【コラム】 ひとりごと–西堺警察署「自白強要」と「権力犯罪」

【コラム】 ひとりごと–西堺警察署「自白強要」と「権力犯罪」

 私は学生運動等を行っていた事もあって、警察権力からの「不当捜査・暴言」等の類は何度もある。だから「西堺警察署『自白強要』事件」は「さもありなん。むしろ氷山の一角」と言うのが正直の感想。でも、あまり警察との接触・厄介(?)になった事がない方は「警察が、そんな事するの~?」とか「(犯罪を)やってなかったら、何で『やった』と言ったの~?」とか、にわかには本当の捜査実態で、どれだけ自白強要・誘導等がキツイものか、分かって貰えない。そこで「西堺警察署『自白強要』事件の概要・問題点」と、「刑事捜査の改善点」等について述べてみたい。

《「西堺警察署『自白強要』事件の概要・問題点」》
1.堺市の81歳の男性Aは知人の男性Bを殴ったとして去年、在宅起訴された。
2.しかし今月、大阪地方裁判所堺支部が無罪を言い渡し無罪判決が確定。3.またAは「西堺署の巡査長(男性)から自白を強要される等、違法な取調べにより精神的な苦痛を受けた」として2月24日、大阪府に損害賠償(2百万円)を求める訴えを起こした。 ◎なおAは、一昨年9~11月に5回、任意の事情聴取受け、その内1回をICレコー ダー録音に成功した。

○その執拗な「自白強要」の概要は以下のとおり。
〔巡査長〕「口があるんですから答えろ。黙らなくてもいいから答えろ」「『やりました』て一言言うたら、すぐ済む話やで」「あんたがそうまでしてやってないと言いきる理由は何や。答えろ、命令に答えろ」「別にいつでもいいんやで。いつ認めてくれても。あんまり言うと自白の強要になるな」「あんたがウソついてるんやろ、認めたくないんやろ。あんたのことや、答えろ。どっちやねん。黙りこくって生きて いける世の中ちゃうの、知ってるやろ」等。
◎Aは元小学校の校長で、取り調べの際に、仕事等を侮辱された。
   ○〔巡査長〕「ええ?先生さんよお、あんたどうやって物事教えてきたんや。ガキやから適当にあしらっとったんちゃうん。そういう回答するんやったら、あんたの人生そういうふうにしか見えへんで、ああ?」
◎また刑事訴訟法で義務付けられた黙秘権の告知はなく、黙秘権の侵害があった。
◎さらに無断で所持品検査もされた。

4.本「自白強要」事件の問題点
(1)本事件は、まだ「任意の事情聴取」段階で弁護士と接触し、その弁護士の助言に基き、ICレコーダーによる録音に成功。それが「自白強要」の動かぬ証拠となり発覚したものである。しかし一般的には「任意の事情聴取」録音することは至難の事で、事後に口頭だけで「自白の強要があった」と訴えても警察は「事情聴取は適正に行われたもの」との見解を示し闇に葬むされるのが殆どである。
(2)なおそこに「自白の強要」に耐えかねて一旦、「虚偽自白」をしてしまうと、それを裁判で「自白の強要による虚偽自白」と何度、主張しても、なお更に認められない。

【この場合の注意事項】
①捜査官は「自白」を得るために「裁判で否認すればいいじゃないか」と「自白誘導」する。(これは明らかな「騙し」である。でも捜査官は、そんな事は平気で行う)
②「後程、裁判で否認は困難」と述べたが、基本的に「警察→検察庁→裁判所」は日常的な人間関係も含めて「『馴れ合い』の関係にある」と思っておいた方がよい。
(3)本「自白の強要」事件では「刑事訴訟法で義務付けられた黙秘権の告知はなく、黙秘権の侵害があった」ことが問題になっているが、私の知る限り、そんな「黙秘権の事前告知」をきっちり行われる事等、聞いたこともないし、先ず有り得ない。
警察は自分達に不都合な市民(被疑者等)の権利知識は教えないのが通常だ。
(4)そもそも、この巡査長は何故「暴行を受けた」と被害届、及び刑事告訴した告訴人の主張だけを鵜呑みにして「自白の強要」に走ったのか。被疑者Aが「否認」を続けている段階で、告訴人の被害主張、及び被害届等も「虚偽刑事告訴」の疑いをもって、再事情聴取しなかったのか疑問が残る。その理由に考えられるのは
◎予め定めた捜査シナリオに固執し、柔軟かつ融通が効かなくなっていることがある。私の経験上でもあったが、通常、捜査を始める前に「捜査会議」を開催し、だいたい「どこまで捜査し、何を立件し、どの範囲で検察庁起訴するか」を決め、それに沿った捜査を進める。そして、そのシナリオに外れる捜査方針の変更は、あまり捜査指揮する者はしたがらない。その結果、捜査シナリオを大きく変更する事実が出てきても、その事実証拠を無視したり隠したりする。厚生労働省村木厚子さん冤罪事件、松本サリン事件等々は、その例とも言える。

《「西堺警察署『自白強要』事件を風化狙い」》
私は大阪府警が「取調に問題がなかったか調査する」と言っているので、マスコミ各社に報道提供しながら下記公開質問を行った。その質問と口頭回答(電話)が以下のとおり。
{質問事項}
1.今後、「自白強要した」と言われる氏名等と処分内容を、明らかにする意思はあるのか? また明らかにする予定があるとすれば、いつ頃か?
2.「警察は問題がなかったか調査を進めている」との事ですが、その「調査」の進捗状況、公表の時期を示してください。
<その〔西堺警察署回答(口頭電話)〕は、以下のとおり。>
◎「まだ全てが捜査途中で、お答えできるものはない」
◎「文書で回答を求められても、その判断は当署にある」
◎「仮に捜査・調査が終了しても、公表の有無も含めて、現段階では分からず、また公表するにしても、前もって貴方に知らす事はない」

{西堺警察署回答(口頭電話)の評価}
要は「ゼロ回答」以下で、実際は「時間のかかり過ぎ」で何の調査・捜査もしておらず、このまま本「自白強要事件」の風化を狙っているのだろう。また「自白強要」も、それだけ日常茶飯事ということだろう。このまま「警察の逃げ得」を許すのか、それとも最後まで警察の「自白強要」責任を追及するのか、マスコミの責任も問われている。(民守 正義)

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 この寄稿者でもある民守さんが、ブログを開設し、政治・人権・医療等の問題をテーマに幅広く発信してされています。ご活用をお願いします。

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【出典】 アサート No.449 2015年4月25日

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