Assert Webの更新情報(2026-04-15)

【最近の投稿一覧】
4月15日【転載】緊急警告:トランプ大統領は精神的に不安定で危険
4月14日【投稿】石油危機の今後の展開と高市政権の無為無策
4月12日【投稿】米・イラン交渉:「打開策なく終了」
4月10日【転載】「イスラエルのテロを止めるために世界は何も動いていないようだ」
4月8日【投稿】米・イラン:2週間の停戦合意
4月5日【投稿】イラン:米軍機・F-15戦闘機撃墜の波紋
4月4日【書評】『証言 原子力規制委員会は何をめざしたか』御厨貴監修
4月2日【投稿】トランプの脅迫:イランを「石器時代に逆戻りさせる」
4月2日【翻訳】「いかにして、スペインは私を愛国者に作り上げたか?」
3月29日【投稿】敗戦し衰退する国家の大統領としてのトランプ
3月29日【投稿】トランプは直ちに辞任せよ!:No Kings Day800万人抗議
3月22日【投稿】核リスクの切迫:米・イスラエル、イラン核施設爆撃
3月20日【投稿】日米首脳会談:高市「世界平和を実現できるのはあなただけ」
3月16日【投稿】「令和のオイルショック」ーホルムズ海峡封鎖で日本の国家石油備蓄はいつまで持つか
3月12日【投稿】イラン女子小爆撃・国防総省調査:トランプの大嘘を暴露
3月10日【投稿】米・イスラエル軍:対イラン戦争・迅速勝利の崩壊
3月8日【投稿】トランプ:「イランが自国小学校を爆撃」と妄言
3月8日【投稿】選挙は「ナラティブ化」され、金融資本のマーケティングの対象に
3月4日【投稿】米イスラエル爆撃・イラン女子小学生171人虐殺抗議の葬儀
3月3日【投稿】米・イスラエルのイラン攻撃と日本のエネルギー危機
3月2日【投稿】対イラン:米・イスラエル、破滅的戦争の拡大
2月28日【投稿】米・イスラエル:対イラン、先制攻撃開始
2月28日【投稿】総選挙の結果に思う事
2月28日【翻訳】「長期にわたる計略は、中国に希土類元素を支配するのを許している。」
2月21日【投稿】トランプ関税:米最高裁で敗北--経済危機論(173)
2月12日【投稿】「推し活」・イメージのみの衆議院選挙で「知性」の時代は終わった
2月7日【投稿】悪質な人種差別画像投稿:トランプ氏、謝罪を拒否
2月5日【転載】「どこが停戦なのか ?」
1月25日【投稿】「トランプ崩壊の到来」:危険なエスカレート
1月21日【投稿】トランプ政権:暴走・制御不能で危険な段階
1月19日【書評】『管理職の戦後史―栄光と受難の80年』濱口桂一郎著
1月5日【投稿】東電の「現金が底をつく」―原発再稼働の論理
1月4日【投稿】無謀・トランプ:対ベネズエラ、資源・領土略奪戦争開始
12月31日【投稿】米・イスラエル:対イラン戦争へのエスカレート
12月31日【投稿】日米安保条約からの潜在的脱退・「戦略的独立」の提起
12月26日【投稿】米国の敗北による焦りー高市政権官邸幹部の核保有発言の支離滅裂
12月19日【投稿】トランプ:対ベネズエラ・帝国主義戦争開始宣言
12月14日【投稿】トランプ政権の新しい国家安全保障戦略と日本
12月3日【投稿】トランプ米大統領:一晩に「陰謀論」投稿、数百回
11月30日【投稿】高市政権の経済政策は円安から物価高騰を招く
11月22日【投稿】トランプ大統領:極まる独裁者・ファシストの叫び
11月19日【投稿】台湾有事で「存立危機事態」との高市答弁は日本に大損害をもたらす
11月15日【投稿】特定食品関税撤廃:トランプ関税の敗北--経済危機論(172)
11月06日【投稿】ニューヨーク市長選:トランプ脅迫路線の敗北
10月31日【投稿】トランプ関税:脅しの敗退--経済危機論(171)
10月31日【投稿】日本の5500億ドルで米国の電力(原発)などインフラを整備
10月19日【投稿】反トランプ・「ノー・キングス」全米大規模抗議デモ
10月18日【投稿】古色蒼然とした「安全保障」と「エネルギー政策」
10月13日【投稿】トランプ政権:対中貿易戦争再開の脅し--経済危機論(170)
10月12日【書評】「西洋の敗北と日本の選択」・エマニュエル・トッド著
10月11日【投稿】「下駄の雪」公明党の連立政権離脱と80年間もの米国支配
10月5日【投稿】「ガザ和平計画」:トランプ・ネタニヤフ政権の岐路

【archive 情報】
2023年5月1日
「MG-archive」に新しい頁を追加しました。
民学同第3次分裂

2023年4月1日
「MG-archive」に以下のページを追加しました。
(<民学同第2次分裂について>のページに、以下の2項目を追加。
(B)「分裂大会強行」 → 統一会議結成へ
(C)再建12回大会開催 → 中央委員会確立

カテゴリー: 更新情報 | Assert Webの更新情報(2026-04-15) はコメントを受け付けていません

【転載】緊急警告:トランプ大統領は精神的に不安定で危険

以下は、Common Dreams Apr 14, 2026 からの転載である。4人の精神科医からなるグループが、米議会両院の共和党と民主党の最高幹部宛ての書簡の中で、トランプ大統領が最近、イランの「文明全体」を滅ぼし、同国を「石器時代に逆戻りさせる」と爆撃するというジェノサイド的な脅迫を行ったことを、「一線を越えた」ものとして、例に挙げ、「トランプ大統領は、数十件に及ぶ独立した評価に基づき、法医学精神保健専門家が『ダークトライアド』と呼ぶ性格特性、すなわち自己愛、マキャベリズム、そして精神病質を示している」と述べ、「外国の文明を破壊すると公然と脅迫し、爆撃作戦を開始し、議会の承認なしに海上封鎖を実施し、深刻な精神的危機に陥っていることを示すあらゆる行動上の兆候を示す大統領は、単なる政治問題ではない。憲法上の緊急事態である。」と警告し、「トランプ大統領の認知機能と神経学的検査を直ちに包括的に実施し、その結果を全面的に公表する」よう求めている。書簡の作成には、コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が協力している。
同時に、ジェイミー・ラスキン下院議員(メリーランド州選出、民主党)が4/14に、大統領が職務を遂行できるかどうかを判断する議会委員会を設置する法案を発表した記事を合わせて転載する。(生駒 敬)

<<議会指導者への緊急警告:トランプ大統領は精神的に不安定で危険です>>
編集者注:以下の書簡は、ドナルド・J・トランプ米大統領の最近の言動に関して、2026年4月13日(月)に超党派の議会指導部に送付されました。

本日、私たちは、決して軽々しく使うことのない切迫感をもって、皆様に書簡を差し上げております。ドナルド・トランプ大統領の言動は、議会による即時かつ超党派的な対応を必要とする一線を越えました。これは党派的な判断ではありません。観察可能な事実、一貫した専門家による評価、そして皆様の役職が担う憲法上の責任に基づいた判断です。

トランプ大統領は、法医学精神保健の専門家が数十件の独立した評価を通じて特定した「ダークトライアド」と呼ばれる性格特性、すなわち自己愛、マキャベリズム、そして精神病質を体現しています。これは臨床診断ではなく、行動観察に基づく特性評価であり、特に政治的指導者の地位にある人物がもたらす危険性のレベルを評価する上で有用です。私たちはこれを臨床的な判断として提示するものではありません。これは、綿密な調査に基づき、一貫性があり、蓄積され、否定できない証拠によって裏付けられた、多数の専門家による熟慮された判断です。

これが単なる学術的な問題にとどまらないのは、この性格構造が乗り越えられない障害に直面した際に、予測可能な結果が生じるからです。臨床文献は明確に述べています。ダークトライアドの特性を持つ人物は、制御も回避もできない状況に直面すると、冷静さを取り戻すのではなく、エスカレートします。自己愛的な崩壊を回避しようとする心理的衝動が、戦略的な計算、結果への配慮、そして通常の自制心を凌駕するのです。怒りが爆発し、理性は抑え込まれる。心理的な苦痛を消し去りたいという切迫した欲求が、他のあらゆる考慮事項を凌駕する。

私たちは、この状況がリアルタイムで展開していくのを目の当たりにしています。

大統領の最近の公の発言は、通常の政治的言論の基準からすれば、極めて憂慮すべきものだ。「イランに海峡を開放しろ、この狂人どもめ」と要求する投稿や、「イランを石器時代にまで爆撃する」と脅迫し、「今夜、一つの文明が滅び​​、二度と復活することはないだろう」と付け加えた発言は、計算された地政学的圧力のレトリックではない。これらは、深刻な心理的苦悩に苛まれ、自らが持ちうる最も過激な報復手段に訴えようとしている男の表現である。これらの発言が、軍事衝突の最中に敵対国に向けて発せられたという事実は、単に衝撃的であるだけでなく、極めて危険なものである。

トランプ大統領はイランに対する米海軍による海上封鎖を命じました。この措置は世界の原油価格を急騰させ、米国を国際社会と真っ向から対立させる結果となりました。大統領のこうした行動は、世界的な経済危機を引き起こし、地域大国や大国を巻き込み、誰も制御できないような広範な紛争へと発展する可能性を秘めています。これらの命令は、十分な審議を経ず、議会の承認も得ずに発令されており、あらゆる明白な指標から見て、大統領の判断力が著しく損なわれている状況下で行われています。

私たちは、以下の3つの具体的な行動を強く求めます。

第一に、議会は直ちに戦争に関する憲法上の権限を取り戻さなければなりません。イランへの爆撃と海上封鎖の開始は、米国法および国際法の下で戦争行為であり、大統領の命令によって承認されるものではありません。憲法第1条は、宣戦布告と外国との通商規制に関する唯一の権限を議会に与えています。建国の父たちは、まさにこうした重大な結果をもたらす行動について、議会が審議し、責任を負うことを意図していたのです。議会は、事態のさらなるエスカレーションによってこの問題が無意味になる前に、今すぐ憲法上の権限を行使しなければならない。

第二に、議会指導部は超党派で、国防長官、統合参謀本部議長、国務長官、国家情報長官を含む政権幹部との緊急協議を開催しなければなりません。その目的は、単なる日常的な監視ではありません。核兵器の使用を含む、破滅的な事態へのエスカレーションを防ぐための安全弁を構築することです。これらの幹部には、憲法上および法律上の義務があります。議会は、これらの義務の履行を強く求め、その履行のための場を提供すべきです。

第三に、議会は、憲法修正第25条第4項に基づき、大統領の職務遂行能力について、副大統領および閣僚との正式な協議を開始すべきです。私たちは結果を予断するつもりはありません。大統領の即時罷免を求めているわけでもありません。私たちが求めているのは、大統領の職務遂行能力に疑義が生じ、国家に差し迫った危険をもたらす可能性がある場合、憲法自体が定めている手続きに従うことです。この修正条項が存在するのは、起草者たちが大統領の職務遂行能力の欠如という問題が時折生じることを認識し、政治的な場当たり的な対応ではなく、憲法上の解決策が必要だと考えていたからです。

これは憲法上の緊急事態です。このような緊急事態に対処するための仕組みは既に存在します。まさにこのような事態のために、憲法とその修正条項に盛り込まれているのです。

私たちは、自分たちが求めていることの重大性を認識しています。そして、この状況の重大性がそれを求めているからこそ、私たちはこの要求をするのです。

外国の文明を破壊すると公然と脅迫し、爆撃作戦を開始し、議会の承認なしに海上封鎖を実施し、深刻な危機に陥っている人格のあらゆる兆候を示す大統領は、単なる政治問題ではありません。これは憲法上の緊急事態です。このような緊急事態に対処するための仕組みは既に存在します。まさにこのような事態のために、憲法とその修正条項に盛り込まれているのです。

イランとの戦争は待ってくれません。この活発な軍事衝突のエスカレーションの力学は待ってくれません。大統領の意思決定を左右する心理状態は、プレッシャーによって改善するどころか、悪化するでしょう。

私たちは、あなたが速やかに行動を起こすことを強く求めます。憲法はあなたに必要な手段を与え、就任宣誓はあなたに責任を課しています。

敬具

ジェームズ・ギリガン医学博士
ニューヨーク大学医学部精神医学臨床教授
ニューヨーク大学ロースクール非常勤教授
ハーバード大学医学部精神医学元教員
国際法医学心理療法協会元会長

プルデンス・L・グルゲション医学博士
アメリカ精神分析協会元会長
世界メンタルヘルス連合元副会長

バンディ・X・リー医学博士、神学修士
世界メンタルヘルス連合会長
暴力防止団体「Preventing Violence Now」共同創設者ハーバード大学医学部社会医学科元教授
イェール大学医学部法学・精神医学科元教授

ジェームズ・R・メリカンガス医学博士
ジョージ・ワシントン大学精神医学・行動科学臨床教授
米国国立精神衛生研究所研究コンサルタント
米国神経精神医学会共同創設者米国臨床精神医学会元会長

ジェフリー・D・サックス博士
コロンビア大学教授

 


<<「我々は危険な崖っぷちに立たされている」>>

ラスキン議員、大統領の職務遂行能力を審査する委員会設置法案を提出

「我々は、憲法修正第25条に基づき、副大統領および閣僚と連携して行動するこの機関を設置することで、定められた役割を果たすという重大な責務を負っている。」

ジェイミー・ラスキン下院議員(メリーランド州選出、民主党)は火曜日、大統領が職務を遂行できるかどうかを判断する議会委員会を設置する法案を発表した。

「大統領職務遂行能力委員会法案」と題されたこの法案は、議会が新設される委員会を迅速に発動し、大統領の職務遂行能力に関する審査を迅速に進めることができる「迅速な」緊急手続きも規定している。

ラスキン議員の構想では、この委員会は、憲法修正第25条で大統領の職務遂行能力を欠くと宣言する権限を与えられている副大統領および大統領内閣の立法上の対応機関として機能する。憲法修正第25条は、その権限を「議会が法律で定めるその他の機関」の過半数にも与えている。

ラスキン氏は、「憲法は、大統領が職務を遂行する能力を欠いた場合に、政府の円滑な継続を保証する機関を設置する権限を議会に明確に与えている」と述べた。「我々は、副大統領および閣僚と連携して行動するこの機関を設置することで、憲法修正第25条の下で定められた役割を果たすという重大な義務を負っている。」

ラスキン氏は、トランプ大統領の最近の不安定な行動を指摘し、連邦政府で最も権力のある地位に就く精神的能力が彼にあるかどうかを判断する上で、議会がより積極的な役割を果たす必要があると主張した。

「ドナルド・トランプ大統領の職務遂行能力に対する国民の信頼は、かつてないほど低下している」と、メリーランド州選出の民主党議員は述べた。「彼は文明全体を破壊すると脅迫し、議会の戦争権限を侵害しながら中東に混乱を引き起こし、カトリック教会のローマ教皇を激しく侮辱し、自身をイエス・キリストになぞらえた画像をインターネット上に拡散している。」

ラスキン議員はさらに、「我々は危険な崖っぷちに立たされており、ますます不安定化する状況からアメリカ国民を守るため、議会が憲法修正第25条に基づく責任を果たすことは、今や国家安全保障上の問題となっている」と警告した。

ラスキン議員の法案には、当初50人の民主党下院議員が共同提案者として名を連ねたが、共和党が多数を占める下院を通過する可能性は低い。

トランプ大統領がイランが要求に応じなければ「今夜、一つの文明が滅び​​、二度と復活することはないだろう」と発言したことを受け、先週、トランプ大統領を罷免するために憲法修正第25条を発動すべきだという声がさらに高まった。

月曜日に議会指導者らに送られた書簡の中で、4人の精神科医は、トランプ大統領の「言動は…議会の超党派による即時の対応を必要とする一線を越えた」と警告した。

精神科医らはさらに、トランプ大統領は「数十件の独立した鑑定で法医学精神医学の専門家が特定した、人格特性の『ダークトライアド』、すなわち自己愛、マキャベリズム、そして精神病質を示している」と付け加えた。

カテゴリー: 中東情勢, 人権, 平和, 政治, 生駒 敬, 経済, 経済危機論 | コメントする

【投稿】石油危機の今後の展開と高市政権の無為無策

【投稿】石油危機の今後の展開と高市政権の無為無策

                          福井 杉本達也

1 今のままではこの国はあと2ヶ月しか持たない。

境野春彦氏は「4月から中東がゼロで、中東以外が倍になるとして、輸入90(万kl)+原油精製110+在庫150=350で290の需要を満たせます。ここで60が在庫に回ります。5月も90の輸入が出来たとして、90+110+60=260で需要を満たせない。しかし、稼働率を落としてギリギリ何とか繋ぐとします。6月は在庫が無くなり、90+110=200で需要の2/3しか調達できない。ここで少なからぬ製造業が止まる。」「今のままではこの国はあと2ヶ月しか持ちません」(境野春彦:2026.4.3)と書いている。

