【投稿】福島第一原発とオリンピック

【投稿】福島第一原発とオリンピック
福井 杉本達也

1 聖火リレー
2013年9月、アルゼンチン・ブエノスアイレスにおいて、安倍首相は,2020東京オリンピックの招致のために,福島第一原発事故は “アンダーコントロール” されていると,「大ウソ」をついた。これで福島原発の「不都合な事実」は国際的にも隠蔽されることが決定された。結果、オリンピックの「聖火リレー」の出発地点を福島原発事故対応拠点だったサッカー競技場Jヴィレッジにし、聖火ランナーは放射能汚染地域をくまなく走り抜けることとなる。とりわけ葛尾村→浪江町→南相馬市を抜けるルートは、人の住めない放射能汚染地域を走るもので、聖火ランナーの被ばくは確実である。東京都に匹敵する広大な国土を放射能汚染地にし、いまなお5万人が避難し続け、今後10万年管理し続けなければならないにもかかわらず、東京オリンピックを「福島復興」・「復興五輪」としてでっち上げ、福島原発事故を無かったものとして、完全に消し去る「大キャンペーン」を繰り広げている。 続きを読む

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<<“嫌韓・反韓”に対峙できない野党共闘--統一戦線論(63)>>

<<作り出された「最悪の日韓関係」>>
時事通信が8/9~12日に実施した世論調査で、安倍内閣の支持率は前月比3.9ポイント増の47.0%、不支持率は同0.2ポイント減の30.8%であった。韓国向けの輸出管理を強化した措置や、ハンセン病元患者家族をめぐる裁判で控訴を見送り謝罪した政府対応が評価されたとみられる、と報じられている。政党支持率は、自民党が前月比2.4ポイント増の28.0%に対し、立憲民主党5.8%、公明党4.1%、日本維新の会2.2%、共産党2.1%、れいわ新選組1.0%、国民民主党0.6%、NHKから国民を守る党0.4%、「支持政党なし」53.4%であった。
先月の参院選の結果は、安倍政権が執拗に追求してきた9条改憲をいよいよ現実の政治日程に格上げさせるはずであった改憲発議に必要な3分の2の議席をも割り込ませてしまった。自民党の比例区得票数は300万票余り、自公与党あわせて400万票余り、2割近くの大量の得票を失い、議席も得票数も得票率も大きく減少させてしまった。自公与党にとっては、深刻な事態である。にもかかわらず、1人区で野党共闘が善戦したとはいえ、複数区では野党共闘は機能せず、自民党はやすやすと漁夫の利を獲得、議席の過半数を制した。一強他弱で政権基盤強固と見えながらも、内実は不安定極まりないものである。
しかし、その後の世論調査の結果が、安倍内閣支持率上昇である。自民党支持率も上昇し、自民28%に対し、共闘を組む野党は合わせても9%弱である。
その背後には、第二次安倍政権が発足以来、強力に推し進められてきた歴史修正主義の路線の顕在化が指摘されなければならない。それは、日本軍国主義・ファシズムの路線、侵略と植民地化を正当化する路線、とりわけ悪意ある嫌韓・反韓路線が系統的に、執拗に煽り立てられ、組織されてきたナショナリズム=民族主義の路線である。
参院選を前にして、意図的に持ち出されてきた韓国に対する輸出規制は、韓国大法院(最高裁)が、朝鮮半島植民地下の元徴用工らについて、日本企業に賠償を命じる判決を下したことに対する明らかな報復措置である。実際に、安倍首相は「徴用工の問題で、国と国との約束(1965年の日韓請求権協定)を守れない国であれば(安全保障上の)貿易管理をちゃんと守れないだろうと思うのは当然だ」として「徴用工」問題の解決の手段としての輸出規制をあげたのである(7/7 民放番組の党首討論)。
そして参院選最中の7/19、河野外相は駐日韓国大使を外務省に呼び出し、韓国が日韓請求権協定に基づく「仲裁委員会」の設置に応じなかったことについて、「極めて無礼」などと発言したのである。その上から目線の尊大、傍若無人ぶりは、韓国を植民地・朝鮮の宗主国として見下す、ひんしゅくを通り越して、自民党内からさえ批判を招いた大恥ものである。
韓国の文大統領が、日本の措置は、「強制労働の禁止」と「三権分立に基づく民主主義」という人類の普遍的価値や国際法の大原則に反する行為と批判し、「今後起こる事態の責任も全面的に日本にある」と強調したのは当然のことである。最悪の状態といわれる日韓関係は、安倍政権が意図的に人為的に作り出したものなのである。

<<“嫌韓・反韓ファシズム”>>
だが、この意図的な日韓関係の最悪化、そして経済制裁は、破綻せざるを得ないであろう。なぜなら、日本政府自身がすでに「徴用工問題」を口にできなくなっているのである。トランプ米大統領の「アメリカファースト」に倣って、ナショナリズムを煽る安倍首相は、相も変わらず、「最大の問題は、国家間の約束を守るかどうかという信頼の問題だ」と述べているが、韓国がWTO提訴の意向を明確にするや、問題が国際化することを怖れ、徴用工判決の報復ではない、と言い出し、「安全保障上の国際的責任からホワイト国指定を取り消す輸出管理の問題だ」とすり替えだしたのである。歴史修正主義批判に耐えられない安倍政権の葛藤と矛盾の現われである。
しかし大手マスコミ・マスメディア、新聞・テレビはそうした矛盾や真実に目をふさいだまま、政府主張をそのまま垂れ流し、むしろお先棒を担いで「嫌韓・反韓」を煽ることに精を出し、週刊誌などはそのオンパレードである。
その典型が、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に出品された「平和の少女像」を「反日プロパガンダ」などと抗議し、「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」というファックスでテロ予告し、「表現の不自由展」を中止に追い込む事態である。名古屋市長や、大阪府知事・大阪市長、菅官房長官らが公然とこの事態を擁護し、むしろ推進する、異常な事態の出現である。「平和の少女像」問題は、戦時性奴隷としての「慰安婦」問題であり、「徴用工」問題は戦時強制労働の問題であり、いずれも日本軍国主義・ファシズムが作り出したものであり、それらを取り上げること自体を「反日」としてフレームアップし、社会から孤立させようとしているのである。
安倍政権が煽動する“嫌韓・反韓”を、大手メディアが増幅し、ヘイト発言が大手を振って横行し、それを批判する言論や行動が「反日」と糾弾され、封殺される、一種の“嫌韓・反韓ファシズム”的な事態が醸成されようとしているとも言えよう。そうした事態を社会全体に蔓延させ、安倍政権が期待し、演出するシナリオでもある。

<<安倍政権に同調する野党>>
問題はこうした事態に対峙すべき野党が、事実上、安倍政権に同調していることである。
立憲民主党の枝野代表は、「私は弁護士で国際法が専門なのですが、国際法の観点でいえば『元徴用工』問題も、『貿易管理』の問題も、日本に理がある話だと思っており、その点では、政府を支持しています。」(AERA2019年8月12-19日号)と平然と述べている。「強制労働の禁止」と「三権分立に基づく民主主義」という人類の普遍的価値や国際法の大原則に反する行為を弁護して、なにが「国際法が専門」なのか、あきれたものである。福山幹事長も「悪化する日韓関係について『日本政府の主張に一定の理解はしている』と述べ、野党としても政権の対応を支持する姿勢を示した。」(8/2 朝日新聞)というのである。
国民民主党の玉木代表も8/1、来日中の韓国国会議員団と面会した際、1965年の日韓請求権協定について「絶対に守ってほしい。これと違う対応をすると、根底から両国関係が崩れてしまう」と伝えたことを明らかにしている。
立憲、国民両党は、ほぼ安倍政権の主張と同列である。いずれも、請求権協定は国家間の協定であって、徴用工問題は、日本の植民地支配に基づく韓国の個人と日本の民間企業の問題であり、日本政府自身が認めてきた「個人の請求権は消滅していない」という大前提が忘れ去られている。そしてこの個人の請求権に基づいて、中国との間では、1972年の日中共同声明で中国政府の戦争賠償請求権が放棄された後の、2000年鹿島建設和解、2009年西松建設和解、2016年三菱マテリアル和解で、日本企業から和解金が支払われたが、今回のように政府が日本企業に和解に応じるななどと口をはさむことはなかったのである。こうした現実を無視した、韓国の個人の人権を無視した安倍政権の姿勢を擁護することは、安倍政権と同罪と言えよう。
共産党の志位委員長は8/2、韓国政府との冷静な話し合いにより、事態の解決をはかることを強く求め、「政治的な紛争の解決に貿易問題を使うのは、政経分離の原理に反する『禁じ手』だ」と指摘。「政治上の紛争解決は外交的な話し合いで解決すべきだ」と批判している。同党機関紙・しんぶん赤旗の主張は「話し合いで事態の解決はかれ 政経分離の原則に反する 『未来志向』の立場で」である(8/4付)。一見まともであるが、徴用工問題は「政治上の紛争解決」問題ではなく、基本的人権の問題であり、歴史認識の問題であって、この核心を外した政経分離の手続き上の問題、取引問題などではないのである。この場合の「冷静な話し合い」は、事態の本質を棚上げにした一時休戦論や国益優先論に容易に屈しかねないものである。志位委員長は、当事者を全く無視した2015年12月の日韓「慰安婦」合意を問題解決に向けた前進と評価し、安倍政権に同調した誤りを、いまだに是正も反省もできないことの反映でもあろう。
吉川・社会民主党幹事長は「報復の連鎖は両国にとってマイナスにしかならない。これ以上、深刻化させてはならず、両国の話し合いで解決の糸口を見つけなければならない。冷静な対話によって双方が歩み寄るよう求めたい。安倍政権による一連の輸出規制強化は、徴用工問題で対立する韓国に対し強硬姿勢をとることで、参院選での争点隠しや国民へのアピールにつなげる目的があったともいえる。しかし、徴用工問題は、日本の戦争犯罪をめぐる人権問題であり、政治的対立の解決のために貿易上の措置で報復するのは適切とはいえない」(8/2 談話)。こちらも「冷静な対話」路線であるが、問題の本質をより正しく指摘している。
れいわ新選組の山本代表は「内政の行き詰まりをナショナリズムを使って隠そうとする政治」があると指摘、「言いたいことがあるのはお互い様。日本はどっしりして、向こうが不当なことをした時は国際機関を通じて訴えていくしかない」と提言、「日本から韓国への輸出総額は約6兆円。この6兆円という利益がなくなっていいというのなら、好きなことを言ってください。でも、私はそのような(韓国への)感情より、6兆円という国益を大事にしたい」(8/2 デイリースポーツ)と述べている。ナショナリズムの指摘は正しいが、問題の本質を見ない喧嘩両成敗論に傾斜している。
いずれにしても野党はバラバラであり、まともに安倍政権の“嫌韓・反韓”に対峙できる野党は一握りでしかない。ましてや、安倍政権の歴史修正主義を打破する展望を提起できるような、本来あってしかるべき野党共闘、統一戦線は依然として五里霧中とも言えよう。しかしそのための努力や広範な勢力の結集こそが、時代の要請であり、人々の願いでもある。
(生駒 敬)

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【投稿】情報発信について

【投稿】情報発信について・・・・今しかない・・・・

昨年12月で69歳になった・・・発信を始めてから、かなりが、経過する。

情報発信中ということで、友人知人に、多くを発信していますが、これは、第1の目的は、自身の勉強のためであり、第2には、共に学ぶための情報共有、意見交換などです。
僕らの時代には、得ることのできなかった情報が、今は、PCなどで簡単に得られるなんて、隔世の感があります。

人生のかなりの部分、反戦平和、人権・平等・・・などの大義の下、自分なりに「運動?」をしてきましたが、それらのすべてが、必ずしも、正解ばかりではなかったという苦い経験が、ベースにあります。

その原因の中の大きな部分・・・・それは、情報不足でした。 続きを読む

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Assert Webの更新情報(2019-08-15)

Assert Webの更新情報のページです。(2019年8月15日)

1、旧HPにありました「民学同第1次分裂」のページのリンクを完了しました。

2、「Assert archive 2016」から「Assert archive 2012」のページで、PDF版へのリンク設定が完了しました。

3、新しいHPでは、投稿として今後掲載していきます。投稿を希望される方は、
「 info@assert.jp  」まで、メールをお願いいたします。(佐野)

