【投稿】反トランプ・「ノー・キングス」全米大規模抗議デモ

<<米史上最大の抗議活動>>
10/18、当日の「ノー・キングス」抗議デモの主催者は、前回・6月14日の「ノー・キングス・デー」に結集した500万人を上回る人々が、全米50州、約2,500か所以上の集会に参加し、「これは間違いなく、アメリカ史上最大の抗議活動の日となるでしょう」、「トランプ大統領は自分の統治が絶対だと考えている。しかしアメリカには王などいないし、混沌、腐敗、そして残虐行為にも屈しない」と表明している。その抗議行動のライブ映像が、同サイトで公開されている。

 この「ノー・キングス」抗議活動を主催している団体には、ACLU(アメリカ自由人権協会)、全米教職員連盟、コモン・ディフェンス、50501、ヒューマン・ライツ・キャンペーン、インディビジブル、環境保護有権者連盟、ムーブオン、全米看護師連合、パブリック・シチズン、SEIU、ユナイテッド・ウィー・ドリーム、その他の地元の政治団体や社会団体を含む、全米140以上の団体などが結集している。
 集会の組織化を支援しているパブリック・シチズンの共同代表、リサ・ギルバート氏は、「前回の抗議活動以来、人々は現政権の何が間違っているのかをはるかに深く認識するようになりました。」と指摘している。

また、デモの主催団体の一つであるインディビジブルの共同創設者兼共同会長であるリア・グリーンバーグ氏は、「デモクラシー・ナウ!」の番組で、「私たちは、平和的な抗議のために結集している」が、トランプ大統領や他の共和党議員が、「ノー・キングス」集会を「アメリカ憎悪」集会だと非難したことに触れて、「抗議活動に対するトランプ大統領の脅しは、恐怖を煽り、脅迫し、人々を事前に退かせようとする、権威主義的な手法の典型的な例です」と、トランプ政権の対応を鋭く糾弾している。

<<「内なる敵」に対して軍隊を>>
トランプ政権と与党・共和党は「ノー・キングス」抗議活動の高まりに激怒し、デモ参加者を「テロリスト」「アンティファ」「過激で小規模で暴力的」などと中傷し、トランプ氏自身、特にワシントンD.C.で行われる抗議行動を「アメリカ憎悪集会」と断じている。ホワイトハウス報道官のキャロライン・リービット氏に至っては、「主要支持層はハマスのテロリスト、不法移民、暴力犯罪者で構成されている」とまで語っている。
ショーン・ダフィー運輸長官は、抗議行動参加者は、大統領に恥をかかせようとするアンティファの金で雇われたメンバーだと非難し、「キングがいなければ給料はなく、給料がなければ政府もない」と、「キング」礼賛にまで踏み込んでいる。共和党のマイク・ジョンソン下院議長も、抗議活動をアンティファとパレスチナ武装組織ハマスと関連付けて誹謗中傷。
 今や、ホワイトハウスから発せられる言語は、内戦を煽る言語にまで至り、トランプ大統領自身が、「内なる敵」に対して軍隊を投入するよう呼びかける事態である。ホワイトハウスは、トランプ大統領に直接の指揮下で全米に軍隊を展開する広範な権限を与える反乱法(Insurrection Act)発動の準備を進めている、と報じられている。トランプ氏は、裁判所が全米の都市への軍隊派遣を引き続き差し止める場合は、100年以上前に制定された反乱法を用いて不利な司法判断を回避する可能性、意向を明らかにしたのである
こうしたトランプ政権に呼応して、テキサス州のグレッグ・アボット共和党知事をはじめとする一部の州知事は、抗議活動に対応して州兵の出動を決定し、アボット知事は、「テキサス州は犯罪行為を抑止し、地元の法執行機関と協力して、暴力行為や器物損壊に関与した者を逮捕する」と脅しの声明を発表している。。バージニア州知事グレン・ヤングキン氏は、警察を支援するため「バージニア州民の安全を守る」ため州兵の動員を明らかにしている。
しかし、こうした事態の進展は、トランプ政権の焦りと孤立化が一層進んでいることをも明らかにしている。

今回の「ノー・キングス」抗議デモの高揚が明らかにしたものを列挙すれば、
* 前回よりも、新たな抗議活動参加者が大幅に増大した、その背景に、移民襲撃、都市への連邦軍配備、政府の人員削減、大幅な予算削減、選挙権の剥奪、ワクチン要件の撤回、等々、「もうトランプはいらない!」と抗議する人々を質的・量的にも増大させてしまった。
* ハーバード大学ケネディスクールとコネチカット大学の共同プロジェクトである群衆計測コンソーシアムを共同指揮する政治学教授のジェレミー・プレスマン氏は、トランプ氏の2期目の強引さが抗議活動参加者を増大させた可能性があると述べている。
* 抗議行動そのものにおいても、ワシントンD.C.のような大都市圏では、前回に比べていくつもの大集会が組織され、サンフランシスコでは抗議活動が5カ所に広がり、シカゴでの1回の集会は22回に及んだ。ニューヨークでは、市内5区すべてで10万人以上がデモが展開された。オレゴン州ポートランドの抗議行動では、3つの別々の行進が組織され、最終的には1つに合流するなど、創意と多様性が展開された。
* 全米各地でデモ参加者は「アメリカに王はいらない」「民主主義を守れ:ゼネストの時だ!」、「ICEゲシュタポを廃止せよ」「我々は臣民ではない」などと宣言する手作りのプラカードが多数掲げられた。
* 一部の集会では、少数の反対デモ参加者と警察の対峙が見られたが、挑発行動が組織的に回避され、雰囲気は明るく、子供たちや家族連れの参加者が大いに目立つ抗議行動であった。ニューヨーク市警は、抗議活動に関連した逮捕者はゼロだったと認めたが、これは「暴動」と「テロ集団」に関するトランプ大統領の主張を真っ向から否定するものであった。

大都市から小さな町や田舎の郡にまで及ぶこの運動の広がりは、トランプ独裁政権への抗議・反対運動は、一部地域に限定されているという、トランプ政権が広めてきた、「内なる敵」説を完全に打ち砕き、「キング」独裁政権の継続が不可能な事態をもたらしている、と言えよう。
(生駒 敬)

 

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