<<トランプ主義敗退への「歴史的勝利」>>
トランプ米大統領の強力な同盟者である右派フラヴィオ・ボルソナーロ氏が、10/5 実施の第1回投票では、得票率でボルソナーロ氏が47.03%、現職の左派であるルーラ氏が45.16%で、優位に立っていたのであるが、いずれも過半数に達しなかったため、10/25に決選投票が行なわれた。
事前の世論調査では、接戦になるとしても、ボルソナーロ氏が優位と報道されていた。
ところが、開票率99.99%の時点で、ルラ氏が51.79%の票を獲得し、48.21%のボルソナーロ氏を破ったのである。これによりルラ氏は、1985年の民主化以降、第1回投票で2位につけながらも、決選投票で逆転勝利を収めたブラジル初の逆転劇となった。
サンパウロで行われた勝利演説の中で、ルラ氏は「長きにわたり私に寛大さを示してくれたブラジル国民に感謝します。また、今回の決選投票において、民主主義を守るために街頭に出たブラジルの若者たちの寛大さにも感謝したい。」と述べている。
結果が判明した10/25深夜、ルラ大統領がサンパウロのパウリスタ大通りに到着。10/26のニューヨークタイムズ紙は、その時の光景を、「カーニバルと音楽フェスティバルが混ざり合ったような雰囲気だ。歩くことはほぼ不可能で、この15分間で10歩ほどしか進めていない。地下鉄の入り口の上によじ登る人々の姿もある。赤ちゃんから80代まで、あらゆる年齢や人種の人々が集まっている。修道僧の姿も見える。見知らぬ人同士が踊り、抱き合っている。群衆は『恩赦反対!』と声を上げている。これは、ボルソナーロ氏が自身の父であるジャイル・ボルソナーロ氏のために恩赦を求めていることに対するものだ。」と報じている。
ルラ氏が所属する労働者党(PT)の連邦下院議員レジナルド・ロペス氏は、『ガーディアン』紙に対し、「信じられないような気持ちです……。ブラジルは世界に向けて、極右とはファシストであり、黒人や貧困層、国家、そして同性愛者に対して敵対的な存在なのだと示したのです。私たちは(この国における)民主的な勢力を再編していきます。」と述べている。
<<勝敗差は拡大、ルラ氏は1040万票を上積み>>
今回の勝敗差は、公式の暫定結果によると、440万票に達しており、前回、2022年の210万票という差よりもはるかに拡大している。決選投票では、新たに投票権を得た人々、敗退した候補の支持者、そして第1回投票で白票や無効票を投じた人々など、約1400万票の「浮動票」が勝敗の鍵を握っていたのであるが、ルラ氏はそのうちの4分の3を獲得するという、驚くべき逆転劇を成功させたのである。ニューヨークタイムズ紙の報道によると、第1回投票から決選投票にかけて、ルラは1040万票を上積みしたのに対し、ボルソナーロの上積みは370万票にとどまったのであった。
しかも、このルーラ氏の勝利は、トランプ米大統領とその巨大IT企業の支援者たちのあらゆる妨害工作、不当な介入にもかかわらず達成されたものであった。
トランプ政権はボルソナロ氏を公然と支持し、SNS大手のメタ社(Meta)はソーシャルメディア上でルーラ氏支持コンテンツよりもボルソナロ氏支持コンテンツを優先的に表示し、意図的に拡散していたのである。このMeta社の選挙干渉は、ブラジル選挙裁判所が、ルーラ氏に関連する1,000以上のソーシャルメディアアカウントを制限したことに対して、公平な対応の証明を要求する命令を発する事態にまで及んでいたのであった。
選挙の監視を行っていたサンパウロから『コモン・ドリームズ(Common Dreams)』の取材に応じた、経済政策研究センター(CEPR)のシニア国際政策アソシエイト、フランチェスカ・エマヌエーレ氏は、「今回の選挙は、ファシズムの脅威から民主主義を守るために結集したブラジル国民の大多数にとって、歴史的な勝利となりました。第1回投票の結果を覆し、ルラ氏の勝利を確実なものにしたのは、学生、労働者階級、そして中間層といったブラジル国民自身であり、彼らは第1回投票の翌日から休むことなく街頭に出て行動を起こしたのです。」と語っている。
トランプ大統領はルラ氏の勝利についてまだ見解を示していないが、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領やカナダのマーク・カーニー首相は、ソーシャルメディアへの投稿で同氏に祝意を表している。
もちろん、ルラ氏の前には、依然として困難な戦いが待ち受けている。トランプ氏の反撃や干渉が当然予測され、ボルソナーロ氏は、投票時間が延長されたことを理由に「選挙結果を認めることは不可能だ」と表明、選挙の無効を求めている。