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【投稿】国際的孤立化進む安倍政権

国際的孤立化進む安倍政権
                  ―参議院選挙では信頼無き「信任」 アサート No.500 2019年7月

G20で埋没した安倍
6月28,29日戒厳令下を彷彿とさせる大阪でG20が開催された。今次会議の課題は、自由貿易体制の維持、環境保全対策の合意、地球規模でのSDGsの推進にあった。日本初の議長である安倍は直後に公示される参議院選挙を意識し、実効性ある合意形成を目指したが徒労に終わった。
米中貿易紛争を始め、様々な個別利害を抱える参加国、機関が納得できる合意の形成は当初から困難視されており、29日に採択された首脳宣言も、総花的な内容となり、その形成過程で安倍の調整能力、リーダーシップの欠如が露わになった環境対策に関しては、この間国際的課題として浮上した、プラスチック系廃棄物による海洋汚染問題について、2050年までに追加的汚染をゼロとすることで合意した。
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【投稿】参院選・安倍政権の敗北をめぐって 統一戦線論(62)

【投稿】参院選・安倍政権の敗北をめぐって 統一戦線論(62)
生駒 敬 アサート No.500 2019年7月

<<自民“敗北”の深刻な現実>>
今回2019年・参院選の結果を、安倍首相は「国民の皆さまからの力強い信任をいただいた」「安定した支持をいただいた」と胸を張り、大手マスメディアも自民党“勝利ムード”を演出している。しかし実態は、深刻な政治的敗北をごまかすものでしかない。
まず第一に、安倍首相はことさらに憲法9条改憲を選挙の争点の第一に掲げたにもかかわらず、これまで改憲派で確保していた改憲発議に必要な3分の2の議席をも割り込み、それどころか、自民党の単独過半数をさえ3年ぶりに失い、改選時の議席数67を57へと10席も大きく減らして、参院での単独過半数を失ったのである。これだけでも、完全な政治的敗北である。
安倍首相や自民党は、あたかも勝利したかのように振る舞い、安倍首相は、「連立与党で71議席、改選議席の過半数を大きく上回る議席をいただきました」とごまかすが、実際には、改選前の77議席を大幅に下回ったのが現実である。その結果、改憲発議どころか、他の法案でさえ自民党単独で法案を通せない現実に暗転したのである。
第二は、議席数の減少だけではない、得票数・得票率の深刻な減少である。自民党の比例区得票数は前回参院選に比べて2011万票から1711万票までに300万票余りも減っているのである。連立を組む与党・公明党の比例得票数も前回757万票から653万票へと100万票余りの減少である。自公与党あわせて400万票余り、2割近くの大量の得票を失ったのである。とても「安定した支持をいただいた」などと言えるものではない。これは明確に、安倍政権に対して「厳しい審判」が下された結果なのである。にもかかわらず安倍首相や自民党幹部は、あたかも勝利したかのように振る舞い、二階幹事長などは「安倍4選」支持まで打ち出している。 続きを読む

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【投稿】「闇の国家」の操り人形としての日本

【投稿】「闇の国家」の操り人形としての日本
福井 杉本達也    アサート No.500 2019年7月

1 イランとの戦争の危機を回避したトランプ
6月20日に米国の無人偵察機がイラン領海内に入ったところで撃墜されたが、これへの報復措置として、同日の夜にイランのイランのレーダーシステムやミサイル関連施設などを標的に攻撃する態勢を整えていた。しかし、トランプ氏は米軍高官から攻撃による死者が150人に及ぶと聞き、「攻撃10分前に中止を命じた」とツイー卜した。 攻撃計画を撤回したのは「無人機の撃墜と(死者数が)釣り合わない」からだとし、「私は(軍事計画を)急いでいない」と語った。(日経:2019.6.22) 米軍高官が開戦に反対している理由は、2003年のイラク戦争に際し、当時のラムズフェルド国防長官は10万人で十分だと主張したが、軍は80万人が必要だとしていた。結局、約31万人が投入されたが、足りず、ずるずると現在まで来ている。イラクの人口は2600万人だが、イランは8100万人であり、イランとの戦争を構えるならば240万人が必要になる。(櫻井ジャーナル:2019.7.12)そのような米軍の動員は物理的に不可能である。さらにはアフガニスタンからの撤退の問題もある。ハント英外相や好戦主義者は、このトランプの決定が気に喰わなかったのであろう。

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【投稿】世界の荒波に漂う安倍政権(2)

【投稿】世界の荒波に漂う安倍政権(2)
―中東情勢に介入し緊張を拡大―  アサート No.499 2019年6月

冊封国主の振る舞い
5月25日、令和最初の国賓として来日したトランプを、安倍は最大限の厚遇で迎えた。26日は朝からゴルフプレー、大相撲観戦、そして締めくくりの飲食と、まさに高級インバウンドと言うべき、接待の連続であった。
トランプの趣味であるゴルフは楽しかったかもしれないが、国技館の升席に設えられた特別席に座ったトランプは、目の前で繰り広げられる取り組みに、何が起こっているか判らない様子がありありで、「どちらが勝ったのか」と安倍に尋ねていたと言う。
六本木の高級炉端焼き店では、魚介類を食さないトランプに対し「アイダホポテト」のじゃがバタを供しようとしたが、実際は北海道産だったと言うオチまでついた。
上げ膳据え膳の接待外交のフィナーレ、おおトリの役割を担ったのは新天皇夫妻であった。27日皇居にトランプ夫妻を迎えた新天皇の振る舞いは、あたかも宗主国皇帝に即位の報告と承認を乞う冊封国主の姿の様に映った。
こうした皇室の対応に同夜の宮中晩さん会に臨んだトランプは、終始上機嫌であった。即位早々、最大限政治利用された形となった新天皇であるが、不満はおくびにも出さず、寧ろ喜々として安倍と同様に冊封国主としての役割を受け入れているようであった。
トランプは訪日最終日の28日には横須賀で護衛艦「かが」を視察したのち、強襲揚陸艦「ワスプ」に移りスピーチを行ったが、ここではホワイトハウスが政敵であった故ジョン・S・マケイン三世の名を冠したイージス駆逐艦を、本人の目に触れないようにブラインドすると言う椿事が発生した。
第7艦隊は当該駆逐艦も含む相次ぐトラブルの発生で、練度の低下が指摘されているが、この一件でさらにモチベーションが下がったことは間違いない。これに関しては安倍のあずかり知らぬ事とはいえ、軍艦の上で強固な日米同盟を叫んでみても、その足元は揺らいでいることが明らかになったのである。
トランプの3泊4日の日本訪問で、安倍との会談はサイドメニューに過ぎなかった。肝心の経済問題に関する合意事項はほとんどなく、最初から日米共同声明も予定されないと言う前代未聞の首脳会談となった。
首脳会談後の記者会見では、日米貿易交渉を加速させることで一致したと明らかにしたが、これは交渉が事実上停滞していると言うことである。
またトランプは26日に自らのツィッターに「妥結は参議院選挙後になる」と配慮を示したように見えたが、会談では参議院選直後の8月決着を要求した。これに対して安倍は会談後の会見で時期について言葉を濁すなど、日米のすれ違いが改めて浮き彫りとなった。
北朝鮮問題については安倍が無条件での日朝首脳会談を求める意向を示したのに対し、トランプは全面的な支持を表明したが、訪日直前には「短距離弾道弾の発射については気にならない」とツィートするなど、安倍の悲壮感との温度差が際立ったのである。
唯一トランプが具体的な成果としたのは、「爆買い」と言われるF35戦闘機の購入のみであったと言っても過言ではない。

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【投稿】「テロ対策施設」未完成で再稼働中の全原発が順次運転停止へ

【投稿】「テロ対策施設」未完成で再稼働中の全原発が順次運転停止へ
福井 杉本達也 アサート No.499 2019年6月

1 九州電力川内原発1号機が来年3月運転停止に
九州電力の川内原子力発電所1号機が2020年3月18日に運転停止となる。テロ対策施設「特定重大事故等対処施設(特重施設)」の完成が20年3月17日の期限内に間に合わないためである(日経デジタル:2019.6.14)。「特重施設」とは「原発に航空機を衝突させるなどのテロ行為が発生した場合に、遠隔操作で原子炉の冷却を続ける設備などを備えるテロ対策施設『特定重大事故等対処施設』」をいう。既に、原子力規制委の4月24日の会合で、「電力会社に対し、『原発本体の工事計画の認可から5年』の完成期限の延長を認めないことを決めた。再稼働済みの九州電力川内原発1号機(鹿児島県)は来年3月に期限を迎え、その時点で運転中でも施設が完成していなければ運転停止となる。」(産経:2019.4.24)等々と各紙で報道されたところであるが、川内1号のみならず、2号、関電の大飯3、4号、高浜3,4号、四電の伊方3号など全国の稼働中の全原発が今後順次運転停止に追い込まれることとなる。
規制委は、2015年11月に「特重施設」の設置期限を新規制基準制定後5 年以内というそれまでの規定を、本体施設工事認可後5 年以内に変更した。本来、本体施設の設置許可変更申請と同時に「特重施設」の設置を申請すべきところ(新規制基準の制定は2013 年7月)、経過措置規定により5 年間の適用猶予をしたが、この適用猶予の起点をさらに本体施設工事認可時に変更していた。
今回も電気事業者は「特重施設等の設計で、審査を通して安全性の向上を図ってきた結果、現地工事は、大規模かつ高難度の土木・建築工事となるといった状況変化が生じてきている。」、「規制委員会殿において、事業者の対応の状況、更なる安全向上のために要する期間を総合的に考慮し、対応を検討いただきたい。」(電力9事業者:「特重施設等の設置に向けた更なる安全向上の取組状況について」2019.4.17)として、またぞろ「適用猶予」を「確信」していたところ、いきなり梯子を外された形となった。

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【投稿】参院選・野党統一候補をめぐって 統一戦線論(61)

【投稿】参院選・野党統一候補をめぐって -統一戦線論(61)
アサート No.499 2019年6月

<<安倍政権、ダメージの急浮上>>
安倍首相は「政治ショー」・イラン訪問の成果を引っ提げて外交手腕をアピールし、参院選大勝を目指したつもりが、逆に何の成果もなしに醜態をさらけ出すことになってしまった。「自分ならハメネイ師に会うことができる」(朝日新聞6/11付)と持ちかけ、トランプ大統領のメッセージを携えて訪問したが、ハメネイ師は「私はトランプ大統領個人は一切メッセージを交換するに値しない人物だと思っている」と一蹴されてしまったのである。しかも、安倍首相が自ら買って出たイラン訪問の最中に、アメリカはイランに対する追加制裁を発表している。ただ単にダシに使われ、ぶち壊されているのである。米紙ウォールストリート・ジャーナルは「中東和平における初心者プレーヤーが痛みを伴う教訓を得た」との見出しで「日本の指導者による41年ぶりの訪問を終え、米国とイランの対立関係は以前より不安定になった」とその逆効果ぶりを論評、ドイツ誌シュピーゲルは「仲介役としての試みに失敗した」と断じている。
一方、イランのハメネイ師は安倍首相に対し、核兵器の製造・保有・使用の意図はないと明確に語っている。トランプ大統領が「事態のエスカレートは望んでいない」などと対話も口にするなら、イランとの包括的核合意から一方的に脱退し、経済制裁や軍事的な脅しや恫喝、危険な戦争挑発などはやめるべきだと、安倍首相が説得すべきなのは、トランプ大統領なのである。トランプ大統領に取り入り、兵器爆買いに走り、ご機嫌伺いしかできない、外交手腕ゼロの安倍首相の実態があらためて浮き彫りにされてしまったのである。参院選にとってはマイナスになりこそすれ、とてもプラスになるものではない。
そのイラン訪問と相前後して、安倍内閣にとっては、さらに重大なダメージが露呈され、醜悪な責任の押し付け合いが展開されている。金融庁審議会の「老後2000万円」問題の浮上である。現在の高齢夫婦世帯は平均で、毎月の支出と年金などの収入の差額5万円を資産の取り崩しで賄っており、30年で2千万円、要介護ならさらに1000万円の追加が必要になる。その収入との差額を、報告書が「不足」「赤字」と表現、現役期から「つみたてNISA」などの株式投資や資産形成を促していたのである。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によって、年金積立金を債券市場のリスク運用で15兆円もの損失を出している問題や責任を不問にして、この報告である。安心どころか、不安と破綻の宣告とも言えよう。
これまで「年金100年安心」と言い募ってきた安倍首相が予期せずして、その嘘を暴露され、慌てふためく事態である。安倍首相は、金融庁の報告書は「不正確であり、誤解を与えるものだった」などと答弁。麻生副総理は、報告書発表直後の6/4、「100歳まで生きる前提で自分なりにいろんなことを考えていかないとダメだ」と報告書の内容を支持していたにもかかわらず、批判の高まりに驚き、「あたかも公的年金だけでは足りないかのような誤解、不安を与えた。年金は老後の生活の柱という政府のスタンスと違うので受け取らない」とこの報告書の受け取りを拒否。報告書の全文は金融庁ホームページに掲載されているにもかかわらず、与党は、拒否した以上、この問題は存在しないと、予算委員会審議まで拒否する狼狽ぶりである。
「あたかも公的年金だけでは足りないかのような誤解」というが、実際は「マクロ経済スライド」による年金支給額の実質削減を強行しており、国民年金の受給実態に至っては、「毎月5万円足りない」どころか、報告書でいう収入が「毎月5万円程度」の人たちが少なくないのである。怒りや批判、年金制度の抜本的改革の声が沸き起こるのは当然なのである。

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【コラム】ひとりごと—年金だけでは2000万円不足する??

