【投稿】国連総会の「旧敵国条項」演説でさらに墓穴を掘った高市「外交」
福井 杉本達也
1 外交を放棄する高市
高市首相は10月2日のG7の燃油価格高騰対策を巡るテレビ会議を欠席した。高市は議長国である仏のマクロン大統領が「直前に急きょ設定し、代理出席が認められていた」と主張するが、同時間帯に公表された職務はなかったという(福井:2026.11.11)。日経によると、「首相は直前まで自民党の麻生太郎副総裁、鈴木俊一幹事長らと公邸で会食をしていた」(日経:2026.10.7)。G7会議ではエネルギー価格高騰対策として、軽油と原油の合計1億トンの備蓄放出が決まった。
9月下旬の国連総会出席のための訪米も、1泊3日の強行軍でとんぼ返りであった。国連総会には120人超の首脳クラスが集まっていたが、首脳外交はトランプ大統領のほか、トルコのエルドアン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領との会談だけだった。高市は全く外交ができない。外交を放棄したとしか思えない。
2 旧敵国条項
高市は9月22日(日本時間23日)の米ニューヨークでの国連総会一般討論演説で、日本などを敵国とした国連憲章の「旧敵国条項」は「早急に削除されるべきだ」と求めた。 高市は、2005年に「敵国」を削除するとくべきだ」とした総会決議が採択されたと指摘。「国連の取り組みに大きく貢献してきた」と演説した。
これに対し中国の『環球時報』は「戦後の国際秩序に対する公然たる挑発であり、国連の権威と国際社会の正義を乱暴に軽視するものでもある。」と批判した。「国連憲章の『敵国条項』は、第二次世界大戦の『枢軸国』が再び勢力を盛り返すことを防ぐため、先制的軍事行動を取る『例外的権限』を反ファシズム同盟国に付与したものである。」「戦後の国際秩序を守るための重要な制度的保障である」。「当時『国連憲章』にこの『安全弁』を設けたことの持つ極めて高い先見性が一層裏付けられた」と人民日報日本語版は書く(2026.9.24)。
3 第2次大戦中の同盟国(連合国)
この中国の高市批判に呼応したのが、高市が1泊3日の日程でわざわざ訪米して中国包囲網のために「ディール」?する予定だったトランプ大統領である。トランプ氏は24日、ホワイトハウスで開かれた中国の 習近平国家主席の歓迎あいさつで、第2次世界大戦に触れ、米国と中国について「同盟国(allies)」と表現した。トランプ氏は「第2次大戦で、我々が共に戦った偉業を思い出そう。共通の利益に焦点を当てれば、多くの成果をあげられると確信している」と述べた上で、「共通利益の追求が、距離や相違を超えて両国民を結びつけ、第2次大戦で我々を同盟国にした」と語った。これに対し、習氏も日本を念頭に「第2次大戦中、中米は肩を並べてファシズムの侵略に立ち向かった。この歴史を中国人民は決して忘れず、米国民もまた忘れていない」と応じた(読売オンライン:2026.9.24)。
米国と中国が「同盟国」であるならば、日本は「枢軸国」として「敵国」である。全く外交的センスに欠ける「敵国条項」をわざわざ持ち出し、日本がここまでコケにされたとは恥ずかしい限りである。高市はニューヨークに恥をかきに行ったようなものである。読売は同記事において、「米中が同盟関係にあったのは中華人民共和国ではなく、蒋介石が率いた中華民国の時代だ」と屁理屈をこねるが、戦時中の「中華民国」の戦後の正当な継承者は「中華人民共和国」である。国連は1971年の決議により、中国(中華人民共和国)を唯一の代表とした。中国と国交正常化をした1972年の日中共同声明第3項には、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」と書かれている。
高市の2025年11月7日の衆院予算委における台湾有事は日本の「存立危機事態」である発言は、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、日本の存立が脅かされ、国民の生命に明白な危険がある状況を指す。日本が中国と戦争する事態について具体例を挙げて公に示し、しかもそれが「中国の領土である」台湾に関する事態であること、さらに、日本が攻撃されなくても中国を攻撃できるというのだから、日中共同声明の趣旨を根本から覆すものである(古賀茂明:2025.11.18)。読売の記者の屁理屈記事はこのことを全く理解していない。
4 外交の崩壊で完全に孤立する日本
10月9日の日経は一面トップで、「三菱マテリアルは超硬工具の原材料であるレアメタル(希少金属)、タングステンのベトナムからの調達を始めた。従来、調達してきた中国の輸出規制を受けた代替措置で、割高なリサイクル品などを輸入せざるを得ない状況になっている」と報じた。昨年はタングステン輸入の47%を中国に頼っていたものが(1~8月)、今年の1~8月では中国は13%に落ち、代わりに米国・ベトナムからの輸入が増えている。当然、価格は上昇し、三菱マテリアルは、6月には超硬工具部材の価格を3倍に引き上げている。中国の輸出規制が続けば、さらなる値上げをせざるを得ず、日本の産業界は苦境に陥る。高市“外交”とはいえない、「外交」の崩壊で、日本は世界から完全に孤立しつつある。このままでは国家破産である。