者が大幅に増大した、その背景に、移民襲撃、都市への連邦軍配備、政府の人員削減、大幅な予算削減、選挙権の剥奪、ワクチン要件の撤回、等々、「もうトランプはいらない!」と抗議する人々を質的・量的にも増大させてしまった。
* ハーバード大学ケネディスクールとコネチカット大学の共同プロジェクトである群衆計測コンソーシアムを共同指揮する政治学教授のジェレミー・プレスマン氏は、トランプ氏の2期目の強引さが抗議活動参加者を増大させた可能性があると述べている。
* 抗議行動そのものにおいても、ワシントンD.C.のような大都市圏では、前回に比べていくつもの大集会が組織され、サンフランシスコでは抗議活動が5カ所に広がり、シカゴでの1回の集会は22回に及んだ。ニューヨークでは、市内5区すべてで10万人以上がデモが展開された。オレゴン州ポートランドの抗議行動では、3つの別々の行進が組織され、最終的には1つに合流するなど、創意と多様性が展開された。
* 全米各地でデモ参加者は「アメリカに王はいらない」「民主主義を守れ:ゼネストの時だ!」、「ICEゲシュタポを廃止せよ」「我々は臣民ではない」などと宣言する手作りのプラカードが多数掲げられた。
* 一部の集会では、少数の反対デモ参加者と警察の対峙が見られたが、挑発行動が組織的に回避され、雰囲気は明るく、子供たちや家族連れの参加者が大いに目立つ抗議行動であった。ニューヨーク市警は、抗議活動に関連した逮捕者はゼロだったと認めたが、これは「暴動」と「テロ集団」に関するトランプ大統領の主張を真っ向から否定するものであった。

大都市から小さな町や田舎の郡にまで及ぶこの運動の広がりは、トランプ独裁政権への抗議・反対運動は、一部地域に限定されているという、トランプ政権が広めてきた、「内なる敵」説を完全に打ち砕き、「キング」独裁政権の継続が不可能な事態をもたらしている、と言えよう。
(生駒 敬)

 

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