【コラム】ひとりごと—年金だけでは2000万円不足する??
アサート No.499 2019年6月

○6月3日金融庁の「金融審議会・市場ワーキンググループ」が報告書を公表した。「高齢社会における資産形成と管理」に関するもので、「人生100年」時代と言われる程、高齢世帯が増えていく現実に対して、その準備が必要であると言った内容である。○その中では、50歳以下の世代に「老後に対する不安」と答えが多く、「老後の不安として『お金』が主要要因となっていることが窺える」とし、P21には、「前述のとおり、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では、毎月の不足額の総額は単純計算で1,300~2,000万円になる。この金額はあくまでも平均の不足額から導き出したものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。・・・いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。」として、生涯に亘る計画的な長期・積み立て・分散投資による資産形成と資産管理が必要と述べられている。○これを野党が批判した。「老後は年金だけでは暮らせないのか」「2000万円の資産など、誰が貯められるのか」「100年安心の年金制度はウソだったのか」と。○この「批判」を受けて、麻生財務大臣は、「報告書は不適切」「政府の政策スタンスと異なる」と、報告書の受け取りを拒否するとした。○政府審議会WGの報告を受け取らないとする自民国対も、「受け取らないのだから、報告書は存在しない。審議の対象外」として予算委員会の開催要求を突っぱねる有様。○一方、マスコミは「2000万円不足」問題を大々的に取り上げ、野党を後押した。○一部与党系マスコミでは、「100年安心と言う言葉は、年金制度そのものが存続可能としたもので、額の保障ではない」と野党の批判は的外れであると言い出している。大いに結構なことである。借金漬けの国家財政や、破綻が近づく医療・介護など高齢社会対策についてより、自分の生活には、いくら必要か、いくら足らないか、という話題は、実感されやすい。「2000万円不足」問題は、出口は別にして非常にわかりやすいのである。「2000万円貯めろというが、今の生活ではできない」「どうすればいいのか」「政府は応えろ」という回路に入れば、安倍政権は逃げることができない。報告書の問題ではなく、政権の公約を求めているのだ。○そういう意味で、麻生財務大臣(安倍政権)の報告書受取拒否に対して、国民は怒っているのである。○夫婦で20万円の年金と言う設定だが、これ自体は、どちらかと言えば「安定した階層」を前提にしたもので、老齢基礎年金(国民年金)だけの自営業者世帯や、今後益々増えていく単身世帯を考えれば、さらに「不足額」は増えていく。増え続ける非正規労働者にとっても同様である。○金融庁のWGだが、委員は学者と証券・投資・銀行などの代表のみ。医療・介護や年金問題に対する「国民の不安」への対策は、具体性は皆無で、不足分は「投資」で埋めなさいとの結論のみ。○要するに「自己責任で解決しろ」ということ。○「年金だけでは生活できない」「老後の不安が益々深刻」という、「国民の不安」に火を付けたことは、大きな「功績」と言えようか。○厚生年金すら入っていない非正規の若者や、自営業者は、国に説明を求める声を挙げなければならない。麻生や政権の不誠実な対応は、正に触れてほしくないテーマだったからに他ならない。○こうして「2000万円年金不足問題」は、イージスアショア配備問題と共に、参議院選挙の大きな火種になりつつある。安倍には「消えた年金記録」問題で、大敗した12年前の参議院選挙の悪夢が甦っていることだろう。○衆参ダブル選挙どころではない。安倍政権には、参議院選挙敗北と言う「悪夢」をプレゼントしてやろうではないか。(2019-06-17佐野)

【出典】 アサート No.499 2019年6月

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【投稿】世界の荒波に漂う安倍政権

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~米露に行き詰まり中朝に接近~ アサート No.498 2019年5月

相次ぐ外交的敗北
4月22日から29日にかけ、安倍は仏、伊など欧州4か国、および米、加の北米2か国を歴訪した。国会で予算委員会の開催に応じない中、連休にかこつけ、昭恵を連れての不要不急のバカンスに興じたのも同然の外遊である。
しかしこの直前の4月11日、世界貿易機関(WTO)の紛争解決機関(DSB)上級委員会は、韓国による日本産農水産物禁輸を不当だとする日本の訴えを退けた。下級審である同小委員会(パネル)では日本の提訴が認められていたのに対し、今回の判断は「逆転敗訴」の形となり、国際捕鯨委員会(IWC)脱退に次ぎ、日本の国際的孤立を印象付けるものとなった。
安倍外遊に水を差され狼狽した日本政府は、安倍訪米中の26日、DSBの会合で上級委員会の決定は「科学的根拠を欠くもの」などと難癖をつけた。さらに5月になり、この時日本の主張に賛同したのは10以上の国や機関であると、非公開の原則を破り産経新聞にリークさせた。
しかしDSBはWTO全加盟国-164の国と地域-によって構成されるものであるから、「10の国と機関が日本支持」と喧伝するのは逆効果であろう。
安倍は、28日カナダで上級委員会の決定に関して、加盟国から問題視する声が上がっている、として「紛争解決に資さない形で結論が出るという議論があり、改革が不可欠だ」(4月30日「毎日」)と同委員会の「機能不全」をまくしたて「WTO改革を大阪のG20で議論する」と大見得を切ったのである。
確かに同委員会は、定数7名の上級委員が現在3名しか在籍していないなど、困難な運営を迫られている。しかしその要因は、アメリカが委員の再任や指名をボイコットしているからであり、安倍の批判はお門違いと言うものであろう。
今回の件では外務省が「戦犯」扱いされているが、同省のホームページでは現在も「WTO紛争処理制度は…WTO体制の中心的な柱の1つをなしています。‥紛争解決制度は有効に機能し,貿易紛争の多くが迅速かつ公平に解決され,ルWTOルールの明確化を実現してきました。…この紛争解決制度が,加盟国から信頼を得て,効果的に機能していることを示しています」と記され、全面的に評価しているのである。
このように日本政府は、WTOを評価してきたのであり、安倍も自由貿易の推進を言うのであれば、保護主義的立場からWTOを「機能不全」にしたうえ、脱退をも示唆するトランプを諌めるのが順序というものだろう。
しかし、トランプに忖度する安倍はワシントンでは、そうしたことは億尾もださずに、ひたすらご幇間外交に徹したが芳しい反応は得られなかった。

「ストップ、アベ・ウェルカム、スガ」
4月26日、ホワイトハウスで安倍は、10回目の首脳会談を行ったが、各国記者団の前でトランプにレッドカーペットを踏ませてもらえないという椿事が発生し、日米首脳の関係を垣間見せた。
会談では、当然のことながら日米貿易交渉が最大の問題となり、トランプは5月下旬の訪日時に妥結できるよう安倍に要求した。首脳会談に先立ち麻生-ムニューシン財務長官、茂木-ライトハイザー通商代表の「担当者会談」も行われたが、結論はおろか妥協点を探ることもできず、業を煮やしたトランプが直談判に及んだ形となった。
首脳会談では、「貿易交渉を加速化させる」ことでその場をしのいだが、その後も新協定への「為替条項」の導入や、日本からの自動車輸出の数量規制などが取り沙汰されている。
そのたびに茂木などが打ち消しに躍起になっているが、アメリカの苛立ちを現すものであり、トランプも27日の4回目となる安倍とのゴルフを終えた直後は「素晴らしい議論ができた」と「上機嫌」だったが、同日の支持者集会では「日本やあらゆる国が過去数十年間にわたり、我々から巨額をぼったくってきた」(4月29日「毎日」)と本音を剥きだしにしたのである。
そして5月17日には、自動車、部品の輸入がアメリカの安全保障上の問題となっていることを正式に認めた。
トランプの「トリセツ」が世界中を探しても存在しない中、安倍は外遊中フランス、イタリア、およびカナダの首脳との会談でトランプを意識し、盛んに価値観の共有をアピールした。しかしトランプに対し、毅然とした対応をとるこれら各国首脳と、万事腰砕けの安倍とでは価値観は共有できなかっただろう。
日米貿易交渉は、5月下旬のトランプ訪日からG20にかけてのタイトな日程で、安倍政権の意に沿うような形での妥結は困難と考えられる。安倍としては、「令和最初の国賓」として、即位したばかりの新天皇を接待役に、最大限もてなす以外に方策はないだろう。
こうした閉塞状況の中、連休明けの5月9日~11日満を持した様に菅が訪米し、ペンス副大統領やポンペイオ国務長官と一連の会談をこなした。サプライズでトランプとの会話、挨拶もあるのではないかとの観測も流れたが、今回はさすがに遠慮した様である。しかし今回の異例の外遊、厚遇は、ポスト安倍を睨んだアメリカの視線を滲ませるものとなった。
訪米の目的は、菅が拉致問題担当であることから北朝鮮への対応が中心と見られているが、全般的な日米関係の調整が主眼であろう。とりわけ貿易問題に関して、安倍訪米前の「担当者会談」で埒があかず、副総理の麻生に至っては、本来のカウンターパートである副大統領に会えないなかでの、訪米となった。
これを対米外交での多様なパイプ作りと評価する向きもあるが、失態続きの外務省=河野の地位低下と合わせれば、事実上の2重外交の始まりであろう。

「北方領土」も絶望的に
5月10日、菅がワシントンでペンスと和気藹々と会談している一方、河野はモスクワでラブロフ外相と「激しいやりとり」を演じていた。
ラブロフは1月、2月の会談時に述べた「第2次世界大戦の結果を日本が認めることが前提」との立場を繰り返し強調したのに対し、河野は帰国後の11日、札幌市で「かなりヒートアップした」などと述べるなど、平行線どころか、会談を重ねるたびに立場が遠のいていることが明らかになった。
日露平和条約交渉は昨年11月の首脳会談で「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速することで合意」したものの、以降の交渉は停滞した。そもそも安倍と経済産業省の前のめりで始まった日露交渉の責任を押し付けられた外務省は、困難な交渉を本気でやる気はないだろう。
外務省以外も冷ややかである。防衛省、自衛隊は昨年F-35A戦闘機を三沢基地に配備し、さらに今年3月に就役した護衛艦「しらぬい」(満載排水量6800t)を大湊基地に配備した。対露最前線の海自拠点である大湊に新造艦が配備されるのは、冷戦時代の1984年以来35年ぶりとなる。
しかも84年に配備されたのは、新造艦とはいえ同1700tの小型護衛艦だったのに対し、今回は対潜能力を強化した大型艦であり、ロシアに対するアピール以外の何ものでもない。
これに対しロシアも、昨年就役したフリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」(同4500t)を北方艦隊から派遣、5月11日に大湊と目と鼻の先の津軽海峡を、日本海から太平洋に向け通過させた。また北方4島を含むクリル諸島の兵力も増強されており、F-35に対抗する形で昨年択捉島に試験配備された、Su35s戦闘機の本格的配備も進むだろう。
また4月に件のF-35が墜落した際、可能性はないにもかかわらず、ロシアが機体の回収を目論むという憶測が流布されるなど、北方領土を巡る疑心暗鬼と軍事的緊張の度合いは高まっている。
今後秋田県にイージス・アショアが配備されれば一段のエスカレートは免れず、平和条約締結に向けた環境作りとは程遠い現状が浮き彫りとなっている。
今年の「北方領土の日」に開かれた「北方領土返還要求全国大会」のアピールから「不法に占拠され」との文言が消され、2019年度版外交青書からも「北方4島は日本に帰属する」との表現が削除されたが、いくら文言で譲歩しても言行不一致ではロシアの不信は解けないだろう。
経済協力も具体的な進展はなく、5月15日にはロシア極東・北極圏発展省が北方4島で進めている経済特区事業を拡大させると発表した。ロシアは日本との共同事業に優先させる形で、投資と開発を進める構えである。
この様に安倍政権が4島返還を封印し、いくら「協力と妥協」のポーズをとっても、6月の平和条約大筋合意は絶望的となったのである。

