青年の旗 1987年5月1日 第123号

青年の旗 1987年5月1日 第123号
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【主張】 求められる春闘の「再構築」–大手民間妥結–

現在、八七春闘はJC、NTT、電力、私鉄の賃金交渉が決着する中でその大きなヤマ場を超えた。政治的にも四月二十三日、国会で売上税が事実上廃案の土俵に乗ったことにより、二十四日の統一ストは中止、官公労も政府交渉で人勧完全実施努力の回答を得たことで十七日のストを中止、民間中小を残しつつも、八七春闘はその大勢が決まったと言わねばならない。
結果は、経営側による「鉄の重し」が依然として強く、JCは軒並み「昨年マイナス」となった。すなわち、鉄鋼の今年ペアなし定昇のみを受けて、昨年の鉄鋼の今年ペアなし定昇のみを受けて、昨年の鉄鋼のペア分二六〇〇円を金属大手の昨年ペア分から減額したものが今年の他のペアとなったのである。「鉄を買って物を作る産業としてあちらの苦境をよそに決める訳にはいかない」(自動車労連)ということでの経営側の「気配共闘」を労働側が崩せなかった結果である。鉄は表舞台からは去ったものの″陰の主役”の役割を果たし、見事に「低率・分極の春闘」を演出したのである。鉄鋼・造船は春闘史上初のペア無であり、鉄鋼に代わってIMF・JCの牽引役を担わされていた電機大手は三・六%と自らの歯止めを基準より〇・一ポイント高い水準を獲得したものの十四組合の同率決着は果たせず終った。業績好調のトヨタも回答引き出し目標額だった三・五%に到達できぬ三・四六%であり金属大手はいづれも史上最低の賃上げ率となったのである。一方、業績好調のNTTは八日午前十時からのストを背景に一万一六〇〇円(四・九四%)を獲得、又、電力は九八五〇円(三・九四%)で結着した。そして、第三週決戦とした私鉄はこれらを受けて、一万八〇〇円(四・五九%)を引き出し一発妥結となった。金属とは明暗を分けた形である。
「私鉄は高すぎたが、全体的には額にしても率にしても良心的にやったと言えるのではないか。まあまあのところにおさまった」とは日経連会長大槻の弁である。三%台の賃上げ水準では、政府見通し消費者物価一・六%上昇を加味すれば、実質貸金アップは二%足らずにすぎない。今年も「経済整合性論」にもとづく要求決定がなされた訳だが、結果は「経済整合性論」の破綻をあますところなく明らかにする事になったのである。同時に、八七春闘連絡会で統一要求目標として決定した「六%もしくはそれ以上」の賃上げ要求は、何の波及力も持てないで終った。もはや各ナショナルセンターのどこも相場形成力を持ち得ないまま、産別ごとバラバラという状況が生まれている。

八七春闘は急激な円高の進行という帝国主義間矛盾の激化の中で闘われた。急激な円高による為替差損を労働に押し付け独占の利益を擁護するのか、それとも円高不況による生活悪化を防ぎ、雇用を増大するのかがまさに今春闘の争点となるべきであった。しかし、現実にはこの間の春闘と同様に「賃上げは企業の利益があってのもの」との独占側の土俵の上にしか闘いが組まれずその経果、金属労協等二百の大手組合は史上最低の三・五一%(日経連中間報告)となった。しかし、独占は今日の深刻な円高不況の前に、企業別組合労使協調を維持してきた年功序列賃金体系、終身雇用体系の見直しを開始(一部では既に実施)しており、独占自らが労使協調路線の前提をくつがえす段階に至っている。既に労働サイドも貨金体系の見直しを進める中で、企業別組合が持つ限界と産別組合の必要性をますます意識できる状態においやられている。
八五年九月のG5以来急速に進行する円高は四月二十八日現在で既に一三七円台を推移するに至った。独占は円高差損を”コストダウン〃”競争力の維持”の名目で労働者・人民に犠牲転稼し、大幅な人員削減・合理化、賃金抑制、更に子会社、孫会社の整理、下請孫請の見直しを″大手を振って”断行している。その結果、八六年のGNPの実質成長率は二・五%と過去十二年間で最低水準になっている。又、八七年三月の失業率は三%、完全失業者は一八二万人と過去最悪の水準、製造業の倒産件数は三六八二件、なをも製造業の四二%が″雇用調整”なる人減らしを計画しているのである。
日本独占は、円高差損を全て労働者に押しつけ、中小資本の再編を進行させながらも、尚も出口が見出せないでいる。円高のデメリットを労働者・人民に転稼し、いわゆる国際競争力を維持すればするほど、ますます貿易黒字はふくらみ、円高に拍車がかかるという事態である。円高による独占の犠牲転稼と生活悪化を許さず、雇用の拡大、ワークシェアリング、賃金の大幅引上げを克ち取る闘いが求められる。

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