「川上製品」・・基礎化学品【エチレン、ベンゼン、等】、「川中製品」・・中間化学品【ポリエチレン、ABS樹脂、等】、「川下製品」・・最終化学品【包装材、日用品、洗剤等】である。「川中製品」にもいくつもの種類があり、それぞれ需給バランスが全く異なる。これを一緒くたにして「川中の在庫が〇ヶ月分あるよ」というのは、全くの自己満足であり、国民に対する欺瞞である。

 

2 8か月はあるという高市のバカさ加減・現代版「人造石油」

高市首相は4月7日、石油は「年を越えて供給を確保できるめどがついた」と述べた。ホルムズ海峡を回避した中東産原油や米国産の代替調達が進むと説明した。「原油、石油製品は日本全体として必要な量は確保されている」とした(福井:2026.4.8)。

第二次世界大戦開戦時、時の政府は日本にはドイツから技術導入した「人造石油」があるから、米国に石油供給を停止されても戦えると開戦に踏み切った。しかし、「人造石油」というものはとても採算レベルの「石油」にはならなかった。高市政権のバカさ加減は石油がストップすることでの影響を全く計算できていないことである。「確保を指示した」・「調査している」・「直ちに供給が滞ることはない」と繰り返すが、どこにどう指示したのか、在庫量や供給見通しなどの数字は一切なく、具体的計画はなにもない。

経済産業省は6目、ホルムズ海峡を回避した中東産の代替原油の調達か5月以降に本格化するとの見通しを明らかにした(福井:2026.4.7)としているが、どこでどう調達するのか。仮に米国から運ぶ場合、パナマ運河は30万トン級のVLCCという大型タンカーは通過できない。アフリカ喜望峰回りでは150日もかかり、運賃=原油価格は大幅に高騰する。中南米産の原油など日本の製油所で精製できるものではない。口から出まかせで確保はなりたたない。

高市首相は「レアアース、2⽉になってうれしいニュースありましたよね。南⿃島の深い深い海の底6千メートル、そこからレアアース泥の引き揚げにようやく成功しました。」「だから⽇本は、これから今の世代も次の世代もレアアースには困らない」(朝日:2026.2.6)と衆院選期間中の2月4日に発言したが、このような能天気な政治家を国のトップに据えたことは日本の末路を示している。6千メートルの深海から泥を引上げ、さらに製錬するのにいくらかかるのか。とても資源として採算に乗る価格となはらない。それを、「日本は資源大国になる」とテレビで拍手する輩がいるのであるから世も末である。1938年から開発を始めた「1億総玉砕」の「人造石油」再びである。

3 早くもシンナーが・潤滑油が・住宅機器がなくなり、製造業が止まる

「TOTOは13日、住宅向けなどのユニットバスの受注を停止した。原油由来のナフサ(粗製ガソリン)からつくる素材を使う溶剤が不足しているため。イラン軍事衝突によるホルムズ海峡の事実上封鎖の影響が広がる。同日、受注停止を卸業者などに通知した。再開時期は未定としている。浴室の壁や天井にフィルムを接着する接着剤や浴槽のコーティング剤に含まれる溶剤が不足している。溶剤は原油を精製したナフサ由来だ。」(日経:2026.4.13)。もう家が作れない、マンションの工事も中断せざるを得ない。しかし、高市政権は全く動こうとはしていない。

潤滑油はナフサを原料とするものではないが、石油精製・石油化学の全体運転が調整される。結果、潤滑油の原料であるベースオイルの生産も制約される。潤滑油は、機械の機械要素間に働く摩擦を軽減するために利用される油全般を指し、一般には機械油とも呼ばれるが、機械油自体は切削油や伝熱材としての利用もある。切削油がなくなれば、工作機械は動かなくなり、日本の自動車産業をはじめ、全ての機械製造業はストップする。

4 そのうち、洗濯石鹸や紙おむつも

大多数の合成洗剤はナフサを出発原料とする石油化学製品が主成分である。界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩など)はナフサ由来のベンゼンをもとに製造される。洗剤を入れるプラスチックボトルもナフサ由来のため、容器コストと中身のコストが同時に上がる。

紙おむつの構造には、不織布(表面シート)・吸水性ポリマー(SAP)・テープ部のポリプロピレン・外装フィルムなど、複数のナフサ由来素材が使われている。三菱ケミカルは紙おむつ原料の値上げをすでに発表しており、最終製品への転嫁が見込まれる。生理用ナプキン・タンポン・産褥パッドも不織布・吸水材・包装フィルムがナフサ由来である。

医療機関が使用する消耗品の多くがナフサ由来のプラスチック製であり、医療コストが上がる。点滴バッグは軟質ポリ塩化ビニル(PVC)製が主流で、ナフサ由来の素材であり、供給が滞ると医療現場に直接影響する。採血管(血液を採取するガラスまたはプラスチック管)・点滴チューブ・カテーテルなどもナフサ由来のプラスチック素材が使われている。

石油化学素材は現代の生活のあらゆる場面に使われ、エネルギー・食品・衣料・建材・医療・農業・物流・サービスと、ほぼすべての分野に時間差を伴いながら波及していく。(yuta:「ナフサ不足で値上がりする日用品・製品・サービス一覧|暮らしの影響を分野別に解説」2026.4.7)

5 トランプのホルムズ海峡「逆封鎖」は中国との対決となる

ホルムズ海峡を「逆封鎖」し、イラン原油の積み出しを禁止するということは、原油の購入先である中国への宣戦布告となる。中国は米国に対し、「我々の事柄に干渉しないように」と警告し、「イランとの貿易およびエネルギー協定がある」と指摘した。制裁対象となっている中国関連タンカーは、米海軍の海上封鎖にもかかわらずホルムズ海峡を通過した。中国は公海上の海賊行為を絶対に許さないであろうことは目に見えている。米国は何らかの形で中国に降伏せざるを得ない。

なぜ「逆封鎖」なのか。それは、イランの核施設の破壊(あるいは濃縮ウランの奪取)に失敗したからである。イラン側がアメリカのF-15Eを撃墜し、脱出に成功した2人の空軍兵士の救出に向けた大規模な作戦が進行中だという報道が出た。米国がこれまでの戦闘作戦で失った数少ない機体の一つである。特にA-10地上攻撃機もすぐに撃墜されたと報告された。この作戦に20億ドルもの資金を投入したが、米軍は大規模な損失を被り、大型輸送機、ヘリコプター、大型ドローンを含む12機の航空機を破壊された。これらの損失の性質と規模には、非常に大型のC-130貨物機2機も含まれており、単純な救助活動とはいえない。この作戦には100人以上の特殊部隊地上部隊を投入したとされており、撃墜された空軍兵を一人救出するだけでは意味はない。撃墜されたF-15Eのパイロットは大佐だといわれ(通常は中尉などの若手将校)、放射線の専門家として作戦の指揮を執っていたのではないかといわれる。イラン側による待ち伏せ攻撃を受け、濃縮ウランの奪取に失敗し、トランプ自身の屈辱的な軍事的惨事となったとダグラス・マクレガー大佐や元海兵隊情報将校のスコット・リッター氏あるいはジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学教授も分析している。イランの防空能力を過小評価したことが、作戦の失敗であり、もう、海兵隊による上陸作戦や特殊部隊による攻撃は不可能であり、それが「逆封鎖」というばかげた行為になったのである。

6 日本は何としてもロシア産原油の確保を

トランプ氏は12日、「この海峡は日本にとって極めて重要だ——彼らはその通過で石油の約93%を入手している。韓国は約45%だ。しかし、これらの国々は我々に本当の意味で助けを提供していない。」と投稿したが、石油の93%を入手しているのもかかわらず、何の手段も打っていないの日本だけである。韓国はイランとも交渉し、ロシア産ナフサ・2.7万トンを輸入し、またロシア産原油の輸入も検討している。他の東南アジア諸国も同様である。台湾は元々・ロシア産ナフサの大量輸入国である。親日のイラン外相からの折角の秋波にもかかわらず、手をこまねいているのは日本だけである。

月刊誌『選択』で、先月の日米首脳会談に際し、高市首相はトランプ米大統領の要請に応じ、事実上封鎖されているホルムズ海峡に自衛隊を派遣する腹積もりだったという。これに、安倍政権で首相秘書官を務め、“影の総理”と呼ばれた元経産官僚の今井尚哉・現内閣官房参与が猛反対。高市首相に対し「あんた、何考えているんだ。どうなるか分かっているだろうな!」と“恫喝”に近いけんまくで迫ったと報じた。記事によると、周囲の反対もあり、結果的に高市首相は翻意。しかし、今井氏の“恫喝”の傷が癒えない高市首相は先月24日夜、「あいつに羽交い締めにされた。許せない。切るつもりでいる」と息巻いているという内容である。高市首相、4月7日の参院予算委員会で、立憲民主党の杉尾議員の質問に「事実ではない」と否定したが(日経:2026.4.8)、エネルギー危機の前に、官邸はトランプ氏に抱き着くばかりでなすすべもなく既に崩壊状態である。

高市首相は米国産原油を確保したと啖呵を切ったが、「スプリント・キャピタ一ル・ジャパン(東京・港)の山田光社長は『国内製油所は中東産に特化しており、米国産などを扱う設備がない』と指摘する。中東産の原油は硫黄分を比較的多く含む。国内の製油所はこうした比重の重い原油を精製してガソリンや重油、灯油、ナフサなどの石油製品をつくる。米国産などは硫黄分が少なく比重が軽いため、国内の製油所での精製に向いていない。軽い原油の精製には新たな設備投資が必要になる。」と話す。また、ある元売りは「設備改修には数年単位の時聞がかかる。国内需要が落ちる中で多額の投資は考えにくい」としている(日経:2026.4.12)。現場を全く見ない、机上の空論の連続である。高市首相は、全く考えていないことが明らかである。

これに対し、ロシア産原油はウクライナ侵攻の4年前まで8~10%程度を輸入しており、国内の製油所も十分対応できる。早急な対応を求めたい。野党は何をしているのか。ホルムズ海峡危機が続けば6月には原油タンカーと共に日本も沈没である。エネルギーがなければ、日本の12000万人は自滅である。

カテゴリー: 中東情勢, 平和, 政治, 杉本執筆, 経済 | コメントする

【投稿】米・イラン交渉:「打開策なく終了」

<<「米国が取った態度に失望しています」>>
4/12、JD・ヴァンス米副大統領は、「21時間に及ぶ交渉は打開策なく終了した」、「実質的な協議が行われたが、我々は合意に達していません。そしてこれはイランにとって、米国にとってもそれ以上に悪いニュースだと思います」と述べて、パキスタンのイスラマバードからワシントンに向けて出立した。イラン代表団も帰国の途に就いた。

 イランのファールス通信(Fars news agency)が交渉チームに近い関係者の話として報じたところによると、「アメリカチームは交渉のテーブルから離れる口実を探していた」とし、「イランには米国と新たな交渉を行う計画はない」と報じている。

イランのアッバス・アラグチ外相によると、「米国が取った態度に失望しています。(イスラエルの)ネタニヤフが会合中にヴァンスに電話をかけたことで、焦点が米国・イラン交渉からイスラエルの利益へと移りました。米国は、戦争で達成できなかったことを交渉のテーブルで達成しようと試みました。私たちは誠意を持ってここに来ましたが、ヴァンスがパキスタンを去る前に開いた記者会見は不要でした。私たちは自国の利益と主権を守るために、決意と準備ができています」、と事態の真相を明らかにしている。

イラン側の代表であるガリバフ国会議長は、記者団に対し、「今後の交渉において、アメリカ側が真の合意を実現し、イラン国民の権利を認める用意があれば、我々からも合意を受け入れる用意がある。」、「我々には善意はあるが、信頼はない」と語っている。

 実際に、イラン側は、その代表団の規模と構成からして、「彼らが石を投げつけるために来たわけではない」ことを誠意をもって示しており、初期の様子見のためではなく、3分野に分かれた協議にはそれぞれの専門家も協議に参加、米国との合意に達するために完全な権限と真剣さを持ってそこにいたことが確認されている。

イランのタスニム通信・Tasnim Newsは、以下のように伝えている。
* ボールはアメリカのコートにあり、イランは交渉を急いでいない
* イランは交渉で合理的なイニシアチブと提案を提示した;ボールはアメリカのコートにあり、現実的に問題を検討する必要がある。
* 米国が戦争の計算で失敗したように、交渉の計算でもこれまで誤りを犯してきた。
* イランは急いでおらず、米国が合理的な合意に同意しない限り、ホルムズ海峡の状況に変化はない。
* 現在、次の交渉ラウンドの可能性についての時間や場所は設定されていない。

<<ネタニヤフが、中東に決して平和が訪れない MAIN REASON だ>>
 イラン国営テレビは、米国・イラン交渉失敗の理由について、
* 米国は、交渉の場で戦争を通じて達成できなかったことを達成しようとした
* アメリカ側は、イランに濃縮ウランを手渡し、ホルムズ海峡を開放するよう要求したが、イランの主権を認めなかった
* イランは軍事手段によって自国の国家利益を守ることを決定した
と、報じている。

 しかし、やはり決定的なのは、イランのアラグチ外相が明かしたように、イスラエルのネタニヤフ首相が米・イラン交渉の最中に、ヴァンスに電話をかけたことで、焦点が米国・イラン交渉からイスラエルの利益へと移ったことにあり、なおかつ、トランプ大統領自身がいまやネタニヤフ氏の代理人としてふるまっている、そこに交渉の「打開策なく終了」した根本原因がある、と言えよう。まさに、ネタニヤフが、中東に決して平和が訪れない MAIN REASON・主たる理由 なのである。
トランプ、ネタニヤフ、両者とも政権維持の危機にさらされ、平和ではなく、戦争が継続されることにこそ彼らの利益を見出しているのである。

そして現実に、ネタニヤフがイランに対する戦争再開のイスラエルの計画を明らかにし、トランプは中東に武器を運び続けている、それが実態なのである。
 すでに、米当局者がウォールストリートジャーナル(WSJ)に語ったところによると、米軍ジェット機が続々と中東に到着し、陸軍の精鋭第82空挺師団から1,500~2,000人の兵士が今後数日以内に到着する可能性があり、数千人の海兵隊員と海軍兵士も到着する。USS George H.W. Bush空母打撃群と第11海兵遠征隊が同地域に向かっているが、到着にはおそらく1週間以上かかる見込みだと、WSJが報じている。

しかし、トランプ政権がイランに対する不法・不当な攻撃を再開すれば、これまで以上のさらなる世界市場の「パニック」がより広範に、より鋭く再燃し、トランプ・ネタニヤフ陣営はさらに孤立、追い詰められるリスクが増大するであろう。それは、自滅的でもある。残されているのは、平和的な解決の道しかないのである。
危険で、危惧されるのは、その過程でのエスカレート、そして核リスクの増大である。これは何としても阻止されなければならない。
(生駒 敬)

 

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【転載】「イスラエルのテロを止めるために世界は何も動いていないようだ」

以下に転載するのは、米国とイランの2週間停戦協議が発表され、これを妨害するかのようにイスラエルがレバノン全土の民間地域に対し前例のない攻撃を開始した、そのわずか1日後に発生した事件 -  イスラエル軍が、パレスチナ・ガザ地区の9歳の少女を、小学校3年生のクラスメートの目の前で射殺した事件の詳報である。Common Dreams  Apr 9,2026 からの転載である。
(生駒 敬)

<<パレスチナ人詩人が殺害された9歳の少女の写真を公開>>
「2年以上も爆撃から逃げ続けてきた子どもたちが、学ぼうと努力しても、イスラエルは彼らを撃つ。」

地元メディアの報道によると、イスラエル軍は木曜日(4/9)、ガザ北部で9歳の少女を小学校3年生のクラスメートの前で射殺した。

ガザ教育省が木曜日に発表した報告書によると、リタジ・リハンさんはベイト・ラヒヤのアブ・ウバイダ・ビン・アル・ジャラー小学校の自席に座っていたところ、クラスメートたちの目の前で撃たれた。クラスメートたちは「心理的ショック」を受けているという。

「突然生徒たちの叫び声が聞こえたので、急いでテントに駆けつけると、リタジがうつ伏せに倒れ、口から血を噴き出していました」と、彼女の教師は新華社通信に語った。

これは、本日ガザ北部にある教育用テントでイスラエルによって殺害された9歳の少女の痛ましい写真2枚です。これを投稿するのは私にとって辛いことです。 イスラエルのテロ行為を止めるために、世界は何の行動も起こしていないようです。

リハンの遺体の写真は、地元の詩人モサブ・アブ・トハによってソーシャルメディアに投稿された。トハ氏によると、リハンが勉強していた仮設テントは、イスラエルによるガザ地区での虐殺戦争で破壊された彼の母校の跡地に建てられたものだという。

「2年以上も爆撃から逃げ続けてきた子どもたちが、勉強しようとしても、イスラエルは彼らを撃つ」と、トハ氏はガザ市内の病院で遺体袋に包まれたリハンの写真とともに投稿した。

「これを投稿するのは辛い」とトハ氏は語った。「イスラエルのテロを止めるために、世界は何の行動も起こしていないようだ」。

写真や動画には、血まみれのリハンの遺体が徒歩で街中を運ばれる様子が映っていた。学校長はクッズ・ニュース・ネットワークに対し、この地域には医療搬送手段がなかったため、少女を病院へ運ぶ唯一の方法は馬車だったと語った。