2重外交から2重権力へ
米露との関係が隘路に入り込む中、安倍はまたしても中国、北朝鮮に接近しようとしている。4月25日ウラジオストックで露朝首脳会談が開かれ、「六か国協議」当事国の首脳で金正恩と会談できていないのは、安倍一人となった。
焦燥感にかられた安倍は5月6日の日米電話協議後、突如「拉致問題での進展がなければ」との政権の根幹にかかわる原則を投げ捨て、無条件での首脳会談開催を追及することを明らかにした。
安倍は4月の訪米で北朝鮮問題も協議したと説明していたが、トランプとの電話の後で、決定的な方針転換を囲み会見で表明するのは、ワシントンで何も詰め切れていないことの証明であり、軽率さの露呈でもある。
こうした無節操さを嘲笑うかのように、北朝鮮は「飛翔体」=中距離弾道弾を2度にわたり試射をした。これに対し融和姿勢を貫く韓国、3度目の首脳会談を視野に入れるアメリカが静観の態度をとったのは当然と言えるが、安倍政権も「国連安保理決議違反で遺憾」と防衛大臣が表明したのみで、安倍本人は日朝会談への意欲を露わにしている。
また、菅の訪米直前での方針転換は、ニューヨークでの拉致問題シンポに出席予定である「対北強硬派」の菅への牽制でもあり、外交の主導権が誰にあるかを示したかったのだろう。
政権内の権力闘争に起因する2重外交は、国内外に無用の混乱を招くことになる。米中露朝の狭間で右往左往する安倍を後目に菅は、着々と基盤を固めているように見える。5月17日の記者会見で菅は、野党の不信任決議案提出について質問を受け、総理大臣の専権事項である衆議院の解散について言及した。
官邸は2重権力の様相を呈しつつある。ぶれ続ける外交、内政に於いては景気が後退局面に入る中、消費税を巡る混乱が続いている。野党はこうした安倍政権の矛盾を追及し、衆参W選挙を視野に入れ統一名簿の作成と、候補者の一本化を進めなければならない。(大阪O)

【出典】 アサート No.498 2019年5月

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【投稿】ファーウェイを巡る米中貿易戦争と日本への影響

【投稿】ファーウェイを巡る米中貿易戦争と日本への影響
福井 杉本達也 アサート No.498 2019年5月

1 ファーウェイ孟副会長の拘束その後
昨年12月カナダ・バンクーバーにおいて孟晩舟ファーウェイ(華為技術:中国深圳市)副会長兼財務最高責任者(CFO:任正非ファーウェイ会長の娘)が突然拘束され、その後、米国から身柄の引き渡し要求が出されている。現在、米国への引き渡しについてカナダで裁判中であるが、審理はまだ始まってもいない。ロイターによると「結論が出るまでには『何年もかかりそうだ』との見方が強まっている」という(共同:2019.5.10)。ファーウェイは1987年に任正非をはじめ元人民解放軍の技術関係者が集い創業したもので、現在は世界最大の通信機器ベンダーとなっているが、米国などからは中国政府や軍と繋がりが深い企業と見られている。中国はカナダに報復する形で、2人のカナダ人をスパイ行為で拘束し、5月16日には正式逮捕を発表した。また、3月にはカナダ産菜種の全面禁輸を発動したが、天然ガス・鉱物資源を始め中国が取りうる対抗策は多々あり、トルドー首相の無分別な対米追随策により、カナダ側がどんどん追い詰められているのが実情である。

2 5Gを巡る米中の衝突
通信分野の次世代技術5G(第5世代移動通信システム)は現在の4Gの100倍の高速・大容量通信網を目指すもので、各種家電、ウェアラブルデバイス、自動運転、ドローンなど身のまわりのありとあらゆるモノをインターネットに接続するモバイルネットワークの中核インフラであるが、米国は5Gの技術開発で中国に遅れをとっており、5Gの根幹となる基地局市場を奪われることを恐れており、ファーウェイの機器・サービスの利用を禁止する措置を取り、中国を封じ込めようとする思惑がある。
ネットワークの支配=国際通信海底ケーブル敷設し相手国の陸揚げ局や無線局まで支配することは、通信を傍受・盗聴することと同義である。1946年には英米両国はUKUSAという通信傍受協定を結び、その後、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドが加わり「ファイブ・アイズ」(Five Eyes)と呼ばれる情報共有体制ができあがっている。米国は1980年代にはハワイとグアムを結ぶ太平洋横断のケーブルとインテルサット衛星通信網を主導することにより、空と海の通信網を支配下に置いた。その後、光海底ケーブルとインターネットの登場により通信の概念は激変した。インターネットは様々なネットワークの回線を選んで通るため、利便性は高いもののサイバー攻撃には弱い=ハッキング可能な仕組みである。1990年代にはUKUSA協定締結5か国で「エシュロン」という通信傍受システムが稼働していることが明らかとなった。2013年にはスノーデンが米NSAが米国発着及び米国経由(協力企業により他国のプロバイダーも含む)の電話や電子メール(国家・企業間ばかりでなく個人を含む)のほとんど全てのメタデータを収集・分析・保存していたことを暴露した。今や潜在的に全世界の全ての個人データが諜報の対象となっている(『通信の世紀ー情報技術と国家戦略の150年史』大野哲弥:2018.11.20)。スノーデンによれば、XKEYSCOREという技術システムにより、ネット上にあるあらゆる人のあらゆる情報が捕捉され、保存され、記録され、政府の検索対象となる。こうしたネットワークの基地局にファーウェイの製品が使われることとなれば、UKUSAの通信傍受システムに風穴があくことは避けられない。

3 ベネズエラの電力インフラへの執拗な攻撃
4月30日、ベネズエラの野党指導者グアイドによるクーデターの呼びかけは失敗に終わった。この間、3月から4月にかけて米国からベネズエラの電力インフラへの執拗な停電攻撃が行われ、ベネズエラの社会不安を煽りクーデターの雰囲気を醸成しようと画策した。1回目は3月7日に行われ、グリ・ダム水力発電所がサイバー攻撃されベネズエラの最大80%が影響を受けた。スタクスネットに似た悪性ソフト(マルチウェア)がベネズエラ送電網に使用されたといわれる(マスコミに載らない海外記事:2019.3.14)。4月の攻撃でもカラカスなどでインターネット、電話回線、水道、公共交通機関のサービスが影響を受けた。米国が攻撃を主導したことは、ルビオ米上院議員が、ベネズエラ当局者が情報を入手する前に、工場で「 バックアップ発電機が故障した 」と勇み足のTwitterでの発表で、米国主導のサイバー攻撃であったことがバレバレになってしまった(RT:2019.3.27)。

4 日本のインフラにもマルチウェアが仕込まれていると警告するスノーデン
スノーデンによれば「日本が最良の同盟国であるにもかかわらず、NSAが日本のコンピューターをハッキングし、マルチウエア・ソフトを埋め込み、コントロール権限を奪ってダメージを与えようとしている、というダイナミックな計画に関して言えば、答えはもちろんイエスです。これは本当のことです。」と答えている。万が一にも日本が日米同盟に反することをすれば、米国はマルチウェアを作動させて日本のインフラを大混乱に陥れることが可能である(『スノーデン・監視大国日本を語る』エドワード・スノーデン、国谷裕子:218.8.22)。2009年の鳩山民主党政権のような米国離れの政権が発足する事態となれば、稼働中の原発インフラへのマルチウエア攻撃が無いとは限らない。

5 英は監視網「ファイブ・アイズ」を無視してファーウェイを採用
5月8日、ポンペオ米国務長官は英国がファーフェイ製の通信機器を5Gシステムに採用しないように要請した(共同:2019.5.10)。これは、4月23日の英国家安全保障会議でファーウェイ製品の一部を採用することを決定したからである(共同:2019.4.29)。英国と米国はUKUSA協定を締結しているが、米CIAはの創設は第二次大戦中(前身のOSSとして)であり、第二次大戦時の英国から米国への覇権の移転にともなって、英国情報機関の指導の下に情報機関を米国に作ったのが始まりである。その切っても切れないはずの同盟関係が中国の軍門に下るのであるから、米国が焦るのも無理もない。その英国の安全保障上の重要政策決定情報をウイリアムシソン国防相がマスコミに漏洩したということで、5月1日、メイ首相は即刻国防相を首にしている(日経:2019.5.3)。既に、「ファイブ・アイズ」の一角であるニュージーランドのアーダーン首相は4月1日に中国・習近平主席と会談しており(日経:2019.4.2)、オーストラリアやカナダはまだ米国の意向に従っているものの、事実上包囲網は崩壊しているといえる。

6 米国覇権の終わりの始まり
日経は2019年1月~3月で金需要が7%増加したと報道している。主要な買い手は各国の中央銀行で、最も多く購入したのはロシアの55.3トンであり、その後に中国やインドが続いている(日経:2019.5.9)。各国中央銀行は静かにドル決済からの離脱を伺っているのである。さらに日経5月19日付けのトップ記事は中国人民元の「国際決済システムが存在感を高めている」とし、「独自決済89ケ国・地域の865銀行に」及ぶと報道している。中国は、ロシアやトルコといった米の制裁国や「一帯一路」構想に参画する国々を取り込みながら着実にドル離れの構想を進めている。さらに極めつけは中国の米国債売却の脅しである。中国は1兆1205億ドル(2019.3末現在)にものぼる米国債の保有国であるが、1985年の日米間のプラザ合意を反面教師としてとらえている。もし、大量売却すればドルの大暴落は避けられない。貿易戦争どころの話ではなく、巨大金融最終兵器を保持しているといえる。中国は手持ちのカードを何重にも持っている。5月9日の環球時報は「米国は“鴻門宴”を開こうとしているが、中国に脅しをかけても 無駄だ」という社説を発表した。こうした中、自信の表れであろうか、同じ日経一面にファーウェイトップの任正非会長は「(クアルコムなど米企業が生産に不可欠な)半導体製品を売ってくれなければそれでいい。準備は以前から進めてある」(日経同上)と強気の発言をしている。

7 日本は身ぐるみ剥がされても米国に追従し続けるのか
5月下旬にトランプ大統領が国賓として来日することが決定しているが、共同声明を出さない方向で検討しているというのである。共同声明を出せば、必ず日米貿易交渉に触れざるを得ない。中国との貿易交渉では長期持久戦が避けられず敗北が濃厚になっており、EUとの交渉でも独・仏は聞き耳を持たずで、最も緊密な同盟国である英国からも袖にされ、何の成果も得られないトランプ政権としての最大の「顧客」は日本である。5月17日には「自動車や部品の輸入により米国の安全保障が脅かされている」とし、「車の対米輸出制限を求める大統領令を検討している」(ブルームバーグ)との報道もされている(共同:2019.5.19)。茂木大臣は同報道を口先で否定したが、何の根拠もない。EUのマルムストローム欧州委員は「WTO違反となる管理貿易は対象外だ」と即座に拒否の姿勢を明らかにしている。まともに交渉をするつもりがあるならば、即刻反論すべきである。
こうした動きにトヨタは焦りを強めている。トヨタ米法人は安全保障の脅威としたトランプ声明に対し「米国の消費者と労働者、自動車産業にとって大きな後退だ」と反論した。トヨタとしてはトランプ声明から「トヨタの米国への投資や従業員の貢献が評価されていないというメッセージを受け取った」(日経:2019.5.19)とする。さらに農業関係については、米国は自らで首を絞めて中国から全面的な禁輸措置を受けており、壊滅的な打撃を被りつつあり、「米国の農家は不利な状況に直面している」とし、日本では「公正な扱いを受けたい」(米農務長官:福井:2019.5.14)としており、全面開放必死の状況である。「参議院選挙後に貿易交渉をしたい、選挙後であればどのような要求も受け賜る」と米国にひれ伏す安倍政権であるが、トランプ政権としては、米中交渉が膠着する中、日本との交渉を何か月も先に引き延ばすことはできない。従順な従属国との共同声明など無駄である。相撲観戦とゴルフでお茶を濁す売国政権ここに極まれり。

【出典】 アサート No.498 2019年5月

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【投稿】「令和」祝賀・衆参同日選挙への目論み 統一戦線論(60)

