青年の旗 1980年5月1日 第39号

青年の旗 1980年5月1日 第39号

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【主張】 米の軍事的威しによる対イラン制裁に反対する

テヘラン大使館人質問題の解決が思うに任せぬカーター米大統領は、危険な軍事的威しで、イランの譲歩を引き出そうとしている。
十七日、カーター米大統領は、新らたな対イラン制裁措置を発表した。それによると、新制裁は、①米国人の対イラン全金融取引の停止②イランからの輸入禁止③米国人のイラン旅行の全面禁止④イラン政府が購入ずみで、すでに凍結している米国製武器を米軍や輸出に向ける⑤凍結ずみのイラン資産八十億ドルから人質やその家族に対する賠償を支払う権限を議会に求めかつ、凍結資産は米民間企業の対イラン債権や空母出動費など軍事、その他の人質関係の政府支出に充てるーの五項目に及んでいる。
さらに、同大統領は、この制裁で効果がなければ、「唯一の次の手段は何らかの軍事的行動しかない」とし、対イラン海上封鎖などを示唆すると共に、同盟諸国に対しても「行動の中身やスピードに失望した」と赤裸々にその不満を表明し制裁同調を強く要求した。
この居丈高な威しは、二十一、二日ルクセンブルクで開かれた、EC外相理事会に圧力をかけ、制裁同調を引き出し、国内向けにカーターの威信を取り戻し、大統領選を好転させようとするものである。

<ECもイラン制裁に同調、米の軍事的威しに屈す>
ここに至って、ECも対イラン制栽に合意したが、賛否両論が斗わされる中で米の軍事行使を懸念し、やむなく同調するという、お付き合い的なものに終っている。
その内容も、二段階的制裁で、第一段階として直ちに実施するのは①テヘラン駐在外交官を数的に削減②EC九ケ国駐在外交官の削減③EC域内に入国するイラン国民に入国ビザを適用④イランに対する武器および防衛関係物資の輸出許可の取り消しの四点だけである。
食糧・医薬品を除く禁輸、信用供与の停止などの第二段階の制裁は、第一段階が完了し効果のない時に実施されるが、肝心のその実施時期も、強硬論が抑えられ五月十七日以降、期限にしばられず、というゆるいものに終っている。
ECが制裁同調に踏み切った背景には、イラン原油依存度が低下したこともあるが、むしろ米国が海上封鎖など軍事行動に出る恐れがあり、緊張が一気に高まることを懸念したものと思われる。
しかし、EC内には依然として、アラブ急進諸国の反発、スポット買いの増加による経済的悪影響、ソ連への接近促進などを考慮して、制裁効果の疑問視、消極論が仏を先頭に根強い。

<日本政府、及び腰の同調–イランの逆報復に不安顔–>
日本政府は、ECの決定を待って、二十四日、在イラン日本大使館員の人数削減など三措置の実施を発表し、第二段階については、ECの動向を見極めながら決定することを発表した。
原油総輸入量の十一%をイランに頼る日本は、当然、同盟諸国の中でも、もっともおずおず制裁に同調する形となっている。
今回の制裁も「不快感の表明」以上は、何の効果もなく、むしろ在留邦人が困るだけだし、ピザの通用も部分的に適用するだけである。第二段階の禁輸措置については、通産省を中心に猛反対があり、大平首相自身、「イランとの関係を損なうので、実施は考えていない」と表明せぎるをえないほどである。
むしろ、イランが一バレル=三五ドルの値上げ通告を拒否した結果、原油供給停止の状態が長びくことの方が重大問題となってきている。

<進むソ連・イランの経済協力>
イランは、これらの経済制裁に対抗して、欧・日の銀行から頭金を引き上げ、又、ドルから他通貨への乗り換えを進めている。
これらの結果、イランヘの経済措置は、何の効果もなく、逆に天然ガスの供給交渉を再開するなど、イラン・ソ連の協力を促進し、日本を窮地に追いつめるという効果をもたらしている。
我々は、日本政府の矛盾をついて、米への同調を撤回させ、イラン包囲を打ち破り、軍事的野望を押えこみ、中東の平和を守らねばならない。

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