<<燃料価格、前年同月比、74.2%の上昇を記録>>
10/14、米労働統計局(BLS)が発表した報告によると、9月の米消費者物価指数・CPIは前年同月比で3.7%上昇している。これは11月の米中間選挙を前にした最後のインフレ統計であり、エネルギー価格の上昇が家計を圧迫し続けていることを改めて示すものとなった。トランプ政権にとっては、大打撃である。
コアCPI(食品やエネルギーといった価格変動の激しい項目を除いたもの)の数字、食品やエネルギーを除外してもなお、物価は上昇を続けていることも明らかになっている。9月のコアCPIは前年同月比で2.56%上昇し、4カ月ぶりの高水準であった。月次ベースで見ても、コアCPIは6カ月ぶりの高水準に達している。
9月のエネルギー価格全体は前年同月比で20.4%上昇し、その中でもガソリン価格は34.2%の上昇を記録している。しかし、それ以外の主要項目も高止まりしており、住居費、医療費、衣料品、そして食品といった分野で、明確な価格上昇が見られる。トランプ氏は、就任初日から食料品価格を引き下げると公約していたにもかかわらず、報告書によれば、米国の平均的な世帯は2024年と比べて食料品費を310ドル多く支払わなければならなかった現実が浮き彫りとなっている。。
BLSが公表したもう一つのインフレ指標である生産者物価指数(PPI)――卸売物価を測定する――の結果はさらに悪く、予測を大幅に上回る上昇を見せている。PPIは将来の消費者物価の先行指標となり、近々にインフレが落ち着く兆しは見当たらないことを鮮明にしている。9月の卸売コスト上昇の最大の要因はエネルギー価格であり、前月比で10.8%の上昇を記録した。これは、全米各地への商品輸送に使用されるディーゼル燃料の価格が過去最高を更新したことを反映している。
産業の基幹を担うディーゼル燃料の価格は、過去1年間で、ディーゼル価格はガソリン価格の2倍以上のペースで上昇し、ディーゼル価格の上昇は経済全体に波及し、企業のコストを押し上げ、幅広い製品のインフレを加速させていることが明らかである。
9月の企業間取引における卸売物価は前年比で6.3%上昇を記録。これは、エコノミストらの当初の予測(5.5%上昇)をさえ大幅に上回る水準である。
一般消費者を含む、米国全体でガソリン代の支出が1,010億ドル増加しており、これは平均的な世帯あたり856ドルの追加負担を強いられている。
当然の結果として、賃金上昇分がインフレによって相殺される状態が続いている。BLSが9月分の雇用統計を発表しているが、それによると9月の平均時給は3.02%上昇、ところが同期間の物価上昇率は3.7%を超えていた。つまり、9月にはインフレ調整後の賃金(実質賃金)が低下したという現実である。実質賃金の低下は、これで6ヶ月連続となる。
もちろん、こうした事態は、アメリカだけのものではない。全世界に深刻な懸念と現実を波及させているのである。
<<トランプ政権の公約、自ら台無しに>>
トランプ政権は、2024年の大統領選で勝利した主な理由が、「就任初日」から物価を引き下げるという公約、そしてもう一つは、世界に「平和をもたらす」という公約であった。
しかし、まずは関税、そして無法・無謀な対イラン戦争への突入。この両方によって、関税を消費者に転嫁し、ホルムズ海峡をめぐるエネルギー危機を自ら煽り立てた結果として、自らの公約を台無しにしてしまったのである。すべてトランプ氏の、トランプ政権の、言い逃れの余地のない、責任である。
さらに、インフレに限定して追加するならば、トランプ氏の政策の根底に、「インフレ、ある程度のインフレがあれば、債務は非常に急速に返済されることになる。非常に急速にな。」というトランプ氏自身の発言にあるように、巨額の米連邦政府債務や、膨大な財政赤字に対処する最善の方法は、インフレによって債務を実質的に目減りさせることだと明確に示唆していることにある。この点では、高市政権のインフレ政策も同罪であり、共通している。
そして、このインフレ促進政策は、バブルによって膨らんだ資産を保有し、安易な資金供給が生み出す投機熱から利益を得る富裕層には膨大な利益と恩恵をもたらす。ウォール街や富裕層の資産家たちは、不動産や株式といった資産の価格が上昇し続けることを確実にするために、金融インフレを求めており、トランプ政権はそれに応え、自らも、一族郎党を挙げて腐敗と汚職の泥沼につかりながら、インフレによる利益追求に血眼になっているのが実態なのである。
それにもかかわらず、こうした利害関係者たちの思惑に反して、米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)は9月、政策金利を引き上げざるをえなかった。トランプ氏自身がFRB議長に押し上げ、交代させたにもかかわらず、FRBは、政治的・経済的な現実を前に、実質的に金利引き上げをせざるを得ない状況に追い込まれたのである。議長交代から数ヶ月間先延ばしにしていたものの、FOMCは9月の会合でついに政策金利の引き上げに踏み切ったのであった。これは2023年以来の利上げであり、FRBにとってはインフレに歯止めをかけるための最後の手段であった。
トランプ政権とその取り巻きたちは、現在の物価上昇は、燃料価格の高騰による一時的な現象に過ぎないと主張し、米国がイランとの戦争に勝利すれば、物価上昇もすぐに収束すると臆面もなく主張している。対イラン戦争は「非常に近い将来に――それこそ、いつ終わってもおかしくないほどすぐに――」勝利に終わり、ガソリン価格が下落することで、CPI全体も押し下げられるはずだと断言している。しかし、こんな空言を信じ込む人々は、今や完全に少数派となっているのが現実である。
10/16に発表された、「リアル・クリア・ポリティクス(Real Clear Politics)」がまとめた世論調査によると、トランプ氏のインフレ対応を「支持しない」と回答した人は7割近くに上り、経済やイランに関する同氏の対応についても6割以上が「支持しない」と答えている。
窮地に立たされているのは、トランプ政権であり、その政治的経済的危機は、深まりこそすれ、緩和される事態ではないのが現実であろう。
(生駒 敬)