別の写真には、少女を殺害したとされる銃弾が写っている。

「私たちは衝撃を受けました」と、別の教師は語った。「たった9歳の少女が。一体どんな権利で殉教させられたのでしょうか?ただ文字の読み方を学びに来ただけなのに、一体どんな罪で撃たれたのでしょうか?」

イスラエル軍はこの銃撃事件についてコメントしていない。

この殺害事件は、昨年10月からガザ地区で実施されている「停戦」から6ヶ月目に発生した。ガザ保健省によると、停戦以降、少なくとも738人のパレスチナ人が死亡、2000人以上が負傷している。1月には、国連児童基金(ユニセフ)が、停戦開始以来100人以上の子どもが死亡したと報告した。

ガザ当局は、イスラエルが停戦協定を数千回にわたって違反していると非難している。オックスファムをはじめとする人道支援団体が木曜日に発表した報告書によると、「パレスチナ人は、イスラエル政府による継続的な攻撃、移動制限、援助妨害により、極度の困窮、飢餓、負傷、そして死に苦しみ続けている」。

イスラエルは依然としてガザ地区の半分以上を占領しており、200万人以上の住民が地区の約3分の1の地域に押し込められている。建物のほとんどが損壊または全壊しており、住民の大多数は仮設テントで生活し、嵐やイスラエルによる絶え間ない攻撃から身を守る手段はほとんどない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、ガザ地区の学校の97%がイスラエルの攻撃によって損壊または破壊されている。しかし、ほとんどがボランティアである教育者たちは、わずかな資源を駆使して、ガザ地区の100万人を超える子どもたちのために学校を提供しようと努力を続けている。

リハンが通っていた学校は、イスラエルの公式占領地域とガザ地区の残りの地域を隔てる黄色い線からわずか2キロの距離にあった。

リハンの母親によると、娘はその日、学校に行くのが楽しみで目を覚まし、翌週には叔父の結婚式にお気に入りのドレスを着ていくのを心待ちにしていたという。

「そんな運命ではなかった」と、血痕のついた娘のノートを手にしながら母親は言った。「代わりに、彼女は死装束を身にまとったのです」。

この襲撃事件は、イスラエルがレバノン全土の民間地域に対し前例のない攻撃を開始したわずか1日後に発生した。この攻撃は、今週初めに米国とイランの間で合意された停戦協定を破棄する恐れがある。

ガザ保健省は、リハンを殺害したこの攻撃を「残虐で恐ろしい犯罪であり、イスラエルの長く暗い残虐行為の歴史に新たな一ページを加えるものだ」と非難した。

同省は「これは孤立した事件ではなく、パレスチナ人を標的とした組織的な政策の直接的な延長線上にある」と述べた。

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【投稿】米・イラン:2週間の停戦合意

<<イラン「歴史的な勝利を収めた」>>
4/7(日本時間4/8)、トランプ米大統領は、イランとの2週間の停戦合意を発表した。トランプ氏が「(イランの)文明全体を滅ぼす」、「イランは一夜にして壊滅させることができる…おそらく明日だ」と脅迫していた、その舌の根も乾かぬうちに、またもや豹変か、と疑われる事態である。
トランプ氏は、仲介役を務めるパキスタンのシャリフ首相の要請に応じ、「イランへの攻撃を2週間、停止することに同意する」と明らかにした。同時に、4/8、イランのアラグチ外相は、声明で「イランに対する攻撃が停止されれば、我々の強力な軍隊は防衛作戦を中止する」、「2週間の間、イラン軍との調整により、ホルムズ海峡の安全な通航は可能となる」と応じている。
一転した譲歩の理由として、トランプ氏は、米国側からの15項目の提案に対する、イランからの10項目提案を挙げ、これを米国にとっての大きな勝利と位置づけている。しかし、この10項目は、イランが数週間前から提示していたものであり、周知の事実である。トランプ氏は、これでは「不十分だ」として拒否していたものである。面目を保ちながらも、それでも譲歩に応じざるを得ない段階に追い詰められてきていたということであろう。

ニューヨークタイムズ紙

イラン国営メディアのプレスTVは、イラン最高国家安全保障会議の発言として、「イランは犯罪国家である米国に10項目計画を受け入れさせることで歴史的な勝利を収めた。米国はイランのホルムズ海峡支配権、ウラン濃縮権、そして全ての制裁解除を受け入れた」と報じている。

ただし、それぞれの提案には、今回の停戦合意に至る過程で、注目すべき、それぞれの譲歩が進行、反映していることが指摘できる。

米国が提案する15項目の提案
1. 米国はイランに対するすべての制裁を解除する
2. 制裁再開の脅迫はすべて停止する
3. イランの核開発計画は、定められた枠組みの下で凍結される。
4. 米国はイランの民生用原子力プロジェクトの開発を支援する
5. 濃縮ウランには監視下に置かれる制限が設けられる。
6. 米国はイランのミサイル計画については後日対処することで合意した。
7. イランの核開発計画は民生目的のみに限定される
8. イランは既存の核施設および核能力の開発を停止する。
9. イランはウラン濃縮能力のさらなる拡大を中止する
10. イラン国内で兵器級核物質の製造は行われない。
11. イランは合意された期限内にすべての濃縮物質をIAEAに引き渡す。
12. イランのナタンズ、イスファハン、フォルドゥの核施設は使用停止となる。
13. 国際的な監視および検証メカニズム
14. 実施は段階的に行われ、法令遵守と連動する。
15. 双方は地域および安全保障に関する追加的な問題について協議する予定。
この15項目には、これまでトランプ政権が要求していた、政権交代、民生用を含むすべての核物質の引き渡し、イランの弾道ミサイルおよびドローン計画の解体、イエメン、ヒズボラ、ハマスとの連帯の解消といった項目がもはや含まれていない、それらは停戦合意に障害、不必要という判断が含まれよう。

イランの現在の10項目提案
1. イランが二度と攻撃されないことを保証する
2. 戦争の恒久的終結、単なる停戦ではない
3. レバノンにおけるイスラエル軍の攻撃が終結
4. イランに対する全ての制裁措置の解除
5. イランの同盟国に対する地域紛争の終結
6. その見返りとして、イランはホルムズ海峡を開放するだろう。
7. イランはホルムズ海峡の安全通過に関する規則を決定する。
8. ホルムズ港の船舶1隻あたりの料金は200万ドル
9. イランはこれらの手数料をオマーンと分け合うことになるだろう。
10. イランはホルムズ海峡の通達を賠償金ではなく復興資金に充てる予定
このイラン側の提案でも、これまでの「一時的停戦」には応じないし、「反対」であるという立場を撤回し、現在は2週間の暫定的な停戦に同意している。また、以前から提案していた、米国が地域内の13の軍事基地すべてを閉鎖・撤退し、賠償金を支払うべきだという要求も撤回している。

<<実際は、米帝国の屈辱的な敗北>>
そうした前提で、今回の合意に至った理由について、ニューヨーク・タイムズ紙は、「イランの高官2人が、機密性の高い交渉について匿名を条件に語ったところによると」として、「提案にはイランへの再攻撃の禁止、レバノンのヒズボラに対するイスラエルの攻撃停止、そしてすべての制裁解除が含まれている。」、「その見返りとして、イランはホルムズ海峡を通る主要航路の事実上の封鎖を解除する。また、イランは船舶1隻あたり約200万ドルの通行料を徴収し、海峡を挟んで対岸に位置するオマーンと折半する。計画によると、イランはこの通行料の自国分を、直接的な賠償を要求するのではなく、米イスラエルの攻撃によって破壊されたインフラの復旧に充てる予定だ。」と報じている。

 いずれにしても、つい数日前まで、「イランとの合意は無条件降伏以外にはない!」、「(イランという)文明全体が滅び、復興することは決してないだろう。」と豪語していたトランプ政権の立場からすると、ここまでイランを後退させたのだから「勝利だ」と宣伝したとしても、うつろなものであり、実際は、屈辱的な敗北だと言えよう。イランは、不意打ちの先制攻撃に対して、強烈に反撃し、今や平和の条件を提示して、停戦交渉にまで持ち込んだのである。

もちろん、こうした事態の進行に楽観的になれるような状況では決してないことも強調されなければならない。むしろ悲観的にならざるを得ない状況がまさっているとも言えよう。
まず、トランプ氏は、いつまた豹変するか分からないほど、不安定であり、かつまた無責任でもある。
さらに、たとえ米国が合意に沿ったとしても、イスラエルが合意を妨害する、なきものにする可能性が常に存在している。イスラエルにたきつけられた、という側面も併せ持つ、今回の対イラン、米・イスラエル先制共同爆撃である。
イスラエルは、米・イラン交渉の結果に関わらず攻撃を再開する可能性は大である。現実に、トランプ大統領が停戦を発表したのと同じ日に、イスラエル議会の議長は、イスラエルがレバノン南部をリタニ川まで正式に併合し、イスラエル領とすると公に宣言している。

そして、最も重要な問題は、今後2週間の交渉が、実は、米国とイスラエルの軍事力を回復するための時間稼ぎをするための、単なる欺瞞とその場しのぎの戦術なのか、ということであろう。 実際には、米国はパトリオット、THAAD、トマホークなどのミサイルを著しく消耗、損傷しており、イスラエルが誇る「アイアンドーム」防空システムは、今やイランのミサイル攻撃を防止できない状態である。時間稼ぎが必要な段階に至っていたとも言えよう。

しかし、より巨視的に見るならば、今回のトランプ政権の対イラン先制攻撃は、米帝国の対外外交における米国の軍事的優位、その脅威の効力を相当程度に大きく失わせてしまう結果を招いてしまった。米国は依然として軍事的脅迫を行うことができるが、その威嚇力は大きく損なわれてしまったのである。

トランプ政権をさらに孤立させ、封じ込め、対イラン攻撃を再開させない、平和のための闘いこそが、事態を好転させる力となろう。
(生駒 敬)

 

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【投稿】イラン:米軍機・F-15戦闘機撃墜の波紋

<<「対空兵器を持っていない。レーダーも100%壊滅」の大ウソ>>
4/3、イラン国営テレビは、アメリカの軍用機2機を撃墜したと報道。1機は同国南西部上空を飛行していたF-15で、もう1機はF-15の乗員救出任務に当たっていた機体だという。米CBSニュースによると、F-15には乗員2人が搭乗しており、1人は救出されたものの、もう1人の空軍兵は行方不明となった。また、2機目のA-10(サンダーボルト2、ウォートホッグ)の操縦士は、ペルシャ湾上空で無事に脱出し、救助されたという。米CNNは、イラン上空で3日に撃墜された航空機について、米国の情報筋はF15E「ストライクイーグル」だと確認している。
米空軍によると、F15は通常1万フィート(約3000m)以上の高度を飛行し、レーダーにとらえられることなく、「戦いながら長距離を飛行して目標に到達し、敵の地上拠点を破壊してから離脱する能力を持つ」とされているが、実際にはレーダーにとらえられ、離脱するどころか、撃墜されてしまったのである。イランが運用しているロシア製地対空ミサイルS300が、破壊されることなく稼働している可能性が指摘されている。

 4/4、イラン国営メディアは、「米国F-15Eストライクイーグルがイラン上空で撃墜された」と主張する残骸の画像を公開。残骸画像には、米空軍第494戦闘飛行隊に関連する尾翼部分が撮影されている。

イランのタスニム通信は、米軍の救出作戦がイランの防空システムによる直接攻撃を受け、米軍機は現場から撤退を余儀なくされた、少なくともヘリコプター1機が被弾し、随伴機は撤退前に防御照明弾を発射したと報じている。

 イラン革命防衛隊(IRGC)は、2機目のF-35を含む複数の米軍戦闘機を撃墜したと発表している。その発表によると、2/28の違法な先制攻撃以来の米軍機の損失総数は、F-35戦闘機2機、F-18戦闘機1機、F-16戦闘機2機、F-15戦闘機4機となっている。
イラン領空内で、このように米軍機が撃墜されたことは、直接的な対立が急激にエスカレートしたことを示していると同時に、トランプ氏に言わせれば、「完全に破壊されていた」はずのイランの防空システムは堅固に機能し、米軍機への迎撃を強め、イラン上空における米国の作戦の自由を脅かしていることをも明らかにしてしまったのである。

トランプ政権にとっては、この事態は痛撃である。なにしろ、トランプ大統領は4/1の全国民向けのホワイトハウスからのテレビ演説で、「彼らは対空兵器を持っていない。レーダーも100%壊滅した。軍事力としての我々は止められない存在だ」と主張。「戦場で圧倒的な勝利を収めた。(イランの)ミサイルやドローンの発射能力は劇的にそがれ、残っているものはほとんどない」「イランを軍事的にも経済的にも完全に破壊した」とまで豪語していたのである。まさに、エイプリル・フールのとんでもない大ウソであったことを自ら証明してしまったのである。この発言から、わずか二日での出来事である。
トランプ氏は、米NBCニュースの電話取材で、この米軍戦闘機の撃墜がイランとの交渉に影響するのかと質問され、「いや、まったく。いや、これは戦争だ。我々は戦争しているんだ」と答えるのがやっとだったと報じられている。

<<米陸軍参謀総長「狂人が米軍を破滅に導くだろう」>>
4/5、トランプ氏は、イランで撃墜されたF-15E戦闘機の、行方不明となっていた副操縦士が無事であることを明らかにし、「彼は負傷したが、大丈夫だろう。」、「私の指示により、米国史上最も大胆な捜索救助作戦の一つ」が実施されたと述べた。少しばかりは、失地回復であろう。「親愛なるアメリカ国民の皆さん、ここ数時間、米軍は米国史上最も大胆な捜索救助作戦の一つを成功させました。素晴らしい乗組員の一人、尊敬を集める大佐の一人を救出したのです。そして、皆さんにお伝えできることを大変嬉しく思います。彼は無事です!」とTruthSocialで述べている。こんな事態をもたらした反省の弁は、一言もなしである。

反省どころか、さらなるエスカレートを公言している。トランプ氏は「Truth Social」に、ホルムズ海峡を船舶航行のために開放する期限が10日間であることを改めてイランに突きつけ、「地獄の業火が降り注ぐまであと48時間しかない」と警告し、「神に栄光あれ!」と宣言、「私がイランに10日以内に合意するか、ホルムズ海峡を開放するよう命じたことを覚えているか? 時間は刻々と過ぎている。あと48時間で地獄の業火が彼らに降り注ぐだろう。神に栄光あれ! ドナルド・J・トランプ大統領」と書き込んでいる。

要するに、トランプ氏はこれまでの事態の推移から何も学んでいないのである。常に相手側を過小評価し、その結果、自らが引き起こした惨状を解決する有効な手段がない。だから彼は、うろたえ、大言壮語でエスカレートし、結局は地上部隊を派遣する方向へと流されている。

そして現実に、トランプ政権は、すでに地上部隊の派遣を前提に続々と兵士を中東に送り込んでいる。
 そのエスカレート遂行の障害となる、軍内部の将軍たちの粛正にまで乗り出し、「若い兵士たちの即応態勢、そしてより重要なことに、彼らの意識と思考を的確に把握していた」とされる、ランディ・ジョージ陸軍参謀総長、デビッド・ホドネ将軍とウィリアム・グリーン・ジュニア少将、この3人の高官の解任をあきらかにしている。
解任を強行され、辞任を発表してから1時間後、当の米陸軍参謀総長は、「狂人が偉大なる米軍を破滅に導くだろう。」とまで述べる事態を招いている。

こうした脅迫に対して、イラン側は、「イランの橋梁、発電所、またはエネルギーインフラに対するあらゆる攻撃は、中東地域内のすべての米国およびイスラエル資産だけでなく、米国同盟国およびホスト国に対する主要な拠点への攻撃を引き起こすだろう。その反撃は、これまで以上に激しく、壊滅的なものとなるであろう。」と応えている。

そして現実に、イラン革命防衛隊(IRGC)の航空宇宙軍と海軍は、報復作戦第95波の一環として、イスラエルはもちろん、バーレーン北部の米国のパトリオットミサイル防衛システムをはじめとする地域内の主要目標に対し、精密攻撃を実施。
4/4、IRGC広報部は声明を発表、「包括的かつ多面的な作戦が今朝開始された」、この報復攻撃では、IRGCの最新鋭ミサイル、ハジ・カセム、ハイバル・シェカン、カドルなどが使用され、クウェートに配備された米国のHIMARSミサイル陣地とバーレーン北部の米国のパトリオットミサイルシステムは、「作戦で破壊された」ことを明らかにしている。また、アラブ首長国連邦(UAE)にある米軍のHIMARS発射部隊、司令部、および米軍上級幹部や教官のための訓練施設を標的にすることにも成功した、と述べている。米、その同盟国側にとっては、深刻な事態の進展である。

<<トランプ「戦争に追われている。保育園の面倒を見られない!」>>
追い詰められたトランプ政権は、ついに米国を戦時経済体制に移行させる方向を明確にし出している。
新たに発表されたトランプ政権の予算案は、事実上あらゆる分野を犠牲にして、米国政府の軍事力強化を軸とした政策転換を図るものとなっている。国防総省への1兆5000億ドルの予算要求に加え、イラン関連費用としてさらに2000億ドルを要求。国防費は実に42%もの増額である。この増加率はレーガン政権時代を上回り、第二次世界大戦直前の水準に迫るものである。