【投稿】「令和」祝賀・衆参同日選挙への目論み 統一戦線論(60)
アサート No.498 2019年5月

<<「どこまでの減で食い止めるか」>>
衆参同日選挙の可能性が意図的に流されている。安倍首相を先頭に政治家のウソ、暴言、失言が日常茶飯事のごとくまかり通り、責任を取るどころか開き直り、対抗すべき野党はバラバラ、結束して闘う姿がなかなか見えてこない。それに比例して庶民の政治不信は増大する一方である。その最中の政権とNHKや大手メディアが一体となった天皇代替わり・「令和」祝賀ムードの演出に、天皇制に一貫して反対してきたはずの共産党までもが新天皇即位に「祝意」を表明する事態をもたらした。そして内閣支持率も上昇したこの効果冷めやらぬうちに、一気に衆参同日選挙に持ち込もうというわけである。解散風を吹かせ、野党の内閣不信任案提出に乗じて政権の失態・責任を棚上げにした「令和」祝賀・同日選挙を目論んでいるのである。安倍首相はこの際、憲法9条改憲の「早期実現」を自民党の選挙公約に明記する意図をあからさまにしている。そして消費税増税先送りの圧勝シナリオも浮上している。
国民民主党の小沢一郎衆院議員は5/14のBS番組で、今夏に衆参同日選挙が行われた場合、「立憲民主党も壊滅的になる。このままの状況なら野党が立ち直れないくらいの壊滅的敗北になる」との見方を示している。小沢氏は「ここで野党が壊滅的状況になったら、自民党に勝てるのは半永久的にない」と指摘。野党統一名簿の作成を含め、野党結集へ立憲の枝野幸男代表に決断を促したわけである。
しかし事態はそう単純ではない。自民党の甘利明選対委員長は5/16のテレビ番組収録で、前回2016年参院選後に27年ぶりに回復した参院単独過半数を維持することは「不可能だ」と語っている。今夏の参院選は「どこまでの(議席)減で食い止めるかの選挙だ。6年前と状況が違い、あのとき以上の状況は作れない」と述べ、勝敗ラインについては、自民単独過半数の維持・獲得ではなく、「自公で安定多数」と強調したのである。実際、自民の単独過半数維持には67議席以上を獲得するのが条件となる。今年の定数は3増で245となり、単独過半数を維持するには123議席必要。現在の自民党の非改選議員(2016年参院選当選)は56議席。123-56=67なのである。2013年参院選は自民党が民主党から政権を奪還した翌年に行われ、自民党が65議席獲得したが、甘利氏は「これ以上、取れないぐらいの数字だ。安倍内閣ができて半年後の選挙で、民主党政権では日本がどうにもならないと、自民公認というだけで当選した」と指摘し、それを上回る67議席は「不可能」、「不謹慎な言い方だが、どこまでの議席減で食い止めるかだ」と語り、改選される124議席の過半数=63議席の確保も「至難の業」と語っている。
そこで自民党は、直面する参院選に向けて、4月の統一地方選の結果も踏まえ、全国32の改選1人区のうち、苦戦が予想される16選挙区を激戦区に指定し、てこ入れを図っている。選挙資金を優先的に割り振るほか、応援態勢にも力を入れる。

<<野党「一本化」なら勝機>>
この自民党指定の参院1人区16激戦区について、5/15付・東京新聞は「野党『一本化』なら勝機」と題して、直近の国政選挙である2017年衆院選比例代表の得票で、自公両党の合計と、立民、旧希望、共産、社民の四党の合計をそれぞれ比較、分析している。その結果、野党が前回16年参院選のように、すべての一人区で候補者を一本化した場合、自民党が指定した激戦区の結果はどうなるのか。10選挙区で野党の合計が自公を上回り、ほかの5選挙区でも自公に対し9割以上の得票となっている。
野党が上回っているのは、岩手、宮城、山形、福島、山梨、新潟、長野、三重、大分、沖縄 の10選挙区である。野党が9割以上と肉薄しているのは、秋田、滋賀、徳島・高知、愛媛、佐賀 の5選挙区である。
ただ、これまでに野党4党が事実上、一本化で合意したのは愛媛、熊本、沖縄、新潟の4選挙区のみ。いずれもこの激戦区以外である。
5/12、共産党は第6回中央委員会総会を開き、志位和夫委員長は幹部会報告で、夏の参院選改選1人区での野党候補一本化について「互いに譲るべきは譲り、一方的な対応を求めることはしない」と柔軟な姿勢に転換することを明らかにした。これまで共産党が自党の候補者を降ろす条件としていた「相互支援・相互推薦」には言及せず、柔軟な姿勢を示したのである。候補者一本化作業が、3年前の参院選の同時期に比べてさえ大幅に遅れている現実に押された、条件付き共闘路線が破綻したことは明らかである。
共産党が路線を転換せざるを得なかった直近の有権者の手厳しい審判は、4/21投開票の大阪12区補選の結果であったと言えよう。「退路を断って」無所属で立候補し、形式上の「野党統一候補」を目指し、各野党や市民連合幹部の支援も受けたはずであったが、結果は惨憺たるものであった。過去の同選挙区での共産党独自候補の得票数(33263票、得票率18.6%)をさえ大幅に下回り、共産党としては最低票数を記録(14,027票、得票率 8.9%)、最下位で、供託金没収という事態になってしまったのである。そして「退路を断った」はずの宮本氏は、5/8、共産党が発表した次期衆院選の比例代表予定候補者19人の中に何の弁明もなく入っている。さもありなんであるが、退路など断っていなかったのである。有権者は見抜いていたとも言えよう。
付け焼刃的で、自己都合の自党中心主義的な共闘路線では、共産党支持層でさえ突き放してしまうという最悪の事態が明示されたのである。
ところが、先の志位委員長の幹部会報告は「宮本岳志前衆院議員が無所属で立候補し、市民と野党の統一候補として奮闘しました。宮本岳志候補が及ばなかったのは残念ですが、このたたかいは市民と野党の共闘の今後の発展にとって大きな財産をつくりました。自由党、立憲民主党、国民民主党の代表をはじめ、6野党・会派から49人もの国会議員や元議員が応援に入り、大阪と全国から1千人を超えるボランティアのみなさんが肩をならべてたたかいました。」と述べているが、それにもかかわらず大敗した原因については一言も述べることができず、反省の言葉すらない。指導部失格を自ら公言しているようなものである。
こうした事態を招いた自らの責任を問わない共産党指導部、異論や批判が一切表明されないような党内民主主義を喪失した現状が、事態を糊塗し、路線転換に踏み切らざるを得なくさせたとも言えよう。
遅きに失したとはいえ、この路線転換の結果、その後、候補者一本化に大筋合意したのが23選挙区、残る5選挙区の調整が急がれている。1人区に限らず、複数区でも野党統一候補を推進することが強く求められている。とりあえずの前進とも言えよう。

<<「令和」祝賀路線への迎合>>
しかしこの路線転換にはさらに余計な路線転換まで付随していた。安倍政権の「令和」祝賀路線への同調である。
5/1、共産党の志位委員長は、「新天皇の即位に祝意を表します。象徴天皇として、新天皇が日本国憲法の精神を尊重し擁護することを期待します」との談話を発表したのである。さらに5/9の記者会見での一問一答では、「天皇の制度というのは憲法上の制度です。この制度に基づいて新しい方が天皇に即位したのですから、祝意を示すことは当然だと考えています。私も談話で祝意を述べました。国会としても祝意を示すことは当然だと考えます。」
ところが共産党はほんの2か月余り前の今年の2/24に政府主催で行われた「天皇在位30年式典」には欠席しており、その際、欠席の理由として「日本共産党は『式典の儀礼をみると、天皇への過度な祝意と賛美を行うもので、国民主権とは相いれない』として、欠席の態度をとりました」(2/25付「しんぶん赤旗」)と発表された。2/25以降にわざわざ「祝意」を表明しなければならないような、現在の象徴天皇制に何らかの変化があったというのか。今回の新天皇の即位も、その「民主主義および人間の平等の原則と両立するものではない」象徴天皇制の継続にほかならない。それがどうして「祝意」の対象になるのか。憲法の主権在民の原則に反し、人間差別の根源でもある天皇制への迎合路線が明示されたのである。
今回の新天皇の即位にあたって、さらに指摘されなければならないのは、新天皇が就任にあたって、その最初の行事が憲法に従えば「天皇の憲法遵守宣誓式」であるべきはずが、なんと戦前と同様の臣民を見下した「即位後朝見の儀」なる儀式が行われたことである。そこで新天皇は「常に国民を思い,国民に寄り添いながら」と、主権在民の原則と相反する上から目線の「お言葉」を述べ、これに応えて、その「臣民」の代表たる安倍首相が「国民代表の辞」を奉呈し、新天皇の「令和」という新しい「御代」と持ち上げたことである。ただここで失笑を禁じ得ないのは、安倍首相が「国民代表の辞」の末尾で「天皇、皇后両陛下には末永くお健やかであらせられますことを願っていません」と言ってしまった。「願って已まない」の「やむ」をまたもや一瞬戸惑い、「願っていません」と言ってしまったのであろう、右翼団体から抗議されている。これは失言に過ぎないが、さらに重大なのは、前天皇が即位の際明言した「皆さんとともに日本国憲法を守り」という一節が完全に省かれ、「憲法にのっとり」に置き換えられてしまったことである。明らかに安倍首相による新天皇の取り込みと官邸の圧力 が介在したのであろう。
そして問題なのは、こうした安倍政権の対応に同調するかのように、共産党は先の志位委員長談話で、「日本国憲法の厳守を求める」のではなく「日本国憲法の精神を尊重し擁護することを期待します」という表現に後退させたことである。
こうした路線転換は、2016年1月の通常国会で、それまで同調してこなかった天皇の国会開会式出席・「おことば」を容認し、結党以来初めて志位委員長をはじめ共産党議員が出席し、天皇に頭を下げ、2017年4月1日からは機関紙「しんぶん赤旗」に元号表記を復活させた、そして今回「全党一致の代替わり儀式」を進んで提案、5/9には衆議院本会議で、天皇の即位に祝意を示す「賀詞」を全会一致で議決し、共産党も出席して賛成、大政翼賛政治へ賛同するこうした一連の天皇迎合路線に新たな右傾化の一頁を加えたのだと言えよう。
こうした象徴天皇制に迎合するかのような路線転換と、追い込まれたうえでの柔軟な野党共闘路線への転換で、統一戦線の前進がありうるとでも考えているのであろうか。そのような甘い考えでは、野党勢力の地滑り的な敗北を招きかねないのである。統一戦線の前進を支えるのは、付け焼刃的な姑息な柔軟性ではなく、私的党派的利害を超えて、分かりやすい明確な政策、行動綱領を明確に示し、少しでも情勢を前向きに変える人々を献身的に支え、そのために創造的に介入し、より広範な人々を結集させる「知的・道徳的ヘゲモニー」の一貫性こそが求められているのだと言えよう。
(生駒 敬)

【出典】 アサート No.498 2019年5月

 

