【投稿】「トランプ崩壊の到来」:危険なエスカレート

<<「トランプ氏の精神の崩壊」が世界的な「崩壊」を招いている>>
1/23日付、ニューヨークタイムズ紙の社説は、「トランプ崩壊の到来」( The Coming Trump Crackup )と題して、ブルックス氏( David Brooks )が、「トランプ氏の精神の崩壊」が世界的な「崩壊」を招いている、と警鐘を鳴らしている。
 「出来事の軌跡を辿れば、我々は何らかの崩壊に向かっていることは明らかだ」、「我々は少なくとも4つの崩壊の真っ只中にいる。戦後の国際秩序の崩壊。移民・関税執行局(ICE)の職員が軍靴を脱ぎ捨てる場所では、国内の平穏の崩壊。FRB(連邦準備制度理事会)の独立性への攻撃、そして民主主義秩序のさらなる崩壊。そして最後に、トランプ大統領の精神の崩壊だ。この4つの中で、トランプ大統領の精神の崩壊こそが主要なものであり、他のすべての問題につながっている」、その「精神の崩壊」によって、米国内外で「暴力に訴えることがますます加速している」と厳しく警告している。
トランプ氏個人自身が、「専制政治の弧は堕落へ」と向かっており、「専制君主は概して自らの権力に酔いしれ、それが次第に自制心を減らし、特権意識と自己中心性を強め、リスクテイクと自信過剰を助長し、社会的な孤立、腐敗、そして防衛的なパラノイアをエスカレートさせるのだ。」とまで断じている。
本稿筆者が、前回の投稿(1/21)「トランプ政権:暴走・制御不能で危険な段階」で指摘した通り、そのエスカレートはますます危険性を帯びてきているのである。

 トランプ氏の「専制君主」としての異常さは、ニューヨークタイムズ紙の警告後の1/24、自らのソーシャルメディア・Truth Socialに投稿した「カナダに100%の関税を直ちにかける」という脅しにも端的に表れている。わざわざ、冒頭でカナダの首相・カーニー氏を、「首相」(Prime Minister Mark Carney)とは呼ばず、知事カーニー(Governor Carney)と呼んで、さげすんでいるつもりなのである。カナダを米合衆国に併合する、「州知事」と以前にカナダのトルドー前首相を揶揄したあの論法の再現である。

<<「NATOに米国に派遣させ、南北国境を守らせる」>>
対するカーニー氏は、1/21、トランプ氏も出席した、スイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)での演説で、冒頭、「カナダ国民は、地理的条件や同盟国であることが自動的に繁栄と安全保障をもたらすという、古くからの安易な思い込みがもはや通用しないことを理解しています。}と述べた後、「過去6ヶ月間で、四大陸で12の貿易・安全保障協定に署名しました。ここ数日では、中国およびカタールと新たな戦略的パートナーシップを締結しました。インド、ASEAN、タイ、フィリピン、メルコスールとは自由貿易協定の交渉を進めています。」と述べ、さらに、「北極圏の領有権に関しては、グリーンランドとデンマークをしっかりと支持し、グリーンランドの将来を決定する両国の独自の権利を全面的に支持します。」と述べたのであった。そして、「ハードパワーの台頭に惑わされてはならず、正当性、誠実さ、そしてルールの力は、共に行使することを選べば、依然として強力であり続けるという事実を見失ってはなりません。」、「強国には力があります。しかし、私たちにも力があります。それは、偽りの自分をやめ、現実を直視し、国内で力を築き、共に行動する力です。」と結んだのであった。
同会議での、トランプ氏の饒舌な発言とは対照的に、カーニー氏の発言は、演説後、スタンディングオベーションを受けるほどのものであった。トランプ氏にとっては怒り心頭であったことは間違いない。

こうした事態の展開に、アメリカの特権意識と思い上がり、自己中心性が、カーニー氏やそれに同調する諸国に対する憎しみとなって表出したのであろう。トランプ氏は、1/22の夜に帰国し、1/23 の「午前0時40分から午前1時30分までの50分間」に実に70回以上もTruth Socialに投稿し、最後には、狂気に満ちた復讐心に燃え、カーニー氏に賛同する連中や「NATOに米国に派遣させ、南北国境を守らせる」ことで、米国は「NATOを試すべきだった」と示唆する、異常な精神状態を吐露するにまで至っている。それが、これまでカーニー氏には言ったことがなかった、「知事カーニー」投稿となったのであった。ヨーロッパ諸国はこれまで、トランプ氏をなだめ、おだてて、同調してきたのであったが、もはやそれが通用しない段階を思い知らされた、と言えよう。

 トランプ氏は、世界経済フォーラムで、グリーンランドを奪取するために「武力行使」はしないと明言したが、ワシントンへの引き渡しに向けた即時交渉を要求し、「彼らには選択肢がある。イエスと言えば我々は非常に感謝する。ノーと言えば我々は忘れない」、最後に「ワシントンはグリーンランドを武力で奪取することができ、それは『止められない』だろう」とまで付け加えている。
1/24、米ホワイトハウスのXページは、グリーンランドには生息していない一羽のアデリーペンギンが、トランプ氏が氷に覆われた平原を手と翼でつないで、グリーンランドの国旗が掲げられた山へと向かうAI生成画像を公開している。もう片方の翼にはペンギンがアメリカ国旗を持っている。キャプションには「ペンギンを抱きしめて」と書かれている。トランプ氏個人どころか、政権全体がトランプ独裁におもねっているのである。「トランプ氏の精神の崩壊」はここまで進んでいる。

「トランプ崩壊の到来」と、その危険なエスカレートに、米国はもちろん、全世界がそれを食い止めるための闘いが要請されている。
(生駒 敬)

 

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