逆に、公衆衛生、科学研究、住宅、教育といった非国防費は10%、すなわち730億ドル削減される。最も大幅な削減となるのは、環境保護庁(EPA)で52%、国立科学財団(NSF)で55%、中小企業庁(SBA)で67%の削減となっている。

トランプ氏の痛ましい場面のスーパーカット

つまりは、戦時経済体制への移行である。ついこないだまで、トランプ氏は「戦争はもうすぐ終わる」と何度も公言していたのである。
4/2、CNNがトランプ氏の終わりのない戦争を否定する痛ましい場面のスーパーカットを公開している。それによると、
* 「ご存知の通り、勝利を早々に宣言するのは良くない。我々は勝利した」とトランプ大統領は3月11日に宣言。
* 「もうすぐ終わると思う」と彼は3月13日に述べた。
* 「もうすぐ終わるだろう」と3月16日。
* 「もうすぐだ。順調に進んでいる」と3月17日。
* 「ああ、我々は勝ったと思う」と3月20日。
* 「こんなことを言うのは気が進まないが、我々は勝った。この戦争は終わった」と3月24日。
* 「少し回り道をしたが、もうすぐ終わるだろう」と3月26日。
* そして最後に「我々は間もなく撤退する」と3月31日。

ほんの数日前に、「もうすぐ終わる、我々は間もなく撤退する」と述べていて、どうして、戦時経済体制への移行が必要なのであろうか。なんという豹変ぶりであろうか。あきれるばかりであろう。

トランプ大統領が1か月前、2/28にイランに対して開始した戦争は、核協議の合意を反故にする、まったく一方的な侵略行為という犯罪行為であった。これは、トランプ政権の傲慢さと中東の複雑な現実に対する軽率な無視、過小評価から生まれた、壊滅的な誤算であった。誤算が誤算を生み、正当化の根拠が二転三転し、場当たり的で、衝動的な一連の行動を次から次へと繰り出す迷路へと自らはまり込み、残りは危険なエスカレートで脅迫する、という出口なしの事態を露呈してしまったのである。

4/1に発表されたCNNの最新の世論調査によると、戦争に2000億ドルを費やすという国防総省の提案には、米国民の71%が反対と回答している。賛成の29%とは圧倒的な差がついてしまっている。またこの世論調査では、イランに対する軍事行動に踏み切る判断を支持しないとする回答が66%、戦争を起こすだけの「価値があった」かとの問いに対しては、否定的な回答が70%にまで

達している。

言うに事欠いて、トランプ氏は、「私たちは保育園の面倒を見られない。大国だ、50の州がある、何百万もの人々がいて、戦争に追われている。私たちが保育園、メディケイド、メディケア、こうしたすべてを面倒見るのは不可能だ。」と本音を吐露している。「戦争に追われている」、戦時経済の独裁者、その地位で居座り続けたい、これが、トランプ氏の本心であろう。だとすれば、ノーベル平和賞どころか、選挙公約とはまった相対立するものであり、直ちに辞任すべきであろう。野党は、トランプ氏を弾劾し、解任すべきであろう。世界は、こんなトランプ氏を、徹底的に孤立化させ、危険なエスカレートを封じ込めるべきであろう。
(生駒 敬)

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【書評】『証言 原子力規制委員会は何をめざしたか』御厨貴監修

【書評】『証言 原子力規制委員会は何をめざしたか』御厨貴監修 2026.1.27 岩波書店 4400円

                                                                                            福井 杉本達也

原子力規制委員会は2011年3月の福島第一原発事故を受けて、民主党政権時代の翌12年に設立された。本書は設立初期の幹部8人の証言によるオーラルヒストリーである。特に初代委員長の田中俊一氏の証言は出色である。

1 原研と動燃

田中俊一元原子力規制委員長は、放射線物理学が専門で、旧日本原子力研究所の出身である。本書で、田中氏は「原子力ムラ」の主流ではない、「アウトロー」だと強調しているが、「ムラ」の主流であろう。しかし、同じ主流でも、田中氏が所属した現日本原子力研究開発機構(JAEA)は2005年に日本原子力研究所(原研)と核燃料サイクル開発機構(核燃機構—旧動燃)を再編統合して発足したものである。元々は原研は原子力研究全般を、核燃機構(旧動燃―発足時は原燃公社)は核燃料事業に関することであった。ところが、原研の労使紛争もあり、原子力開発の主導権を動燃に奪われていくことになった。田中氏は両者の統合を「体質が全然違いますよ。もう研究所の気概がなくなったから、人が育たない」と嘆く。「原子力安全員会や原子力委員会に動燃出身がいないというのは、そこでは人が育たないということです」とし、「橋本行革は最悪」だったとする。

2 高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃止措置

「もんじゅ」は2015年に最終的に廃炉が決まった。田中氏は「高速増殖炉サイクルについて、私は個人的にには昔から大反対」だったと述べている。高速増殖炉に危険性については、「臨界事故の可能性がある。要するに、核暴走の可能性を持っている。そういう意味で非常にリスクが大きい」と述べている。また、原子炉を冷却するのに非常に扱いが厄介な液体ナトリウムを使用する「ナトリウム炉なんです」。世界中で米仏英が撤退した中で、「日本だけがしがみついている」と述べている。「『もんじゅ』をやめることになったときに、規制員会としては、『ナトリウムの中に燃料が入っている状態はリスクが大きいから、とにかく早く燃料を抜きなさいと言ったわけです。そうしたら、『燃料を抜くのに最低でも五年半かかる』といわれたんです』。「技術が実用とは縁もゆかりもないレベルですよ。それで1兆円を使ったわけ」と述べ、続けて「日本だけが燃料サイクルにこだわっていますが、『これにこだわっている限り、原子力は先がないよ』と言ってきました」と述べている。さらに、「日本はアメリカよりもプルトニウム蓄積量が多い」「プルトニウムというのは核不拡散上の重大な問題ですよ。じゃあ。そのプルを使う道はあるかというと、現状は全くない。」、「予算は限られているわけですよ。『もんじゅ』だけでも年間二・三百億円は使ってきたわけです。その分、今度は研究所とか大学に対する投資がゼロになった」。「日本の基礎研究が非常に弱っているのはそういうところですよ」と、話の内容はもっともだが、旧動燃に対する原研側からの恨みつらみが述べられている。

3 汚染水トリチウムと放射能除染

「汚染水のトリチウムを取り除く技術とか、出てきてはいますが、現段階では全く使い物にならない。」「6年間議論して、結局は海に捨てることになりました。その間、雨後の筍のように『技術でトリチウムを除去する』という話がでていますが、そんなものできないことはわかりきっている。6年間もすったもんだして、福島県民や漁民をごまかし続けたわけです」「その間に使われたお金は大変なものです」。「できないことをできると言うべきではない」と述べている。と正直に述べている。

除染については、飯館村の長泥地区では、「空間線量で時間当たり10とか15マイクロシーベルトで、高いところは70くらい」「そこにずっと住むわけにはいかないから、やはり住む家と家の周りぐらいは少しきれいにしない」と。農水大臣が「ヒマワリを植えるセレモニーをして、県民に期待を抱かせました。『そんなことをやったって効果がない。物理的に取るしかないよ』と言って、私は(除染の作業を)やったのです」。と述べている。しかし。除染で集めた土はどうするかである。除染とは所詮、右にあった放射能を左に移すだけであり、除染によって大量の除染土壌が生み出されている。福井新聞では「東京電力福島第1原発事故で拡散した放射性物質を取り除く除染は福島県内各地で行われ、作業で出た土などの廃棄物を中間貯蔵施設(岡県大熊町、双葉町)に搬入し始めて3月13日で10年となる。国は搬入開始から30年以内の2045年3月までに県外で最終処分すると法律で定めているが、搬出先の選定は難航が必至だ」(福井:2026.3.3)と書いている。大量に降り注いだ放射能を除染と言葉だけでごまかしてもごまかしきれるものではない。除染した住居地域から少し離れた空き地や、山間部は元のままである。放射能汚染土壌を全国にばらまいてどうするのか。ばら撒かれた放射能は物質の半減期の法則に従うしかない。この点、やはり、田中氏は「原子力ムラ」の一員であり、放射能の管理には非常に甘いと言わざるを得ない。

4 活断層の判断

原子炉下の活断層の判断について、「島崎さんにしろ、今の石渡明委員にしろ、ああいう人たちってなかなか決めないのです。判断しない。でも、決めないわけにはいかないのです。規制委員会というのは判断する組織ですから。でも、学者マインドを持った人がいると、往々にして決まらなくて時間が経過することがあります」と述べている。よほど、島崎氏や石渡氏のような地震学者が目の上のたんこぶだったのであろう。「学者の言うことが間違っていたということはあり得る。まちがっていたなら『間違っていました。ごめんなさい』と言うのが本来の学者のあるべき態度ですが」と述べている。では、最近、中部電力が浜岡原発3、4号機.の再稼働に向けた新規制基準適合性審査で、基準地震動の策定時、データを意図的に操作していたことが明るみに出た(福井:2026.4.1  等々)。こうした事例は枚挙にいとまがない。電力会社が肝心のデータを誤魔化したり、都合の悪いデータは審査に出さなかった場合はどうするのか。島崎氏や石渡氏の職務怠慢なのか。原子力ムラの住人として、やはり申請者である電力会社に甘いと言わざるを得ない。「なかなか決めない」ではなく、申請者が都合の悪いデータを隠すから「決められない」のである。科学的判断ができないのである。他の規制委員・規制庁幹部の証言にも目を通していただきたい。いずれにしても突っ込み処満載の証言集である。

 

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【投稿】トランプの脅迫:イランを「石器時代に逆戻りさせる」

<<「イランの発電所を一つ残らず攻撃する」>>
4/1の夜9時からの、トランプ大統領の演説を聞き、世界はあきれ返る事態となった。なにしろ前日、政治専門誌ポリティコが、トランプ氏が全国民向けの大統領執務室からの演説で、支持率の悪化を背景に、「イランとの1カ月に及ぶ戦争が終結に向かっている、そしてホルムズ海峡封鎖の解決は他国に委ねられていることを宣言する予定だ」と報じていたのであった。トランプ氏自身も、「戦争はもうすぐ終わる」、「我々はすべての軍事目標の達成に向けて順調に進んでいる」、「イランでの任務完了に非常に近づいている」、「ホルムズ海峡は閉鎖されたままでも構わない、最終的には他国が開放すべきだ」とまで発言していたのである。実際に、ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、トランプ大統領は側近に対し、「ホルムズ海峡がほぼ閉鎖されたままであっても、イランに対する米軍の作戦を終了する用意がある」と述べていたのである。

ところが、トランプ氏は、演説が始まると、多くの人が予想していたもの、トレーダーたちが明確な結論を期待していた「任務完了」という言葉はついに聞かれず、前日の停戦に関する憶測が一転して逆転、原油価格の降下が、急上昇に転じる事態となったのである。

「石器時代に逆戻りさせる」と脅迫したことを受け、原油価格が急騰。

トランプ氏は、明確な方向性を示さない、実は示せないままに、過去の発言を繰り返し、強気な発言や脅迫を、間近に迫った終戦の見通しと混ぜ合わせ、あれこれのごちゃまぜ発言で終始。「停戦」や「任務完了」といった言葉は一切出てこなかったのである。

あげくの果てに、ホルムズ海峡が再開されなければイランを「石器時代に逆戻りさせる」、「今後2~3週間で極めて厳しい攻撃」を仕掛ける、合意に至らなければ「イランの発電所を一つ残らず攻撃する」とまで脅迫したのであった。

今や、トランプ政権が、イスラエルとともに乗り出した対イラン戦争は、「制御不能」の段階に陥ってしまっている、と言えよう。

<<トランプ氏を「見捨てよう」>>
まさにこうしたトランプ氏の発言によって、一時的な期待で下落していた「ブレント原油とWTI原油価格を押し上げた」、「水路が閉鎖されている日ごとに、約1100万バレルの原油が失われ」、「世界的な原油供給不足が、おそらく4月一杯まで続くであろう」とブルームバーグは報じている。

原油価格は1バレル105ドルを再び上回り、原油先物価格は3月だけで51%上昇し、史上最大の月間上昇率を記録。米国のガソリン価格は、1ガロンあたり4ドル、ディーゼル価格は1バレル5.50ドルを超えていたのであるが、石油業界の幹部らは、現物原油価格は先物価格が示唆するよりもさらに高くなる可能性があると警告している。エネルギー集約型産業すべてを脅かす「世界的な供給ショック」がさらに拡大する懸念を現実のものとする事態である。
石油は「アメリカには十分な量があります」と、トランプ氏は豪語しているが、そのアメリカで、米国経済はディーゼル燃料に依存しており、多くの州でディーゼル燃料価格が過去最高値を更新し、過去最大の月間上昇率を記録している。アリゾナ州:+67%、ネバダ州:+58%、ノースカロライナ州:+58%、テネシー州:+56%、ルイジアナ州:+56%、これが現実なのである。

もちろん、このエネルギーショックは燃料だけでなく、アルミニウム、肥料、ヘリウム、半導体などのサプライチェーンにも即刻波及している。
ロンドン金属取引所(LME)のアルミニウム先物価格は、すでに前年比50%上昇しており、価格はさらに大幅に上昇する可能性が高い。

そして当然、ガソリン、ディーゼル燃料、肥料、輸送費の高騰により、エネルギーと食料品の価格が同時に急騰しており、世界的に高いインフレ率への回帰が現実化しようとしている。

緊急石油備蓄の放出などでは、市場の安定化にはほとんど効果がなく、不安定な状況がさらに長期化する事態である。

3/31に、トランプ氏は、自身のソーシャルメディア・TruthSocialに、「イランの首脳部排除に関与することを拒否したイギリスのような国々に、一つ提案があります。ホルムズ海峡へ行き、とにかく石油を奪い取りましょう。自力で戦う方法を学ばなければなりません。アメリカはもうあなた方を助けてはくれません。あなた方が私たちを助けてくれなかったように。」、「さあ、自力で石油を確保しましょう!」と書き込んでいる。
これは、「石油を奪い取る」ことはできなかった。しかし、「我々は勝利した。あとは誰かに後始末を任せよう」という体裁をとりながら、実際には「あなた方が私たちを助けてくれなかった」がゆえに、「我々は負けた。我々にはできない」という告白に他ならない、とも言えよう。

長年トランプ大統領を強力に支持してきた、そしてトランプ氏からも熱烈な支持を受けてきた、ポッドキャストの司会者、アレックス・ジョーンズ氏が、今やトランプ大統領は職務不適格だと断言し、支持者に彼を見捨てるよう呼びかける事態を招いている。(4/1、naturalnews
ジョーンズ氏は、「去年の彼とは別人だ」と述べ、トランプ氏の話し方は認知機能の低下を示していると主張し、「彼は支離滅裂なことを口走るし、脳の調子が良くないように聞こえる」、「トランプ氏のことは悲しむべきだ。これは笑い事ではない。良いことでもない。彼はもういない。それだけのことだ」とまで断言している。ホワイトハウスは、ただちにこれらを

注目を集めるための捏造だと強く否定しているが、ジョーンズ氏は、トランプ氏の側近でさえも不安を抱えており、義務感から忠誠を保っているだけだと示唆し、ヘグセス国防長官と報道官が「パニック状態」にあるとまで名指ししている。

トランプ氏は、実際にはパニック状態に陥っており、途方に暮れている可能性が高い、というのが現実であろう。すでに、次に何をすべきか全く見当がつかない状態の中で、場当たり的に対応し、軍事的にエスカレートすることだけが先行する危険な状態である。この危険なエスカレートを押しとどめる、闘いこそが要請されている。
(生駒 敬)

 

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【翻訳】「いかにして、スペインは私を愛国者に作り上げたか?」

【翻訳】「いかにして、スペインは私を愛国者に作り上げたか?」

The New York Times  International Edition、March 10, 2026
“ How Spain just made me a patriot”
by Mr. Paco Cerda
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OPINION :
The New York Times publishes opinion from a wide range of perspectives in hopesof promoting constructive debate about consequential questions

「いかにして、スペインは私を愛国者に作り上げたか?」
Valencia, Spain :
 私はいつも旗に嫌悪感を抱いている。私は、決して皆と一緒に国家を歌うことはない。私は、スペインの少数言語であるカタロニア語を話している。そして、次回の World Cup では、スペインではなくてオランダを応援する。というのも私はその美しい負けっぷりの歴史のファンであるので。誰も憂国の士である私を咎めないでしょう。
 それにも関わらず、先週Trump 大統領が Spain は不愉快な同盟国で、米国が必要としているものを何も持っていない、と言ったのを聞いた時には、また、いわゆる自由世界のリーダーがスペインとのすべての取引を断ち切ると言って脅していると知った時には、私は自分がスペイン国民であることに異常なる自尊心を感じた。
 暴君の怒りの矛先を向けられている、ということについて、とりわけその怒りが彼の家臣の拒絶によってもたらされている時については、多くの物語/小説や逸話がある。
 我が国の首相、Mr. Pedro Sanchez が、このIranに対する戦争で、共同で運営している軍事基地の米国の使用を認めないと公表した後、スペイン政府は Mr. Trumpの怒りの引き金を引いてしまった。 これらの基地は、1953年以来、米国が使用してきていた。その時は、Franco将軍の独裁政権下でSpainは世界から孤立していた。 スペインは、金銭と引き換えに残虐で抑圧的な体制の外交的承認との交換で、米国に領内の基地の使用を認めた。 Franco体制下で、このことが人々の生活にとってどういう意味をなしたか考えてみよう。