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【書評】『核兵器はなくせる』

【書評】『核兵器はなくせる
(川崎哲、岩波ジュニア新書,2018年7月発行、820円+税)
アサート No.498 2019年5月

ICAN (International Campaign to Abolish Nuclear Weapons=核兵器廃絶国際キャンペーン)の国際運営委員として活躍している著者が、中高生向けに書いた核兵器問題をテーマにした書である。ICANは現在、世界101ヵ国、468の団体が加盟して活動を続けている。また2017年7月に国連で「核兵器禁止条約」が採択されるまでに大きな役割を果たし、同年12月にノーベル平和賞を受賞したことで、日本でも名前が知られるようになった。しかしその活動や肝心の「核兵器禁止条約」そのものについてはまだまだ理解が深まっているとは言えない。本書はICANの活動に関わってきた体験を通じて、核兵器廃絶運動の現在における問題、疑問、反論を解明する。
その最たるものは「『条約に参加したとしても、守らない国があるかもしれない』というものです。たしかにそのとおりですが、考えてみてください。たとえば、『殺人は罪』とする法律がありますが、守らない人がいます。だからといって、殺人を罪とする法律をつくることに意味がないわけではありません。核兵器はこれまで悪いものだと規定されていませんでした。それを国際ルールで禁じることには大切な意味があります」。
「また『核保有国が参加しない禁止条約には意味がない』という批判もあります。もちろん、この条約が発効しても、それだけで核保有国が核をなくすわけではありません。これまでのNPT体制では、五つの大国が核兵器をもつことを許されていました。国際社会のルールでは、核兵器は『必要悪』のような存在だったのです。核兵器禁止条約はそれを否定して『核兵器はどの国がもっても悪いもの』と定めました。つまり『必要悪』ではなく『絶対悪』ということです」。
つまり核兵器そのものが国際法違反とされ、生物兵器や化学兵器と同じように、「力のシンボル」から「恥のシンボル」に変わったと指摘する。
そして本書は、核兵器禁止に向けた地道ではあるが着実な運動—-なかでもわれわれの視点に上ってこない、ということは日本のマスメディアがあまり伝えない国際的な動きを紹介する。
その一つは、赤十字の「革命的な」声明である。赤十字国際委員会(ICRC)は2010年の国際会議で、これまで政治的な話はしないという方針から、積極的に核の非人道性を取り上げ、特定の国・地域・政治問題・歴史問題から切り離して「核兵器は非人道的で、いかなる場合も認められない」と宣言した。その中で「核戦争が起きたら救援には行けません」、つまり核兵器が使用されればそこが放射能で汚染されていることは明らかなので、救護には行きたくても行けない=「救護を職務とする赤十字が救護に行くこともできなくする兵器の存在を許すことはできない」という主張で、これには強い説得力がある。
またこの流れを引き継いで、2013年~2014年の「核の非人道性」をテーマにした国際会議では、「核兵器が使われた場合にどのような非人道的な影響がもたらされるか」が検討されている。これは、過去に目を向け広島・長崎、世界各地の核実験の被害を取り上げて検証すると同時に、現在・将来にも目を向け、もしいま核兵器が使用されたらどうなるかについて、科学者が詳細なシミュレーションを出して議論するというものである。これについて本書は「日本では、広島と長崎の被害があまりに甚大だったので、原爆が今日またどこかに落とされたらどうなるかについての、研究や議論をすることはタブーになっていた面があると思います」と指摘するが、例えば、2013年、インドとパキスタンの間で全面核戦争になった場合の想定被害が国際的な科学者グループによって発表された。それによれば広島・長崎の死者を一桁上回る数の人びとが亡くなり、放射能汚染の被害も大きく、大量の負傷者や難民が出るとされるが、「その人たちをどう救うのか、というめどは立ちようがありません」。またこれによる気候変動=「核の冬」や通信網の寸断等々世界経済が大きな打撃を受けると予測されたのである。これはこれからさらに検討されるべき真剣な課題となっている。
そして日本ではほとんど報道されていない国際条約に「非核兵器地帯条約」がある。この条約は、核保有国任せでは軍縮が期待できないとして、核を持たない国々が進めた国際条約で、1968年に発効した「トラテロルコ条約=ラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約」が最初である。これは核保有5ヵ国に対しても、この条約加盟国への核兵器使用・威嚇を行なわないことを認めさせ、現在ラテンアメリカ~カリブ諸国全33ヵ国が加盟している。この条約には他に、「ラロトンガ条約=南太平洋非核兵器地帯条約」(1986年)、「バンコク条約=東南アジア非核兵器地帯条約」(1997年)、「ペリンダバ条約=アフリカ非核兵器地帯条約」(2009年)、「セメイ条約=中央アジア非核兵器地帯条約」(2009年)があり、特に最後の中央アジアの条約には、旧ソ連時代に核兵器が多数配備されていたカザフスタンやウズベキスタンも参加し、地域から核を完全に排除している。またロシア・中国という核保有国に挟まれたモンゴルは、一国のみの非核兵器地帯を宣言し、国連総会で認定された(1998年)。
このように本書は、核兵器禁止条約をつくり、核兵器をなくす運動の現在を語り、未来への歩みを紹介し、こう呼びかける。「核兵器禁止条約ができたいま『条約なんてできるわけがない』と言っていた人はいなくなりました。でも今度は『条約はできても、核兵器をなくすことはできない』と批判する人がいます。それでも僕たちは言い続けます。『核兵器はなくせる』と」。(R)

【出典】 アサート No.498 2019年5月

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【投稿】大阪ダブル選・維新大勝が突きつけるもの 統一戦線論(59)

【投稿】大阪ダブル選・維新大勝が突きつけるもの 統一戦線論(59)
アサート No.497 2019年4月

<<安倍政治こそが維新の原動力>>
4/7投開票の大阪府知事・大阪市長ダブル・クロス選挙は、維新政治=安倍政治に終焉をもたらすまたとない機会であったが、選挙結果は、逆に安倍=維新政治を正当化し、付け上がらせる結果となってしまった。知事選では約100万票、大阪市長選でも20万票近い大差をつけた維新の圧勝であった。なぜこのような大差がついたのか、野党を含めた反維新陣営は、この敗因をあいまいにしたり、しっかりと受け止めなければ、有権者から見放される事態となろう。
第一は、表面上は安倍政権が維新候補ではなく、自民・反維新候補を支持していたが、実態は安倍政権が維新候補を強力に支援していたことの過小評価である。本来そのことが徹底的に批判され究明さるべきであったが、なおざりにされてきた。その直接的な反映は、朝日新聞の出口調査では、大阪市長選では維新支持層が全投票者の44%を占めたのに対して、自民支持層は21%にとどまり、共同通信社の出口調査では、自民支持層の50%が維新候補に投票したという実態に表れている。それは首相官邸、菅官房長官の、維新、公明幹部との癒着・連携が、自民党大阪府連、公明党大阪府本部の反維新姿勢を曖昧なものにさせ、自民支持層ばかりか公明支持層をまで浮動票化させ、事実上の「自由投票」と化させてしまったことに表れている。4/21投開票の衆院大阪12区の補欠選挙でも、投票日前日にしか自党候補支援に入らず、維新候補を勝たせた安倍首相の姿勢にも鮮明である。自民候補が敗れても、安倍首相や政権中枢が安堵する構図が出来上がっているのである。
第二は、反維新陣営の政策的対決軸が全く後ろ向きであったことである。維新側の、「大阪の経済を停滞させるな」「大阪の成長を止めるな」という実態と乖離したでたらめな政策対決軸に対して、「都構想」反対以外に有権者を引き付ける政策的対決軸を設定できなかったことに象徴的である。敗因の決定的要因ともいえよう。ファッショ的集権主義・自由競争原理主義・賭博的投機主義に対して、反緊縮・分権・自治・所得再分配・成長の戦略、政策こそが問われていたのである。
第三は、そうした事態はほぼ予想されていたにもかかわらず、反維新候補を支援する野党陣営は、政策的にも組織的にもバラバラで、野合した既得権益擁護勢力であるかのようなデマゴギーを許してしまったことにある、と言えよう。
その結果として、本来獲得できるはずの政党支持なしの無党派層において、知事選61.5%、市長選56.5%もの過半数の有権者が維新候補に投票するという事態をもたらしてしまったのである。立憲民主党、共産党支持層でさえ、その実に30%前後が維新候補に投票しているのである(共同通信社の出口調査)。

<<「安倍・菅・松井は盃を交わした義兄弟」>>
維新圧勝で舞い上がった橋下・前維新代表は、「僕は彼ら(松井・吉村)の性格とか、大阪維新の会のメンバーの性格をよくわかってますので、公明党の衆議院選挙の選挙区に大阪維新の会、立てます。で、もう関西は6選挙区あるんです、公明党のね。これが公明党の力の源泉ですよ。この6選挙区全部(に維新候補を)立てて、しかももう、大阪維新の会のエース級のメンバー、もう準備できてます。もう戦闘態勢に入ってます。だから、今はこれ第一幕で、第二幕は公明党を壊滅させる、というところまでやりますから。そうすると、日本の政治構造も大きく変わります。自民党との協力がね、公明党じゃなくてもしかすると維新となって、憲法改正のほうに突入していくと」「安倍さん菅さんと松井さんは盃を交わした義兄弟みたいなもの。松井さんは菅さんのこと大好きだし、菅さんも松井さんのこと大好きだから。本当にファミリーみたいで、すごいよ」「もし安倍さんが任期の最後に憲法改正をどうしても、ということであれば、連絡を取り合って、松井さんが『公明以外から2議席を取りました。オッケーですよ』と。そこで安倍さんが衆議院解散ですよ。維新はすでにエース級が揃っていて、準備体制もできてる。ここで大阪の公明党をすべて落選させて、憲法改正!」とまで放言している(4/8フジテレビ,4/11AbemaTV)。この本音は、安倍首相の本音でもあろう。
吉村洋文大阪府知事も大阪12区補選の応援演説で「自衛隊も(憲法9条に)明記されていない」と嘆き、「(自民党、公明党、維新の会と合わせて)いま衆議院と参議院で3分2以上の改憲勢力がある。なんで本気で憲法改正の議論をしてくれないの」「僕たちは、ダイナマイトみたいにボカンと国会でやりたい。日本を前に進めていくためには今の自公だけじゃだめ。特に公明党と組んでいる限りは、なかなか国のあり方は決められない」と安倍首相の本音を代弁している。
さらにこの大阪12区補選では、維新候補はダブル選では触れようともしなかった消費税増税問題にまで踏み込み、「(補選で)私を押し上げていただいたら『消費税の増税を吹っ飛ばせる』と言われている。(大阪12区の)寝屋川市、大東市の皆さんが維新と藤田文武にもう一回期待をかけてもらったら、消費税の増税までドーンと吹っ飛ばせるかも知れない。吉村さん(府知事)流に言えば、ダイナマイトみたいな戦いをさせて欲しい。もう火の玉になって突っ込んで行きますので是非とも勝たせて下さい」と訴え、続いて松井一郎・維新代表が「増税の前に(政治家の)自分達も身を切る改革をする。ここで増税を許すと、これから高齢者が増える中で、高齢者の社会保障費を掲げられて、どんどん大増税国家になります。増税を凍結するために勝たせて下さい」とまで訴え、当選している。安倍政治のお先棒を担ぎながら、何という欺瞞であろうか、と思われるが、ここでも安倍首相の本音を別の形で代弁しているのである。
これは、安倍首相の最側近と言われる萩生田幹事長代行が、6月の景気指標次第では衆院の早期解散=増税見送りもありうると言及し、さらに「(天皇の)譲位が終わって新しい時代になったら、ワイルドな憲法審査を自民党は進めていかないといけない」と発言したこととぴたり符合するものである。

<<「れいわ新選組」>>
この大阪12区補選では、共産党が急遽、現職議員の宮本岳志氏を辞職させて無所属で擁立するという「奇策」に打って出て、野党統一候補を目指し、野党支持層や無党派層の支持拡大を狙ったが、敗れた旧民主党の樽床伸二氏の得票にも及ばず、得票率は2割にも届かなかったのである。付け焼刃的で、自党中心主義的な「奇策」では事態が打開できないことが明示されたと言えよう。
一方同じ補選でも、米軍基地・辺野古移設の是非が争点となった沖縄3区では、「オール沖縄」の屋良朝博氏が勝利した。候補擁立に曲折があったにもかかわらず、幅広い勢力を結集し、大衆運動を背景に粘り強く築き上げられてきた統一戦線形成の努力の成果と言えよう。
しかし沖縄以外では、参院選を目前に控えていても、いまだにオール野党共闘の姿が見えてこないばかりか、停滞さえしている。このままでは32の1人区で、きわになって形ばかりの「野党共闘」がたとえ組まれたとしても、とても有権者の共感を勝ち取れず、まともに選挙を戦える態勢も作れず、その多くが敗北する怖れさえある。。
しびれをきらした山本太郎参議院議員が4/10、自由党からの離党と、新党「れいわ新選組」の結成を発表。「8つの緊急政策『政権とったらすぐやります!』」として「①消費税廃止 ②全国一律! 最低賃金1500円『政府が補償』 ③奨学金徳政令 ④公務員増やします ⑤第一次産業戸別所得補償 ⑥『トンデモ法』の一括見直し・廃止 ⑦辺野古新基地建設中止 ⑧原発即時禁止・被曝させない」という政策を明らかにした。同時に「日本国憲法改正なんて、当面は全く必要ないから、野党は憲法改正の検討や議論などしなくていい」とも述べている。大胆な財政出動を前面に掲げたことは、「何よりも、人びとのための経済政策を!」という薔薇マークキャンペーンと連動しており、評価できよう。選挙戦術では、支持者から募った寄付額に応じて、参議院選での擁立する候補者数を決める、まずは5月末までに1億円を集め、「10億円集まれば、比例区で25人、選挙区では2人区以上に立てたい」という。元号改定に迎合したような名称はいただけるものではないが、「野党が結集できたときには、(新党の)旗を下ろそうと思います」とも述べている。明らかに混迷する野党の結集に一石を投げかけているのである。
安倍政権や維新がほくそ笑んでいる現実を、しっかりととらえなおす闘いのあり方、野党共闘、統一戦線のあり方が厳しく問われているのである。
(生駒 敬)

