<<「民主党議員6人を絞首刑にすべきだ」>>
11/20、トランプ大統領は、民主党議員6人が、軍務に就く者に対し、軍法と法律に基づき、大統領の違法な命令に従わない義務があることを訴える90
秒のビデオを公開したことに対して、「これは最高レベルの扇動行為だ。国家を裏切るこれらの者たちは全員逮捕され、裁判にかけられるべきである。彼らの言葉は許されるものではない。もはや私たちの国は存在しなくなる!!! 模範を示さなければならない。大統領、DJT」と自らのソーシャルメディアTruth Socialに投稿。
これに応えた「反乱」「国内テロリスト」「ジョージ・ワシントンなら絞首刑にするだろう!!」といった右翼のコメントをリポストし、トランプ氏自身が、「民主党員は死刑に値する」と述べ、「扇動行為、死刑に値する」、「民主党議員6人を絞首刑にすべきだ」と書き込んだのであった。
民主党の6人の議員は、主に退役軍人で、アリゾナ州選出のマーク・ケリー上院議員(海軍担当)、ミシガン州選出のエリッサ・スロットキン上院議員(CIA担当)、ペンシルベニア州選出のクリス・デルジオ下院議員(海軍担当)、ニューハンプシャー州選出のマギー・グッドランダー下院議員(海軍予備役)、ペンシルベニア州選出のクリッシー・ホウラハン下院議員(空軍担当)、コロラド州選出のジェイソン・クロウ下院議員(陸軍担当)であった。彼らが公開したビデオで述べられた内容はすべて完全に合法であり、トランプ政権の現在および過去の行動を考慮すると、全く適切なものであり、彼らは、トランプ政権は「軍服姿の軍人と情報機関の専門家をアメリカ国民と対立させている」と述べ、「違法な命令を拒否することはできるし、拒否しなければならない」と述べ、「我々の法律、我々の憲法のために」立ち上がるよう呼びかけ、「あなた方は我々と同じように、この憲法を守り、擁護する誓いを立てた」、「今、我々の憲法に対する脅威は、海外からだけでなく、まさにここ国内からも来ている」と「船を放棄するな」(“Don’t give up the ship.”)というメッセージで締めくくられていた。
11/22、トランプ氏が、民主党議員6人を絞首刑にすべきだと示唆した翌日、ビデオ・メッセージの議員の1人、クリス・デルジオ下院議員が複数の爆破脅迫を受けたことが明らかになった。「本日午後、カーネギー郡とビーバー郡の選挙区事務所が爆破脅迫の標的となりました。議員と議会職員は無事であり、迅速な対応をしてくれた法執行機関に感謝します。このような政治的暴力と脅迫は容認できるものではありません」と明らかにしている。
草の根の退役軍人団体コモン・ディフェンスは、この爆破予告を確認した後、
「第一に、コモン・ディフェンスは、あらゆる形態、あらゆる政党による政治的暴力を断固として非難します。暴力は我々の民主主義にあってはならないものです。我々は法の支配を信じています。しかし、ここでの因果関係を無視することはできません」と指摘している。
トランプ大統領の今回の暴言は、これまでのような単なる暴言の繰り返しではない、と言えよう。明らかに、自分に敢えて反対する者の殺害を要求し、死刑を要求するとき、それは、自らが独裁者であり、ファシストであることを宣言したものだ、と言えよう。
<<「トランプ氏は今やレームダック=「死に体」、誰もがそれを知っている」>>
トランプ氏は、11/20の1日だけで、民主党議員を反逆罪と扇動罪で非難する16件もの錯乱した投稿と再投稿を繰り広げている。そこまでパニックに陥ってしまったのであろう。隠しおおせない、パニックの現実である。
こうした現実の展開に直面して、もはや与党・共和党議員でさえ、トランプ氏に同調できない段階に追いやられ、上院多数党院内総務ジョン・スーン氏は、記者の追及に対して、「大統領による同僚議員の処刑要請には同意できない」と認めるに至った。そして、最も忠実なトランプ氏の報道官、キャロライン・リービット氏でさえ、数時間後にはトランプ氏の発言を撤回せざるを得なくなり、大統領は野党議員の殺害を望んでいないという速報が流れるという、予期せぬ、驚くべき混乱を招いたのであった。
11/21付けロサンゼルス・タイムズ紙は、「トランプ氏は今やレームダックであり、誰もがそれを知っている」として、共和党全体がトランプ大統領に背を向けつつある、少なくとも5つの主な理由がある、との分析を掲載している(Five reasons the GOP is finally bucking Trump 共和党がついにトランプに反抗する5つの理由)。
1.憲法違反となる3期目の就任を公然と示唆しているにもかかわらず、トランプ氏は2028年以降も大統領職にとどまることはできず、トランプ氏よりも長く政権にとどまりたい共和党員を怯えさせている。
2.2024年の大統領選では僅差で一般投票での勝利を収めたかもしれないが、支持率は急落しており、今週初めのロイターの世論調査では38%となっている。
3.トランプ氏が有権者からますます孤立している。これは、最初の任期に比べて集会の回数が減っていることに象徴される。「今や彼は物理的に孤立し、支持基盤との接点もますます薄れている。彼の側近はイデオローグと億万長者で構成されている。彼らは牛乳の価格を気にしない人々だ。」
4.彼の健康と死亡率への懸念があり、「MRI検査も受けているが、その検査内容については誰も十分に説明できない」という報道も、懸念に拍車をかけている。
5.トランプ氏の政治連合は常に不安定なものだった。その結束力が弱まるにつれて、矛盾が露呈し、あからさまな争いは避けられなくなってきている。
トランプ政権に好意的なFOXニュースでさえ、自社の世論調査の結果を踏まえ、回答者の76%が、経済は「それほど良くない」または「悪い」と回答し、共和党支持者でさえ、食料品、公共料金、医療費がトランプ政権下で上昇したと回答し、住宅価格、賃金、医療、気候変動問題に関しては、民主党の方がより良い計画を持っていると回答したと報じている。
レームダックに陥り、パニックに陥ったトランプ政権が、危機打開により危険な内戦や対外戦争挑発に乗り出しかねない、危険な展開であり、それを孤立させ、阻止する広範な闘いが要請されている。
(生駒 敬)