 米国は、1945年ヨーロッパの一部をファシズムの鎖から解放される手助けをした。しかし解放はピレネー山脈の手前で終わった。大戦の終結から8年になって、この国は選挙権や諸権利の自由を支持するも、ファシスト独裁者(彼は結局は反共産主義者だった。)を受け入れた。 米国Eisenhower大統領は、このようにしてFranco主義者の独裁体制を擁護し、スペインは米国の手先になることを受け入れた。我々の多くは、この冷戦の道義上の失敗を忘れないで、今に至っている。
 それからおよそ80年たった今日、これら同じ軍事基地が、世界のすべてが彼の王座の下に跪くことを要求している怪奇なガキ大将の銃の照準器の線上に我々を捕えている。
 今回、スペインは“No!”と言った。
 私は、世間知らずではない。 Mr. Sanchez は、この勇気がいる立場にある時、価値観、合法性や人道主義を超えて考慮していたことは大いに推察できる。彼の国内での政治的立場は、弱くなっていたので有権者の関心を引いているようにも思える。
 しかし私は、Spain が “No” と言った事実に立ち返っている。 戦争に “No !” 。Mr. Trump がしばしばうまく、自身の国と諸外国に教え込む為に、伝染し麻痺させへつらう恐怖感/怯えへの ”No” に立ち返っている。
 祖父母の時代において、お互いに殺しあうことが日常だった我々欧州人は、Mr. Trumpの、多数国同意の秩序を破壊する企てに直面して、道義的な力を示す責任がある。

Our Prime Minister proved to Trump that there are times
 when it’s crucial to stand up for what is right.
( 我が国の首相が、何が正しいか、ということに対して立ち上がる決定的な時がある、ということを Trump にはっきりと示した。)

 最近、私は米国のボランティアの歴史を読んでいた。そのボランティアはSpain内戦のさ中、ファシズムに対抗する共和制支持者側に奉仕するためにスペインにやって来た。 私は、偶然見つけた彼の心打つ手紙について考えている。それは,New Yorkに住むユダヤ人の Hyman Chaim Katz が23歳の時に、母宛に書かれていて、彼は Abraham Lincoln旅団のボランティアだった。
 「私は、何かしなければならない、と感じたのでSpain にやって来た。」と1937年後半に書いていた。彼は欧州で起こっている諸問題をリストアップしていた —イタリアにおける Benito Mussolini や ドイツにおける Adolf Hitler の台頭、それに欧州大陸にわたってのファシズムと反ユダヤ主義の忍び寄り。彼は、戦うことに惹かれ、これらの勢力に立ち向かうためにスペインにいる、と書いていた。 「もし、私が今日助けを必要としている人たちへの援助を拒否したら、私の身の上に災難が降りかかった時に、私は他人から援助を受けるに値するであろうか。」とも。
 3カ月ほど過ぎた1938年3月3日、彼は Belchiteで戦死した。そこは乾燥地帯でZaragozaの町の近くだった。その戦場は、荒廃したところで遺跡として残されている。あなた方は、今日でもスペイン内戦の傷跡として訪れることが出来る。
 私は、Mr. Katz の写真を見た。その背後に、時として戦旗と憤激の中に隠された戦争の真の顔を見る。彼の若い表情の中に、戦死したすべての老若男女、息子や娘たち、その背後に困惑した母親達、すべての戦争に出没する戦死者の顔が見える。
 私はまた、最近イランで起きた、学校の建物の下に押しつぶされた少女たちの怯えを思い出している。また、歴史を通して戦争において、独裁者の決定で命を奪われたすべての人々恐れ/怯えのことを思う。
 自分の怯えに立ち向かう、価値ある時もある。 ”No!” と言うことにこそ、英雄的な行為が見られる時がある。
 Mr. Katz が母に書いたように、時には、そうせざるを得ないこともある。
 
 Paco Cerda : he is a journalist and writer based in Valencia, Spain. His book “The Pawn”, a nonfiction novel about anti-Francoism and the Cold War, was published in English in June. This article was translated from the Spanish by Mara Faye Lethem
 
 [ 訳者:この記事に Sanchez首相のTV発表写真が載っていて、下記説明あり。]
 Prime Minister Pedro Sanchez announced last week that he would not allow the United States to use jointly operated military bases in Spain in the war against Iran.

                                  [ 訳:芋森 ]

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【投稿】敗戦し衰退する国家の大統領としてのトランプ

【投稿】敗戦し衰退する国家の大統領としてのトランプ

                             福井 杉本達也

1 敗戦国の大統領・トランプ

エマニュエル・トッドは「2030来るべき世界」(朝日新書:2026.3.30)において、「米国はウクライナの戦争で負けています。ロシアを挑発しましたが、負けました。米国とトランプ政権が激しく動き回り続けているからといって勘違いしてはいけません。ガザでジェノサイド(集団大虐殺)を繰り広げるための武器をイスラエルへ供与すること、小国のイランを攻撃すること…それによって、米国は依然として国際舞台での主役である超大国だと思ってしまうかもしれません。」と書き、続けて、「しかし、真実はウクライナの戦場で見出すことができます。そこでは、米国の軍事産業がロシアの産業の力にちゃんと対応できないことがあらわになりました。」トランプ政権は戦争に負けていることをわかっている。だから「戦争から抜け出したという衝動」、しかし、「米国が戦争に負けたことが明らかに」なれば、「米国の帝国システムが崩壊する恐れがきわめて高くなる。」だから戦争の負けを認めるわけにはいかないという矛盾である。これが、トランプを「あるときはこう言い、あるときはまったく違うことを言う」TACOと呼ばれるチグハグな政策に追い込んでいる。

一方、中国に対しては、既に世界第一の経済大国になり、中国と戦争できると言ったとしても、中国は既に米国の軍事産業を標的に輸出規制しており、「アメリカは、『中国に対する敗北』をもう認めたようであります。中国経済には対抗することも、対峙することも諦めてしまったようです」と書く。

2 米国・イスラエルはイラン攻撃でドル沼に

今、アメリカとイスラエルはイランからの報復攻撃に苦しんでいる。イスラエルの主要都市は瓦礫の山と化し、中東湾岸諸国にあるアメリカ軍基地も激しい攻撃にあっている。ネオコンはイランの戦力や工業力も過小評価していた。ホルムズ海峡の封鎖によって中国を原油供給で締め上げることを想定したが、ロシアと中国が手を組み、ロシア産原油・天然ガスがパイプラインで中国に安定的に供給されるなか、アメリカや西側世界の方が窮地に陥った。

「米軍の人的・物的被害が前例のない速度で累積し、兵站の限界に達しているという懸念が高まっている。ドナルド・トランプ大統領が『無制限の弾薬』を豪語しているにもかかわらず、実際の現場では精密誘導兵器の枯渇と装備の老朽化による戦力の空白が顕在化している。」「海軍力の象徴であるジェラルド・R・フォードは艦内火災と整備問題でギリシャ・クレタ島に緊急回航し修理を受けている。」1年以上の修繕期間が必要とされ、最新鋭空母はポンコツとなってしまった。「金銭よりも大きな問題は弾薬の備蓄量だ。米軍はTHAAD(サード)やペトリオット迎撃ミサイル、トマホークなど高性能精密兵器を迅速に消耗している。専門家は過去バイデン政権時代にウクライナに膨大な武器を支援した影響で備蓄分がすでに底をついている状態で準備されていない戦争に飛び込んだと指摘している。」米海軍の艦船の40%がイラン作戦に投入され、インド太平洋地域の安全保障の空白が高まっている(望月博樹 江南タイムズ 2026.3.25)。戦争開始からわずか26日後で、すでに支出量はパトリオットミサイルの生産量の3~4年分に相当し、THAADミサイルの生産量の6~8年分を超えている。THAADの状況はさらに深刻である。2024年には、ペンタゴンはわずか11発しか取得していない。2025年には12発である。2026年については、予算要求はわずか37発である(X:Patricia Marins 2026.3.26)。

NYT紙によれば、「地域にあるアメリカ軍が使用する13の軍事基地の多くは、ほとんど居住不可能だ」。米国政権は、イランによる必然的な報復に対する計画をほとんど立てておらず、その能力を見くびっていた。アメリカの基地には、もはやほとんど誰も残っていない。サウジアラビアから運用されていた給油機さえも引き揚げられ、ドイツに再配置された。湾岸諸国へのメッセージは極めて明確だ:米国は自国の基地すら守れない。お前たちは独力で対処しろと。

シュタインマイヤー独大統領は、3月24日、イラン空爆は「国際法違反であり致命的な誤りだ」と批判し、「米国の大国政治は世界で大きく信頼を失った」とし「次の米政権も友好的な覇権国であり、自由主義的な国際秩序の保証人という役割を果たすことはできないだろう」と指摘している(望月博樹・江南タイムズ 2026.3.25)。また、先に、大統領発言よりはトーンは落ちるものの、ウクライナ戦争には前のめりだったメルツ首相の報道官も「16日(現地時間)、ホルムズ海峡の封鎖を防ぐための米国の派兵要請について『今回の戦争は北大西洋条約機構(NATO)とは何の関係もない』と断言した。ドイツのボリス・ピストリウス国防相も『我々が始めた戦争ではない』とし、強大な米海軍も解決できない問題を欧州の少数艦船で解決しようとする米国のドナルド・トランプ大統領の期待が非現実的だと批判した。」(望月博樹・江南タイムズ 2026.3.18)。

トランプ政権は勝利を演出して早くイランの泥沼から逃げたいが、停戦カードはイランに握られている。もし、海兵隊や空挺部隊でホルムズ海峡を攻撃するば、傷口は広がる。送り込まれた部隊は全滅する。米国の敗北は決定的になる。

3 ペトロダラーの危機

1944年のブレトン・ウッズ協定は、米国の経済力を基礎として、米国が国際金融体制の中心となるため、米ドルだけが金と交換できる通貨=基軸通貨とし、金1オンス=35米ドルで交換できるものとし、他の国はドルとの交換比率を固定した。為替相場の固定で国際貿易を円滑にしての経済活動の活発化が目的であった(固定為替相場制)。しかし、ベトナム戦争での巨大な出費や財政赤字により、海外のドル準備が米財務省が保有する金保有額を上回る事態となり、米国はドル危機に見舞われることとなった。そこで、当時のニクソン大統領は1971年8月、突然、ドルから金への交換を停止した。しかし、金の裏付けのないドルは信用のない、ただの紙切れに過ぎない。そこで、米国は1973年の「石油ショック」を利用して、金の代わりに石油を米ドルの価値の裏付けとするペトロダラー・システムを導入した。1974年、キッシンジャーは産油国・サウジに出かけ、当時のファイサル国王に、米軍が駐留して王家の体制を民主革命から守る。その交換条件として原油をドルで売ることを提案した。「世界は、原油を必需のエネルギーとして産油国から輸入しなければならない」、原油は「米ドルでしか買うことができない」、「米国以外の国がドルを得るには経常収支を黒字にして、ドルの外貨準備を貯めておかねばならない」、貯めたドルは「米銀またはFRBに預金するか、米国債を買う」ことによって、再び米国に還流するというシステムである。

ホルムズ海峡での戦争は、長年にわたり武力と恐怖によって維持されてきたドルシステムの脆弱性を露呈させた。2025年間約2,000万バレル/日の原油および精製製品がこの海峡を通過する。また世界のLNGの5分の1が同じルートを通っている。ペルシャ湾の船舶輸送に深刻な混乱が生じれば、世界の供給から数百万バレル/日が減少する。石油収入による湾岸諸国のペトロダラーは、ロンドンやニューヨークへの安定した資本の流れにより、多額の債務を抱えた西側諸国・特に米国債の購入により、米国の巨額の財政赤字を補填していた。米国の公的債務は39兆ドルに達し、今年さらに5兆ドルの借入が予想される。米国のイラン攻撃は、市場を動揺させ、ペトロダラー体制の持続可能性への疑問がわき上がっている。ドルの世界準備高の割合はすでに71%から59%に減少している。長期にわたるエネルギーショックはそれを加速させる。もしペトロダラーシステムが崩壊すれば、地政学的な影響は劇的となる。

レバノンの政治学者パスカル・ダヒル氏は、極めて高いインフレと闘っている米国経済にさらなる負担を加えるとの見方を示し、「世界的な原油価格の上昇は、ホルムズ海峡を支配する側にとって、米国指導部に圧力をかけ、戦争継続を真剣に再考させるための間接的な武器となる」とした。(Sputnik日本:2026.3.26)。

4 ただの紙切れと本当の生産力

「3月27日、イランによるサウジアラビアのプリンススルタン空軍基地への攻撃で、複数の米軍兵士が負傷し、一部の航空機が損傷したと、事情に詳しい関係者がAir & Space Forces Magazineに語った。イランは依然としてミサイル発射能力を持ち、資産が減少しても地域の主要な米軍基地や目標を攻撃し続けている。」(エアフォース・アンド・スペース誌:2026.3.27)。プリンススルタン空軍基地は中東における重要な米軍の拠点であり、イランに対する作戦を支援する多様な航空機の拠点となっていた。

どうして、名目GDPが世界39位・416(10億ドル:2024年)しかないイランが、世界第1位の米国(29,298.03(10億ドル))と対等以上に戦えるのか。名目GDP比では米国のたった1.4%でしかない。トランプ政権はイランの工業生産力と科学技術を完全に見くびっていた。

米国のGDPは金融資本で極端に膨らんではいるが、その実質的生産力はほとんどない。iPhoneをはじめ、工業製品はほとんど中国製であり、軍艦などの造船の建造能力なども世界の1%未満でほとんど残っていない。ドル紙幣という単なる紙切れに依存する国家である。

ウクライナ戦争の分析で、トッドは上記著作において、「米国の軍事産業は、ロシアの軍事産業にウクライナが対抗するうえで十分な砲弾やミサイル、防空システムを供給することができなかった」とし、この敗北の原因は、米国とロシアで養成されるエンジニアの数に求め、人口がロシアの2.5倍もある米国が養成するエンジニアの数はロシアより少ないとし、「西欧と対決するロシアの強みはエンジニア、さらに技術者や高度な技術を持つ労働者を養成できる能力」であり、「これが産業活動の土台にある」と述べている。

5 「存立危機事態」は台湾海峡封鎖ではなく、米国によるイラン攻撃

台湾はエネルギー資源のほぼ全量を輸入に依存しており、地政学的リスクによって石油やLNGの供給が短期間で逼迫する可能性が高い。原油輸入は年間約2.85億バレルで、その約70%を中東(サウジ31%、クウェート13%、UAE10%、オマーン8%、カタール6%等)に依存する。LNG輸入は約2,100万トンで豪州38%が最大だが、カタールが25%を占め、同様にホルムズ海峡通過に依存する。ホルムズ海峡の長期的混乱やLNG輸送の停滞が発生した場合、数週間から数か月で電力不足が顕在化し、半導体を含む産業活動への影響は不可避となる可能性が高い。特に、LNG火力発電への依存度は電源構成の5割もある。中国による台湾海峡封鎖ではなく、米国によるイラン攻撃がホルムズ海峡封鎖をまねき、台湾経済を危機に導いているのである。高市首相は、台湾有事は日本の「存立危機事態」であるとさんざん煽ってきたが、米国:トランプ政権こそが台湾有事をもたらしている。

ペルシャ湾に45隻もの日本の船舶が石油を積んだまま、長期間足止めとなっている。 船主協会は『早期に安全に湾外へ出して』と、外交交渉をロクロクしない日本政府に訴えている。しかし、高市首相はイラン側に対し何の交渉も行っていない。既に、インドや韓国などはホルムズ海峡の船舶の安全航行の交渉を行っているというのにである。

6 石油市場安定化に限界 ロシア産原油を早期に輸入せよ

3月11日、IEA(国際エネルギー機関)は、中東紛争を背景としたエネルギー市場の安定化を目的に、史上最大となる4億バレルの石油市場への放出について、合意した。 G7諸国は史上最大規模の戦略石油備蓄を放出する事を決定した。しかし、これらの措置は一時的な効果しかなく、むしろ安定供給の問題を根本的に解決しなければならない。自民党の会合では、現状が続けば、早ければ7月にも石油製品の供給制限を行う可能性があるとの警告が石油業界から発せられている。 出席者からは、状況はすでに価格高騰への対処段階から、備蓄をどれだけ維持できるかというフェーズにと移行しつつあると指摘が挙がった。日本は26日から石油備蓄の放出を開始した。これに加え、政府は在宅勤務の推奨、公共交通機関の利用促進、さらには高速道路の速度制限引き下げといった追加措置も検討し始めた。(Sputnik日本:2026.3.26)

ロシアは依然として経済制裁下にあるが、ロシア産原油は、代替選択肢となりつつある。国家エネルギー安全保障基金のイーゴリ・ユシコフ氏は、ロシアは1日あたり約700万バレルの液体炭化水素(石油・石油製品)を輸出している。これはホルムズ海峡を通常通過する量の約3分の1に相当する。中東からの供給が減少した場合、ロシアによる補填がなければ、不足はさらに深刻化する。アジア諸国(特にシンガポールやマレーシアなどの東南アジア諸国)は、中東からの供給が途絶えたことを背景に、ロシアからのエネルギー購入を進めるべく着手している。ロイター通信が3月19日に伝えたところによると、アジアへのロシア産燃料油の輸入量は2026年3月、史上最高となる300万トン超(1日あたり約61万4000バレル)に達する見通しだ。これは、減少した中東産の石油製品を直接的に代替している。(Sputnik日本:2026.3.26)。