【出典】 アサート No.497 2019年4月

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【投稿】WTOが韓国の福島など水産物禁輸を容認-原発事故に「収束」はない

【投稿】WTOが韓国の福島など水産物禁輸を容認-原発事故に「収束」はない
福井 杉本達也 アサート No.497 2019年4月

1 WTOで日本の逆転敗訴:韓国の福島など8県の水産物禁輸を容認
韓国による東京電力福島第1原発事故の被災地などからの水産物の全面禁輸について,世界貿易機関(WTO)の上級委員会が11日,日本の逆転敗訴の判決を出した。原発事故を理由とする日本産食品の輸入規制はいまも23ヶ国・地域で続く(農水省のHPでは50ヶ国)。勝訴を追い風にほかの国にも輸入規制の緩和を求める予定だった日本の戦略が大きく狂った(朝日夕刊:2019.4.12)。
韓国は2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、福島や岩手など8県産の水産物輸入を禁止。 日本は「科学的根拠がない」として、2015年にWTOに提訴していた。審理は2審制で、「一審」の紛争処理小委員会は2018年2月22日に韓国の禁輸措置が協定違反に当たるとし、一旦、是正を勧告する報告書を発表したが、韓国が上訴し4月11日に上級委員会は、「一審」の判断を破棄した。危機感を募らせた日本政府は韓国の禁輸措置を撤廃するよう再要請するというが(福井:2019.4.21)、韓国は応ずるつもりはない。

2 なぜ韓国だけをWTOに提訴したのか
日本の食品について、米国・中国・EU・ロシアなど世界50ヶ国もが何らかの禁輸を行っている(諸外国・地域の規制措置(2019年4月15日現在)農林水産省HP)。例えば、EUは福島、岩手、茨城、栃木、群馬、千葉の6県の水産物や山菜に対し政府作成の放射性物質検査証明書を要求している。日本としては中国やEUに対しては高飛車な外交ができるような立場にはない。先んず、日本がWTO提訴を試みたのが台湾である。台湾では2015年3月に福島県産の産地偽造が発覚した。これに台湾の消費者が激怒したことで日本食品の輸入規制強化された。そこで日本はWTOに提訴すると台湾を恐喝して禁輸措置を緩和しようとしたものの、住民投票による反対によってひっくり返されてしまった(日経:2018.11.26)。台湾の対応は主権国家として当然のことで、WTOに提訴するとの脅しを繰り広げた日本政府の行為は帝国主義的発想丸出しの露骨な内政干渉である。次に「弱そう」で無理難題押し付けても「外交的損失が少ない国」と考えたのが韓国である。文政権以前においても、韓国とは竹島問題や慰安婦像問題などでギクシャクしていたこともあり、外交的後先を考えずWTO提訴し、一点突破することによって、他の禁輸国に緩和を迫る圧力とする作戦であった。今回の敗訴は外交儀礼の片鱗もないプチ帝国主義的外交の完全な破綻を示している。

3 禁輸措置は「風評被害」か
日経新聞は社説で「韓国の禁輸措置は継続され、他国に残る輸入規制にも影響しかねない。判決を受けて被災地や日本の食品に対する風評被害が再び強まるおそれもある」(2019.4.13)と書く。あたかも、風評被害はWTO判決や韓国にあるというような書き方であるが、繰り返しになるが提訴したのは日本である。放射能をばら撒いた加害者は事故を起こした東電であり、共同正犯の日本政府である。その事故原因者は被害者にまともな補償をせず逃げ回る責任を回避し続けている。「風評」ではなく「実害」である。

4 日本産食品を科学的に安全だと他国に強制する傲慢
日本政府は敗訴の判決を受けても、従う気は全くなく、菅官房長官は「日本産食品は科学的に安全で、韓国の安全基準を十分クリアするとの1審の事実認定は維持されている」との傲慢な姿勢を維持している。毎日新聞の社説は輪をかけて「懸念されるのは、敗訴によって、日本の水産物は不安だという誤解が海外で 広がってしまうことだ。だが安全性まで否定されたわけではない。」「『日本の水産物は科学的に安全』という1審の事実認定は上級委員会も変えていない。日本の検査は国際基準より厳しく、基準値以上の放射性物質は検出 されていない。」(2019.4.13)と日本政府を擁護する。しかし「日本の水産物は科学的に安全」と誰が言ったのか。「日本の検査は国際基準より厳しい」と誰が判断したのか。日本による一方的な主張に過ぎない。国際的に通用するものではない。そもそも、わずか数年で放射性物質が消えることはない。セシウム134の半減期は2.1年、セシウム137の半減期は約30年であり、2018年には事故直後の2011年の25%にまで減少しているが、これは主に半減期の短いセシウム134の減少によるもので、物理的量どおりに減少しているだけである。半減期の長いセシウム137は今後それほど減少してはいかない。「『基準値以下だから大丈夫です』といういい方が多いが,いまは米も野菜もND(不検出)で,そもそも放射能がいっさい検出されていない。100ベクレル以下ですから安全ですと いうのではなく,NDなのである」(関谷直也)などという言い方をする向きもあるが、ND=0ではない。物理的観点からは放射線量は当初の1/4になっただけであり、今後も数十年この状況が続くということである。国際的には1/4になったから食物を食べて下さいと言えるかどうかである。食べるかどうかは相手国の内政の問題である。大手を振って押し付けられる立場にはない。
しかも、日本政府は汚染水の海洋投棄や 汚染土の再利用などを推し進めようとしており、また、住民の年間被ばく線量の許容量は事故前は1ミリシーベルトであったものを勝手に20ミリシーベルトへと無理やり引き上げている。災害直後であれば、緊急避難として、やむを得ない面もあるが、これほど高い被ばく線量を、これほど長く容認している国はない。これでは日本政府がどんなに「安全な食品だ」と訴えたところで、国際的に信頼されないのは当然である。

5 敗訴で汚染水の海洋投棄計画は完全に破綻
朝日新聞は「今回の日本の敗訴は福島第一構内のタンクに約100万トンある放射性トリチウムを含む汚染水の処分にも影響しかねない。現在の技術では処理が難しく…経済産業省は薄めて海に流すことが最も合理的として…議論している」と書くが(2019.3.13)、今回の敗訴により完全に論理的にも破綻した。「最も合理的」かどうかは、これまで国内(原発ムラ内で)で議論されてきただけである。国際的に議論されたことはない、勝手な・かつ横柄な日本政府の主観である。日本政府はわざわざ国内だけで議論していたことを、韓国をWTOに訴えることによって国際問題化し、自らの首を絞めてしまったのである。国際社会は日本の放射能汚染の管理について極めて厳しい意見を持っていることが「判決」という正式の手続きをもって示されてしまった。出口を自ら塞いでしまったのである。汚染水は毎日150トン・今後100年どんどんたまり続ける。保管場所は福島の陸地以外にはない。

6 桜田大臣発言の背景にあるもの
3月、日本経済研究センターは福島第一原発事故の国民負担は総額で81兆円になるという試算を発表した。この負担は必ず電気料金に跳ね返る。現在、発電の運転や燃料にかかる直接コストを除く電力料金の約15%:原発関連では電源開発促進税が3,200億円(2016年)、千キロワット時につき375円で、家族4人の標準家庭では年1,400円程度を負担している計算となる。この他、バックエンド費用は19兆円(2004年)と見積もられており、使用済燃料再処理費等で0.51円/kWh、1世帯・1月当たりの 負担額は240円(2007年)となる。また、2020年度から福島第一事故の賠償費用に対する積み立て不足を回収する新しい制度として、過去の積み立て不足を総額で約2.4兆円と見積もり、全国の電気料金に上乗せして回収する方針であり、電力1kWhあたり0.07円になる見込みで、標準的な家庭で年間に252円と計算されている(大島堅一氏の試算では:0.5 円/kWhにもなる)。さらに輪をかけて、六ケ所村の使用済み核燃料の第2再処理工場を巡る総事業費(過去の試算では12兆円)を電力料金に上乗せする関電などの企ても進んでいる。現状、列挙しただけでも上記の負担が本来の運転費・燃料費の外に電気料金に上乗せされている。
福島原発の事故処理費用は青天井であり、特に汚染水の海洋廃棄が出来なければ膨大な額となる。今後、国民は電気料金を通じて賠償を支払い,また税負担を通じて支払うこととなる。電気料金が2倍・3倍となることは避けられない。そうなれば「電気料金への上乗せは認めない」、「賠償を払いたくない」、「早く帰還させ,賠償を打ち切れ」という声が大きくなる可能性が高い。政府の早期帰還、被災者切り捨て政策はこうした声を先取りしているとみることもできる。「復興以上に大事」という桜田大臣の発言はこうした「空気」を代弁している。
我々は、こうした「空気」に対案を出す必要がある。それは既に電気料金の10%も占めるfit(「再生エネルギーの固定価格買取制度」)に頼ることではない。無駄な核燃料再処理事業や高速炉などの計画は即時中止すべきであるが、原子力から撤退しても福島原発の事故処理費用・廃炉費用が減少することはない。これは確実に電気料金(又は税金)から支払われることとなる。我々の対案は、ドイツがバルト海で進める「ノルド・ストリート2」のように、ロシアから天然ガスをパイプラインで輸入することである。LNGで輸入すれば冷却費・輸送費が嵩むが、パイプラインなら1/2になり、格段に電力の燃料費を下げることが可能となる。また、シベリアから電力を直接購入することを検討しても良い。そのためには朝鮮半島の安定は是非とも必要である。米国の属国としてのプチ帝国主義国として「イージス・アショア」やF35Aなどで近隣の諸国を脅しながら、放射能汚染水の大海で溺れて行くのか、近隣諸国と連携しながら現状の危機的状況を乗り切る努力を行っていくのか。いま日本は重大な岐路に差し掛かっている。

【出典】 アサート No.497 2019年4月

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【書評】「アナログの逆襲 THE REVENGE OF ANALOG 」

【書評】「アナログの逆襲 THE REVENGE OF ANALOG 」
(デビッド・サックス 発行:インターシフト 2018.12.20 2100円+税)
アサート No.497 2019年4月

刺激的な書名である。時代はデジタル全盛であり、近い将来「AI(人工知能)」が発達すると、事務仕事の7割以上がコンピューターによって処理され大量の失業が発生するとの予測もある昨今である。車には「自動運転」技術が搭載され、ハンドルを握ることなく目的地まで運んでくれるとか。買い物もパソコンで、行政手続きもオンラインでなど。果たしてそんな社会が「幸せな社会」なのかどうかは、甚だ疑問ではある。
私の場合、ほとんどの買い物はインターネット。銀行振込も然り。メールでほとんどの情報交換が足りており、スケジュールもグーグルのカレンダー機能で管理している。
しかしである。私は手帳が手放せない。毎年買い求め日程管理も金銭管理も手帳に書いておく。パソコンなるものと付き合い初めて早30年を越えるが、何だか妙でもある。
そんな中で、本書に出会った。刺激的である。以下に「アナログの逆襲」を紹介していきたい。書かれているのは、アメリカ・カナダ・ヨーロッパエリアの有り様だが、日本においても同様の流れがあると考えられる。
「デジタルに囲まれる現代社会で、私たちはもっとモノに触れる経験、人間が主体となる経験を渇望している。商品やサービスに直接触れたいと望み、多くの人々がそのためなら余分な出費もいとわない。たとえ同じ事をデジタルでするよりも、手間がかかっても高額でも。」

