<<“If I must Die.”>>
今月、12/6、パレスチナの著名な詩人、作家で、何よりもパレスチナ人の権利を訴え続けてきた活動家である、レファアト・アラリール氏(Refaat Alareer)が、ガザ北部シャジャイヤでイスラエル軍の爆撃によって殺害された。一緒にいた兄弟姉妹やその子ども4人も死亡した。自分が殺されることも想定して、「“If I must Die.”もし私が死ななければならないのなら」という詩を書き残していた。米ニューヨークや英ロンドンでは追悼集会が開かれている。
ガザ地区にあるイスラム大学で2007年から比較文学の教授を務めていたアラリール氏は、ガザの経験を記録に残す活動、「ガザの語り手」として、広く知られており、2014年のイスラエル攻撃後にガザで立ち上げられた「私たちは数字ではない We Are Not Numbers 」の創設者の1人でもあった。
アラリール氏は、2014年、イスラエルに封鎖された生活を若い作家たちが記録した短編集「Gaza Writes Back: Short Stories from Gaza, Palestine」を編纂、エッセーや写真、詩をまとめた2015年の「Gaza Unsilenced」(2015 年)では共同編集者として、イスラエルに封鎖されたパレスチナ人の苦痛と喪失、信仰を描き、2022年に出版されたコレクション「Light in Gaza: Writings Born of Fire」への寄稿「ガザは尋ねる:いつ過ぎ去るのか?」の中で、アラリール氏は「きっと過ぎ去ります、私はそれを望み続けます。 それは過ぎ去ります、私は言い続けます。 …ガザが命にあえぎ続ける中、私たちはそれが過ぎ去ろうともがき、反撃し、ガザの物語を伝える以外に選択肢はありません。 パレスチナのために。」と書いている。
アラリール氏は英BBCのインタビューの中で10月7日の攻撃を「パレスチナの抵抗勢力による先制攻撃」と形容し、「正当かつ道徳的」だったと発言。ハマスのこの攻撃を、ユダヤ人の抵抗勢力がドイツに対して起こした1943年の武装蜂起「ワルシャワ・ゲットー蜂起」になぞらえた。当然かつ正当なアラリール氏の発言である。ところが、この発言を問題視したBBCは、今後はアラリール氏をコメンテーターとして起用しないと表明したのであった。
12/14、しかしそのBBCは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のスタッフと学生のネットワークである「UCLパレスチナ連帯 UCL Palestine solidarity 」が企画した、アラリール氏を追悼する徹夜祭が12/13の午後に開催されたことを詳細に報じている。
アラリール博士が2007年にこのUCLに留学していたことから、この大学の広報担当者は「われわれはこの影響を受けたすべての人々を支援するために取り組んでいる」との発言を紹介したが、同時に東ロンドン出身のUCLの現学生アムナ・ガッファーさんの発言、「彼はUCLの卒業生でしたが、大学が彼を認識したり認めたり、敬意を払ったりしていないと私たちは感じています。」を紹介し、学生や職員らは、「大学の当局は依然として彼の殺害を非難せず、声明を発表することを拒否している」ことに不満を表明したことも報じている。この通夜に同席したBBCロンドンのアルパ・パテル記者によると、トルコ人、エジプト人、イギリス人などさまざまな国籍の学生たちが、アラリール氏の詩「もし私が死ななければならないとしたら“If I must Die.”」の朗読中に泣き、手を握り合っていたという。
<<爆撃にさらされた子どもたち>>
アラリール氏は、10月12日と13日にガザから米CNNの取材に応じ、もし自分が死亡した場合には、インタビューなどの記録を公表することを承諾していた。CNNは、12/12、そのインタビューの内容を報じている。
アラリール氏は、「我々には信仰があり、信念がある。自由のために、基本的人権のために反撃する正当な理由、公正な理由がある。我々はそれをはく奪された」。アラリール氏はCNNにそう語り、国際社会に対してはパレスチナの人たちの「人間性」に目を向けてほしいと訴え、「彼らの痛みを感じ、彼らの身になってみてほしい」と呼びかけている。
その中でとりわけ子供たちのことに触れ、ガザ市民は執拗に続くイスラエルの空爆から自分たちや子どもたちを守る術がなく、「無力感と絶望」を感じているとアラリール氏は話し、爆撃にさらされた子どもたちは心と体に傷を負っていると指摘。「私たちはそのことを語りたがらない。あの子どもたちや家や生活が、数年ごとに何度も、何度も破壊されていることを、考えたいとさえ思わない」、建物が爆撃される音は「地球全体に鳴り響く」ように感じられ、「ドアが閉まる音でさえも、そうした記憶がよみがえることがある」、「最初の2~3日は恐怖にとらわれる」「それがやがて無感覚に変わり、完全な無関心状態、放心状態になる」、「祈りたくても爆撃があるから途中でやめる。食べたくても爆撃があるから食べるのをやめる」、「子どもを抱きしめて物語を聞かせたり、頭をポンポンとたたいたりしたいと思う」、「でも、それが最後のお別れのように感じたり、子どもにそう感じさせたくないと考えてやめようと思う」、「我々は子どもたちが生き延びた戦争の数で年月を数える」、と語っている。
<<圧力をかけ、結集し、街頭に繰り出すこと>>
これが、イスラエルの無差別爆撃・ガザ虐殺攻撃の実態である。10/9に、イスラエル国防相はパレスチナ人を「人獣 human animals 」と表現し「それに合わせて行動する」、「我々は、人獣と闘っている We are fighting Human Animals 」と公言し、12/12に、バイデン米大統領が「彼らは動物です They’re animals. They’re animals. 」と繰り返し語った、パレスチナの人々を人間以下の動物扱いする、まさに典型的な差別・ヘイトクライム、大量虐殺・ジェノサイド=“ ガザサイド ”である。
今年の10/10のアメリカの独立ニュースメディア、デモクラシー・ナウにガザから参加したアラリール氏は、「イスラエル当局者はナチスの言説やナチスの言葉を使い、パレスチナ人を野蛮人や絶滅すべき動物として語り、ガザは駐車場にする必要があると語っている。私たちは、西側諸国とアメリカの税金の援助と支援を受けて、パレスチナ人を絶滅させるという組織的、構造的、植民地的な試みに直面しています。アメリカは80億ドルを送金している。これは本当に非常識です。アメリカはまた、より多くのパレスチナ人を殺害するためにイスラエルに軍艦や爆弾や弾丸を送っている。」と糾弾し、
「私たちにある唯一の希望」は、「アメリカ国内で大衆の支持が高まり、アメリカとヨーロッパ全土の運動、人権運動、人権運動が街頭に出て、政治家にこの問題を終わらせるよう圧力をかけることだ。アフリカや世界中でホロコーストや他の大量虐殺がどのようにして許されたのかと人々が尋ねているなら、今ではそれをテレビやソーシャルメディアでライブで見ることができます。パレスチナ人の街区全体、病院、学校、企業が破壊された。私たちはイスラエルによって破壊された何千もの住宅について話しています。したがって、世界中の自由な人々への私のメッセージは、圧力をかけ、結集し、街頭に繰り出すことです。」と訴えている。
このアラリール氏の「唯一の希望」に応えることが、私たちに問われている。
(生駒 敬)
「我々は、人獣と闘っている」と言うイスラエル国防相には、そのままこの言葉を返したい。
アラリール氏の詩は、大変に奥深いものを感じた。
彼と彼のお嬢さんの死には憤りを禁じ得ない。
ネタニイェフ首相を天誅。