ところが、高市首相は参議院で間の抜けた答弁を行っている。「原油や石油製品の代替調達先に言及した。中央アジアや南米、カナダ、シンガポールを列掌した。」(日経:2026.3.24)。カザフサタンの油田は遠すぎ、しかも数万バレルの権利しか持ってない。また、85兆円の売国投資先となるアラスカ原油は開発に10年単位の時間がかかり、既に石油メジャーが投資をしているものの、増産分も1万バレルほどである。しかも、日本の製油所は中東産原油に特化した精製を行っており、南米産の原油を精製するには新たな設備投資が必要となる。

やはり、2022年まで輸入していたロシア産原油の制裁解除が喫緊の課題である。10%でもサハリンブレンドを輸入できればひっ迫感は薄らぐ。参院での高市首相の用意された答弁書からは、いかに日本の官僚機構が思考停止しているかを如実に示している。さらには高市首相自身が全く危機感ゼロである。

日本は地理的にも北海ブレント原油には依存できない。中東産に依存しているからドバイ原油価格が指標なのだ。日本政府は、原油先物売りを検討したり、北海ブレントを基準とするよう求めたり、ガソリンに多額の補助金をつぎ込んだりして、原油供給がひっ迫しているときに、先物で価格を下げようとしたり(しかも日本に供給されない北海ブレンドの、エネルギー需要を抑制すべき時に補助金でエネルギー需要の拡大を図ろうとするなど、理に反する動きが目立つ。誰がこれを指揮しているのか。完全に頭脳崩壊としかいいようがない。

高市首相は自らの失言でレアアースが入ってこなくなり、衆院選中はさんざん絶海の孤島のレアアースを確保すると豪語したものの、肝心の燃料が入いらず、資源調査船は航海を諦めた。一体何がしたかったのであろうか。

日本は地理的にも最も近く、輸送コストが安いサハリン1・2の天然ガス・石油の権益を持っており、また、天然ガスについてはアーク2もある。これらの制裁を早急に解除し(というか、ロシア産原油については既に制裁解除されているが)、輸入しなければならない。

さらには将来的には、サハリンからの天然ガスパイプラインを北海道経由で首都圏等に引く、また、沿海州から北朝鮮・韓国経由で対馬海峡経から原油・天然ガスパイプライを引き、エネルギーの安定供給に資することである。それが可能となれば、LNGへの液化や船舶輸送もなくなり、電気料金は1/3となり国際競争力も高まる。中長期的なエネルギー戦略が必要である。与野党とも全く戦略の片鱗もなく、米空母の上でピョンピョン跳ねていては、米空母と一緒に日本沈没間違いなしである。日本の「存立危機事態」とは、高市内閣それ自身のことである。

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【投稿】トランプは直ちに辞任せよ!:No Kings Day800万人抗議

<<米国史上最大規模の1日抗議デモ>>
3/28、土曜日、全米50州で「大都市から、これまでこのような大規模な動員を経験したことのない地方の町まで、抗議者たちはアメリカでは王は必要ないということを明確に示しました」と、ノー・キングス連合は声明で述べている。
 主催団体インディビジブルの推計によると、ミネアポリスで開催された「ノー・キングス」集会には20万人以上が参加したのをはじめ、全米各地の地域や都市で開催されたイベントには推定800万人が参加したとしている。
「これは、運動が成長するとこうなるという姿を示しています。規模だけでなく、影響力、勇気、そしてこの運動の一員であると自覚する人々の数も増えるのです」、「アメリカ国民は、現政権の権力掌握、議会と国民の承認を得ていない違法な戦争、そして私たちの自由を抑圧しようとする絶え間ない試みにうんざりしています。私たちは変化を待つのではなく、自ら変化を起こすのです。」と主催者たちは強調する。
ワシントンD.C.(ホワイトハウス方面へ行進)、フィラデルフィア(ベン・フランクリン・パークウェイ)、アトランタ、シャーロット、ニューヨーク市、南カリフォルニア、サンアントニオ/オースティン、そして数百もの小規模都市で、並行してデモ行進や集会が行われ、今回の抗議行動の3分の2は、人口5万人未満の地域で行われている。
 空撮映像には、ワシントンD.C.、ニューヨーク市、ボストン、フィラデルフィア、シカゴ、サンディエゴなどの都市で、大勢の人々がデモに集まった様子が映し出されている。
サンフランシスコでは、数千人の反トランプ活動家が地元のオーシャンビーチに集まり、「トランプは今すぐ辞任せよ!」“Trump Must Go Now!”と書かれた巨大な人間の鎖文字を作り、「トランプは今すぐ辞任せよ! ICE反対、戦争反対、嘘反対、王反対」を力強くアピールしている。

<<「5月1日に全国ゼネスト」を提起>>
インディビジブルの共同創設者であるエズラ・レヴィン氏はこの日、5月1日に全国ゼネラルストライキを計画していることを明らかにしている。ミネアポリスで開催されたノー・キングスの旗艦集会に出席したレヴィン氏は、今年、米国移民税関執行局(ICE)によるミネソタ州包囲攻撃に直面した抗議者たちの強さを称賛し、自身の組織はそれを全国に広げたいと述べ、「この運動の次の主要な全国的行動は、単なる抗議活動ではない」、「これは戦術的なエスカレーションなのです…ミネソタ州が行った『真実と行動の日』に触発された、経済的な示威行動なのです。」
 レヴィン氏は、「5月1日、メーデーに、『これまで通りのビジネスはしない』と宣言する」、「仕事も学校も買い物もなし。私たちは立ち上がり、億万長者や王様よりも労働者を優先すると表明する。」、「この国におけるファシズムに対する最大の脅威は一般市民であることを証明する」、経済的な示威行動、そのための全国ゼネストであると、と強調している。
インディビジブルの共同創設者であるリア・グリーンバーグ氏は、全国規模のストライキ行動の目的は「明確なメッセージを送ること」であり、「私たちは、億万長者を肥え太らせたり、終わりのない戦争を煽ったり、覆面工作員を派遣して隣人を威嚇したりするような政府ではなく、私たちのコミュニティに投資する政府を求めている」と語っている。(以上、CommonDreams より

トランプ政権はこれらの抗議行動をあからさまに軽視している。ホワイトハウス報道官のアビゲイル・ジャクソン氏は、「これらのトランプ狂乱セラピーセッションに関心を持っているのは、取材のために報酬を受け取っている記者たちだけだ」との声明まで発表している。トランプ政権は、これらの抗議行動を、草の根の自然発生的な怒りではなく、「左派の資金提供ネットワーク」によるものだと主張し続けている。
従来通りの大嘘、悪宣伝であるが、ますます孤立し、支持率が調査のたびに最低記録を更新する事態は、より一層トランプ氏を動揺させ、日ごとに言動が大きくぶれる、もはや政権担当能力さえ疑わせる、混迷ぶりである。トランプ政権包囲の闘いこそが、トランプ政権の混迷をを加速させている、と言えよう。
(生駒 敬)

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【投稿】核リスクの切迫:米・イスラエル、イラン核施設爆撃

<<イラン「犯罪的な攻撃」と非難>>
3/21、土曜日の朝、イランのナタンズ核濃縮施設が米・イスラエルによる攻撃の標的となったことが明らかにされた。イラン原子力庁は、シャヒード・アフマディ・ロシャン濃縮施設が攻撃を受けたことを確認。
 イランのタスニム通信が報じた声明によると、イラン原子力庁は、この攻撃は核兵器不拡散条約(NPT)を含む国際法、および核関連協定、そして確立された安全規則に違反するもので、この作戦を米国とイスラエルによる「犯罪的な攻撃」である、と厳しく非難している。
イランの主要核施設の一つであるナタンズは、昨年6月の攻撃でも、フォルドゥやイスファハンなどの他の施設とともに、繰り返し標的とされてきたもので、イランは、核施設への攻撃は危険なエスカレーションであり、イラン国内だけでなく地域全体に「壊滅的かつ不可逆的な結果」をもたらす可能性があると繰り返し警告してきたものである。

 国際原子力機関(IAEA)は、イランから攻撃の報告を受けたことを確認し、この事件を調査しており、この攻撃後、施設外で放射線量の上昇は検出されなかったと発表。イラン国家原子力安全局は潜在的な汚染リスクを評価するための技術評価を実施していることを明らかにした。
その際、同時に、IAEA事務局長のラファエル・グロッシ氏は、機密性の高い核施設周辺での軍事的緊張の高まりがもたらすリスクについて警告し、「核リスク」を防ぐためには自制が不可欠であると強調し、「核リスク」を回避するための自制を改めて求めた。IAEAは現在、この事件を調査しており、イラン国家原子力安全局は潜在的な汚染リスクを評価するための技術評価を実施している。

<<数時間後、イラン、イスラエル・ディモナ市を爆撃>>
イランは、米国とイスラエルがさらなる緊張の高まりを追求すれば、イスラエルのディモナ市にある核施設を標的にする可能性があると警告していたのであるが、ナタンズ核施設への爆撃の数時間後、実際に報復と示唆される爆撃が実行され、危険なエスカレーションが現実のものになろうとしている。

 イスラエルのディモナ市長は、市内の複数の場所にロケット弾が着弾し、負傷者が出たことを確認。イスラエルのチャンネル12は、「ロケット弾と破片の攻撃により、ディモナ地区の12か所で21人が負傷した」と報じ、イスラエルラジオは、建物が直撃を受けて倒壊したことを確認している。サイレンは「南部のネゲブ砂漠から北部のガリラヤ地方まで」広範囲に鳴り響いた、と報じている。イスラエルメディアによると、ディモナで負傷したイスラエル人の数は47人に増加している。

 イスラエルのディモナの核施設は、イスラエルが非公式に進めている核兵器開発計画の中核を担っているとされているが、イスラエル政府はこれを肯定も否定もしていない。

核施設への爆撃は報じられてはいないが、エスカレートすれば確実に標的となる事態が現実のものになろうとしている。核戦争へのエスカレートである。

危険極まりない、核戦争につながりかねない、「核リスク」が切迫している、と言えよう。なんとしてもこの危険な事態を回避するためには、まずは米・イスラエルが突如実行した先制攻撃、トランプ氏自身が自覚している「第二のパールハーバー」作戦を、即刻、中止させなければならない。
トランプ氏の言動は、脅迫と威嚇の中で、日々揺れ動き、動揺し、孤立している。平和のための闘いが、切実なものとなっている。
(生駒 敬)

 

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【投稿】日米首脳会談:高市「世界平和を実現できるのはあなただけ」

<<トランプ「奇襲攻撃に関しては日本ほどよく知っている国はない」>>
3/19、日米首脳会談で高市首相は、こともあろうに、世界中に緊張激化と戦争を仕掛け、とりわけイランに対して、合意寸前と言われた核開発をめぐる協議の最中の2/28に、突如、違法な先制攻撃開始を開始したトランプ大統領を、「ドナルド、世界平和を実現できるのはあなただけだと確信しています」と持ち上げて、卑屈な媚びいる姿勢を露骨に示してしまった。

 気を良くしたトランプ氏は、日本の記者から、「なぜイラン攻撃前に、日本のような欧米の同盟国に戦争について知らせなかったのか?」と問われて、高市氏に目を向け、「我々は非常に強硬な攻撃を行ったが、誰にも知らせなかった。奇襲攻撃に関しては日本ほどよく知っている国はないだろう? なぜ真珠湾攻撃のことを私に知らせなかったんだ?」と冗談めかして切り返した。 この発言に一番驚いたのは高市氏であろう。それまでの笑顔がさっと引き、目を見開き、身じろぎをし、時計を何度も気にしだし、会見中のホワイトハウスの「部屋中にうめき声が響く」と形容される雰囲気となり、「日本の首相が、まるでこの狂人から逃れるために部屋を見回して出口を探している人質のように見える。」事態となったのであった。

日本帝国主義の1941年のアメリカに対する違法な先制攻撃は、トランプ氏にとっては非常に適切な見本であったのであろう。たとえジョークであったとしても、イランへの「奇襲」攻撃を正当化するために真珠湾攻撃を引き合いに出す、それは好都合であると同時に、こうした歴史的なトラウマを「取引上の武器」として利用する、トランプ氏お得意の「してやったり」の「ディール」なのである。
もちろん、たとえ本人が気に入っていたとしても、こうした「取引」で、事態の本質を隠しおおせるものではない。高市氏以外に、こうした先制攻撃を公然と支持できる首脳は無きに等しく、トランプ氏は世界中から孤立してしまっているのである。だからこそ、トランプ氏は「世界平和を実現できるのはあなただけだ」と礼賛する高市氏を、「非常に人気があり、力強い女性」「素晴らしい女性」と繰り返しほめたたえたのであった。

<<会談のツケは、お互いの持ち上げでは終わらない>>
この日米首脳会談で、どのような具体的な合意がなされたのか、意見の相違が存在したのか、いずれも定かではないが、いくつかの重要な問題点を列挙すれば、
* 日本が、ホルムズ海峡の安全な航行を確保するための「適切な取り組み」に参加する用意があると表明した。(ロイター通信 3/19)
* 日米同盟の抑止力・対処力の強化のためミサイルの共同開発・共同生産を含め幅広い安全保障協力を進めるということで一致した。
* 会談に同席したベセント長官によれば、「日本の海上自衛隊は世界最高水準の掃海艇と機雷探知能力を有しており、東京は支援を行う上で最適な立場にある。また、世界の石油市場への圧力を緩和するため、日本は石油備蓄を放出すべきだ」と述べている。
* 軌道上からの脅威を探知、追跡、そして場合によっては迎撃することを目的としたミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」への参加を日本が希望していることを、日本政府関係者2人が明らかにした。(ロイター通信
* 米国における小型モジュール式原子炉(SMR)の建設に向けた約400億ドル規模の協力協定を発表。このプロジェクトは、米国のGEバーノバ社と日本の日立製作所が共同で進め、テネシー州とアラバマ州の建設予定地を対象としている。

いずれも。危険な動向である。
高市氏は、ホワイトハウスでの夕食会で「より強い日本とより強いアメリカ、より豊かな日本とより豊かなアメリカ。この共通の目標を実現する上で、ドナルドと私は最高の親友であると確信しています」と述べ、対するトランプ氏は、「日本は本当に積極的に行動している」、「NATOとは違ってね」と応じている。当然、会談のツケは、お互いの持ち上げでは終わらない。

最も肝心なのは、戦争の拡大を停止させること、米・イスラエル共同先制攻撃作戦を即刻停止させることが、中東の戦争拡大阻止の最も喫緊の課題であり、石油・エネルギー危機解決の最短の道であるにもかかわらず、日米両首脳、どちらも触れようとしなかったことである。世界の平和と緊張緩和に敵対する日米の立ち位置を改めて露呈してしまったのである。
(生駒 敬)

 

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【投稿】「令和のオイルショック」ーホルムズ海峡封鎖で日本の国家石油備蓄はいつまで持つか

【投稿】「令和のオイルショック」ーホルムズ海峡封鎖で日本の国家石油備蓄はいつまで持つか

                               福井 杉本達也

日本の石油備蓄は2025年末で、国内消費の254日分に当たる約4億7千万バレル。内訳は国家備蓄が146日、民間石油精製業者などが義務として保有する備蓄が101日分、産油国との共同備蓄が 7日分となっている。このうち民間備蓄の10日分を3月16日に、その後国家備蓄30日分を放出する。20260315★石油の国家備蓄基地 – 石油備蓄基地、国内に10カ所 九州は福岡・鹿児島・長崎に計4カ所立地 – 写真・画像(1_3)|【西日本新聞me】

しかし、そもそも石油備蓄は254日分もあるのだろうか。民間備蓄については単なる空きタンクの名義替えということもでき、民間在庫の調整弁である。本来的な備蓄は国家備蓄だが、このうちの約1/3の1,259万トンは福井・むつ基地などは、係留ブイ方式(タンカーをブイに係留する方式)の基地であり、「安全面を考慮して普段は陸上に蔵置しているブイを海上に設置する工事を2~3ヶ月かけて行わねばならず、放出の意思決定をしてから放出可能となるまで、相応の期間を要することとなり、固定桟橋に比して放出能力は低い。」(石油備蓄のあり方検討会:2024.3)。また、備蓄原油中には、一部、カフジ原油など超重質油なども含まれ、これらの油種は国内の製油所では対応しておらず、シンガポールなどの製油所で精製しなければならない。とすれば、当面、危機対策として使えるのは100日=3カ月前後の在庫ということになる。