 <第1章 レコードの逆襲>
1980年代後半にレコードは徐々に姿を消し、音楽はCD(コンパクトディスク)が主流となった。そしてインターネットの普及とともに、サーバーからダウンロードする手法に移っていった。スマホやデジタル機器で再生する音楽が主流となった現在、レコードの逆襲が始まっていると著者は語る。
2012年カナダのトロント、著者が住む家の近くに「レコード店」が開店する。以来著者は、レコード店に通い詰めることとなる。そして、市内に次々とレコード専門店が生まれていったという。これらは中古レコード店だったが、新たにレコードの新盤も発売されるようになった。アーティストも、アナログ録音に流れていった。
「レコード店の消滅を書き立てる記事は、・・・レコード店の新規出店のニュースに取って代わり、しまいにはレコード店が復活しただけでなく、大繁盛であると高らかに宣言した。」
デジタルで楽曲作りは、パーツの組み合わせで行われる。パソコンを使えば素人でも楽曲が作れる。正確なリズムや音質も確保できる。しかし、臨場感はない。そこにアーティストが居て、その息遣いも伝わる臨場感はデジタル編集された音楽にはない。
CD再生の場合は、生音源から低域と高域の音が削除され、デジタル処理されて(0・1信号化)いる。今から5年ほど前、私もパソコンでのハイレゾ音源化について真剣になった時があった。高品位なデジタル音源化が流行っていたが、どうも最近聞かなくなった。日本でもアナログレコードの方に関心が進んでいる。
本書では、アメリカ・ナッシュビルのレコード製造会社復活について、レポートされている。
第2章紙の逆襲では、デジタル保存でペーパーレス化などと言われていたが、大ヒット商品となった手帳メーカー・イタリアのモレスキン社が取り上げられている。

<第3章 フィルムの逆襲>
私のパソコンに保存されているデジタル写真の一番古いものは、1998年の日付けである。約20年前である。2000年11月に行った「故小野義彦先生の墓参会」の風景もデジタルだった。この頃からフィルムカメラの衰退が始まった。以来、私もデジタルカメラを買い続けてきた。フィルムカメラの衰退は、フィルム製造業を直撃する。「2002年ポラロイド社倒産、2003年イタリアのフェッラーニア、2005年イギリスのインフィールド倒産、2012年コダック破産申請・・・」
本書で取り上げられているイタリアのフィルム工場も、往時は4000人が働いていいたが、2011年工場機械の処分を待つばかりだった。たまたま二人の青年が、フィルムの必要性から機械の一部を譲り受け、フィルム生産を継続。一方、ソ連製の粗雑な造りのフィルムカメラ(LC-A)が、若者たちから支持され、フィルム需要が増えていった。ウイーンの2人の学生が立ち上げたフィルム会社「ロモグラフィー」がその中心で、以降フィルムカメラの逆襲が始まったという。ポラロイド社の倒産後、その技術を受け継いだ富士フィルムは、その場で現像できるインスタントカメラが若者を中心に販売を伸ばしている。映画業界でも、デジタル撮影と共にフィルムによる撮影を好む監督が増えているという。
画質と精度ではデジタルには敵わないが、デジタルではフィルム写真の雰囲気をだすことはできない。筆者も語っているが、デジタル写真はパソコンの中にしかないが、現像されたフィルム写真は、パソコンが替わっても、アルバムに残っている。
第4章は、ボードゲームの逆襲、そして第5章は、プリントの逆襲である。

<プリントの逆襲、リアル店舗の逆襲>
デジタルの影響をもっとも受けているのは、印刷・出版の世界であろう。ニュース報道や報道写真では、朝夕の新聞より素早い情報提供ができる。
筆者は言う。「活字メディアで働くことは、ラストベルトの都市で暮らしているようなものだ。・・・年を経るごとに、寄稿してきた出版物が次々に廃刊になり、紙面を縮小する雑誌や新聞、首を切られる編集者が増えるばかりで、執筆料は減る一方だ。印刷出版物は、情け容赦ないデジタル重力の法則に抗えず、下降の一途をたどっているように見えた。」と。
しかし、出版印刷は、特定の分野でしっかり生き続けていると著者は言う。欧米では、高品質の雑誌出版では、小部数ながら読者を増やしている。そこでは、大手出版社に特化した配送ルートに頼らない配布システムも模索されている。
そして何よりも決定的なのは、デジタル配信では儲けが出ないという現実があるという。アメリカの新聞業界でも大半の利益をだしているのは、印刷物の分野であり、デジタルだけでは経営がなり立たないという。
そして、リアル店舗の逆襲である。アマゾンやネットでの書籍購入は簡単で検索も容易である。しかし、欧米では逆に書店が増えているという。ゆっくりと本を探す楽しさや、特定分野に特化した書店、そして読書家の店員との会話を楽しむというメリット。アマゾンにはない世界がそこにはある。
残念ながら、私の住む大阪では、書店の閉店が相次いでいる。倒産した大型書店もある。この点については、私の現実とは少々違ってはいるのだが。
また、ネットで売れているのに、わざわざ実店舗を出すという戦略をブランド企業が増えている。アップルストアがそうだ。ブランド企業ほどその傾向があるらしい。

<仕事の逆襲、教育の逆襲>
仕事の逆襲で取り上げているのは、デトロイトの時計会社の話。メイド・イン・デトロイトの手造り時計の話である。スイスも、クオーツ時計・デジタル時計の登場で販売は大きく落ち込んだ後、ハンドメイドを明確にして復活している。高級腕時計分野ではあるが、手作り、職人の技術、そして持つ喜びを演出して、生き延びている。
教育の逆襲では、生徒にipadを配るなどのデジタル教育が、学力の向上には繋がらなかったというアメリカの経験が語られる。生徒間のコミュニケーションや実物教育の方が生徒の力を伸ばすのだそうだ。低年齢からパソコンに慣れさせた方がいいという話しは過去の話になりつつあるという。

<デジタルの先端にあるアナログ>
「ビジネスの世界でデジタル重視が強まるに連れて、新しい斬新な方法でアナログを活用できる企業や個人がますます突出し、成功を収めるだろう。手間をかけることがこれまで以上に重んじられアナログなツールと慣習を導入した主要企業が頭角を現すことになる。それは、アナログが生産性の高いツールであり、しばしば最良のツールであるからに他ならない。」
一見してビジネス書のようにも思える本書だが、企業の話だけに留まらないように思える。かなりのデジタル人間であろうと考えている私だが、思いついたテーマは万年筆で、手帳に書いておく。また、読み返して反芻する。そして、企画書はパソコンの出番である。
デジタルとアナログの共存、そしてデジタルの先端、基礎こそアナログに他ならない。
デジタルを駆使できる人間こそ、アナログを愛すべき、これが結論のようである。(2019-04-22佐野)

【出典】 アサート No.497 2019年4月

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【コラム】児童虐待根絶には母子世帯・若者の貧困問題解決が必要だ

【コラム】児童虐待根絶には母子世帯・若者の貧困問題解決が必要だ
アサート No.497 2019年4月

○近年児童虐待の件数が増え続けている。児童が死亡に至る悲惨なケースもあり、マスコミは児童相談所や教育委員会、警察などの行政機関の取り組み不備を指摘するのに躍起だ。特に、虐待ケースとして把握していた世帯が転居していた場合、学校・教育委員会・警察などで十分にケースの引継ぎが行われたのか?一時保護を解除した後のフォローは適切だったか、などをテーマに記事が組まれている場合が多い。○こうした指摘は具体的な措置や指導、見守り対応についてのみ焦点を当てる。その指摘に行政機関や担当者は、しっかりと対応すべきであることは当然の事と言える。○しかしである。こうした虐待案件の陰にある「母子世帯の貧困」や「非正規労働者の増加と貧困」という背景にまで、踏み込んだ記事を見たことがない。○児童虐待とは言え、傷害罪や殺人罪として刑法上の対応となる。「児童虐待罪」という規定はないので、傷害罪・殺人罪として裁かれる。○よくあるケースが、母子世帯に別の若い男性が同居し、男性が児童虐待を繰り返したという事件であろうか。○この場合、男性は無職で住所不定とされている場合が多い。定職に就かず(就かれず)、居候状態で泣く子を虐待したなどのケースが多い。○確かに具体的な犯罪行為は、その行為をなした加害者が裁かれるべきだ。しかし、母子世帯や若者の貧困状態が広がる現代では、虐待に至るケースが今後も増えていくと考えるしかない。○橋本健二早稲田大学教授の著書「アンダークラス」によると、現在928万人の労働者が、年収200万円以下の非正規労働者であると指摘されている。(就業者の14.9%、平均年収は186万円)氏の提唱する「新しい階級(アンダークラス)」である。○定職がなく・住所も不定という場合、アンダークラスより、さらに下層ということか。地域社会との繋がりが乏しい場合も虐待発見が遅れることになる。○貧困が蔓延して犯罪が増加する、との社会的要因説に立てば、今後も「貧困」を背景に生活の苦しさ、生き辛さ故の虐待案件が減ることはない。児童福祉士を増やそうが、児童相談所を増やそうが、根本となる「低賃金」や「貧困」に対する社会施策の充実を行わなければ、児童虐待や高齢者虐待事件が増え続け、社会不安が強まっていく。○「貧困は自己責任」という新自由主義的発想では何の解決にもならない。(佐野)

【出典】 アサート No.497 2019年4月

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【投稿】大阪府知事・大阪市長 ダブル・クロス選挙

【投稿】大阪府知事・大阪市長 ダブル・クロス選挙
大阪都構想・維新政治に終止符を打とう!

統一地方選挙前半戦まで1ヵ月を切った。3月8日、松井大阪府知事・吉村大阪市長は、揃ってそれぞれの議会宛てに辞書願を提出した。維新の会が主張する「大阪都構想」のスケジュール案が法定協議会で否決されたというのが理由だ。
昨年末以来、維新と公明の間で罵倒合戦が繰り広げられてきた。所謂密約問題である。維新・公明間で、本年11月までの知事・市長任期の間に、再度「大阪都構想」の住民投票を行うとの「密約」(2017年4月17日付文書)があったという。その内容は、法定協設置の合意、「慎重かつ丁寧な議論を尽くすことを前提に、今任期中で住民投票を実施する」という内容であった。この事実は、何ら府民に知らされてこなかった。すでに2015年の住民投票で否決され、橋下市長を辞任に追い込んだ経過があるにも関わらず。この密約を公明が破ったとして、維新は任期を半年以上残してダブル選挙に出たのである。

<密室合意、批判は公明にも>
維新は特別区、公明は総合区との主張に違いを前提に法定協議会は再び設置された。維新案は住民投票で否決された大阪市解体案とほぼ同じであり、再びの住民投票はそもそも必要がない。しかし、維新は「大阪都構想」の看板は下ろせない。公明に対しては衆議院の大阪小選挙区で対立候補を立てるぞ、という脅しを続けてきた。この密約もそれが背景にある。大阪市民の利害には何ら関係がない。
具体的経過では、昨年12月21日維新・公明の協議が決裂、12月26日知事定例記者会見で、松井が密約文書を暴露。そして最終的に3月7日の法定協議会でも、決裂してダブル選挙表明、3月8日知事・市長辞表提出となった。
維新と公明は、参議院選挙と住民投票を同時に行うかどうかで、決裂した。背景には、公明の読みとして、維新の退潮という状況の変化があるのだろう。橋下が政治の舞台から去って4年、維新のカリスマが消え、その「残存現象」として維新の党勢は大阪府内では続いている。しかし、全国的には1%の支持率政党で、大阪以外ではすでに過去の政党であり、安倍改憲政権を補完するだけの役割を演じているにすぎない。
そして、密約合意に対する批判は、維新のみならず公明にも向けられている。それを払うためにも維新と決別する必要があったのではないか。

<維新政治に終止符を打つチャンス>
反維新知事候補として元大阪府副知事の小西さん、大阪市長候補には、前回のダブル選挙に立候補した柳本前大阪市議が立候補を表明した。自民・公明はそれぞれ推薦を行った。参議院選挙・統一地方選挙を前にした時節、立憲民主党や共産党は、推薦等は行わず勝手連として、応援に回ることになる。大阪における維新勢力のに終止符を打つことができるチャンスである。
一方、維新にはさらに4年維新体制を維持したいと知事と市長をクロスするという。ダブル選挙は、民意を問う必要があるのなら、有り得るかもしれない。しかしそれぞれ任期を全うすることなく、さらに「どちらがやっても変わらない」と強弁してのクロス選挙。知事・市長が入れ替われば、任期を4年引き延ばせることができる、との姑息さ。松井の品格のなさも彼らのとっても不安材料だろう。
今回のダブル選挙は、低迷する維新支持率を前にして、総力戦なら何とか維持できるのでは、との打算も働いているのが見え見えである。こうして姑息で、府民・市民無視の政治手法に対しては維新支持層からも賛否両論が出ている。反維新に中間層も加えて、根こそぎ反維新に回る可能性も高いと予想される。参議院選挙の前哨戦としての統一地方選挙だが、大阪では、維新勢力への鉄槌選挙としたいと思う。(2019-03-17佐野)

【出典】 アサート No.496 2019年3月

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