青年の旗 1987年6月1日 第124号
PDF版は、こちらへ
【主張】lNF全廃、「ダブルゼロ」実現へ!—中曽根包囲の斗いを—
(1)NATO「ダブルゼロ」受け入れを決める
六月十二日、アイスランドのレイキャビックで開催されたNATO外相会議は欧州配備の長射程中距離戦力(IRINK)と短射程中距離核戦力(SRINF)をともに全廃するという、いわゆるソ連の「ダブル・ゼロ」提案の受け入れに同意する、という声明を発表した。NATO内の意見対立に終止符を打ち統一見解を打ち出したことで、ジュネーブのソ米交渉はINF全廃の合意に向けて大きく前進する見通しが強まった。
これを受けて、レーガンは十五日、テレビ演説の中で「欧州での長射程INF全廃と並んで、世界中の短射程INFを廃絶することをソ連側に提案するよう、米軍縮代表団に指示した」と述べた。 この中でレーガンは長射程INFは当面、米ソ双方が百弾頭づつ残す権利を持っているが、「最終的には、これも全廃したい」と述べるとともに、NATO諸国の支持の上で、米国がソ連の「ダブル・ ゼロ」提案の受け入れを決断したと強調した。
(2) INF全廃の意味するもの
この合意の意味することは、第一に、SALT交渉をはじめこれまでの「軍縮」諸協定が内実においては上限を定めるのみの「軍備管理」であったのに対し、INF全廃合意は実戦配備された核兵器が歴史上初めて削減・ 撒去される、文字通りの軍備縮少である。 合意が実行されたならば、五万発以上あると言われる世界中の核兵器のうち、双方で約六百基程度の核兵器が削減されることになる。
第二に、 INF全廃は米帝国主義の核戦略の根本転換をもたらさざるを得ないことである。ICBMを基にかつては、ICBMを基軸とする「全面核戦争」「大量報復」戦略による世界の全滅の恐怖の下での均衡が存在していた。 この中で、INFの配備は「全面核戦争」に至らない「限定核戦争」戦略なる幻想を設定し、「先制第一撃」によるアメリカの核の優位と″使える核兵器”を求めてスタートした。ICBMが発射から三十分余で目標に達するのに対して、INFは十分足らずで目的に達する。 その為、INFに対する迎撃が不可能であり、相手の攻撃かコンピュータの異常による誤報かを判断している余裕がなく、誤報による報復もせぎるを得ないものである。 このINFがSALTの網目をくぐり欧州を舞台とした’地域的な核戦争”、軍事的緊張を激化させて来たのである。 欧州反核運動はこのINF配備を契機として高揚してきたのである。
従って、このINF全廃の合意は欧州を核の戦場とする「限定核戦争」戦略の発動を著しく困難にし、この戦略そのものを破綻に追い込むことは明らかである。核の均衡も、八三年のガーターによるINF配備以前の時点にまで押し戻される。しかし、この戦略の変更が、再び恐怖の均衡、「大量報復戦略」に立ちかえるというわけにはいかないであろうことは明らかである。今まさに、「核のないヨーロッパ」の実現が現実的な課題とし登場した。
(3) ゴルパチョフ提案と日本の位置
ゴルバチョフ書記長は「現在、我々は欧州の核兵器廃絶をめぎiす積極的な路線を実施しているが、 それは核の危険を他の地域に移すためではない。 我々の日標は核兵器のストックが最も多く集中している欧州からはじめて、全ての大陸から核兵器を取り除く方向に進めることだ。 なぜソ連はアジアに百基の核ミサイルを残すか。—米国も同意しているのだが—それは米国がアジア太平洋地域に強力な核戦力を集結させているからだ。我々は米国が、日本、南朝鮮、フィリピンにある自国の核手段を撤去し、空母部隊を含めてのラインまで後退させることを認めるならばグローバルな基盤でINF問題を解決する用意がある」と述べている。
現在、フィリピンにおける米軍事基地撤去の斗い、韓国における米帝国主義の傀儡に対する広範な斗いの中で、極東におけるレーガンの核戦略は軍事的にも、財政的にも日本の協力抜きには成り立たない。一方、中曽根はINFアラスカ配備提案、 SDI参加の動きに示される様に、これに積極的に加わっている。 その財政的表現が防衛費のGNP比一%突破という形で表われている。 レーガンの世界戦略の中での日本の位置が増々重要なものとなっている。 同時に日本における平和・ 原水禁運動の国際的使命も重要になっている。
(4)INF全廃の破壊を許すな
新たな核軍縮への局面を切り開きつつあるINF合意であるが、西独は自国領土内にあるパーシンク1a七十二基の核弾頭(米国の保有)は今回の削減対象からはずすことを主張している。 又、 NATOの一部からは、「INFの全廃により、通常戦力の不均衡が存在している」という声が出されている。 又、双方が百弾頭残すという長射程INFの配備地域や全廃の検証問題等解決を要する問題は多い。 帝国主義者へ INF全廃の’破談”への口実を与えてはならない。 INF全廃後の’新たな核の均衡, を造り出してはならないし、残されるであろう「SDI」中止へと斗いを継続させ得るトータルな暴露の下での斗いが今、我々、日本の反独占勢力に問われている。