【投稿】シラケを通り越し失望感漂う都議会選挙

【投稿】シラケを通り越し失望感漂う都議会選挙

7月6日に行われた都議選は、過去最低の投票率40.8%となり、自民、共産、公明という手厚い組織票に支えられた政党の順当勝ちとなった(別表参照)。各政党の概観はおよそ次のようなものである。
共産は「オール与党批判」「シルバーパス存続」を熱心に訴え、過去最高の26議席を獲得、都議会第2党になったことで都議会運営も今後ますます難しくなる事態となった。「オール与党批判」がこの間の一連の選挙で証明されるとおり人々に受け入れられたことは疑いない。42選挙区中6選挙区でトップ当選、二人を擁立した大田区、世田谷区ではともに2議席獲得、二人区の文京区、日野市では40%近い得票率を得て圧勝している。しかし、肝心の自民投票を減らしていないこと、「シルバーパス」問題での公明との舌戦にもかかわらず公明票も減らせなかったこと、そして6割に迫る選挙棄権者を考えると、共産党自体の選挙運動の成果といえるものははなはだ望みが薄いものとなる。
この点では、自民党は以前の衆議院選から着々と都議選、そして来年の参院選への準備を進めており、地元密着型での必勝態勢をより固めつつある。我が地元では自民党が商店街の目抜き通に選挙本部を大きく構え、有権者に目に見える形で訴え、他の政党に比べてもいつになく目立つ存在となっている。
改革を標榜する新進や民主党が後退したことは特徴的である。新進は議席ゼロへ転落し、民主党は1議席へらし12議席。改革を標榜するこれら政党の国政レベルでのイメージがいっそう悪くなっていることが要因だ。新進は「保保」連合や身内の離党騒ぎなど、「公明」がなければ基盤がなにもないこともあからさまとなった。民主党はまるで何をしているのか判らない政党だ。「市民主義」をいいながら実態は、地元に足がないことは明白だ。
国政レベルでの閉塞した政治状況、政財官の腐敗した状況など、不信感はよどみをうって世間に蔓延してきている。少なくとも選挙に行こうという良識的な人々が「このままではイカン」と共産党へ票を投ずるといった図式だろう。それにしても投票率40%とというのは低すぎる。選挙そのものが無効といえるぐらいだ。これは自民党の思うつぼであろう。

政界再編の新スタートは何か?

政界再編の「新スタート」のはずだった都議選は、先の総選挙から8ヶ月を経てなお再編の兆しも、政治的焦点や関心の高まりもなく閉塞状況にある。先の国会では重要法案が目白押しに採択されているが、「選挙民」にとってはまだまだ時代の変化の兆しが目に見えてきていないようである。
第一に政党の責任が大きい。総選挙後から通常国会を通じて自民党の「保保」か「自社さ」かという抗争が明らかになり、再編側もこれに組した格好で「永田町」の政治ゲームが展開された。こうしたなかで離党騒ぎや政党内のゴタゴタがつづき、何を目指すべきなのか一層不明確になった。「政界再編」「改革」を期待させておいておきながら、どう何をすべきなのかいっこうにわからない、そして今度はどこの政党に鞍替えしたという……。これではみんなに判るのは自民党と共産党ぐらいだろう。
新進党は「保保」連合で自民党内に揺さぶりをかけたが、小沢氏の独断専行が結局新進党内の離党騒ぎとなった。もともと国政選挙でも自民党に対する野党的第2党という位置づけがあって存在意味があったものが、与党となると社民党以上に自己区別がなくなりかねない。都議選はそのいい例だ。深刻な財政再建途上にある都議会にとっても、何をどうすべきなのか、行政的一律的な福祉施策の切り捨てはドンドン進行しているが、肝心の行革や臨海開発問題はどうかたをつけるつもりなのかなど、有権者にきちんと説明する政党は皆無である。まずは政党がきちんと21世紀に続く未来を具体的に展開できるようエリをたださなくてはならない。
もうひとつはいっこうに進まない行革批判である。自民党政権の掲げる6大改革(安保も含めれば7大改革だろう)がなし崩し的に進行しているが、一方では行革にたいする不満感も日増しに強くなっている。経済のグローバル化と激烈な世界市場競争の中で日本市場だけが遅れた閉鎖的な市場であり続けることはできない。まず橋本政権としても一刻の猶予も許されない改革だけに経済構造改革を断行し、金融・財政構造改革(ビッグ・バン)、そして少子高齢社会へのレールを引かなければならない。
中央レベルは政策立案、そして地方は実施機関として様々な法案改正が行われてきているが、行革の本格的な勝負はこれからである。地方分権をはじめこれらの改革の道筋はまだまだ不透明な部分も多く、政策的な選択もその内容がどうあるべきかという点できちんと論戦を展開すべきだろう。行革一般論だけでなく具体的に進行している中身をそれぞれ点検していかなければいけない。(東京:R.I)

党派別当選者 ( )内は前回
自 民 54(38)
共 産 26(13)
公 明 24(25)
民 主 12(13)
社 民 1( 4)
新 進 0( 4)
太 陽 0( 0)
新社会 0( 0)
諸 派 2( 3)
無所属 8(15)
計128

【出典】 アサート No.236 1997年7月19日

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