2 ホルムズ海峡封鎖は3カ月以上となるか

ホルムズ海峡を掌握するイラン革命防衛隊の報道官は3月11日。「1バレル200ドルまでの上昇を覚悟せよ」と述べた。11日、WSJは米軍がホルムズ海峡を通過する石油タンカーなど民間船舶の護衛要請を拒否していると報道しており、艦船の護衛なしにホルムズ海峡を通過できるタンカーは1隻もない。また、イランは、米軍が中東に派遣した原子力空母エブラハム・リンカーンの「作戦能力を完全に喪失した」と主張しており、真偽は不明であるが、オマーン湾からインド洋上へ撤退したことは間違いない。さらに、カタールに本部を置く第5艦隊司令部やバチカン市国に匹敵するバグダッドにある米大使館も激しいミサイル攻撃を受け、レーダーなどの監視網が破壊された。さらに、サウジに拠点を置く米軍空中給油機5機が撃墜あるいは損傷を受けたといわれ、ペルシャ湾岸の米軍基地は壊滅状態にある。

イランのホルムズ海峡封鎖を受け、トランプ氏は原油が欲しいなら日本を含む中国、フランス、韓国、英国などに艦船を派遣するよう呼び掛けた。「専門家からは。必要な防空体制を整えるには、タンカー1 隻につき2 隻の艦艇、あるいは5 隻から10 隻のタンカーからなる船団を護衛するには12 隻の艦艇が必要になると推定している。距離が短いため、ミサイルやドローンを撃墜するのは非常に困難だ。」と指摘している(WSJ=孫崎享2026.11.16)。万が一、海上自衛隊をホルムズ海峡に派遣するようなことがあれば、イランとの戦争状態に入ることを意味し、日本には原油は一滴も入ってこなくなる。究極の自殺行為である。

3 原油輸入停止による生活への影響はガソリン価格だけではない

3月8日の日経記事によれば、出光興産が基礎化学品エチレンの生産設備を止める可能性があることを取引先に通知したという。エチレンの原料となるナフサが中東から輸入できないためという。ナフサは原油を精製する過程で得られる。ナフサの在庫は原油に比べて極端ん位少なく20日程度とみられる。ナフサを熱分解して、基礎化学品のエチレンやポリプロピレンなどが生成される。プラスチックの原料となり、自動車や家電、食品の包装材など幅広い製品の原材料となっている。原油の精製でもナフサは得られるが1割程度でしかない。いくら国家石油備蓄を放出しても限界は間近に迫っている。日本は6割を輸入に頼っており、そのうち中東は7割を占める。三井化学や三菱ケミカルも減産に動いており、このままではスーパーの食品トレイから洗剤、車部品、タイヤ、医療機器まで、幅広い分野が影響を受ける。

4 農業肥料も輸入ストップ

イラン攻撃を受け、カタールなどの肥料工場が生産を停止した。中東は世界有数の肥料原料の生産国で、ホルムズ海峡は重要な輸出海路だ。英査会社アーガス・メディアによると、世界の尿素輸出の約34%は中東産リン酸系肥料の原料である硫黄の世界輸出シェアの50%もある。中東の混乱が1カ月続けは、インドやパキスタンなどの一部地域では肥料不足に陥るという。日本はマレーシアからの輸入が多いものの、国際価格が上昇すれば、肥料高の影響はまぬかれない(日経:2026.3.12)。

5 半導体の製造に不可欠なヘリウムも手に入らない

ホルムズ海峡の封鎖が長期化すると、半導体の製造に欠かせないヘリウムなどの素材の調達が難しくなる。ヘリウムはウエハーの冷却なとに不可欠な重要素材であり、カタールが有数の輸出国となっている。半導体の回路を形成する際に使う臭素についても、イスラエルやヨルダンに生産が集中しているため安定調達への懸念が深まる。韓国は臭素の98%をイスラエルから輸入している。半導体の生産は日韓台だけで世界のおよそ半分を占める。材料やエネルギーの供給が滞れば、世界の半導体の供給にも影響が及ぷ(日経:2026.3.12)。しかし、政府は、こうしたことはほとんど蚊帳の外である。高市首相はただただ、ガソリン価格を補助金を使ってでも170円台にしたいと考えているだけである。

6 ロシア産原油の購入を

米財務省は12日、ウクライナ侵攻亭返る対ロシア制裁を緩和して、各国がロシア産原油を購入することを一時的に認めると発表した。期間は約1カ月で、米・イスラエルとイランの交戦で高騰する原油価格の高騰を抑えるのが狙いである。トランプ政権が原油価格対策に躍起になる背景には、物価高に対する国民の不満が根強いことがある(福井=共同:2026.3.14)。

赤沢経産相は14日、「ロシア産原油を含め、海外からの原油確保は我が国エネルギー安全保障上極めて重要なものだと発言した。日本は既に2025年6月にロシア産原油の輸入を再開したものの、サハリンブレンド7万トンのみで、日本の輸入量のわずか0.7%に過ぎない(Sputnik日本:2026.3.15)。この量を大幅に拡大すべきである。ロシア制裁に参加せず、ウクライナ侵攻以前の8%~10%程度の輸入実績があれば、これほどドタバタすることはなかったははずである。ロシア産LNGもしかりである。

2022年、ロシアのウクライナ侵攻の直後に、リベラル派といわれる立教大学特任教授の金子勝氏は「ロシアのウクライナ侵攻を止めるにはロシアへの経済制裁しかないとし、プーチンの戦費の根源である資源輸出に対して、日本はサハリン1、2やアーク2などからすぐ撤退すべきだ。」と煽った。理由は安倍元首相らが開発を主導したからだという。これが、日本のリベラル派や野党の実態である。長年にわたり米国の属国として生きていると、後先を考えずに、その場の感情のみで、数年後に何が起こるかも見通せない。このままでは、ホルムズ海峡でタンカーが沈没する前に日本沈没である。

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【投稿】イラン女子小爆撃・国防総省調査:トランプの大嘘を暴露

<<米軍によるイランの学校攻撃は米国の過失と予備調査が指摘>>
3/11、ニューヨーク・タイムズ紙は、「米軍によるイランの学校攻撃は米国の過失と予備調査が指摘」(U.S. at Fault in Strike on School in Iran, Preliminary Inquiry Says)と題して、「進行中の軍事調査によれば、古い標的データが誤ったミサイル攻撃を引き起こした可能性があり、これはトランプ大統領の「イランに責任がある」との主張を弱めるものだ」と報じている。
 タイムズ紙の記事は、国防総省の内部調査結果、現場から回収された米軍マーク付きミサイルの破片、ビデオ映像、報道機関による外部調査、人権団体による分析に関するこれまでの報道とことごとく一致している。

米国防総省(ペンタゴン)の予備調査の結果、米・イスラエル合同による、一方的な軍事作戦の初日の爆撃、女子小学校爆撃に関して、トランプ大統領が繰り返してきた、「イランが自国小学校を爆撃した」、「イランの兵器は非常に精度が低いから」という発言は、とんでもない大嘘であることが、あらためて暴露されたわけである。

タイムズ紙によると、米国の捜査官は、イラン南部の都市ミナブにある女子小学校への攻撃は、「米軍の標的設定ミスによるものだった。米軍は、この校舎がかつて一部だった隣接するイラン基地への攻撃を行っていた」と結論付けている。同紙は、捜査について説明を受けた匿名の関係者を引用し、「米中央軍の将校らは、国防情報局(DIA)から提供された古いデータを用いて攻撃の目標座標を作成した」こと、「当局者は、調査結果は暫定的なもので、なぜ古い情報が二重チェックされなかったのかという重要な疑問が未解決のまま残っていることを強調した」と報じている。

 NBCニュースはすでに3/7に、このミナブの小学校は、15年前に閉鎖されたイラン革命防衛隊の旧基地跡地にあったもので、10年前にイラン海軍施設から分離されていたようだと報じている。

その前の3/3、アラブニュース報道のアルジャジーラは、衛星画像、ビデオ映像、その他の資料を検証した結果、「学校への爆撃は、施設のレイアウトの度重なる変更に対応できない時代遅れのデータベースに依存したことによる重大な情報収集の失敗の結果か、あるいは学校を軍事システムの一部とみなすという関連性に基づく意図的な攻撃だったかのいずれかである」と結論付けた報道を行っている。

<<「ヘグセス氏は解任されるべきだ」>>
このニューヨーク・タイムズ紙の報道は、ジョン・フェッターマン上院議員(民主党)を除く上院民主党議員団全員が、3/11、ヘグセス国防長官宛てに書簡を送り、学校銃乱射事件に関する「迅速かつ透明性のある」調査を要求した直後に行われたものであった。
その書簡は、「調査結果は、責任追及のためのあらゆる措置とともに、できる限り速やかに公表されなければならない」と要求している。

 エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党)は、この新たな報道を受けて、イランの学校における大量殺人事件は「ここ数十年で最も壊滅的な軍事的ミスの一つ」だと述べ、「トランプは嘘をついた。[国防長官]ピート・ヘグセスは民間人の犠牲を防ぐために国防長官室を骨抜きにした。175人が死亡した。そのほとんどは子供たちだった」、「ヘグセス氏は解任されるべきだ」と主張している。

米人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの元事務局長ケネス・ロス氏は、ニューヨーク・タイムズ紙の報道に対し、トランプ政権が過去の標的情報のせいで虐殺事件を免れるべきではないと主張、「『古いデータ』では、米軍がイランの女子校を攻撃し、175人(主に女子)を殺害した理由を十分に説明できない」と指摘し、「なぜ攻撃前にデータを更新しなかったのか?イランの民間人の命は重要ではないのか?」と問いかけている。

 擁護団体「公正な外交政策」(Just Foreign Policy)は、「ヘグセスは戦争犯罪で起訴され、訴追される可能性がある」と指摘している。

問題は、「ヘグセス氏は解任されるべきだ」にとどまるべきではないことが歴然としていることである。ことここに至るまでの責任は、トランプ大統領そのものにある。ヘグセスを筆頭に、トランプ政権閣僚はなべて、おべっか使いで、お追従の徒ばかり、そんな人物しか選んでいないことが災難をもたらしているのである。あまりにも独善的で、己の卑劣な衝動を満たすことに躍起になっているため、現実に起こっている困難な状況を認識できないのであろう。大統領弾劾によって、トランプ政権に終止符を打つことが要請されている、そのような段階に来ている、近づいているのだと言えよう。
(生駒 敬)

 

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【投稿】米・イスラエル軍:対イラン戦争・迅速勝利の崩壊

<<トランプ氏のドタバタ:対イラン戦「まもなく終結」>>
3/10、トランプ大統領は、イランへの攻撃は「間もなく」終了する、ただし、今週中に終結することはないと発言。しかし、そのわずか数分後、フロリダ州ドラルでの記者会見で、イランが世界の石油供給を妨害しようとすれば攻撃を強化すると警告し、中東情勢が悪化する可能性があると発言。さらに、イランが「完全かつ決定的に敗北」するまで戦争は続くと述べている。
記者が、「あなたはこれを「短期の遠足」“short-term excursion.”だと呼びました。すぐに終わるだろうと言いました。今週中に終わると思っているのですか?」と質問すると、「いいえ、でもまもなくです。」と答えている。
 まさに、ドタバタである。この右往左往のトランプ氏の発言に振り回されて、市場はジェットコースターのような動きを見せ、原油価格は急騰し、株式市場は急落したが、その後反転、さらにトランプ大統領とロシアのプーチン大統領との電話会談が「非常に有意義」であった、ロシアのエネルギーに対する制裁緩和の可能性に関する報道を受けて、市場は再び混乱に見舞われている。

そもそも、トランプ氏、ならびに閣僚の発言は、違法な対イラン先制攻撃開始以来、目まぐるしく変遷し、追い込まれ、後退に後退を重ねている。「すぐに終わる」どころか、「9月まで戦争を続ける」計画を立てざるを得なくなっていたのである。

その経緯は以下の通りである。
* 2月28日、トランプ大統領はAxiosに対し、イランとの戦争は「2、3日」で終結する可能性があると発言。
* 3月1日、トランプ氏はビデオメッセージを発表し、戦争は「4週間以内」で終わると述べた。
* 3月2日、トランプ氏は、戦争は「4~5週間と予測されている」と述べ、米軍は「それよりもはるかに長く続く能力」を持っていると付け加えた。
* 3月4日、ピート・ヘグゼス陸軍長官は記者団に対し、「4週間と言うことはできるが、6週間かもしれないし、8週間かもしれない」と述べた。
* 3月6日、ポリティコは国防総省が9月まで戦争を続ける計画を立てていると報じた。
* 3月9日、CBS報道によると、トランプ大統領はホルムズ海峡の制圧を検討している。( Strait of Hormuz → Strait of America )

<<「その夢は墓場まで持っていくべきだ」>>
この3/10の記者会見は、2月28日に攻撃を開始して以来初の公式記者会見で、トランプ氏は、記者団に対し、イランはもはや海軍、空軍、対空兵器を保有していない、「全てが吹き飛ばされた」、「彼らにはレーダーも通信手段もなく、指導力も存在しない」、「戦争はほぼ完了したようなものだ」、だから対イラン戦は「すぐに終わるだろう」と発言したのであるが、共和党議員に向けた演説では、「我々は既に多くの点で勝利を収めてきたが、まだ十分ではない」、「勝利は不十分」「20倍にして報復攻撃する」と付け加えている。

 ところが、戦争の実態は、
9日目: イラン戦争はより広範囲かつ長期化
― イランの新たな強硬路線の指導者
― 新リーダーが「新たな段階」を約束
― イランによる過去24時間のドローン攻撃は130機以上
― 米軍は「限定的」な地上部隊を語る
― バーレーンの淡水化施設が打撃を受ける
― 原油価格102ドル、4年ぶりの高値
― アメリカ人は不支持、59%対41%
― ロシアはイランに情報を集中させている

対するイランは、3/9、米国との長期戦に備えており、経済的な痛みだけが終結をもたらすだろうと高官がCNNに語っている。
イランの最高指導者室の外交政策顧問であるカマル・ハラジ氏は「もはや外交の余地はないと思う。ドナルド・トランプ氏は他者を欺き、約束を守らなかった。我々は2度の交渉でこれを経験した。交渉の最中に攻撃を受けたのだ」と述べ、「他国が介入して米国とイスラエルによるイラン侵略の終結を保証するほどの経済的圧力がない限り、介入の余地はない」、「この戦争は、インフレやエネルギー不足といった形で、他国に多大な圧力、つまり経済的圧力をかけてきた。もし戦争が続けば、この圧力はさらに高まり、他国は介入せざるを得なくなるだろう」と述べている。

そして、昨年6月来の、たび重なる米・イスラエルの背信的行為や先制攻撃の経験から、実際のイランの軍事力は質的・量的に強化され、イスラエルの防衛迎撃ミサイルの枯渇、数十億ドル規模のアメリカのレーダーシステムの破壊、そして綿密な準備によって支えられおり、イラン側は新型ミサイルも保有、適切なタイミングで使用することを明言しており、長期戦に耐えうる膨大なミサイル備蓄を保有しているのである。

現実に、3/9の時点で、イラン側からの反撃、弾道ミサイル「数十発」の攻撃を受けて、中東の米軍基地は軒並み攻撃を受け、イスラエルのテルアビブは完全に停電し、イスラエル最北端のハイファ港は全焼、

ハイファの製油所も全焼したと報じられている。

トランプ氏の対イラン戦・「間もなく終結」発言に対して、イラン側は「停戦の第一の条件は、イランへの攻撃の停止である」ことを明確にし、ペゼキュシアン大統領は、イランの降伏を期待する者は「その夢は墓場まで持っていくべきだ」と、トランプ氏に突き付けている。

トランプ氏の「まもなく終結」発言と、自らの発言をめぐる右往左往は、土壇場のあがきだとも言えよう。一刻も早く戦争終結に追い込む、平和のための闘いが要請されている。
(生駒 敬)

 

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【投稿】トランプ:「イランが自国小学校を爆撃」と妄言

<<「イランの兵器は非常に精度が低いからです」>>
3/7、イラン南部ミナブの女子小学校への攻撃は、米国の責任かと問われたトランプ米大統領は、「私が見た限りでは、イランによるものだと私は思う」と述べた。(Trump said, “In my opinion, based on what I’ve seen, that was done by Iran.”)

 同日、フロリダで開催された米州首脳会談に向かう途中、大統領専用機・エアフォースワン機内で行われたトランプ氏の記者会見で、ある記者が「アメリカは開戦初日にイラン南部の女子小学校を爆撃し、175人を殺害したのか?」と質問した。
あわてたトランプ氏は、「イランによるものだと考えています。ご存知のとおり、イランの兵器は非常に精度が低いからです」と述べ、「全く精度がありません。イランによるものです」と付け加えたのであった。
記者は、後ろに控えていたピート・ヘグゼス国防長官にも質問を投げかけ、「ヘグゼス長官、あれを行ったのはイランだというのは本当ですか?」と尋ねると、「調査中です」と答え、「しかし、民間人を標的にしているのはイランだけだ」と、これまた大ウソを吐き、トランプ氏の推測を支持、擁護。このヘグゼス長官の発言を受け、トランプ氏は、困惑した表情だったとはいえ、「イランによるものだ」と繰り返し表明し、断言したのであった。

自らへの責任追及を恐れ、言うに事欠いて、あからさまなウソ・偽りを平気で吐き、個人的推測を公式発言として押し通そうとする、トランプ氏は、もはや責任ある公人の資格を自ら放棄した、と言えよう。

イランの政治指導部は、ミナブ女子校への攻撃は米国とイスラエルの責任であると述べ、マスード・ペゼシュキアン大統領は、同校への攻撃は「我が国の歴史的記憶から決して消えることはない」と強調、アッバース・アラグチ外相は爆撃を「犯罪」と呼び、見過ごすことはないと、国際的な非難と調査を求めている。
国連はこの攻撃を「子ども、教育、そして地域社会全体の未来に対する重大な攻撃」と非難し、「民間人を決して巻き添えにしてはならない」と強調している。

<<米軍が「非常に精度が低い」状態に追い込まれた怒り>>
トランプ氏のこの責任逃れのでたらめな推測は、衛星画像やその他の報道から、小学校への爆撃は、少し離れているとはいえ、近くの軍事施設への空爆と同時に起きていたこと、何回も繰り返し爆撃していたことが明瞭に示されており、この動かしがたい現実を否定するものである。

トランプ氏の発言の前日、3/6、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、「米軍の調査官は、イランの女子小学校で多くの児童が死亡した攻撃は米軍の責任である可能性が高いと考えていると、米当局者自身が述べたこと。調査はまだ最終結論に至っていないと当局者は述べた」と報じていたのであった。WSJばかりか、AP通信、CNN、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストによる調査とも矛盾しており、これらの調査はすべて、衛星画像などの視覚的証拠に基づき、米国が破壊した可能性が高いと結論付けているのである。

 3/6、イラン革命防衛隊(IRGC)は、イラン南部の学校への攻撃は、アラブ首長国連邦(UAE)の米軍アル・ダフラ空軍基地(Al Dhafra Air Base)から実行された と発表し、「この地域に潜む米軍テロリストのUAEにあるアル・ダフラ空軍基地であった。シャジャレ・タイベの学校への犯罪的な攻撃は、この基地から実行され、女子生徒165人以上が死亡した」と声明で述べ、IRGCは、イラン軍がUAEの米軍アル・ダフラ空軍基地とヨルダンのムワッファク・サルティ空軍基地のTHAADレーダーシステムへの攻撃に成功したと発表している。

この両基地は、米軍が運用する中東地域の中核的な空軍基地であり、米国製高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)のレーダーシステム4基が設置されていた。
このTHAADのレーダーシステムは、レイセオン社製のAN/TPY-2可搬式レーダーで、2025年度のミサイル防衛局(MDA)予算によると、その費用は5億ドル(約790億円)近くに達するもので、これがIRGCの標的として攻撃されたのである。このイラン軍の攻撃によって、湾岸のTHAADシステム4基が破壊され、米軍レーダー・衛星通信システムが麻痺状態に陥っている、それが米軍にとっての取り返しのつかない現実なのである。
米軍にとっては致命的な打撃であるが、米国防総省は「作戦上の安全保障上、この地域における具体的な能力の状況についてはコメントしない」と、これを認めようとしないし、認めることができない。その怒りが、トランプ発言となったのだとも言えよう。米・イスラエル軍の攻撃が、「非常に精度が低い」状態に追い込まれた、その怒りである。
(生駒 敬)

 

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【投稿】選挙は「ナラティブ化」され、金融資本のマーケティングの対象に

【投稿】選挙は「ナラティブ化」され、金融資本のマーケティングの対象に

                              福井 杉本達也

1 議院内閣制にもかかわらず、「大統領」を選らぶ?

高市首相は今回の衆院選で、「高市早苗が首相で良いのかどうか、国民に決めていただく。」(1月19日高市首相会見)とし、選挙期間中は、「国論を二分するような問題に取り組めるように信任をもらいたい」と、国家の命運を決めるような問題にまでその内容も示さず、白紙委任を求めた。あたかもアメリカの大統領選の間接選挙のように、高市氏を選ぶために、小選挙区の候補者は「個々の州に割り当てられた選挙人」として振る舞い、「選挙人」は首班指名選挙で高市氏に投票するということである。あたかも高市氏という「大統領」を国民が直接選ぶように錯覚させた。

2 「自由」な個人という中間層の解体と収奪者のマーケティング選挙

近代社会は経済成長によって国民の豊かな生活を保障するシステムであり、それによって社会の秩序を図ってきた。ところが、日本では1990年代後半から経済成長が低下したことから、成果を労働者の賃金に分配するのではなく、資本家の利潤により多くを分配することを行ってきた。結果、上位層に富が集中し、「近代最大の発明」である中産階級は危機に瀕している(水野和夫『シンボルエコノミー』)。2025年の家計調査によると、2人以上の世帯が使ったお金のうち、食費に充てた割合を示す「エンゲル係数」は28・6%に上昇した。1981年以来41年ぶりの高水準となった。富が一部の社会エリート層に独占され、賃上げや人的投資が疎かにされ、金権政治がまかり通る収奪的な社会にシフトしている。多くの国民が直面し呻吟している物価高騰と生活苦がある。このリアルな現実に、既存の社会保障と税、さらには雇用の制度が機能していない。今の政府の長い間の所業はそのイメージとは乖離し、世代間格差や年金破綻など、国民の間の分断や政府不信を煽るものとなっている。

大統領(日本では首相)を選ぶ「自由」な個人は、中産階級のそれではなく、社会から切り離され、アトム化された消費者であり、収奪する側の社会エリート層によるマーケティングの対象となってしまった。

3 「ファンダム政治」

「『ファンダム(Fandom)』は『ファン(Fan)』と領域や集団を意味する接尾辞『ダム(-dom)』が合わさった英語由来の造語である。それは、特定のアニメや⾳楽、アイドル、スポーツなどに対する熱狂的なファンの集まりやその集団が形成する⽂化・世界観全体を指す。最近の⽇本語の語彙で⾔うと、『推し活』のニュアンスと重なる。ファンダム政治は、政策や理念よりも特定の政治家・政党に対する感情的同⼀化・物語的共感・帰属意識を軸に成⽴する⽀持形態を指す。」「ファンダム政治は⺠意ではなく、関係性を起点とする。⽀持が個⼈のアイデンティティと直結すると⾔ってもよい。⽀持者は『この政策が正しいから』ではなく、『この⼈が⾔うなら正しい』や『この⼈は攻撃されているから守るべきだ』という感情的論理によって動員される。ここでは、政治家は代表者と⾔うよりも、物語の主⼈公であり、⽀持者は批判的市⺠ではなく、共同体の構成員である。⽀持者は愛する政治家や政党への批判を⾃⾝に対する否定と認知し、激しい反撃⾏動に⾛る」(「ファンダム政治としての⽇本的ポピュリズム―⽀持の感情化と⺠主主義の空洞化」Saven Satow 2026.1.19)。

 

4 SNS空間のアルゴリズム

「SNSのアルゴリズムは閉鎖的な信仰をもたらす装置である。ファンダム政治の核である物語的共感は、都合の悪い事実を遮断することで維持される。アルゴリズムが『推し』に有利な情報のみを供給し続けるため、外部からの批判はすべて既得権益層──オールドメディアや敵対勢⼒──による不当な攻撃として処理される。加えて、たんに扇動されるだけでなく、ファン⾃らが擁護投稿や反論キャンペーンを組織することで、⽀持者は⾃分が歴史の主⼈公(政治家)と共に戦っているという物語の当事者性を獲得する。」(同上:Saven Satow 2026.1.19)

5 「物語」・「ストーリー」・「ナラティブ」――『イン・ザ・メガチャーチ』朝井リョウ

書店には本屋大賞のノミネート作品として、平成生まれの直木賞作家・朝井リョウの最新作『イン・ザ・メガチャーチ』(2025年9月・日本経済新聞出版)が積み上げられている。作品では、音楽業界で生きる主人公・久保田慶彦を中心に、売り上げのために物語化に血道をあげる様子が描かれていく。商品を売るにあたり。マーケティングをする側からは、商品のスペックの高さではなく、消費者が感情移入し、没入できるストーリー(物語)を提供することにある。それがうまくいけば、本来1個しか売れないはずのものが何個も売れるようになる。「百万人にそれなりに利用されるよりも、一万人の利用者を深く没頭させるほうが、リターンがおおきくなる」「プレイヤーの没頭度という指標は、ファンダムの熱量」であり、「熱量の低い百万人ではなく、熱量の高い一万人」が結果として「母体の勢力拡大に繋がる」とする。物語化には「物語に没入し、共感能力を高め、自他の境界が曖昧になるほどの視野狭窄」が必要となる。そんな魔法のようなことを起こす力が物語にはある。、物語化は、視野を狭くし、自分たちの関心事のみに関心を持ち、違う価値観の人々とは混じらず、従って距離は取るが尊重し合うわけではないという分断された世の中を作り上げる。そして、自分の信じる物語をあなたも信じてみませんか、と布教活動を始める。資本主義社会における会社組織は黒字を出し続けなければならない。「物語化」をマーケティングの中核に据え売上アップと利益の最大化を目指す。そのプロセスで自ら視野を狭くし、周囲を見ずに没入し、感情の高揚に任せた先に、多様性を容認しない分断社会がある(鴻巣友季子の文学潮流(第31回)朝井リョウ分析の精度に慄然とする「イン・ザ・メガチャーチ」:2025.10.31)。

作中の隅川絢子は語る。「おかしいと思わない?真面目に働いて残業して、特別な贅沢もせずただ生きているだけなのに生活がギリギリって。そんなのもう国として成り立ってないんじゃない。税金と物価だけが上が続けて平均年収は横ばいで生きている間に年金を受け取れるかもわからない。それなのに政府は海外にお金をバラ撒いてばかり。でも日本人は何も言わない。気づかない。目覚めない。自己責任って言葉に呑まれて、自分は努力不足だから仕方がないって反省している人ばかり」と。こうした不安と不満をナラティブ化したのが、女性で初めてガラスの天井を破った「高市早苗」である。「責任ある積極財政」を掲げ、その中身は全く不明であるにもかかわらず、あたかも、失われた30年の救世主であるかのように振舞った。

6 SNSが揺さぶる社会秩序

「情報過多は注意の貧困をもたらす」(ハーバード・サイモン)。人間の認知脳録には限界があり、どんな多くの情報があっても、それを処理するための時間や関心には上限がある。知識をインプットしたら、ある程度それを反芻する時間を置かなければ定着しない。安易に「わかった気にさせる」情報発信は、何もしていない状態よりも、有害な部分がある(『世界経済の死角』:河野龍太郎+唐鎌大輔)。

人類は、限られた時間の中で創意工夫を重ね、考える時間を確保しながら、徐々に豊かさを築いてきた。人類は150人規模の集団で行動し、集団ととしての強みを発揮してきた。人間同士が顔と名前を一致させ、信頼と規律が保たれる上限である。それを、国家や宗教、法律といった「共同主観的な虚構」により、その限界を乗り越えてきた。特に、政治の領域では「政党」や「議会」といった中間組織の存在が、限界を超えて社会を統治することを可能としてきた。ところが、SNSを駆使することによって、この中間組織が弱体化しつつある。「SNSを通じて有権者と直接つながる」こと、政党や議会といった中間組織を蔑ろにして、中間的な組織を介さずに政治のトップが人々と直接つながることを可能とした。しかし、それは政治の意思決定におけるバランスを崩し、長い時間をかけて築いてきた「協力の仕組み」を機能させなくし、近視眼的な判断や、一時的なブームによる軽率な意思決定生みだす(同上:河野・唐鎌)。

米・イスラエルによるイラン攻撃は長引く公算が大きくなった。ホルムズ海峡の封鎖により、原油の供給懸念が強まりつつある。日本はサウジアラビア、アラブ首長国連邦などの中東地域からの輸入比率は9割を超える。石油ショックの再来である(参考:堺屋太一『油断』1975)。「物価上昇が家計を苦しめ、再エネも『悪者扱い』されやすくなった。日本が貧しくなった」「今や円の実質実効為替レートは1970年代並みの低水準である。かつての『有事の円買い』も期待薄だ。2026年の『油断!』には往時のように国の総力を挙げて取り組まねばなるまい。金融緩和などで『強い日本』は戻ってはこない」(日経:「大機小機」 2026.3.7)。高市内閣の「責任ある積極財政」は、アベノミクスの二番煎じ過ぎず、「石油ショック」の荒波に翻弄され、ロシアへの積極的アプローチといった長期的なエネルギー供給の戦略を欠き、早晩沈没せざるをえない。

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【投稿】米イスラエル爆撃・イラン女子小学生171人虐殺抗議の葬儀

<<女子小学校に5回もの空爆を実施>>
3/3、イラン・ホルモズガーン州ミナブにあるシャジャレ・タイエベ女子小学校が、2月28日の朝、米イスラエル合同による一方的な軍事作戦の初日に攻撃を受け、主に7歳から12歳までの子供たち、少なくとも171人の女子生徒が殺害され、その葬儀が執り行われた。攻撃時に学校にいた少なくとも14人の教職員と保護者4人も死亡している。葬儀の様子を捉えた写真には、小さく浅い墓が何列にも並んでいる様子が写っている。犠牲者の大半は身元が確認されたが、25人は依然として身元不明のままであり、複数の子どもを失った家族もいる。

 悲しみに暮れる保護者たちは破壊された学校の跡地に集まり、参列者たちは喪服を着て、故人の遺影を手に、街の中央広場を葬列が進み、弔問客は次々と棺を運び、悲しみに暮れ胸を叩き、ある父親は地元記者に対し、学校に到着すると「非常に悲痛で胸が張り裂けるような光景」が広がっていた、生徒と教師は「瓦礫に埋もれていた」と語り、「犯罪者アメリカ」とイスラエルを「子供殺し」だと非難している。

この爆撃では、米軍とイスラエル軍の戦闘機が、当時午前中の授業が行われていたこの学校に対し実に5回もの空爆を実施し、数時間後には、近くの診療所も攻撃を受けている。

 イランのアッバス・アラグチ外相は、Xに墓の写真を投稿し、「これは、米イスラエルによる小学校爆撃で殺害された160人以上の罪のない少女たちの墓を掘っているところです。彼女たちの遺体は引き裂かれていました。トランプ氏が約束した『救出』の現実はこうです。ガザからミナブまで、罪のない人々が冷酷に殺害されているのです。」と述べている。

当然、この冷酷・非道な攻撃は国際的な非難を広く招き、国連人権高等弁務官事務所は調査を求め、ラヴィナ・シャムダサニ報道官は、これらの写真は「この紛争の破壊、絶望、無意味さ、そして残酷さの本質を捉えている」と述べ、「迅速かつ公平で徹底的な真相究明の調査」を求めている。
米、イスラエル側からは、謝罪も説明もない。マルコ・ルビオ米国務長官は、米軍が「意図的に学校を標的にすることはない」と主張しているが、米戦争省報道官は「民間人被害に関する報告を認識している」と述べ、「調査中」だと述べるだけで、口をつぐんでいる。
(生駒 敬)

【転載】ミナブの学校爆破事件で犠牲者168人の葬儀が執り行われたが、69人の生徒の身元は依然として不明である。
2026年3月3日 パレスチナ・クロニクル紙

以下は、3月3日のパレスチナ・クロニクル紙からの転載である。(生駒 敬)

ミナブの学校爆破事件で犠牲者168人の葬儀が執り行われた。当局は69人の生徒の身元確認を継続している。

主な進展
* ミナブのシャジャレ・タイエベ学校で犠牲者168人の葬儀が執り行われた。
* 犠牲者の大半は生徒で、96人が負傷した。
* 生徒99人の身元が確認されたが、69人の身元は未確認である。
* 最終的な身元確認のため、遺族はDNAサンプルの提供を求められている。
* この攻撃は、2月28日の米イスラエル合同攻撃中に発生しました。

ミナブで集団葬儀

イラン南部ホルモズガーン州ミナブにあるシャジャレ・タイエベ(タイバの木)女子小学校で犠牲となった168人の遺体の葬儀が火曜日に執り行われました。

米イスラエルによる攻撃の初日である土曜日、同校は爆撃を受け、イラン当局はこれを「虐殺」と表現しました。この攻撃により、生徒を中心に計168人が死亡し、さらに学校職員と保護者数名が負傷しました。この攻撃により96人が負傷しました。


ホルモズガーン州ミナブにあるシャジャレ・タイエベ女子小学校は、米イスラエルによる攻撃初日に攻撃を受け、犠牲者168人の葬儀が火曜日に執り行われた。イラン当局はこの攻撃を「虐殺」と呼んでいる。

この大規模な攻撃は、土曜日の早朝、米国とイスラエルがイランの複数の州で協調攻撃を開始したことから始まった。この攻撃により、高官や軍関係者、アリ・ハメネイ師を含む数百人のイラン人が死亡した。

イランの国営メディアと当局者は、学校が授業中に攻撃されたと述べ、民間インフラへの直撃だったと表現した。

身元不明の生徒69人

イラン当局は、ミナブの学校への攻撃で死亡した生徒168人のうち、69人の身元が未だ確認されていないと発表した。

教育省情報広報センターのホセイン・サデギ所長はタスニム通信に対し、犠牲者99人の身元が完全に特定され、氏名が公表されたと述べた。

サデギ所長は、残りの69人の学生については公式記録に未だ記載がなく、身元が確定していないと述べた。

身元確認手続きを完了するには、法医学的確認のため、遺族からDNAサンプルの提供を受ける必要があるとサデギ所長は述べた。

イラン当局によると、ミナブ攻撃は、国内の複数の民間人居住地域を標的とした大規模な軍事攻勢の一環であり、多数の民間人犠牲者を出した。

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